空白の時代

Jiromaru

横山典弘と藤沢和雄。関東を代表するジョッキーと調教師でありながら、意外なことに、この2人には蜜月の時代がありません。藤沢和雄厩舎には岡部幸雄騎手というほとんど専属のジョッキーがいましたし、岡部幸雄騎手が引退した後は、所属の若手騎手や腕の立つ外国人ジョッキーに騎乗依頼をすることが多く、横山典弘騎手に白羽の矢が立つことが少なかったのでしょう。それだけではなく、実はこの2人には、関係が断絶されていた空白の時代があるのです。

このことを語る前に、横山典弘騎手のお酒にまつわる逸話を紹介しておかなければならないでしょう。

デビューした18歳の頃の函館で、1日に3回も落馬した話です。朝5時まで飲んでいた横山典弘騎手は、最初に調教場まで乗ってきたバイクでひっくり返りました。その次は、角馬場でうるさい馬を叱ろうとしてムチを大きく振った瞬間、地面に落馬しました。最後は、まさに追い切りを行っている最中にアブミが外れてしまい、足を掛け直そうとしたが、そのまま真っ逆さまに地面へ叩きつけられてしまいました。「大丈夫か?」と救急隊員が駆け寄ると、横山典弘騎手は酒臭い息を吐きながら、そのままグーグーと眠ってしまったそうです。

このようなエピソードには事欠かず、横山典弘騎手はお酒に飲まれてしまうことで有名でした。腕は達者であっても、安心して手綱を任せることの危うい、どこか脆い面を持ち合わせていたのでした。厩舎関係者の信頼だけではなく、お酒によって横山典弘騎手は健康をも損ねてしまいました。痛風と診断されたように、お酒で足を痛めてしまったのです。そんな横山典弘騎手のことを、藤沢和雄調教師は見ていたのでしょう。ゼンノロブロイでダービーを2着に負けたレースを機に、横山典弘騎手に騎乗を依頼しなくなったのでした。

Yokoyamaそれまでは、調教にも跨ってもらっていた横山典弘騎手に対し、藤沢和雄調教師はこう言ったそうです。「明日から攻め馬に来なくていいよ」と。横山典弘騎手は何も言えませんでした。お互いにプロとして、勝負の世界では結果を出せなければ飯が食っていけません。調教師が乗れないジョッキーに騎乗を依頼するわけにはいきません。ドライではありますが、当たり前の話ですよね。こうして、およそ2年以上にわたって、横山典弘騎手が藤沢和雄厩舎の馬に跨ることはありませんでした。

横山典弘騎手はお酒をやめました。藤沢和雄調教師にもう一度認めてもらうためではなく、自分がダービーが勝ちたいから。自分自身には馬しかないと気づいた時、彼は酒ときっぱり縁を切ったのでした。「最高潮で乗れるのは、あと5年ほどかもしれない。もう10年は残されていないんです。ダービーに乗れるチャンスも、5回しかないじゃないですか。その残されたチャンスに、もし自分自身が絶好調なら、ひょっとしてハナ差で勝てるレースがあるかもしれない。それをもう落としたくないんです」と横山典弘騎手は語りました。そして昨年、残された5回のチャンスを、見事にモノにしたのでした。

藤沢和雄調教師はずっと見守っていました。タイキシャトル、スティンガー、シンボリインディのような、自身が育てた強いマイラーに、関東を代表するジョッキーを乗せて、いつの日か再び関西馬たちと互角の勝負をする日を夢見ながら。

Photo by Photo Stable

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

究極の選択

Jiromaru

私に残された最後のチャンスは有馬記念でした。今からちょうど10年前、1レース10万円という勝負をしていた1999年最後のG1レース。当時、手取り14万円だった私にとって、1年間では返しきれないほどの借金を背負って臨んだレースでした。実は前の週のスプリンターズSでブラックホークの単勝を買っていた私は、ほんの少しだけ負債を減らし、ほんの少しだけ気が楽になっていました。もしこの有馬記念が当たれば、逆転勝利の可能性も残されていたのでした。

しかし、この年の有馬記念には、スペシャルウィークとグラスワンダーという超一流馬が2頭出走してきました。スペシャルウィークはこの秋、天皇賞秋→ジャパンカップと連勝し、最後の大一番に臨んできました。特にジャパンカップでの強さは圧巻で、さらに調子を上げて来ているとの陣営のコメントもあり、全く隙のない馬に見えました。対するグラスワンダーも、辛勝した毎日王冠から間隔を開け、この有馬記念に向けて完全に仕上げ直してきました。しかも前年の覇者でもあります。この2頭のどちらが勝利するのかが焦点であり、圧倒的な人気を分け合うのは明らかでした。

私の選択肢は2つありました。ひとつは、この2頭以外の馬を買うこと。候補として考えていたのは、3歳馬のテイエムオペラオーでした。ミスター競馬こと故野平祐二さんが「ヨーロッパの馬みたいだ」と絶賛していたほど、力強いピッチ走法で駆けるテイエムオペラオーにとって、暮れの中山の時計の掛かる馬場が合っていないはずはありません。しかし、菊花賞で僅差の2着後、ステイヤーズSを使ってまさかの2着に敗れていました。前走、G3レースで負けていた馬が有馬記念で勝つということに少々無理があるのではと感じていました。

もうひとつは、賭け金を増やすこと。スペシャルウィークもグラスワンダーも2倍台の単勝オッズでしたので、たとえ当たったとしても、1レース10万円では逆転は不可能です。詳しくは書きません(書けません)が、○○万円を賭ければチャラ、それ以上であれば勝ってこの年を終われるはずです。悪魔のささやきが聞こえてきました。「もうここまで負けているんだから、○○万円も○○万円も変わらないよ。男なら思い切って勝負しな」と。

悩みに悩んだ末、私は後者を選びました。いや、選んだというよりは、スペシャルウィークとグラスワンダーのどちらかが勝つのが必然と思ったのです。そうなると、賭け金を増やすしかありませんよね。私は腹を決めました。あとはどちらに賭けるかです。年始から単勝のみで勝負をしてきた私にとって、2頭の馬連という結論はありえませんでした。スペシャルウィークか、それともグラスワンダーか。まさに究極の選択でした。

この時ほど、切実に未来を知りたいと思ったことはありません。もしどこかに答えがあるならば、どんな手段を用いても手に入れたい。そんな気持ちでした。まるで頭から湯気が出るような気がしました。パドックを見ては考え、返し馬を見ては考え、競馬新聞を見ては考え。スペシャルウィークで間違いないと確信した時もありましたし、グラスワンダーが勝利するイメージが浮かんだこともありました。結局、レースの投票が締め切られる1分前まで、私は延々と考え続けました。

今思い返してみると、実は答えなんてどこにもなかったのです。それはレースを見てもらえば分かると思います。それまでの私は、競馬のレースは何度やっても同じ結果になると考えていましたし、その結果は科学的に証明できると信じていました。ひとつのレースにはひとつの答えがあって、その答えに至るまでの過程さえ正しければ、どんなレースでも必ず勝てると公言していました。恥ずかしい限りです。この薄氷を踏むような経験を通して、競馬は分からないということが分かったのでした。

この有馬記念の結末を書こうと思って筆を執りましたが、やめておきます。競馬場の締め切りのベルが鳴って、心臓が止まりそうになりながら、マークシートにどちらの馬の番号を塗りつぶしたのか、私以外の誰も知りません。今まで10年間、誰にも言えなかった秘密をどうしても書く気になれないのです。思わせぶりな私のわがままだと思ってご容赦ください。もしかすると、結末はすでにあなたの胸の中にあるのかもしれませんね。


関連リンク
「ガラスの競馬場」:あの時の熱狂が
「ガラスの競馬場」:良い逃げ切り、悪い逃げ切り

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (6)

長い旅の途上

Jiromaru

私の大好きな冒険写真家の星野道夫さんは、「人は生きているかぎり、夢に向かって進んでいく。夢は完成することはない。しかし、たとえこころざし半ばにして倒れても、もしその時まで全力を尽くして走りきったならば、その人の一生は完結しえるのではないだろうか」と書きました。私もそう思います。誰にも夢があり、ある人にとっては手の届かない夢、またある人にとっては目標に近い夢かもしれません。でも、日々、その夢を抱いて生きてゆく。青臭いかもしれませんが、たとえその夢が完成しようがしまいが、夢があるからこそ私たちは生きてゆけるのです。もしその夢がかなったのなら最高ですよね。

小牧太騎手にとっての夢は、「橋口調教師の管理馬でG1レースを勝つこと」でしょう。このことを語るには、今から5年前の朝日杯フューチュリティSまで遡らなければなりません。園田競馬場のトップジョッキーとして、鳴り物入りで中央競馬に殴りこみをかけた小牧太騎手は、橋口厩舎のペールギュントを駆って、朝日杯フューチュリティに1番人気で臨みました。前走の東京スポーツ杯を好走しての出走だけに、いよいよ小牧太騎手の中央初G1の時が来た、と誰もが思いました。

ところが、1枠を引いてしまった小牧太ペールギュントは、なかなか前目のポジションを取ることが出来ませんでした。終始包まれるような形になり、直線で大外に出して追い込んできたものの、先に抜け出したマイネルレコルトに届かず、3着に終わってしまいました。小牧太騎手は、ペールギュントの良さである末脚を生かした乗り方をしたと思います。それでも、中山の1600mというトリッキーなコースの前になす術なく敗れたのでした。

小牧太騎手は言い訳ひとつしませんでした。それでも、ペールギュントの馬券を持っていなかった私でさえ、小牧太騎手の心中が推し量れるような負け方でした。中央に移籍して以来、ずっとお世話になっている橋口調教師の管理馬で、G1レースを勝って恩返しが出来るチャンスに、すぐそこまで手が届いていたはずでした。どれだけ悔しかったでしょう。自分の運命を呪ったこともあったかもしれません。いつかこの借りは返す、そう胸に誓ったに違いありません。

自身による中央初のG1制覇は、昨年の桜花賞、レジネッタでの勝利により達成されました。しかし、小牧太騎手の本当の夢は、橋口調教師の馬をG1タイトルに導くことなのではないでしょうか。夢に向かって歩き続けるのか、それとも途中あきらめてしまうのか、人それぞれだと思います。小牧太騎手は今回の朝日フューチュリティSで、夢をかなえるチャンスをついに手にしました。地方から中央入りして、期待はずれと陰口を叩かれながらも、腐らずにやってきた全ての経験と彼のジョッキーとしての矜持をぶつけるのです。

私にも夢があります。「競馬を書くことで生きてゆく」プロジェクトの第1弾として、「ガラスの競馬場」CLASSICを立ち上げました。たくさんの方々に応援していただき、嬉しく思っています。これから先、自分の大好きなことが周りの人々に少しでも認めてもらえる世界になるよう、多くの人々の力を借りて、もっと広いリーチで競馬の素晴らしさを伝えていきたいと思っています。その長い旅の途上には、たくさんの楽しいことが待っている気がしてなりません。


自分の夢や人生が日常に絡めとられそうになった時、いつも聴く曲です。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

良い逃げ切り、悪い逃げ切り

Jiromaru

阪神ジュべナイルFには、良い逃げ切りと悪い逃げ切りがあります。あっ、もちろん、私にとってですが。良い逃げ切りは、ブエナビスタの母であるビワハイジが勝ってくれた時のそれ。自分と同じ誕生日というだけの理由で買った線の細い牝馬が、あの女傑エアグルーヴに先着した唯一のレースでした。「ハイジ、ハイジ!」と少女のように叫びました(笑)。悪い逃げ切りは、M・キネーン騎手を背にしたヤマカツスズランが逃げ切ってしまった時のそれ。決してM・キネーン騎手やヤマカツスズランが悪いわけではありません。が、どうしてもこの馬だけには逃げ切って欲しくなかったのです。

かつて1レースに10万円を賭けていた年があった、と以前に書いたことがあります。当時、手取りの給料が14万円だった私にとって、1レース10万円という金額はまさに大金でした。考えられないほどの大金を賭けることによって、自分はどう変化するのか。今となって思えば、私という人間の限界を知りたいという実験だったのかもしれません。若気の至りと言ってしまえばそれまでですが、その頃の私は誰がどう見ても殺気立っていたと思います。

阪神ジュべナイルFが行われる頃には、私は相当に追い詰められていました。年頭から始めた1レース10万円ルールは既に破綻していて、恥ずかしい話なのですが、もう自分の持ち金だけでは賭けることが出来なくなり、当時付き合っていた彼女にお金を借りていました(今はそんなことはしません!)。当てなければならないというプレッシャーに、毎週末、私は押し潰されそうでした。そのような状況で迎えた1999年の阪神ジュべナイルF(当時阪神3歳牝馬S)当日、なんと運の悪いことに、仕事が入ってしまったのでした。

PATなど普及していない時代でしたので、土曜日に馬券を買っておくか、日曜日に馬券を買いに行ってもらうしか方法はありませんでした。10万円の馬券を前売りで買う度胸がなかった私は、後者を選び、彼女に馬券を買いに行ってもらうことにしました。当然のことながら、その日は仕事が全く手につきません。頭の中は競馬の予想で一杯です。ギリギリの時間まで悩みに悩んだ末、彼女の家に電話をかけて、エンゼルカロという馬の単勝を買ってもらうよう頼みました。4番人気の7.2倍。これが当たれば借金のほとんどは返せるという打算もあったかと思います。

電話を掛け終えてから、ひと息ついたその瞬間、「1番枠に入った逃げ馬にキネーンが乗ったら普通逃げ切るんじゃない?」という声が頭の中でしました。我に返った私が慌てて電話を掛けなおすと、彼女はもう馬券を買いに出かけてしまったようで、電話に出ません。当時、彼女は携帯を持っていませんでした。鳥肌が立ち、背筋がゾクッとしました。やってしまった…。どれほど今すぐ職場を抜け出して、エンゼルカロの馬券を買いに行く彼女を捕まえに行きたかったことでしょう。もちろん、新人の私にはそんなこと叶うわけもありませんでした。

仕事が終わった帰り道、私は怖くてレースの結果を見られませんでした。キオスクの売店を見ないようにして(速報が出ていることがあるので)、コソコソと家に帰り、テレビをつけ、意を決して録画していたビデオを観ました。そこには、私が頭の中で描いていたのと全く同じレース映像が流れました。好スタートからポンとハナを奪ったヤマカツスズランは、キネーン騎手に導かれて、そのままゴールまで逃げ切ってしまったのでした。最後の望みを託し、私は彼女の家に電話を掛けました。「馬券買った?」と聞きくと、「買ったよ」と即答でした。私は「ありがとう」とだけ言うと、静かに受話器を置きました。ヤマカツスズランの単勝は4.2倍。もしあの電話がつながっていれば、42万円になっていたはずでした。

私はこの1年で、金銭的にも精神的にも大きなダメージを受け、たくさんの人々に迷惑を掛けもしました。それでも、この1年があったからこそ、(大袈裟に言うと)今の私があるとも思っています。馬券のスキルだけではなく、競馬というゲームの本質を学びました。自分の未熟さや弱さといった限界を知っただけではなく、競馬の限界を知ったのでした。寺山修司はこう言いました。「馬券を買っているんじゃない。自分を買っているんだ」と。大きなお金を賭けることは決してお勧めしませんが、勝つにしても負けるにしても、傷つかない程度ではなく、自分が何かを失ってしまうほどに大きく勝負してみないと、見えないものがあるのもまた事実でしょう。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (9)

100%信じることで

Jiromaru

今年の天皇賞秋の週、ある女性からメールを頂戴しました。「ウオッカの勝つ姿が見たいのですが、最終追い切りで舌を出していたのが気掛かりです。あれ、良くないのですよね?また何かにやられますかね?ウオッカを信じたいのですが、どうお考えですか?」とのこと。私はライブの直前だったこともあり、単刀直入に彼女に伝えました。

「ウオッカの追い切りですよね…。正直、あまり良くない傾向だなと思いました。実戦であれ、調教であれ、舌がハミを越していることにプラスはありません。もしかすると、また前走のように掛かってしまうかもしれませんね。それでも、もしウオッカの勝つ姿を見たいのであれば、ウオッカを心から信じるべきでしょう。どのような結果であれ、100%信じることで学ぶことは多いと思います。かつて私もヒシアマゾンという馬で競馬の喜怒哀楽を味わいました。その経験や思い出は今でも宝物です。後から思うと、共に競馬を味わえる馬は片手で数えるほどなんですよね。明後日の天皇賞秋、楽しみです。」

今からちょうど14年前、府中競馬場のスタンドに立っていました。始発の電車に乗って府中競馬場に乗り込み、スタンド前の席を確保し、それからメインレースとなるジャパンカップまで他のレースは一切買わずに、ただひたすらヒシアマゾンの勝利だけを心待ちにしていました。秋初戦となる京都大賞典で牡馬を相手に楽勝したヒシアマゾンは、ジャパンカップに向けて最高の仕上がりにありました。どれだけ寒風が吹きすさぼうが、私の心には燃え滾るものがあって、5時間後の未来を想うと、身体の芯からマグマのような熱い液体がドクドクと溢れ出しそうでした。ヒシアマゾンが世界の頂点に立つ瞬間が、もうすぐそこまで来ていたのです。

しかし、最後方からレースを進めたヒシアマゾンが、大外から豪快なフットワークで、脚を伸ばせども伸ばせども、ドイツからの刺客ランドとの差は縮まりませんでした。あの時ほど、ジョッキーと一緒の気持ちになって直線で馬を追ったことはないかもしれません。ヒシアマゾンは惜しくも2着に敗れてしまいました。それでも、その日の全財産を失った私の心には、清々しいばかりの爽快感があったことをはっきりと覚えています。負けてはしまったものの、ヒシアマゾンを100%信じることが出来た自分と、今持てる力を出し切ったヒシアマゾンが誇らしかったのだと思います。

さて、今年のジャパンカップにはウオッカが出走します。ヒシアマゾンが灯していたたいまつの火が、ウオッカに乗り移っているように私には思えて仕方ありません。昨年は天皇賞秋がピークでしたが、秋2戦を叩かれて、今年はジャパンカップに向けて究極の仕上がりにありますね。さすが角居調教師、どこを捨ててどこを取るか、したたかな計算があると思います。

とはいえ、ウオッカは2歳の頃から最高レベルの競走を走り続けてきて、もう5歳の秋です。「使える脚が短くなってきている」と武豊騎手が語ったらしいのですが、本当のことでしょう。それは肉体的に衰えたということではなく、集中力が続かなくなったということです。競馬に飽きているとも言えます。今回の追い切りでも舌を出していました。だからこそ、陣営もジョッキーを替えて刺激を与えようと工夫したのでしょう。もちろん、ある程度の効果はあると思いますが、そんなに簡単なものではないことも確かです。

幸いなことに内枠を引きましたので、とにかく折り合いをつけながら、脚をためることに専念することが出来ます。前に行かせながら脚を溜めることに関しては、世界屈指の腕を誇るルメール騎手のことです。前走で武豊騎手が折り合いを矯正してくれていますので、中団より前でレースの流れにすんなりと乗れるはずです。ルメール騎手は、直線に向いて、ウオッカが本気になるその一瞬を逃すことなく、先頭に立たせなければなりません。そこから先、ゴールまで辿り着けるかどうかは神のみぞ知るところでしょう。

エアシェイディは高齢になっても元気一杯です。カンパニーと同じ8歳馬ですから、この世代は本当にレベルが高かったのだと思います。前走は大外枠から差を詰めて、1秒差ならば上々ではないでしょうか。ひと叩きされて、絶好の状態で臨めます。一転して内枠を引きましたので、今回は終始内々で脚を溜めることが出来るので、無欲で内をスパッと突けば面白いでしょう。同じことはアサクサキングスにも当てはまり、内々の前で立ち回ることが出来れば、あわやというシーンは作れるのではないでしょうか。

BCターフの覇者コンデュイットは素晴らしい馬ですね。強行軍を嫌って、あまり注目していませんでしたが、日本での追い切りの動きを見て感心しました。とても素直な馬であることが伝わってきましたし、手脚の軽いフットワークは日本の芝にも適しています。追い出されてから最後まで、しっかりと伸びてくるのではないでしょうか。馬体を併せてしまうと、ウオッカにとっては最大の強敵になると思います。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (8)

鋼の馬

Jiromaru

ジャパンカップも今年で29回目を数えます。初めてジャパンカップが開催された年、ほとんど実績もなく人気薄だった外国馬たちに、上位を独占されてしまいました。日本馬が勝てる日など来ないのではないか、と多くの競馬ファンは深い衝撃を受けました。あれから29年が経ち、たとえ世界の強豪が向かってきたとしても、地元であれば胸を貸せるまでのレベルに日本の競馬は成長しました。ここに至るまでには、多くのホースマンたちの挑戦や挫折があります。その歴史の重さを感じながら、今年のジャパンカップも楽しみたいですね。

第2回ジャパンカップに鳴り物入りで参戦したジョンヘンリーという外国馬がいます。当時、ジョンヘンリーは8歳となっていましたが、芝ダートを問わず大レースを勝ち続け、68戦31勝の戦績を引っさげて日本にやってきました。前年の衝撃に加え、今度はアメリカの英雄がやって来たのですから、大フィーバーとなりました。当然のことながら、ジョンヘンリーは圧倒的な1番人気に推されたのです。同じ4本脚のサラブレッドではないような感覚もあったのではないかと思います。

ジョンヘンリーという名前は、アメリカの民謡で広く知られている黒人の鉄道労働者に由来します。彼は生まれたときからハンマーを握っていたと言われ、屈強さと誠実さの象徴とされる人物です。鉄道トンネルを山腹に開通する仕事に従事しており、他の誰よりも早く力強くハンマーを振るうことで有名になりました。

そんな噂を聞きつけたあるセールスマンが、新しい蒸気ドリルを持って彼のもとに近寄り、「どんなに力の強い人間でも、このドリルには敵わないはずだ」と挑発しました。ジョンヘンリーは「そんな油と鉄で出来た機械に人間が負けるはずがない」と言い返しました。そして、人間と機械の決闘が行われたのでした。

翌日の午後、どちらが速く岩山のトンネルを貫通できるか、人間と機械の威厳を賭けた勝負が行われました。右側の山を蒸気ドリル、左側の山をジョンヘンリーが掘り進めます。最初は蒸気ドリルが一歩リードしていたのですが、途中からジョンヘンリーがジワジワと差を詰め始めました。岩山からは、固くて重い岩塊が崩れ落ちてきます。最後の最後に、ジョンヘンリーが蒸気ドリルを抜き去ったところがゴールでした。

ジョンヘンリーを応援していた人間たちは、人間が機械に勝ったと大喜びしました。しかし、人間の限界を遥かに超えてしまったジョンヘンリーは、その場で崩れ落ち、死んでしまいました。この寓話は産業社会における人間の死を暗に意味します。そして、私たちの中のどこかにある、人間が持つ機械を超えた能力への信頼と賛美もあるのではないでしょうか。

ジャパンカップで1番人気に推されたジョンヘンリーは、見せ場すら作れず、13着に敗れてしまいます。まるでトンネルを掘り終えたジョンヘンリーのように、ゴール前で力尽きてしまったのです。歴戦の疲れが出てしまったのか、それとも連戦のツケが回ってきたのか、ジョンヘンリーの意外な敗北に日本の競馬ファンは唖然としました。のちに自国へ戻ってからも、ジョンヘンリーは低迷を極めます。9歳時はわずかに5戦したのみで、さすがのジョンヘンリーも衰えたかと誰もが思いました。

ところが、10歳になったジョンヘンリーは再び力を取り戻したのです。2度目となるアーリントンミリオン(G1)を制し、9戦6勝の活躍を見せました。屈強な肉体と決してあきらめない精神力。まさにアメリカの民謡どおりの馬でした。11歳になっても現役を続行する予定でしたが、脚元のケガで惜しまれながらも引退となりました。G1レースを16勝したこともそうですが、10歳になってG1レースを4つも勝ったことも、The Horse of Steel(鋼の馬)と呼ばれたゆえんでしょう。

競走馬のピークが4歳なんて誰が言ったのでしょうね。先週のカンパニーにしてもそうですが、個体差こそあれ、サラブレッドは意外や高齢になっても能力は衰えないのかもしれません。人間が勝手に衰えたと見限るだけで、実はほんの少し調子を落としているだけなのかもしれません。じっくりと待てば、ふたたび輝きを取り戻してくれるのです。それを馬の恩返しと言った調教師もいました。簡単に引退させてしまうのも考えものですね。私たち人間だってそうではないでしょうか。調子の悪い時期が長く続くことだってあるはずです。そんな時でも、年齢による衰えだとか自分の能力の限界だとかあきらめないで、己を信じて、時を待つことの大切さを、ジョンヘンリーやカンパニーは教えてくれたのです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (9)

◎マイネルファルケ

Jiromaru

前回の手紙では、私の中では最高のマイラーであるトロットサンダーについて書きましたが、実は今年のマイルCSで1番人気に推されているカンパニーとの共通点が2つあります。ひとつは、もちろん鞍上が横山典弘騎手ということです。馬から切れ味を引き出すことにかけては、右に出る騎手はいないでしょう。もうひとつは、高齢になるまで活躍したという点です。トロットサンダーは6歳時にマイルCSを制し、7歳で安田記念を勝ちました。当時は今と比べると高齢馬の活躍は少なく、まさに遅咲きのマイラーと呼ばれるに相応しい馬でした。

さて、今年のマイルCSの最大の焦点は、天皇賞秋を制したカンパニーのもう一丁があるかどうかということでしょう。結論から言うと、天皇賞秋を勝った馬がマイルCSに出走してくれば、間違いなく好勝負になりますし、かなりの確率で勝てるはずです。

天皇賞秋を勝った馬がマイルCSに出走してくるケースは意外や少なく、2006年のダイワメジャーの前はと言えば、1987年のニッポーテイオーにまで遡らなければなりません。天皇賞秋の勝ち馬のほとんどは、ジャパンカップや有馬記念に挑戦するからです。天皇賞秋を勝ったということは、スピードとスタミナを最高の次元で兼備していることを意味します。そういった馬がマイルCSに矛先を向けてきた以上、紛れの少ない京都のマイル戦ということもあり、ほぼ確勝を期しているということになります。もちろん、ニッポーテイオーもダイワメジャーもマイルCSを制しています。

唯一の心配材料は、マイル戦に対する適性です。マイル戦の連対率が5割を切っているように、この馬は決してマイラーではなく、中距離で瞬発力を生かすタイプです。マイルがドンピシャではない以上、たとえ総合力が一枚も二枚も上だとしても、足元をすくわれてしまう可能性もあるということです。外枠だった昨年と違い、内でジッとしていれば良い好枠を引きましたので心配はないと思いますが、もしゴール前が混戦になったら冷や汗をかくかもしれませんね。

切れ味勝負には絶対の自信を持つカンパニーにひと泡吹かせるとすれば、マイル適性があって、かつ前に行けて粘り込める馬でしょう。◎マイネルファルケは外枠を引きましたが、京都1600m(外回り)は第1コーナーまでの直線が長いので、すんなり先頭を取れるのではないでしょうか。母はスプリンターであったビンゴハナコですが、この馬は地脚を活かせるマイル戦の方に適性があります。現にマイル戦の連対率は優に50%を超えています。休み明けを3回叩いて、体調も最高潮。逃げ先行馬に乗せると上手い和田騎手というのも魅力です。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (8)

最高のマイラー

Jiromaru

私の中で、最強のマイラーは?と聞かれればタイキシャトルと答えますが、最高のマイラーは?という問いにはトロットサンダーと答えると思います。なにせ、マイル戦に限って言えば、8戦8勝無敗という、マイルを走るために生まれてきたようなサラブレッドなのですから。しかも、タイキシャトルのような磐石のレースぶりではなく、後方からズバッと差して来るトロットサンダーの走りに、私はマイル戦の面白さを教えてもらったのです。

トロットサンダーの父はダイナコスモス、母はラセーヌワンダ(父テスコボーイ)という地味な血統で、育成時代に大怪我を負ったこともあり、浦和競馬場で遅れたデビューを果たしました。8戦7勝の成績を引っさげて中央入りしたのですが、当時はほとんどと言ってよいほど注目されませんでした。しかし、ダートよりも芝の方が合っていたようで、特にマイル戦に照準を絞ってからの強さというのは尋常ではありませんでした。1400mでは足りなくて、1800m以上では少し長いというマイラーの中のマイラーだったのですね。

横山典弘騎手を好きになったのはトロットサンダーの札幌記念だと以前に書きましたが、トロットサンダーのレースの中で最も印象に残っているのは、1995年のマイルCSです。トロットサンダーにとって、初めてのG1タイトルを取ったレースです。前走のアイルランドTを快勝し、挑戦者として4番人気で臨んだマイルCSでした。1番人気は前走セントウルSを勝った武豊鞍上のビコーペガサス。続く2番人気はスワンSの勝者であるヒシアケボノという、勢いのある関西馬が主役を張っていました。

今でも覚えているのですが、このレースを予想していて、思わず「エっ!」と声を出してしまいました。何かと言うと、私はこの当時から、マイルのチャンピオンを決めるレースである以上、マイル戦の実績は必須と考えていて、マイル戦の連対率が50%に満たない馬は消していました。マイルのG1レースに出走してくる馬は、当然のことながらマイル戦を得意としているので、過去のレースにおいて、このデータだけではほとんどの馬が残ってしまうのが普通でした。しかし、このレースでマイル戦の連対率が50%を切る馬を消していくと、なんとなんと、2頭しか残らなかったのでした!

トロットサンダー 
メイショウテゾロ

驚いた私は、友人たちに内緒でトロットサンダーの馬券をたくさん買いました。マイル戦の連対率が50%を超えているだけではなく、負けたことがないのですから、他の出走馬とは次元が違います。その時は負けるはずがないとさえ思いました。16番人気のメイショウテゾロについては半信半疑でしたが、この2頭しか残っていないのですから、この馬も買わざるを得ませんよね。

大外からオレンジの帽子が飛んできたときには、まさに鳥肌が立ちました。レース中、横山典弘騎手が馬にゴーサインを送る意味で、ムチをスッと高くかかげるのですが、あのシーンがカッコよくて、ターフィーショップで買ってあったムチを使って真似してみたなぁ。最後の直線では、これぞマイラーという極上の切れ味でした。

しかも、2着には16番人気のメイショウテゾロを連れてきたのです!トロットサンダーの単勝は850円。トロットサンダーとメイショウテゾロの馬連は10万馬券となりました。メイショウテゾロが好走した原因は、マイル戦の連対率が50%を超えていた(マイル適性があった)ことだけではなく、他にもあったのですが、それについては、またいつか書きたいと思います。

この後、翌年の安田記念もトロットサンダーは制して、マイル無敗のまま現役を引退していきました。私にとっての最高のマイラーであるトロットサンダーの強さは、メイショウテゾロという大穴のイメージと共に、私の記憶の中に今でも鮮明に残っています。


これぞマイラーという極上の切れ味をご覧ください。
後ろから行く13番オレンジ色の帽子です。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (1)

◎ジェルミナル

Jiromaru

ハナ差で牝馬3冠を逃したと思いきや、何と降着という憂き目に遭ったブエナビスタが、エリザベス女王杯で雪辱を期します。それにしても、札幌記念、秋華賞と悔しいレースが続いています。追い込み切れず、という表現がピッタリきますね。小回りや直線が短いというコース設定の影響もありますし、また前走は内枠が災いした感もあります。ヤマニンキングリー、レッドディザイアの大駆けにも遭い、それでも最後まで追い詰めているのですからさすがです。今回は外回りコースで外枠を引き、条件が逆転しましたので、おのずと結果はついてくると陣営が考えるのも当然でしょう。

ただ、ひとつだけあら探しをするとすれば、オークスの激走の反動が抜けていないのではないかということです。3歳の春に府中の2400mを走り切って、あれだけの脚を使ってしまったことによる目に見えない疲れが残っているのではないでしょうか。秋2戦の走りを見ていると、どうにもこの馬の走りが出来ていない気がします。伸びそうで伸びない、歯がゆさです。前半に前に行けるようになっている反面、最後の直線でエンジンが掛かるのが遅い。どこかに苦しいところがあるからこそ、道中で行きたがってしまい、ゆったりと走ることが出来ない。そこが最後のひと伸びにつながっているのです。中間も調教を軽めにして回復に努めているようですが、馬体だけを見ても決して本調子ではないと思います。現役屈指の脚の速い馬ですが、今のブエナビスタならば脚元をすくわれる可能性もあるはずです。

秋華賞に続き、もう一度◎ジェルミナルに本命を打ちます。前走は外枠発走が仇となってしまい、有力馬が内で脚をためている中、勝負どころで外々を回らざるを得ませんでした。また、藤原英昭調教師も言っているように、ひと叩きされて体調がアップしていると思っていたのですが、案外戻りきっていなかった部分もあったかもしれません。この中間はビシビシ追われ、エリザベス女王杯に向けて仕上げられてきました。体型からも、ゆったりと行ける距離の方が合うタイプだけに、2200m外回りへのコース替わりはプラスに働くはずです。好枠を引きましたので、福永祐一騎手も積極的に攻める騎乗をしてくると、ブエナビスタを脅かすことも可能ではないでしょうか。

同じ藤原厩舎からは、秋華賞2着のブロードストリートが万を持して出走します。もともと素質の高かった馬ですが、今秋に入ってからの強さは本物ですね。休み明けのローズSを快勝した反動を心配された前走でも好走したように、肉体的な資質ということだけではなく、この馬には精神的な強さも感じます。道中もスムーズとは言えませんでしたが、あきらめずに最後まで伸びてきました。陣営の心配としては、どちらかというとスピードと器用さが武器の馬だけに、京都2200mというコースではその特性が活かしきれないのではないかということでしょう。200m伸びるだけですが、求められるスタミナはそれ以上に違ってきますからね。この舞台を乗り越えれば、新たな名牝の誕生でしょう。

古馬でいえば、前走を同じコースで快勝したメイショウベルーガが面白いのではないでしょうか。最後の直線までジッとして、末脚の切れに賭けるレースになるでしょうが、堅実な末脚を発揮できる舞台です。今年に入って使い込まれているにもかかわらず、ここに来て調子を上げてきている印象です。条件戦とはいえ、牡馬をナデ斬りにしてきた勢いを買いたいですね。

昨年の覇者であるリトルアマポーラも、それほど人気もないので妙味はありますね。スミヨン騎手を背に昨年の再現もあり得ると思っていましたが、追い切りを見る限りにおいては、昨年度の出来にはなさそうです。昨年は気持ち良さそうに走っていたことを覚えています。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

フライング・フィリー

Jiromaru

4度目の激突が観られると思っていただけに、レッドディザイアの回避は残念でした。が、古馬勢に海外からの3歳馬シャラナヤが加わって、また新たな戦いが繰り広げられそうです。前走のオペラ賞(G1)を勝って臨んでくるシャラナヤはアガ・カーン4世の所有馬なのですね。そう、メイショウサムソンが出走した昨年の凱旋門賞で、圧倒的な末脚を披露したザルカヴァのブリーダーオーナーです。

アガ・カーン4世が歴史的名牝ザルカヴァに至るまでには、祖父アガ・カーン3世から続く、遥かに長いサラブレッド生産の道のりがあります。イスラム教の精神的指導者であったアガ・カーン3世が、イギリス競馬界に参入したのが1921年のこと。最初の10年でリーディングオーナーに4回、最終的にはクラシックも完全制覇して、リーディングブリーダーには計9回も輝いたのです。

しかし、イギリス人ではないということに加え、イギリスで活躍した名馬や名牝をあっさりとアメリカに売り払ってしまうやり方に、イギリス競馬界の人々は反感を覚えていました。特にナスルーラをアメリカに売却したことやイギリスダービー馬マムードを経由してノーザンダンサーが生まれたことで、イギリスがアメリカに主導権を奪われてしまったと考える人も少なくありませんでした。たとえば外国に放出したアドマイヤムーンやユートピアの血によって、世界ひいては日本の競馬が席巻されるような感覚でしょうか。賛否両論あるとは思いますが、長い目、広い視野で考えると、アガ・カーン3世の行動は競馬の世界を活性化させたことは確かです。

アガ・カーン3世はオーナーブリーダーとしての旅の途上で、1頭の牝馬に出会いました。その名はマムタズマハル。由来はインドの世界遺産であるタージマハールであり、マムラズマハルはペルシャ語で「宮廷の選ばれし人」という意味です。アガ・カーン3世は1歳のセリ市でこの芦毛の牝馬を見て、あのタージマハールの白亜を連想したのではないでしょうか。

現役時代のマムタズマハルは10戦7勝、1200m戦までは圧倒的な強さを発揮して、他馬を置き去りにする恐ろしいほどの快速ぶりから“フライング・フィリー”(空飛ぶ牝馬)と呼ばれました。ここまでであれば単なる快速牝馬で終わってしまうと思うのですが、マムタズマハルは繁殖入りしてからこそが本領発揮だったのです。しかも、ただ単に強い馬を生んだということだけではなく、牝馬から牝馬へと牝系を通して、その血を活性化させていったのです。

たとえば、マムタズマハルの仔であるマーマハルは1935年のイギリスダービー馬マームードを生みました。さらにマーマハルの牝系はタニノギムレットにつながり、ウオッカを輩出しました。マムタズマハルの別の仔であるマムタズビガンは、名種牡馬であるロイヤルチャージャー(サンデーサイレンスやブライアンズタイムの祖)やイギリスダービーを圧勝したシャーガー、日本だとホクトベガを。そして、世紀の大種牡馬であるナスルーラも生んだのです。アガ・カーン3世はこの馬を通して、競馬の世界を大きく変えていったのでした。

その後を継いだアガ・カーン4世は、祖父の遺志を受け継ぎながら、彼独自の生産方式を貫きます。人気のないマイナーとみなされている種牡馬をいかに活用するかが大命題だと語り、確たる意志を持って、ドイツ式の系統繁殖を行ってきました。その結果が、昨年の凱旋門賞馬ザルカヴァであり、今年のエリザベス女王杯に出走してくるシャラナヤです。シャラナヤの母系にはあの“フライング・フィリー”マムタズマハルの血が脈々と流れています。父ロミタスはドイツの年度代表馬ですが、どちらかというとマイナーな種牡馬です。こういう世界的なトレンドからは離れた血統から、こうして素晴らしい馬が生まれてくるのですから、サラブレッドの生産は奥が深いですね。


現代の“フライング・フィリー”ゼニヤッタが14連勝でBCクラシックまでブッコ抜きました。
牝馬の時代とはいえ、牡馬を相手に最後方からの追い込みにはシビれます。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

ありがとうございました。

Jiromaru

昨日行われました「馬券のヒント」Q&Aトークライブにご参加いただいた皆さま、最後までお付き合いいただきありがとうございました。皆さまからのレベルの高い質問や個性溢れる予想が聞けて、おかげさまで楽しい時間を過ごすことが出来ました。質問のやり取りの中で、たくさんの馬券のヒントについてお話ししましたが、そのひとつ一つが当たり馬券に繋がっていくことを願います。明日、東京競馬場にお越しになる方は、ぜひ一緒にゴール前で叫びましょう!ライブにお越しになれなかった方も、私の姿を見かけたらぜひ声を掛けてくださいな。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

何度めぐり合えるのだろう

Jiromaru

あの日から、もう19年が経ってしまいました。私が生まれて初めて競馬場に行った日。その日に行われる天皇賞秋には怪物オグリキャップが出走するということで、私を含むたくさんの競馬ファンが詰め掛けていました。生まれて初めて競馬場に足を踏み入れた私は、競馬場の空の大きさに心を奪われただけではなく、観衆の多さに度肝を抜かれてしまいました。

その当時の競馬場やウインズにおける人の多さは尋常ではなく、まさに立錐の余地もありませんでした。今みたいにPATがなかったこともありますが、純粋に競馬場に来てその場の雰囲気を楽しむという競馬ファンの数が圧倒的に多かったのだと思います。熱狂という言葉がピッタリと来る、そんな時代でした。

ファンファーレ後の手拍子やゴール前のどよめきや絶叫に私は圧倒されました。あまりの競馬ファンの多さに、背伸びをしてみても、オーロラビジョンさえ見ることができず、初めての競馬場で私はサラブレッドの走る姿を生で観戦することが結局出来ませんでした。周りが口々に放つ「オグリが負けた…」「青い帽子2頭だ」という言葉から、レースの結末をあれやこれやと想像しました。私の手にはオグリキャップから数点流した馬券が握られていました。オグリキャップが負けたこともショックでしたが、このような熱狂がこの世にあったことを知った私は、その場に立ち尽くし、世界観が変わりました。

人間には日常と祝祭が必要といいますが、競馬場での熱狂はそれまでに味わったことのない祝祭でした。小学校の運動会よりも、中学の野球部の県大会よりも、高校の学園祭よりも、有名ロックグループのコンサートよりも。今となっては良かったのか悪かったのか分かりませんが、その日から私は競馬場に魅せられました。祝祭という非日常を求め、19年間、暇さえあれば競馬場に足を運び続けてきました。

そういえば、オグリキャップが敗れたこの年の天皇賞秋は、4-4というゾロ目で決まったのでした。ゾロ目って分かりますか?馬連や馬単が主流になった今では死語ですが、当時のように枠連しか馬券がなかった時代は、同じ枠に入った馬がどちらも連対することをゾロ目と言いました。ヤエノムテキ(1着)とメジロアルダン(2着)はどちらも4枠の馬でした。同じ枠を買うなんていう買い方があることを私が知ったのが、この天皇賞秋になります。「府中の2000mには魔物が住んでいる」と言われ始めたのも、オグリが負けたこのレース頃だったかなあ。

競馬場にかつてほど人が集まらなくなり、ゾロ目という言葉も聞こえなくなり、やはり長い年月が経ったのだと実感します。私自身はあの頃と変わらないつもりですが、競馬をやっていると、月日が経つのはあっという間で、世の中は大きく変わりました。

私の大好きな冒険家であり写真家である、星野道夫さんの言葉が浮かんできます。

無窮の彼方へ流れゆく時を、めぐる季節で確かに感じることができる。 自然とは、何と粋な計らいをするのだろうと思う。 1年に1度、名残惜しく過ぎてゆくものに、この世で何度めぐり合えるのか。 その回数を数えるほど、人の一生の短さを知ることはないのかもしれない。 「CARIBOU-極北の旅人」より

昨年の伝説の天皇賞秋は、久しぶりに熱いものがこみ上げてきたレースでした。1年に1度の天皇賞秋というレース。この世で何度めぐり合えるのでしょうか。その回数を数えるほど、人の一生の短さを知ることはないのかもしれませんね。

ふと、あの時代の熱狂を忘れたくないなと思います。



私が初めて生で観た天皇賞秋。立っているのがやっとという競馬ファンの多さでした。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

◎リーチザクラウン

Jiromaru

前回の手紙では逃げ馬の話をしましたが、実は京都3000m外回りコースは、1986年から1996年の11年間でたったの1度も逃げ切りがなかったコースです。この事実だけで、この京都3000m外回りコースがどれだけ逃げ切り至難であったかが分かると思います。ミホノブルボンもキョウエイボーガンも、菊花賞で逃げ馬受難の時代の逃げ馬だったといえます。

ところが、1997年に南井克己騎手を背にしたビッグシンボルが、このコースで行われた万葉Sを逃げ切るというエポックメーキングな出来事が起こりました。偶然によるものか、それとも計算された逃げ切りか分かりませんが、とにかく京都の3000mコースを11年ぶりに逃げ切った馬が現れたのでした。逃げ切り不可能と思われていた京都3000mコースに、実はひとつだけ逃げ切りの方法が見つかったのです。それが伏線となり、1998年の菊花賞における、横山典弘騎手とセイウンスカイの逃げ切りにつながります。

菊花賞を逃げ切ったセイウンスカイのラップは以下のとおりです。

13.3-11.5-11.7-11.7-11.4-12.1-13.1-13.5-12.7-12.9-12.3-11.9-11.6-11.5-12
(59.6-64.3-59.3)M 3:03.2 

カッコ内の数字は3000mを3分割した1000mごとのタイムです。前半の1000mが59秒6、中盤が64秒3、後半が59秒3。前半が速く、中盤が遅く、後半が速い、急緩急のラップですね。

長距離になればなるほど、どんな馬でもスタミナ切れを意識するので、どうしても前半は出来る限りゆっくり走りたいと考えます。しかし、あまりにゆっくりと行き過ぎてしまうと、自身のスタミナは消費しない代わりに、後続にもスタミナが十分に残っているということになります。その状態でラスト1000mからヨーイドンになると、末脚のある(切れる)差し馬にとって有利な展開となってしまうのです。特に京都競馬場は直線が平坦ですので、より切れ味が生きてしまい、逃げ馬はスタミナが残っていても後ろから差し切られてしまうことになります。

横山典弘騎手とセイウンスカイはその逆を行ったのでした。京都は3コーナーから坂の下りになるため、それまでは「坂はゆっくり下れ」というのが定石でしたが、1周目の坂も、最後の坂も、ペースを落とすことなく、逆にそこからスパートを掛けたのです。そうすることで、後続の脚をなし崩し的に奪い、瞬発力勝負になることを防いだのです。逃げ馬があえて前半を速めに流すことはとても勇気の要ることです。それを成し遂げたことによって、圧倒的な人気の差し馬スペシャルウィークを退けたのでした。

競馬は不思議なものですね。今年はそのスペシャルウィーク産駒のリーチザクラウンが、菊花賞で逃げ切りを狙おうとしています。逃げ切りの方法が見つかったことは確かですが、それでもこのコースを逃げ切ることが困難であることには違いありません。

しかし、前走の神戸新聞杯のラップを見てみると、リーチザクラウンにとっての光明が見えます。

12.6-10.8-12.1-12.5-12.3-12.2-12.7-12.4-12.1-11.3-11.5-11.7
(60.3-24.9-59.0)

前半1000mが60秒3、後半1000mが59秒0です。2400m戦全体の流れからするとスローの瞬発力勝負になってしまい、逃げ馬であるリーチザクラウンにとっては苦しいレースになってしまいました。が、今回は道中の距離が600m延びますので、その分、上がりの1000mは60秒前後に落ちるはずです。つまり、前走と同じくらいのリズムでリーチザクラウンが逃げれば、自然と逃げ・先行馬にとって有利な急緩急のラップタイムが生じるということです。勝つためには、距離が延びるからといって、下手に折り合いをつけようとしないことですね。この馬の逃げ切りに賭けます。

そうなってくると、ある程度前に行けて、ジワジワと伸びることのできる持続力のある馬が狙い目ですね。ナカヤマフェスタの前走はなかなか強いレースでした。外々を捲くった走りは、菊花賞で生きてくると感じさせました。それに、あれだけ馬場の悪かったダービーを後方から行って、たとえ不良馬場に適性があったとしても、4着に追い込んだのですから能力の高い馬であることは間違いありません。内枠を引いてしまえば、この馬の悪い部分が出たり、勝負どころで前が詰まったりという可能性もありましたので、外枠を引けたことは好都合です。道中は折り合いに専念して、坂の下りで思い切って動いていければ、この馬にも勝機は訪れるのではないでしょうか。

イコピコは菊花賞でと狙っていた馬だけに、前走を勝ってしまったことは想定外でした。しかも、上がり3ハロンが33秒台という強烈な瞬発力でした。血統的にも良い脚が長く使える馬と考えていたので、勝ったことだけでなく、勝ち方も意外でした。もしかすると祖母のカッティングエッジの血が出てきているのかなと思うと、持続力が問われる流れになりそうな今回は少し割引が必要でしょう。もちろん、折り合いがつき、レースがしやすい馬だけに、好勝負は必至です。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (10)

逃げ馬は1頭しかいない

Jiromaru

先週の秋華賞は壮絶なレースでしたね。春はブエナビスタの強靭な末脚の前に屈してきたレッドディザイアが、力を振り絞ってようやく最後の1冠を手にしました。松永幹夫調教師にとっては、これが初のG1タイトルになりました。ミッキーと呼ばれた青年ジョッキーが、調教師になってG1レースを勝つとは、時代の移ろいを感じざるをえません。

ミッキーこと松永幹夫で思い出したのですが、ミホノブルボンの3冠を阻んだキョウエイボーガンという馬がいました。3冠を阻んだと言っても、実際に菊花賞を勝ったのはライスシャワーであり、キョウエイボーガンはミホノブルボンのハナを叩いて玉砕しただけです。それでも私がキョウエイボーガンのことを覚えているのですから、いかにこの馬がこの年の菊花賞の鍵を握っていたかということが分かると思います。

ミホノブルボンは圧倒的な強さで皐月賞とダービーを制し、夏の休養に入りました。対するキョウエイボーガンは、皐月賞にもダービーにも出走せず、ひたすら裏街道を歩みながら力をつけ、中日スポーツ賞4歳S(G3)と神戸新聞杯(G2)を連勝しました。2頭が初めて激突したのは、菊花賞の前哨戦にあたる京都新聞杯(G2)でした。

ミホノブルボンとキョウエイボーガンには「逃げ馬」という共通点がありました。

京都新聞杯を逃げたのはミホノブルボン。圧倒的な地脚の強さでハナに立つと、そのまま春の強さを再現するようにゴール板を走り抜けました。キョウエイボーガンは逃げることができず、2番手に抑える競馬をしたものの、本来の力を出し切ることなく、9着という思わぬ惨敗を喫してしまいました。逃げ馬が逃げられなかった時点で終わりという典型的なレースでした。

ミホノブルボンのあまりの強さに、競馬ファンの間では、シンボリルドルフ以来の無敗の3冠馬の誕生はほぼ確定ムードになっていました。春は血統的に距離延長が不安視されていたミホノブルボンが、菊花賞当日1.5倍の1番人気に推されたことからも、その熱狂ぶりがお分かりいただけると思います。ミホノブルボンが無敗の3冠に輝いた時、競馬場のターフビジョンに映し出すために、詩人の志摩直人さんはこんな詩を用意していたそうです。

その道に皐月花咲き
その道に青葉かぎろい
その道に菊花の飾り
ただひたすらにおのが道
速いことは美しい
そんな美学に酔いしれた
不敗の三冠、京の秋
ミホノブルボンの眩しさよ

ミホノブルボンの鍛え上げられた栗毛の馬体に、京都競馬場独特の夕陽が反射しながら、このような美しい詩が奏でられるはずだったのです。誰もがそんな結末を期待していました。

しかし、キョウエイボーガンと松永幹夫騎手が逃げたのでした。強い覚悟を持って、ミホノブルボンから先頭を逃げ馬の座を奪ったのでした。2周目の3コーナーまで先頭に立っていましたが、そこで失速し、そのまま後退して16着。ミホノブルボンはいつも通りの逃げが打てず、終始、折り合いを欠き、最後の直線半ばでライスシャワーに抵抗することなく交わされ、惜しくも3冠なりませんでした。たった1頭の逃げ馬が歴史を変えたのでした。その後、キョウエイボーガンは脚部不安でターフを去り、種牡馬にはなれずに廃用になる予定であったところをファンの女性に引き取られ、今は群馬県の乗馬クラブで余生を送っているそうです。

キョウエイボーガン陣営は、菊花賞で逃げるかどうか、ギリギリまで頭を悩ませていたそうです。キョウエイボーガンの気性から、逃げなければまず勝てないが、逃げてもバテてしまうだろう。もしレースを壊してまで逃げて、自分の敗北だけならまだしも、ミホノブルボンの3冠をも台無しにすることがあれば、批判は避けられない。自分の馬が勝つためだけのわずかな可能性に賭けるべきなのか、それとも競馬全体の空気を読むべきなのか。今考えてみても、どちらが正しい決断だったかは正直私にも分かりません。ただひとつ、「逃げ馬」はひとつのレースにたった1頭しかいないという悲しい宿命を、キョウエイボーガンは私たちに教えてくれたのでした。今年の菊花賞は、果たしてどの馬が逃げるのでしょうか。


今ではなかなか見られなくなった玉砕的な逃げをご覧ください。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (6)

◎ジェルミナル

Jiromaru

ブエナビスタの参戦によって、今年の秋華賞は非常に高いレベルでの争いになりそうです。春の実績馬が順調に夏を越してきた以上、上がり馬の出る幕はないのではないでしょうか。牝馬は完成するのが早いため、よほど理由があって遅れてきた大物が現れない限り、春のクラシックの時点での力関係はそう簡単には覆りません。特に今年は、桜花賞、オークスと1~3着馬が同じで、さらにオークスで4着したブロードストリートが前哨戦のローズSを制しているのですから、ほとんど勢力図は変わっていないと判断してもよいでしょう。

そうなってくると、やはりブエナビスタを外しての馬券は考えられないということになります。桜花賞にしてもオークスにしても、見た目以上の力差で勝利してきています。特にオークスは、内々の経済コースを完璧に乗ったレッドディザイアに対し、ブエナビスタは大外を回しただけに、ハナ差以上の力差を感じさせました。脚の速い馬と言い続けてきていますが、このメンバーに入っても脚の速さが違いすぎます。まともに走れば、まず負けようがありません。

とはいえ、ブエナビスタにも2つ心配材料があります。ひとつはオークスを勝った目に見えない疲れが残っているのではないかということ。最後はかなり速い脚(33秒6)を使っていたので、反動は少なからずあるのではないかと思っていました。前走の札幌記念は、悪い予感が的中したのか、スタートして前半部分から馬が苦しがって行きたがって仕方ありませんでした。ブエナビスタの場合、休み明けだからではなく、どこかに苦しいところがあったのでああゆう走りになったのでしょう。それでも、最後は差してきただけに、この馬の潜在能力の高さが分かりますね。

もうひとつは、内枠を引いたことです。秋華賞が行われる京都競馬場の2000m(内回り)コースは、3~4コーナーの勝負どころで馬群がゴチャつく傾向があります。フルゲートともなればなおさらです。1番人気の馬には乗りたくないとジョッキーが思うのも当然で、抜群の手応えで回ってきて、さあゴーサインを出そうかと思っていたところで、いきなり前をカットされたり、詰まったりということが十分に起こり得るからです。小回りを意識した各ジョッキーが早めに動こうとすれば、その傾向は顕著で、馬群の内にいる馬にとってはアクシデントに巻き込まれやすいということです。百戦錬磨の安藤勝己騎手だけに、そのあたりは細心の注意を払って乗るはずですが、避けられない不利もあるかと思います。

これはレッドディザイアにも言えることですね。この馬こそ、なにもかも上手く行きすぎていて、かえってこういう不利に巻き込まれてしまうのかもしれません。前走のローズSは最高の仕上がりにあったオークス時と比べて、明らかに太目残りの仕上げでした。それでいて、自身は外を回して2着ですから、最高の叩き台になったのだと思います。ひと叩きされて、馬体は締まってきていますし、寸詰まりで筋骨隆々の馬体からも、オークスの2400mよりも秋華賞の2000mの方が条件は合います。ここまでわずか5戦しか使われていませんので、他馬よりも上積みもあるはずです。こうなってくるとブエナビスタの逆転はこの馬となるのが自然ですが、上手く行きすぎているのですよねえ。私の杞憂に終われば良いのですが、こういう時に限って、前をスパーンとカットされて思わぬ敗戦というケースを何度も見てきました。ですから、もし印を打つとしたら▲ということなのでしょう。

本命はオークス3着馬の◎ジェルミナルに打ちます。ブエナビスタやレッドディザイアと比べると、力は一枚下であることは否めませんが、こと秋華賞に関しては、出し抜けを食らわせるチャンスがあると思います。前走のローズSは思わぬ大敗を喫してしまいましたが、トモを引っ掛けられるアクシデントもあったそうですし、最後は福永騎手も追っていないので仕方ありませんね。ひと叩きされて、体調は間違いなく上向いています。おそらく福永祐一騎手も私と同じことを考えていると思うのですが、ジェルミナルのスタートと他馬の出方を見て、そのまま前にポジショニングするか、もしくは下げて差しに徹するかを決めるはずです。スローに流れそうであれば、3~4コーナーで他馬を内側に押し込めながら早めに先頭に立って押し切る競馬を、流れが速くなりそうであれば、後方に控えて直線で一気に先頭に立つ競馬をイメージしているはずです。いずれもブエナビスタとレッドディザイアがミスをしてくれるのを待つ他力本願ですが、勝つにはそれしかありません。そういった意味では、14番枠はレースがしやすいはずです。

最近の福永祐一騎手を見ていると、円熟してきたなあと感じることがあります。デビューからもう13年も経つのですから、当たり前といえば当たり前なのでしょうか。私にとって、福永洋一の息子でとして福永祐一がデビューしたのが、まるで昨日のように思えるだけなのでしょうね。通算983勝という父親の記録に並んだ時、「父の背中を追いかけてきたが、近づくにつれいろいろと見えてきて、最初よりも遠ざかったようにも思えた」という言葉は、彼の本音だと思います。偉大すぎる父の存在だけではなく、デビューした時には既に武豊という大きな壁が立ちはだかり、さらに下の世代からの突き上げも激しい中で、一歩ずつ日本一を目指す福永祐一騎手にエールを送らないわけにはいきません。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

あの頃に戻れないからこそ

Jiromaru

今年の凱旋門賞は凄いレースでした。もちろん、昨年のザルカヴァの追い込みにも衝撃を受けましたが、シーザスターズには感銘を受けました。強いという言葉だけでは表現しえない、畏怖のようなもの。これまで私が凱旋門賞を見てきた中で、最も偉大な勝ち馬と言っても大げさではありません。あのレースにブエナビスタは参戦しようとしていたのですね。札幌記念を惜敗して、遠征を潔く取りやめた陣営の判断は正しかったと思います。本当に強い馬が本気で勝ちに行かなければ、凱旋門賞は勝てませんね。

もちろんブエナビスタが弱いということではありません。まだ本当に強い馬にまで成長していないだけで、前々から言ってきていますが、脚の速い馬であることは確かです。そもそも、オークスを勝ってわずか3ヵ月後のレースで本調子になっているはずがありません。3歳春のサラブレッドにとって、府中競馬場のチャンピオンディスタンスで激しい戦いを制することが、どれだけ苛酷なことか。ダービー後に不振を極めるダービー馬が多いのは、そういうことです。ディープスカイはついに完調に戻る前にターフを去ってしまいました。牝馬であればなおさらです。疲れが抜け切っていない状態で、古馬牡馬相手にあれだけの走りを見せるのですから、ブエナビスタは強い馬です。

記憶に残っている方も多いと思いますが、ブエナビスタの母ビワハイジもG1を制した強い馬でした。阪神3歳牝馬S(現在の阪神ジュべナイルF)では、あのエアグルーヴを負かしています。実はこのレースで、私はビワハイジの単勝を持っていました。なぜかというと、今ではそんな買い方は滅多にしないのですが、ビワハイジは私と同じ誕生日だったからです。あまり期待はしていなかったので、エアグルーヴの追撃を封じて逃げ切った時には、思わず言葉を失ってしまいました。そういえば、エアグルーヴに騎乗していたのはシーザスターズ鞍上のマイケル・キネーン騎手でしたね。キネーン騎手はエアグルーヴで逃げ切られた、あの線の細い牝馬のことを覚えているのでしょうか。

その後、3歳になったビワハイジは桜花賞で負けると、なぜかオークスをパスしてダービーへと駒を進めました。この世代の牝馬はレベルが高かったので、ダービーの方に勝ち目があると思ったのでしょうか。それとも、当時イケイケだった早田牧場の意向だったのでしょうか。真偽のほどは分かりませんが、いずれにせよ、ビワハイジはダービーを大敗してしまいます。それでも、私はこの挑戦があったからこそ、ブエナビスタという名牝が誕生したのだと思っています。ビワハイジがダービーに挑戦した時には、批判こそあれ、当然のことながら後にブエナビスタが生まれるとは思いもよりませんでした。後から振り返ってみると、ひとつひとつの点は未来へと繋がっているのです。

また、この世代はカーリアン産駒が大活躍しました。ダービーを勝ったフサイチコンコルドもそうですし、イブキパーシブ、ダイワカーリアン、クロカミなど、欧州の中長距離血統であるカーリアンを父に持つ馬たちが、日本の軽くて速い馬場に対応したのです。その勢いはカーリアンの死によって失われてしまいますが、またここに来て母の父として表舞台に立とうとしています。オークスでブエナビスタを苦しめたレッドディザイアの母父がカーリアンであることも、決して偶然ではありません。父こそ違え、スペシャルウィークとマンハッタンカフェという同じサンデーサイレンス系であり、母父カーリアンの繁殖牝馬とのニックスの良さは抜群です。

あの可愛らしかったビワハイジから、強靭な破壊力を持つブエナビスタが生まれたことが、未だに私は信じられません。私たちが思っていた以上のポテンシャルを、ビワハイジは秘めていたのですね。そう考えると、阪神阪神3歳牝馬Sの逃げ切りや、ダービーへの参戦や、引退レースとなった京都牝馬特別の記憶が蘇ってきて、ますます愛おしくなります。もう私たちがあの頃に戻れないように、あの頃のビワハイジをもう一度応援することは出来ません。その分、娘のブエナビスタの走りを見守りたいと思います。そんな応援の仕方が出来るのも、競馬ならではですね。


私の誕生日馬券が当たった思い出のレースです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (6)

◎ビービーガルダン

Jiromaru

スリープレスナイトが引退したことで、一変して混戦ムードが漂う中、アルティマトゥーレが1番人気に推されています。持ち前のスピードで押し切った前走のセントウルSは圧巻でした。兄キャプテントゥーレが朝日チャレンジCを勝利した翌日だっただけに、そういった目に見えない後押しもあったような気がしますが、この馬自身、力をつけていますね。牝馬とは思えない立派な馬体とは裏腹に、体質の弱かった馬だけに、大事に使われてきたことが良かったのでしょう。母父トニービンや伸びのある好馬体を見ても、十分なスタミナにも裏付けられています。「自信がある」と松岡騎手が語るのも頷けますね。

敢えて不安点を挙げるとすれば、前走の最後の直線で舌がハミを越していたことでしょうか。セントウルSのゴール前写真をご覧になった方はお気づきでしょうが、舌がハミを越えて外に出てしまっています。最後の直線で追われて苦しかったのでしょうね。この馬の癖かもしれませんが、それでも決して良い材料とはいえません。なぜかというと、舌がハミを越してしまうと、ジョッキーからの指示が伝わりにくくなり、また追っても伸びなかったりするからです。

ジョッキーは主にハミと手綱を通して馬の余力や精神状態を汲み取ります。逆に競走馬もハミを通してジョッキーの意思を感じます。だからこそ、舌がハミを越してしまっている馬には、ジョッキーの意思が伝わりにくいのです。動けと指示した時には即座に動けず、動いてはいけないという時に動いてしまう。折り合いがそれほど重視されない短距離戦だけに、致命的ではありませんが、コントロールしにくい状況が生まれることもあり得ます。

それから、何といっても、舌がハミを越してしまっている馬は追ってから伸びない、ということがあります。競走馬が速く走ろうとすると、ハミをぐっと噛んで、重心を下げて、一完歩を拡げていきます。ハミをしっかりと噛めない馬は、手応えの割に伸びないことが多いのです。スプリンターズSは厳しい流れになるため、前走のように行ったっきりで勝てるほど甘くありません。後ろから伸びてくる馬が必ずいるはずですね。そうなった際に、思ったほど伸びず、誰か他の馬に差し切られてしまうということも起こりうるのではないでしょうか。

本命は◎ビービーガルダンに打ちます。前走の勝ちっぷりからも、まさに充実一途です。チーフベアハート産駒らしく、ジワジワと力をつけてきた感がありますね。スッと先行できて、追い出されてからゴールまでしっかりと伸び切ることが出来るようになりました。キーンランドCを使って、その後、ここ1本に絞って狙ってきたローテーションにも好感が持てます。速い持ち時計がないことについては、それほど心配は要りません。重い馬場から軽い馬場への対応は、その逆に比べてスムーズですから。そもそも、まだ完成されていなかった昨年でも、このレースは3着に粘った馬です。安藤勝己騎手は内のアルティマトゥーレを前に見る形で進め、ペースに応じて道中の位置取りを変えてくるはずです。あとは仕掛けのタイミングだけですね。直線では後続を突き放すパワーを見せ付けて欲しいものです。

外国馬シーニックブラストは、グローバルスプリントチェレンジでG1レースを2つ、しかも2つの国で勝っているように能力の高さは明らかですが、未知の部分が多すぎます。かつてスプリンターズSを勝った外国馬(サイレントウィットネス、テイクオーバーターゲット)は、本番前に日本で走った経験があったので安心して見ていられました。ところが、シーニックブラストに関しては、特に高速馬場や小回りコースに対する適性など、走ってみなければ分からないのが本音です。ついでに言うと、ジョッキーも日本の競馬は初めてですよね。前走後、英国で鍛え直されての参戦だけに、あっさりもあると思いますが、それでもこの馬に賭けるのは怖いですね。

アーバニティも面白い存在です。高松宮記念は体調が下降線を辿っていたところに加え、道中もゴチャついて惨敗してしまいましたが、あれがこの馬の力ではありません。今回は外枠を引いたので、この馬のリズムでレースが出来るはずです。オーシャンSを勝ったように、中山1200mがドンピシャですね。溜めていけば直線で弾ける末脚を持っています。さすがに高松宮記念以来というローテーションはマイナス材料ですが、馬体を見る限り仕上がりは良さそうですので、一発を期待したいところです。この馬も大事に使われてきましたし、今年絶好調のマンハッタンカフェ産駒であり、夏を越しての成長力に期待します。横山典弘騎手の手綱捌きにも注目です。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

スプリンターは大きくなければ

Jiromaru

いよいよ待ちに待った秋のG1シリーズがやってきました。第1弾はスプリンターズSです。昨年は私にとって最強のスプリンターであるサクラバクシンオーの思い出を書きました。今でもその思いは変わりません。おそらくこの先ずっと変わらないでしょう。ただし、牝馬のスプリンターということであれば、スリープレスナイトは最強の1頭ではなかったかと思います。過去形で書かなければならないことが寂しいのですが、本当にそう思います。確かにフラワーパークやビリーヴも強かったのですが、スリープレスナイトはその2頭を凌ぐパワーを秘めていました。

私にとっては、北九州記念での走りが最も印象に残っています。あの時期の小倉の傷んだ馬場をものともせず、押し切ったパワーは牡馬顔負けでした。海外に行って、オーストラリアや香港のマッチョなスプリンターたちとまともに戦えるとすれば、スリープレスナイトを置いて他にはいなかったのではないかなぁ。走る馬の宿命とはいえ、屈腱炎とは…。ようやく体調が戻ってきたところだっただけに、陣営の無念は余りあることでしょう。ディープスカイもそうですね。今年の秋の古馬中長距離戦線の3連勝(天皇賞秋→ジャパンカップ→有馬記念)もあると思っていただけに、非常に残念です。実力馬のリタイアが相次ぎ、今年の秋のG1シリーズは混戦模様ですね。

さて、千秋楽の朝青龍と白鵬の火の出るような勝負をみていたら、ヒシアケボノのことを思い出してしまいました。そう、ヒシアケボノの名前の由来はあの横綱の曙です。馬主である阿部雅一郎氏がアメリカのセールで、骨格の異常にしっかりしていた当歳馬を競り落とした瞬間に思いついた名だそうです。その後も順調に成長を遂げたヒシアケボノは、新馬戦のパドックになんと552kgという馬体重で登場しました。名は体を表すという格言をまさに体現した馬でしたね。

ヒシアケボノという名の馬を本当に知ることになったのは、未勝利から3連勝して臨んだ京王杯オータムハンデで3着と粘った頃でした。シャドーロールと巨体を揺らしながら走るその姿に、大物の予感がしました。そんな私の期待に応えるように、続くスワンSを+11kgの馬体で快勝しましたが、この勢いでと思わせたマイルCSでは早めに先頭に立ったものの、ゴールまで粘り切れずに3着に惜敗。大きすぎる身体を持て余しているようで、なんだかもどかしい走りでした。やはりG1レベルのレースでは、馬体が重すぎることはネックになるのかと思えました。

そして、私が初めてヒシアケボノの巨体を目の当たりにしたのは、その年のスプリンターズSでした。実を言うと、私はそのレースではビコーペガサスという小柄なスプリンターを応援していたのですが、パドックで悠然と歩く1番人気のヒシアケボノを見て、底知れぬ恐怖を感じました。ビコーペガサスの馬体は430kg台、ヒシアケボノは550kg台でしたから、なんと120kgの違いがあったのです。大人2人分ですよね。調べたわけではありませんが、1番人気と2番人気の間に、これほどまで馬体重差があったG1レースはないのではないでしょうか。

中山競馬場の小回りに苦しむかと思われたヒシアケボノは、豪快に外々をブン回して、内から抵抗しようとするビコーペガサスを振り切って勝利しました。まさに横綱相撲でしたね。中山競馬場のスタンドからずっとビコーペガサスの走りを見ていたのですが、直線半ばでヒシアケボノに並んだ途端、その姿が消えてしまったことが印象に残っています。550kgの馬体と併せると、430kgの馬体は隠れてしまうのですね。まるで押し潰されて消えてしまったような感覚でした。自分の応援していた小兵力士が大きな横綱に力負けした敗北感を背負い、師走のオケラ街道を歩いて帰りました。スプリンターは大きくなければならない…、と念じながら。

その思いは、サイレントウィットネスやテイクオーバーターゲットという海外から来た最強のスプリンターたちによって、まざまざと証明されることになります。サイレントウィットネスが576kg、テイクオーバーターゲットが518kgの馬体重でスプリンターズSを制しました。特にサイレントウィットネスなんて、日本馬と比べると、同じサラブレッドとは思えませんでしたからね。そういえば、スリープレスナイトも牝馬としてはかなり大きめの部類に入る馬でした。世界の競馬はボーダレスになり、スプリンターには速さだけではなく、大きな身体、つまりパワーが求められる時代に突入したのです。ヒシアケボノは時代の少し先を行っていた、生粋のスプリンターだったと改めて思います。


現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

◎ディープスカイ

Jiromaru

ウオッカの回避は残念でしたが、どこかに安心した自分がいます。昨年の有馬記念は出なければならないと強く主張して、今でもそう思っているのですが、今回の宝塚記念については無理をする必要なかった素直に思います。もし出走していたとしても、おそらく良いことはなかったことでしょう。ファンの期待に応えることも名馬の大切な役割ではありますが、あくまでも自身が無事であってこそです。

宝塚記念といえば、どうしてもライスシャワーのことが思い起こされてしまいます。あの年は阪神競馬場が改修されていたため、宝塚記念は京都で行われました。皮肉なことですね。その年の宝塚記念だけは、京都のパンパンの良馬場でレースが行われたのです。7歳馬にして天皇賞春で復活したライスシャワーは、余勢を駆って出走してきたものの、肉体的にはピークを過ぎていたのではないでしょうか。春シーズンの最後のG1レベルの激しく厳しいスピードレースについていけず、淀のターフに散ってしまいました。

雑誌「優駿」に「馬を愛する人たちの宝物」というコーナーがあります。ライスシャワーを管理した飯田好次元調教師は、彼が最後に履いていた蹄鉄だけはどうしても捨てられず、今でも大切に持っているそうです。蹄鉄の溝には、あの日の京都競馬場の土が付いたまま。「ライスシャワーは、私に一番の喜びを与えてくれた馬、というか人です。この小さい蹄鉄を見ると、小柄な身体でよく頑張ったなと思います」と語りました。ステイヤーとはいかなる者かをライスシャワーから教えてもらった私は、このエピソードは涙なしに読めませんでした。

アグネスタキオンの急死にも驚かされましたね。ノーザンファームの吉田勝己氏の強烈なバックアップが種牡馬としての成功の最大要因だと思いますが、もちろんアグネスタキオン自身の能力も優れていたということでしょう。ダイワスカーレットとディープスカイという2頭の牝馬と牡馬チャンピオンを出しました。この2頭に共通するのは、瞬発力だけではなく、スピードの持続力もあるという点ですね。あらゆる条件のレースに対応できる柔軟さを備えているということです。つまり、馬場が軽くても重くとも、スローペースだろうがハイペースだろうが、常に最高のパフォーマンスが出来るのです。

弔い戦という意味合いは全くありませんが、本命は◎ディープスカイに打ちます。前走はウオッカに完敗でした。相手が強すぎたということもありますが、この馬自身が少し太目残りだったということが主な敗因です。単なる太目残りかというと少しニュアンスは違い、体調が上向いてきている中での大幅な馬体増(+14kg)ということです。なぜ大幅な馬体増になったかというと、中2週の宝塚記念へ向けて僅かに緩めに仕上げられたということに加え、休み明けの産経大阪杯におけるマイナス体重(-8kg)が理由です。

何度も書いてきましたが、昨年秋のディープスカイのパフォーマンスは素晴らしいのひと言に尽きます。ダービーの疲れが抜け切らない中、ウオッカやダイワスカーレットなどの古馬を相手にあれだけの走りをすることは容易ではありません。体調が戻り、古馬になって馬がもっとシッカリしてきた暁には、もはや日本には相手はいないだろうと思わされました。

しかし、ジャパンカップを2着した後、休養をはさみ(放牧には出されなかったのですが)、休み明けの産経大阪杯を楽しみにしていたのですが、あっさりとドリームジャーニーに差し切られてしまいました。私が気になったのは、負けたことではなく、マイナス体重でした。マイナスと言っても天皇賞秋と同じ馬体重なのですが、今から振り返ると、あの時点ではまだ昨年の疲れが完全に抜け切っていなかったのでしょう。そして、ひと叩きされた効果もあり、劇的に体調が上向きになってきていた途中が安田記念だったということです。調教の負荷よりも、ディープスカイの回復力の方が上回ってしまったということです。

ジャパンカップ 518kg 
(休み明け)
産経大阪杯   510kg 休み明けにもかかわらず馬体減
安田記念    524kg 休み明け前の馬体重に戻った!

馬体重の読み方については集中連載「馬体重は語る」に書いたので、ここで詳しくは説明しませんが、まさに今回は復調しているレースになります。馬体重の基本原則「当日の馬体重の増減が馬の<体調>に影響を及ぼすのは、その日のレースにおいてではなく、レースの後になる」からです。ここをキッチリ勝って、海外に行くのか、それとも国内戦に専念するのかを決めて欲しいですね。個人的には、天皇賞秋→ジャパンカップ→有馬記念の3連勝が可能な馬だと思っています。

ドリームジャーニーはここに来て再び成長していますね。朝日杯FSを勝った時は単なる早熟馬かと思っていましたが、そうではありませんでした。馬体が大きく成長し、立ち写真を見る限り、生涯最高の出来にあるのではないでしょうか。この馬がここまで長きにわたって活躍できるのは、母父メジロマックイーンの成長力と考えることもできますが、それ以上に父ステイゴールドの勝ち気な気性を受け継いでいるからこそだと思います。ステイゴールドは小さい身体で7歳まで第一線で走り続けた馬ですが、その原動力は底知れぬ闘争心だったといいます。年齢を重ねても、常にテンション高くファイティングポーズを取り続けた馬でした。そんなスピリットをドリームジャーニーも受け継いでいるのでしょう。一瞬の脚を生かす馬だけに、ディープスカイに比べて乗り方は難しいのですが、ドリームジャーニーを手に入れている池添騎手を背にどこまで迫れるでしょうか。


関連リンク
「ガラスの競馬場」:執念の馬
「ガラスの競馬場」:ディープスカイの無類の末脚が

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

◎ディープスカイ

Jiromaru

今年の安田記念はダービー馬が2頭も揃い、見応えのあるレースになりそうです。伏兵馬も多士済々で、この春、最もレベルの高い争いが繰り広げられる予感がします。先週のダービーはドラマチックな結末に終わりましたが、今週はゴール板まで息つく暇のない、壮絶な叩き合いを期待したいものです。

まずは海外遠征帰りのヴィクトリアマイルを快勝したウオッカから。前走は思っていたよりも仕上がっていたようで、馬なりで先頭に立つと、武豊騎手が軽く追っただけで、2着馬になんと7馬身もの差を付けてしまいました。馬体を見る限りは仕上がっていたのですが、海外遠征による精神面での疲労を心配していましたが、全くの杞憂に終わりました。

ただ、牝馬同士のレースだったとはいえ、あまりにも走りすぎたような気がします。あのレースを観て、違和感を覚えた方は私だけではないでしょう。まるでウオッカ自身はヴィクトリアマイルが引退レースだと勘違いしていたような、スタートからゴールまで全く隙のない完勝劇でした。2度の海外遠征を経てさらに強くなったという見方も出来ないこともありませんが、私にはそうは思えません。陣営の思惑に反し、ヴィクトリアマイルで100%の出来に仕上がってしまったのです。最高潮に達したサラブレッドの体調は、あっという間に下降線を辿ります。

中間の調整を見る限り、乗り出しも早く、前走の体調をそのまま維持しているように映りますが、本当の疲れは目には見えないものです。追い切りは素晴らしい動きをしているではないかという反論もあると思いますが、一流馬はたとえ体調が悪くても、調教ぐらいの速さの追い切りではうんともすんとも言わないものです。追い切りで1番時計を出していても、実は体調が悪くて、実際のレースでは凡走してしまった一流馬など数え切れません。これは「馬券のヒント」にも書いたのですが、一流馬の動きに騙されてはいけないということです。

次世代にバトンを渡す時期が来たのではないか、と私は思います。1頭のサラブレッドに入れ込んでしまうことが少なくなってしまった最近の私にとっても、我が愛しのヒシアマゾンを重ねてしまうほど大好きなウオッカですから、出来るだけ美しい形でバトンを渡してあげて欲しいと願うのです。いずれ世代交代の波はやってきます。

バトンを受け取るのはディープスカイをおいて他にありません。以前、スペシャルウィークと重ねてしまうとコラムでも書きましたが、昨年秋の走り(天皇賞秋、ジャパンカップ)を見て、この馬の強さを確信しました。どちらのレースも敗れてしまったものの、あの時点では最高の走りだったと思います。ダービーの疲れを引きずり、完調ではなかった中での走りだけに、まさに負けて強しでした。昨年のジャパンカップ後、すぐに休養に入ったことも良かったと思います。ゆっくりと休養をはさみ、じっくりと調整が施されています。疲れが取れて、この馬の力を最大の発揮できるようになれば、どれだけの末脚を見せてくれるのでしょうか。今年はディープスカイの年だと思っています。

距離不足が心配されているようですが、そもそもこの舞台のG1レースを勝っています。速い流れになれば、なおさらこの馬の切れ味が生きますね。外枠からローレルゲレイロが行きますし、このメンバーですからスローのヨーイドンにはならないはずです。ペースやコースの特性から、安田記念は瞬発力ではなく持続力が問われるレースです。ディープスカイは素晴らしい末脚を持っているので、瞬発力に長けている馬だと思われがちですが、マイル戦であればスタミナを持続力に転化できます。そう、渋った馬場で行われたNHKマイルでの走りのように。例年に比べ、今年は少し時計の掛かる決着になりそうで、ディープスカイにとってはますます好都合です。

スーパーホーネットにも十分にチャンスはあります。矢作調教師が「2強ではなく3強」だと豪語するのも分かる気がします。昨年の安田記念、マイルCSとともに1番人気に推されたものの敗れていますが、どちらも前哨戦で力を使い果たしていたことが敗因です。昨年の安田記念ではステップレースの京王杯SC、マイルCSではウオッカを下した毎日王冠が最高の出来に仕上がっていました。スーパーホーネットにG1レースを勝つ力がないということではなく、前哨戦でピークに仕上がって強いレースをしてしまって、本番におつりが残っていないというパターンを繰り返してきたということです。

今年は違うようです。昨年の反省を生かして、マイラーズCを快勝したのち、京王杯SCをスキップして安田記念1本に備えてきました。またマイラーズCで仕上げ切ることなく、80%ぐらいの出来でした。前哨戦をひと叩きされ、ようやく最高の出来でG1レースに臨むことが出来ます。これで負ければ諦めもつくでしょう。2歳時に朝日杯フューチュリティSで2着した時には、まさかここまでの馬になるとは夢にも思いませんでしたが、鍛えられて少しずつ成長したのですね。藤岡佑介騎手にとっても、G1獲りのチャンスです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

◎マイネレーツェル

Jiromaru

ウオッカが圧倒的な人気ですね。実績や実力を考えれば当然も当然で、本当はこのあたりで負ける姿は見たくありません。馬体を見る限り、昨年のヴィクトリアマイル時に比べ、肉体的にはきっちり仕上がっていることは確かです。ただ、ウオッカは気持ちで走る傾向が強い馬ですので、もし走ること自体に嫌気が差してしまっているのであれば、昨年のようにまた他馬に足元をすくわれることもあり得るでしょう。

そもそも、ドバイに2度も遠征して、疲れが出ない馬などいないのではないでしょうか。たとえ牡馬でも、ドバイに一度遠征しただけでボロボロになって帰ってくるのですから。たとえばヴァーミリアンがドバイ遠征から帰って、秋のJBCクラシックまで、立て直すのになんと7ヶ月もかかってしまった話は有名です。世界中の最強馬たちに混じって闘うことで、肉体的にはもちろん、精神的にもボロボロになってしまうのです。さすがのヴァーミリアンも、2度目のドバイ遠征後には、気持ちが切れてしまったような凡走を繰り返しました。競走馬は気持ちで走っている部分もあるのです。

本命は4歳馬◎マイネレーツェルに打ちたいと思います。4ヶ月の休み明けになりますが、小柄な牝馬ですし、ローズSをぶっつけで勝っていますので心配ないでしょう。かえってリフレッシュされているかもしれません。前走は15着と大敗しましたが、牡馬に混じって初めてのレースでしたし、そもそも適距離ではありませんでした。フィリーズレビューを勝っているように、どちらかというとマイル以下の距離で持ち味を生かせる馬です。母父サクラユタカオーは、もはや誰の目にも留まらない名前になってしまいましたが、東京コースでこそ力を発揮する血統です。川田将雅騎手は思い切って馬を出してくるでしょうし、折り合いさえ付けば、ヴィクトリアマイルはこの馬の瞬発力を生かせる絶好の舞台になりそうですね。

同じく4歳馬のリトルアマポーラは、マイラーの体型に変化しつつあります。3歳時は線の細く、頼りない印象を受けた馬ですが、ここに来て馬体が成長して力強くなってきました。おっとりした馬ですので、気性的には距離があっても良いと思うのですが、これから古馬の牡馬と戦っていくためには、マイル前後がベストなのではないでしょうか。と前走も考えていただけに、マイラーズCの着順にはがっかりしました。内枠が走りにくかったとはいえ、もう少し頑張って欲しかったですね。休養を挟んだ割には、馬体も増えていませんでしたので、大きな上積みもないでしょう。

カワカミプリンセスはあのエリザベス女王杯以来、勝ち星から遠ざかっています。牡馬とも差のない競馬を繰り返しているように、このメンバーは力上位であることは明らかです。この馬もあとは精神面だけなのかもしれません。負け知らずで突っ走っていた3歳時の、あの闘争心というか迫力が今は感じられません。ただ、前走の産経大阪杯で変わってくる可能性はあります。かつてダンスインザムードという馬が、精神的に燃え尽きてしまったのですが、府中牝馬Sで最後方から終いだけを生かす競馬をしたことをキッカケにして、もう一度走る気が蘇ってきたというケースもあります。復活するならここかもしれません。

ザレマはあと一歩の競馬が続きますね。安藤勝己騎手が毎回調教にも跨っていることにより、この馬の仕上げ方が少しずつ分かってきているのではないでしょうか。直前もビシッと追い切って、気持ちを乗せていく方が走るタイプなのでしょう。ジョリーダンスの強襲に屈したとはいえ、前走は引っ張り切れないほどの手応えで道中を走っていて、追われてからもしっかりと伸びていました。ラストの瞬発力勝負になってしまうと分が悪いのですが、力を付けてきているだけに、流れが向けば勝ち負けに持ち込めるのではないでしょうか。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

不完全ではなく、完全燃焼

Jiromaru

いよいよウオッカが登場しますね。あの伝説の天皇賞秋以来、すでにジャパンカップとドバイで2戦を走っているのですから、本当にタフな馬です。使いながら調子を維持していく角居流とはいえ、古馬の牡馬と混じって、消耗の激しいレースをこれだけコンスタントに戦えるのは、ウオッカの肉体的な強さと精神力が並外れていることを表しています。

とはいっても、やはり前走の凡走は残念というか、気掛かりですね。現地で一度叩かれ、万全の体調で臨んだだけに、全く見せ場のなかった走りっぷりは不可解でした。もしかしたら故障してしまったのではと思わせられましたから。そうでなかったとすれば、あれほどの能力の差があるとは思えないので、ウオッカ自身が走ることに対して嫌気が差してしまったのかもと勘ぐってしまいます。牝馬の場合、競走馬から母になる日が突然訪れるものです。

ところで、東京競馬場で行われている「プレミアムギャラリー~東京競馬場で輝いた馬たち~」が、今週でフィナーレを迎えます。まだご覧になっていない方は、ぜひ東京競馬場まで足をお運びください。もちろん、お越しになれない方もいらっしゃいますので、今週はウオッカについて書いたエッセイをここに紹介したいと思います。今回はPhotostudの素晴らしい作品と一緒にご覧ください。

Vodkaimg

Premiumgallery03

たくさんの方々からアンケートを頂戴している中で、このウオッカの作品はナンバー1かナンバー2の人気です。私の友人は「ウオッカって男勝りというイメージがあったけど、こんなに優しい目をしているなんて思わなかった」と言っていました。実物のサイズで観るともっと良さが伝わるのですけどね…残念です。ちなみに、こちらの作品はターフィーショップのPhotostudコレクションとして販売されていますので、お近くのウインズや競馬場内でもご覧いただけますよ。

■ターフィー通販クラブ「Photostudコレクション」はこちら
Turfytuuhanclub


今年のヴィクトリアマイル、ウオッカは果たして完全燃焼できるのでしょうか。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (6)

◎サンカルロ

Jiromaru

前回の手紙でキングカメハメハについて書きました。この馬によって、NHKマイルC→ダービーという変則2冠路線が確立されたのです。昨年はディープスカイが同じローテーションを踏襲して成功を収めましたが、それでもこの変則2冠が極めて難しいことに変わりはありません。良く言われることなのですが、東京のマイル戦を勝てるだけのスタミナがあれば、確かに2400mもこなせます。それぐらい、東京のマイル戦は中距離並みのスタミナが問われる舞台ということです。ただ、NHKマイルCとダービーの間には、スタミナの有無以上の大きな隔たりがあるのです。

「スピードの持続力」と「瞬発力」という隔たりです。NHKマイルCでは前者、ダービーでは後者が問われます。NHKマイルCはスピード馬が揃い、最初から最後まで息を抜く間もないペースで流れるため、スピードをいかに長く持続させるかが勝敗を分けます。ダービーは道中で脚を溜めて最後の直線でヨーイドンの勝負になるため、一瞬の切れ味がなければ勝負になりません。この2つの異なる要素を備えていないと、NHKマイルCとダービーを両方勝つことは難しいのです。今年も、NHKマイルCからダービーへ向かうチャレンジャーが現れようとしています。

まずはかつて変則2冠を成し遂げた先輩たちと同じく、毎日杯からNHKマイルCという路線を辿ってきたアイアンルックです。毎日杯の優勝馬がNHKマイルCに出走してきた場合、全ての馬が勝っているように、非常に相性の良いレースです。互いのレースで求められる資質が似ているのでしょう。その毎日杯を勝ったのですから、NHKマイルCの最有力候補に名乗りを挙げて当然ですね。大型馬で跳びの大きい馬だけに、府中コースも合っているはずです。また、脚元に少し弱いところがありましたが、最終追い切りも馬場の悪い中でもしっかりと追われていたように、もう心配はありません。小牧太騎手も腹を括って、この馬の末脚を引き出して欲しいものです。小牧太騎手にとって、橋口調教師の管理馬でG1レースを勝てる最大のチャンスかもしれません。

唯一不安な点といえば、前走が上がりだけの勝負だったことです。33秒台の末脚は強烈でしたが、ヨーイドンの競馬がハマった感もあります。過去に毎日杯を制してそのままNHKマイルを勝った馬たち(タイキフォーチュン、クロフネ、キングカメハメハ、ディープスカイ)と比べると、毎日杯のレースレベル自体が高くないということです。勝ち方もそれほど圧倒的ではありませんでした。やっぱり、特にクロフネやキングカメハメハ、ディープスカイはもう強烈な勝ち方でしたから。アイアンルックは1200mの新馬戦を圧勝しているように、腰高の馬体を見ても、どちらかというとスピードの勝った馬だと思います。つまり、スピードを持続させるスタミナの裏づけが物足りないということです。

続いて、NHKマイルCからダービーを目指すことを公言しているブレイクランアウトです。前走の共同通信杯は、朝日杯FSの悔しさを晴らすかのような、スカッとする勝ち方でした。小回りの中山競馬場よりも、広々とした府中コースの方が力を発揮しやすいですね。馬体を見ても、マイル戦よりも距離が伸びて良さそうです。また、スマートストライク×フレンチデピュティという典型的なアメリカ血統で、前走では強烈な瞬発力を使ったように見えますが、スピードの持続力を問われるようなレースでこそ、さらに本領を発揮するのではないでしょうか。ただ、休み明けと外枠が気になって評価を下げました。外枠という点で言えば、キングカメハメハ産駒のフィフスぺトルも同じくです。

桜花賞から直行してきたワンカラットは牝馬ですが、この時期のマイル戦であれば、牝馬と牡馬との差はほとんどありません。前走の桜花賞は、外枠からスムーズに進められた馬にとって有利なレースでした。そんな中、馬群の内を走らされながらも最後は4着を死守したところに、この馬の奥の深さが垣間見えました。一介のスピード馬ではないのかもしれません。内枠から上手く流れに乗れて、ペースが少し落ち着くようなレースになれば、この馬にもチャンスは十分にあるでしょう。藤岡佑介騎手の初G1勝利も期待できます。

最後に本命は◎サンカルロに打ちます。前走は非常にスムーズに走ることが出来たこともあり、着差以上の楽勝でした。ゴール前では耳を立てるほど、余裕がありましたね。1800mでスローに流れたスプリングSでは乗りにくそうでしたが、速い流れになったマイルの前走はキッチリ折り合っていました。推進意欲の高い馬ですが、吉田豊騎手抑える競馬を丁寧に教えてきた成果が出ています。この馬自身はマイル戦がベストですね。今回も好枠を引きましたので、内でうまく脚をタメることができれば、直線で真っ先に抜け出して来られるのではないでしょうか。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

1.32.5

Jiromaru

先週から東京競馬場で始まりました「プレミアムギャラリー~東京競馬場で輝いた馬たち~」に足をお運びいただいた皆さま、ありがとうございました。また、丁寧にアンケートに答えていただいたり、声を掛けていただいた皆さま、本当にありがとうございます。現場におりましたが、自分の書いた文章を目の前で読まれるというのは案外恥ずかしいものですね。次回はNHKマイルC当日に常駐の予定です。東京競馬場にぜひ遊びに来て下さい。

■「プレミアムギャラリー~東京競馬場で輝いた馬たち~」
詳細はこちら→ http://www.glassracetrack.com/blog/2009/04/post-7979.html

そうはいっても、物理的、地理的に東京競馬場にはお越しいただけない方もいらっしゃると思いますので、展示している12のエッセイの一編を紹介させていただきます。今週はNHKマイルCということで、キングカメハメハについて書いたものです。

Premiumgallery02_2

このエッセイを書くために、キングカメハメハの現役時代を振り返っているうちに、改めてこの馬の強さを認識しました。覚醒してからのレース振りは、スピード、パワー、スタミナなど、あらゆる面でサラブレッドの限界を突破していた気がします。特に、NHKマイルCと日本ダービーの変則2冠は、どちらもレコードによるものです。あれだけのレースをして、無傷でいられるわけがないですよね。もし無事であったならば、あのディープインパクトと歴史に残る勝負を見せてくれたことでしょう。


私の大好きなキングカメハメハの雄姿をご覧ください。


関連リンク
「ガラスの競馬場」:ディープインパクトVSキングカメハメハ

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

◎アサクサキングス

Jiromaru_2

今年は天皇賞春がプレミアムレースなのですね。通常の払い戻しに売り上げの5%が上乗せされるのですが、これは大きいですよね。一昨年、シンガポールに旅打ちに行った時、シンガポールの競馬は日本の競馬に比べて勝ち目があると感じました。これは後で調べて分かったことなのですが、シンガポールの競馬は控除率が圧倒的に小さいのです。シンガポールの控除率はわずか10%。日本の控除率(25%)との差がどれぐらい大きなものか、これは実際に馬券を打った者でないと分からないと思います。私たちが思っているよりも、この体感控除率の差は大きいのです。そういった意味では、今年の天皇賞春は積極的に買い!ですね。

本命は◎アサクサキングスに打ちます。前哨戦の阪神大賞典は執念を感じさせる勝ち方でした。自身の苦手とする道悪を克服して、完全に本格化しました。前走時の馬体を見た時に、これは凄い!と思わせられたように、とにかく馬体の充実が凄いです。前走が最高潮かと思っていましたが、今回の馬体を見ても、その調子を維持もしくはそれ以上の出来のようですね。昨年秋シーズンの不振は、輸送に気を遣って、調教をやり切れなかったことが原因です。今年に入ってからは、関西でのレース続きということもあって、調教でも徹底的に攻め抜かれていますね。古馬になってからの成長期のピークに、調教で鍛え抜けるようになったことが加わって、アサクサキングスの今の充実があります。

何よりもの証拠は、走るフォームが変わってきたことです。以前のアサクサキングスは頭が高く、追ってもあまり伸びないだろうなと思わせる走法でした。それが前走の阪神大賞典では、追われてからしっかりと首を使い、前へ前へと推進力をしっかりと伝えられていました。坂路やコースで鍛えられて、後肢に筋肉がついてきたからこそ、全身を使えるフォームへと変わってきました。今ならば、控えて差して瞬発力を生かす競馬も出来るのではないでしょうか。

スクリーンヒーローは、苦手な道悪に59kgの斤量を背負っていたからとはいえ、前走の阪神大賞典は執念を感じさせない内容でした。昨年のジャパンカップや有馬記念での走りを見て、この馬はステイヤーだという思いを強くして、今年の天皇賞春はこの馬!と決めていただけに、不甲斐ない走りでした。母系からは、あのライスシャワーが勝った天皇賞春で2着したステージチャンプが出ているように、この馬にはステイヤーの血が流れています。スクリーンヒーローのコロンとした馬体は、ステージチャンプのそれと似ているんですよね。折り合いの良さと瞬発力が問われる天皇賞春は絶好の舞台です。あとはどれだけ陣営が勝ちたいと思っているかどうかでしょう。アサクサキングスほどの唸るような執念を感じなかったので、今回は対抗に評価を落としました。

追い切りの動きが良く見えたのはジャガーメイルですね。遠くからモニターを見ていても伝わってきたほど、弾けるような走りでした。1週間前は安藤勝己騎手が跨り、少し緩く感じたとコメントしていましたが、何とか間に合いそうですね。もちろん休み明けは不利に違いありませんが、堀調教師が休み明けにもかかわらず送り出してくるのですから、十分勝負になるという自信があるのでしょう。そもそもスクリーンヒーローといい勝負をしていたぐらいですし、香港ヴァーズでも好走したぐらいですから、能力的には通用するはずです。有力馬が外枠を引きましたので、安藤勝己騎手は、内々で死んだふりをしてくるはずです。上記2頭のステイヤーに割って入るならこの馬です。

ドリームジャーニーも、しっかりと鍛えられるようになってから、再び力を付けてきています。2歳時に比べても強くなっていますね。前走の産経大阪杯は、ディープスカイが休み明けだったとはいえ、ダービー馬を差し切ってしまったのですから驚きです。古馬の中距離路線では、もうひとつ上のレベルまで行ける存在になってきました。ただ、今回はやはり距離が長いでしょう。脚が溜められないマイル戦よりはマシかもしれませんが、決して3200mはベストではありません。今の充実ぶりなら好走はするかもしれませんが、勝ち切れるかというと疑問です。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

執念の馬

Jiromaru

今でも天皇賞春は最高峰のレースだと信じています。たとえ時代遅れと言われようと、京都の3200mで行われる天皇賞春を勝つことの出来る馬こそが、その時代における真の名馬に相応しいと思うのです。スピードは当然として、それを持続させる無尽蔵なスタミナ、道中で騎手の指示に素直に従える賢さ、馬群の中で我慢できる精神的な強さなど、このレースを勝つためにはあらゆる要素が求められるからです。

その天皇賞春を2度も勝った馬がいます。メジロマックイーンとライスシャワーです。そして、この最高にして最強のステイヤー2頭が、死力を尽くして闘った伝説の天皇賞春があります。1993年の天皇賞春です。天皇賞春3連覇のかかるメジロマックイーンは、休み明けの産経大阪杯をレコードで勝利し、1.6倍の圧倒的な1番人気に支持されていました。そんなメジロマックイーンに、真っ向から立ちはだかったのがライスシャワーでした。

このレースに臨むライスシャワーの最終追い切りは、今でも鮮明に覚えています。レースでも手綱をとる的場均ジョッキーを背に乗せての調教でした。的場騎手はゴールを過ぎても1発、2発、3発とムチを入れ続けました。見ているこっちが心配してしまうほどのハードな調教でした。これは後から聞いた話ですが、的場均騎手にとっても一か八かの賭けだったそうです。ピークかそれとも疲労か。しかし、極限の状態に仕上げなければ、メジロマックイーンを負かすことは出来ないと思っていたからこその賭けでした。

的場均騎手の賭けは、見事、成功を収めました。スタートからピッタリとメジロマックイーンをマークしたライスシャワーは、直線に向くや、あっさりと抜け出して、先頭でゴールしました。あのメジロマックイーンでさえ、全く抵抗できないほどの強さを見せ付けての完勝でした。この時のライスシャワーには、まさに馬が唸っているという表現がピッタリでした。前の年にミホノブルボンの3冠を阻止したことも重なって、この頃から、「黒い刺客」や「マーク屋」という異名が定着しました。

1993年天皇賞春

最後のステイヤー同士の激突!

私にとってのステイヤーといえば、ライスシャワーをおいて他にいません。ライスシャワーには、ステイヤーとは如何なるものかということを教えてもらいました。「ステイヤーはいきなり休み明けから走らず、叩かれつつ体調が上向いて行き、ピークの調子が長続きする」、「マラソン選手に線の細い選手が多いように、ステイヤーも小柄な馬が多く、極限の状態に絞り込まれてこそ真価を発揮する」、「ステイヤーは決して調教で速い時計を出さない」、「ステイヤーは我慢強い」。ライスシャワーを語ると、それはすなわちステイヤーを語ることになるのです。

「もちろん、ステイヤーとしての血も素晴らしいんだけれど、それ以上にあの馬は執念を持っているんですよ。あの馬に対しては、スタッフみんなも執念を持って携わっている。それが馬に伝わっている。周りのスタッフの雰囲気をライスシャワーは感じてくれるだけの馬だった。そういう感性の強い馬だったってことです」

主戦の的場均騎手はライスシャワーをこう評しました。ミホノブルボンを倒した菊花賞、メジロマックイーンに土を付けた天皇賞春、それからちょうど2年後の奇跡の復活を見ても、ライスシャワーは執念の馬だったことが分かります。周りの人々の気持ちを感じ取り、その期待に応えたいという執念。「ステイヤーは執念を持っている」。私の競馬辞典におけるステイヤーの頁に、もうひとつ新たな定義を追加しておこうと思います。今年の天皇賞春、勝つことに対する執念を最も持っているのは、果たしてどの馬でしょうか。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

3強でも1強でもなく

Jiromaru

今年の皐月賞は好メンバーが揃い、レベルの高い争いが繰り広げられそうです。その中でも、ロジユニヴァースとリーチザクラウン、アンライバルドの3頭が、これまでの実績やレース振りからも頭ひとつずつ抜けていて、3強として注目されるのは当然です。

「3強に波乱なし」という競馬の格言があります。裏を返せば、2強の場合には波乱があるということです。2強の時は、ライバルと目された2頭のジョッキーがお互いを意識しすぎてレース全体が見えなくなってしまうため、思わぬ伏兵に脚をすくわれてしまうことが多いのです。お互いに動けずに前が残ってしまったり、逆にお互いに競ってバリバリ行ってしまい共倒れしたりするということです。逆に3強の場合は、1頭だけに意識が集中することがないので、相手を意識しすぎてということが少なくなるため波乱が起こらないということですね。

と、ここまでは一般論を書きましたが、私個人としては、3強でも1強でもなく、2強だと考えています。ロジユニヴァースとリーチザクラウンの2強です。現時点での完成度やスケールの大きさという点でいえば、この2頭が頭ひとつ抜けていると思います。アンライバルドの素質の高さは認めるのですが、まだ肉体的精神的にも幼さを残す現状ですし、血統的にもアテにならない面を秘めていると思います。ただ、すんなりロジユニヴァースとリーチザクラウンで決まるかというと、それはまた別の話です。

なぜなら、2強の1頭であるリーチザクラウンが大外枠を引いてしまったからです。もし皐月賞だけ勝つことを考えれば、逃げてしまえば良いと思います。逃げるのであれば、大外枠からの発走はかえってプラス材料になるでしょう。しかし、ダービーを見据えてのレースをするのであれば、馬の気に沿って気分良く行かせるだけでは意味がありません。きさらぎ賞→皐月賞というローテーションを見ても、リーチザクラウン陣営の大目標はダービーであることは明らかですから。

ということは、武豊騎手にはフルゲートの大外枠から発走して、折り合いをつけながら、先団もしくは中団で脚をタメる走りも覚えさせる必要があります。これが難しいのですよね。下手をすると、終始馬群の外を回されて終わってしまう可能性もあります。最高に上手く乗った例として、1993年に大外枠を引いた岡部幸雄ビワハヤヒデがいますが、それでも最後は差されて2着に敗れてしまいました。つまり、武豊リーチザクラウンが先を見据えていればこそ、2着すら外してしまう可能性があるということです。

絶好の枠を引き当てた◎ロジユニヴァースが本命です。この馬の強さは、何といっても2歳の時点で関西に遠征してラジオNIKKEI杯を勝ったことです。敵地に乗り込んで、ハイレベルなレースで勝利を収めたのですから、久しぶりに関東からダービーを狙える大物が登場したことを確信しました。力の要る馬場で圧倒的なパフォーマンスを見せたことも、開催最終週で馬場の重くなる皐月賞での好走を約束するはずです。前走の弥生賞で奇しくもにメンバーが手薄になり、ほとんど負担のない勝ち方が出来たこともプラス材料となるでしょう。

前走は行く馬がいなかったので自らペースを作りましたが、本来折り合いがきちんと付く馬ですので、今回はペースに応じての競馬となるはずです。コース形態を考えると、横山典弘騎手は積極的に行くはずで、あわやこの馬が逃げようかというシーンも見られるかもしれません。たとえペースが速くなり、激流に巻き込まれてしまったとしても、今のロジユニヴァースならばそこからでも抜け出して来られるはずです。乗りやすさという面でいえば、先週のブエナビスタよりも安心して見ていられそうですね。

穴ということで1頭だけ挙げておくと、2番枠を引いたリクエストソングということになるでしょうか。前走のスプリングSは、皐月賞を見据えて後藤騎手が馬を出して行ったことが逆効果となり、スローペースの中で馬が大きく引っ掛かってしまいました。まるで競馬になっておらず、ほとんど力を出していません。あれほど遅いペースになることはないでしょうから、もし今回ビシッと折り合いが決まるようでしたら、2頭の間に割って入るシーンもあるかもしれません。馬力型の馬だけに、この時期の中山の馬場も合うはずです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

◎ブエナビスタ

Jiromaru

ブエナビスタが圧倒的な人気ですね。馬券的な妙味はありませんが、この馬に逆らう理由も今回はなさそうです。アドマイヤジャパン、アドマイヤオーラという兄2頭はパワーと切れ味を武器としましたが、血統的には母系にドイツの重厚な血が流れていて、潜在的には十分なスタミナに裏付けられています。ブエナビスタはさらに父が天皇賞春を勝ったスペシャルウィークに代わっていますので、明らかに距離が伸びて良いはずです。スペシャルウィーク産駒は大きく出てしまうことで、脚元に負担が掛かり、能力を発揮できないことが多いのですが、母ビワハイジ自身が小さい馬であったということもあり、ブエナビスタは理想的な大きさに出たと思います。

阪神ジュべナイルFにしてもチューリップ賞にしても、ゴール前では安藤勝己騎手が手綱を引っ張っているように、着差以上の強さを感じさせました。速い脚が使える距離の長さが他馬とは違います。これほど脚の速い馬であれば、包まれる心配もほとんどないでしょうし、ペースや展開云々も関係ないですね。脚の速さが違うだけに、ジョッキーとしては早めにエンジンが掛かって先頭に立ってしまうことだけは気をつけなければなりません。武豊騎手がディープインパクトに乗っていた時と同じような感覚でしょう。次のオークスのことを考えると、2400mを走るようなリズムで桜花賞を勝たなければなりません。どのように勝つかが問われる一戦です。

新阪神コースに代わってから、桜花賞は展開が読みにくいレースになりました。コース形態を考えると、スローでラストの瞬発力勝負がデフォルトではあります。ただ、ダイワスカーレットが勝った一昨年は前半がスローに流れてラスト3ハロンの瞬発力勝負でしたが、昨年は一転して先行馬が総崩れというハイペースになりました。スタートから最初のコーナーまでの距離が444mと長いため、逃げ、先行馬に一度スイッチが入ってしまうと、3歳牝馬ということもあって、一気にペースが上がってしまうのです。ですので、展開を考えるとすれば、極端なスローの場合と、極端なハイペースの場合を想定しておいた方が良さそうです。

極端なスローの場合、内枠を引いて先行出来るサクラミモザが面白いのではないでしょうか。チューリップ賞ではブエナビスタを苦しめましたが、決してフロックではありません。前々走のダート戦では、かなり厳しいペースを楽に先行して押し切ったように、十分なスタミナを保持しており、前走ぐらい楽に行ければ残って当然でした。もう少し厳しい流れになっても、簡単にはバテないはずです。サクラが育んできた良質な母系に、サンデーサイレンスの血が入って蘇りましたね。良質な筋肉に豊富に覆われた馬体は典型的なマイラーですので、スローのヨーイドンの競馬になれば、この馬とブエナビスタのワンツーがもう一度見られるかもしれません。

極端なハイペースの場合、外からブエナビスタを見るような形で進められるレッドディザイアが有利になると思います。2戦2勝の戦績からも、素質馬が大事に使われてきた印象を受けますし、なんといってもレースセンスが素晴らしいですね。ゆったりと走られる気性の良さは、こういう大舞台では大きな武器になります。この馬は松永幹夫厩舎なのですね。ジョッキーというイメージが強いので、松永幹夫調教師というのはまだ違和感があります。ジョッキー時代には、キョウエイマーチとチアズグレイスで桜花賞を2勝しました。“牝馬のミキオ”と言われていたぐらいですから、調教師になっても牝馬を扱うのは上手いのでしょう。

もう1頭だけ挙げておくと、ペースが速くなって上がりが掛かった際には、ツーデイズノーチスにもチャンスが訪れるかもしれません。いかにもヘクタープロテクター産駒らしいガッチリとした馬体ですね。手脚の軽さが求められる瞬発力勝負になると分が悪そうですが、道中が厳しいレースになれば、この馬のパワーと渋太さが生きそうです。この馬にも母父のダンシングブレーヴが生きていますね。メイショウサムソンやスイープトウショウ、最近ではサンライズマックスと、母の父に入って種牡馬の良さをうまく引き出しています。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (14)

脚の速い馬

Jiromaru

サクラが満開ですね。いよいよ今年もクラシックシーズンがやってきました。競馬を始めてもう20年近くになりますが、いくつになってもこの時期はワクワクします(笑)。あの2頭はどちらが強いのか?応援しているあの馬はクラシックに間に合うのか?あのジョッキーは今年こそダービーを勝てるのか?などなど、それぞれの想いが空へ向かって飛び立ってゆく季節です。今年はどのようなドラマや激闘が繰り広げられるのでしょうか。

私がまだ中学生1年生だった頃、同じクラスに渡邊くんという友人がいました。簡単な渡辺ではなく、難しい方の渡邊という字を書きます。皆から‘わったん’というあだ名で呼ばれていました。同じ野球部でもあったので割と仲は良かったのですが、彼は自分からグループに入って一緒に遊ぶというタイプではありませんでした。ほとんどの生徒がまだ小学校の延長線上にいるような中で、彼だけはひとり落ち着き払って、ひと回りもふた回りも大人の雰囲気を漂わせていました。

野球部の部室で着替えをしていた際、隣の‘わったん’の方にふと目をやると、胸には黒々と毛をたずさえ、筋肉が驚くほどに隆起した大人の男の肉体がそこにはありました。身体の発達のあまりの違いに驚き、まるで父親に対するような畏怖を持って、私はしげしげと彼の肉体を眺めました。そんな私の様子に気づいていたのか、それとも気づいていなかったのか分かりませんが、‘わったん’は手早くユニフォームに着替え、私に一瞥をくれてからグランドへ向かいました。

‘わったん’の身体能力は、中学生の間では群を抜いていたと思います。彼のポジションはキャッチャーで、座ったままセカンドベースまで矢のような送球をしました。ただバッティングはというと、スイングスピードが異常に速く、当たれば飛ぶのですが、なぜかボールの下ばかりを打ってしまい、高いフライばかりを打ち上げていました。特に試合になると力んでしまい、空振りか、良くてポップフライばかりが目立ちました。

‘わったん’にまつわるエピソードはたくさんあるのですが、特大ホームラン事件は今でも忘れられません。その事件は他校との練習試合で起こりました。1点差で負けていた最終回の2アウト、ようやく同点のランナーが出て、‘わったん’に打順が回ってきました。とにかく同点に追いつこうと、監督は1塁ランナーに盗塁のサインを出しました。野球をご存知の方はお分かりでしょうが、バッターである‘わったん’はわざと空振りをしてランナーの盗塁を助けるはずでした。盗塁が成功すれば、ワンヒットで同点に追いつくことができます。私たちは固唾を飲んで見守りました。

ピッチャーが投げたその瞬間、パンッという乾いた音とともに、キャッチャーのミットに収まるはずであったボールは、見たこともないスピードで上空へと消えて行ったのでした。あまりにも一瞬の出来事で、誰もそのボールの行方を目で追うことは出来ませんでした。ネットを越えて近くの民家へでも飛び込んだのでしょうか。そのボールが学校のグランドの中にないことだけは明らかでした。特大サヨナラホームランでした。

空振りをすると思い込んでいた私たちチームメイトは、最初は何が起こったか理解できずポカンとしていました。相手チームはというと、その打球のあまりの速さと飛距離に、これまたポカンと口を開けたままでした。ゆったりとホームインした‘わったん’は、監督に向かってひと言、「すいませんでした」と小さく呟きました。監督も私たちも訳が分からずにいると、「空振りしようと思ったら当たってしまいました…」とだけ付け加えました。

ようやく事情を理解し始めた私たちは、ひとり、またひとりと笑い出しました。全員が腹を抱え、涙を流して笑い転げましたが、‘わったん’だけはいつもと同じ冷静な表情でした。もしかすると、空振りしようとしたのにホームランを打ってしまったことが悔しかったのかもしれません。それにしても、あの‘わったん’のバットの音と打球の速さは今でも鮮明に記憶に残っています。空振りしようと思って軽く振ったにもかかわらず、バットの芯に当たれば、まるでピンポン玉のようにボールが飛んでいくのですから、‘わったん’の身体能力がどれだけズバ抜けていたかが分かりますよね。

そんな‘わったん’と、1度だけ50m走を走ったことがあります。確か1年生の運動会だったと思うのですが、私と‘わったん’との一騎打ちでした。当時は私も足の速さには少しだけ自信を持っていましたので、いくら‘わったん’とはいえ、もしかしたら勝てるかもしれないと高を括っていました。スタートの合図とともに、私たちはほぼ同時のスタートを切りました。前半30mくらいまでは互角の争いをしていたのですが、途中から‘わったん’がいきなりスピードを上げました。もう一段ギアがあったことに驚かされたのですが、さらにそのスピードが驚異的で、あっと言う間に私は突き放されてしまいました。あの時ほど、他人に足の速さの違いを思い知らされたことはありません。

武豊騎手は、ディープインパクトを他馬と比べて、「脚が速かった」と語りました。武豊騎手がここで言う「脚が速い」とは、ただ単にスピードがあるということではありません。ディープインパクトが1完歩で進む距離(ストライド)は、他の馬より約50センチ長い7メートル54で、逆に滞空時間は0秒12と最も短いそうです。上下動が少なく、重心を低くし、ストライドを伸ばした理想的なフォームでした。同じように走った時に、他馬とは進む距離が全く違うということですよね。ディープインパクトを相手にした馬や騎手たちは、私が‘わったん’と走った時と同じように、脚の速さの違いを感じたことでしょう。

今年の牝馬クラシックの主役であるブエナビスタも「脚の速い馬」ですね。阪神ジュべナイルFや前走のチューリップ賞を見ても、同じ世代の牝馬の中では脚の速さが違います。こういう馬はエンジンが掛かってしまうと一瞬にして先頭に立ってしまうので、気をつけるべきは、道中は他の馬の走るペースに合わせてゆっくりと走らせることです。脚の速い馬だけに、ゆっくり走らせる方が難しいのです。ディープインパクトのようにゆっくりと行って、最後の3ハロンだけ走らせる乗り方が最も合っていると思います。まあこの辺りは安藤勝己騎手ですから心配はないでしょう。まずはブエナビスタで桜花賞を制し、今年こそ年間G1レース6勝の大記録を達成して欲しいと思います。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

◎アーバニティ

Jiromaru

WBC(ワールドベースボールクラシック)を日本が2連覇しましたね。私は小学生の頃からずっと野球をやっていたので、日本の野球が世界で勝つと、まるで自分のことのように嬉しいです。3年前の第1回大会の時もそうだったし、昨年オリンピックで負けた時は自分のことのように悔しかったです。別に私が選手として戦ったわけではなく、関係者として携わったわけでもないのですが、日本でずっと野球をやってきた自分が認められたような気持ちになるのです。

この感覚は、ディープインパクトが凱旋門賞に出走した時にも味わいました。レースの日が近づくにつれ、もしかするとディープインパクトなら勝てるのではという思いは日に日に強まり、いつの間にか日本の競馬が世界を制するのではないかという夢を見ていました。この時の私の想いは、野球の場合よりもっと複雑で、日本の競馬が世界で認められれば、競馬ファン以外の一般の人々にも日本の競馬の素晴らしさを知ってもらうことができ、さらに競馬ファンの私も世の中に認めてもらえるかもしれないという気持ちがあったような気がします。競馬なんて…と言われ続けてきた世代であればあるほど、この複雑な想いは分かっていただけるのではないでしょうか。

「わたしの勝手な思い込みかもしれませんけども、世界に日本馬のレベルが上がっていることを見せることが、生産者や競馬サークルの人やファンが望んでいることだと思うんです」と角居調教師はある雑誌で語っていましたが、まさにその通りだと私は思います。そうすることで、あらゆる形で競馬に携わっている人々が自分に対して誇りを持てるようになるのだと思います。

さて、日本では日曜日に高松宮記念が行われます。昨年の優勝馬であるファイングレインと2着馬キンシャサノキセキ、スプリンターズSの勝ち馬スリープレスナイトや前哨戦を圧勝したビービーガルダンなど、屈指のスプリンターが揃い、こちらも熾烈な争いが繰り広げられそうです。

そんな中でも、本命は◎アーバニティに打ちたいと思います。レガシーオブストレングスの仔なんですね、この馬。姉妹馬であるスティンガーやサイレントハピネスはもちろんのこと、競馬ファン歴の長い方であれば、レガシーオブゼルダという名前を聞いたことがあるかもしれません。私が競馬を始めてまだ日が浅かった頃の馬ですから、あれから随分と年月が流れました。それでこうしてG1レースに仔を送り込んでくるとは、何という繁殖牝馬なのでしょう。高齢になって出産した仔の中から、重賞レースで活躍する馬を出すのは本当に難しいのです。Quinaさんによると、もしアーバニティが勝つようであれば、産駒のGⅠ勝利の最高齢出産記録となるそうです。

それはさておき、この馬の強みは1200m以上の距離で走られるスタミナを有していることでしょう。さらに、マイル前後の距離を使われてきたことにより、走るリズムがスプリント仕様になり切っていないことも、こと高松宮記念などのスプリントG1においてはプラス材料です。序盤、他馬が力んでトップスピードで走ってしまうペースの中で、どれだけタメを利かせつつ自分のリズムで走られるかどうかが最後の勝敗を分けるからです。また馬体も素晴らしいですね。パーツパーツが伸びやかでバランスが整っていて、一点の曇りもない毛艶の良さです。前走は連闘での勝利だっただけに疲れが心配されましたが、追い切りの動きもスムーズで、ここにきて充実期を迎えたようです。馬場状態の見極めが難しいのですが、外枠がプラスになるようであれば、ゴール前での差し切り勝ちを期待してもよいのではないでしょうか。

現在5連勝中のスリープレスナイトが素質の面では最上位です。普通に走れば、桁違いの能力で圧勝してしまうでしょうが、今回に限ってはどうでしょうか。この馬が勝つためには、休み明けとポジションという2つの要素をクリアしなければなりません。スプリンターズSを勝った後に蕁麻疹が出たのは、それだけ疲労が蓄積されていたということです。見た目には圧勝続きでしたが、やはり勝ち続けるということは簡単なことではありません。一旦、完全に馬体を休めて(緩めて)からの再調整になりますので、フレッシュである反面、連勝時のようなピークの状態にないことは明らかです。

もうひとつ、ポジションの問題ですが、この馬は前向きな気性と生来のスピードにより、先行することになるはずです。それほど切れる脚がないことを考えると、早めに外目に出しておきたいとジョッキーは思うはずです。そうなってくると、直線で良い末脚を持っている馬に差されかねないということです。高松宮記念は直線の短い中京で行われるにもかかわらず、差し脚の生きるレースですので、先行して押し切れるかどうかは疑問ですね。もちろん、ここを押し切るようであれば、この馬の非凡さがより強調されることになるでしょう。ポジションに関して言えば、ビービーガルダンやローレルゲレイロにも同じことが当てはまり、ペースが速くなり、道中が厳しい流れになりやすいG1レースにおいては、よほどの力がない限り、押し切り勝ちは難しいのではないでしょうか。

ビリーヴの仔であるファリダットは、マイル以上のG1レースでは底力が足りないという典型的な馬です。スズカフェニックスのようなイメージですね。逆に言えば、スプリントのG1であればタイトルを獲れる可能性はあるはずです。ただ、馬体を見ると、まだ幼さを残す未完成のそれですので、本格化にはもう少し時間が掛かるかなと私は見ていますが、どうでしょうか。同じことはキンシャサノキセキにも言えて、マイル以上のG1レースでは底力が足りないので、この馬がもしG1を勝てる可能性があるとすれば、それはスプリントG1以外にはありません。とはいえ、臨戦過程を見ると、以前の勢いが感じられず、昨年あたりがピークだったかと邪推してしまいます。

昨年の覇者ファイングレインは、前走の阪急杯の凡走が意外でした。昨年のマイルCSで見せ場を作り、体調的に上向きになってから休養に入ったので、この春には大いに期待をしていました。それだけに、いくら59kgを背負っていたとしても、前走の惨敗には首をひねらざるを得ませんでした。ひと叩きして、大きく変わった気配もありませんので、一変を望むのは難しいかもしれませんね。

トウショウカレッジは、前走の阪急杯では脚を余してしまいました。香港に行った影響もあるのか、帰国後はなかなか良い動きをするようになりました。7歳で馬が変わるということは考えがたいのですが、体つきを見ても、余計な部分がそぎ落とされて、走られる状態になってきています。内枠を引いて、鞍上には内田博幸騎手を迎え、穴っぽい気配が漂いますね。ドバイに出走するウオッカと母系を同じくするのもまた不気味です。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

信じ続けること

Jiromaru

高松宮記念の過去の勝ち馬を見渡してみると、ビリーヴという馬だけが、私にはどうしても違った意味合いを持って浮かび上がってきます。スプリンターズSと高松宮記念を制した名牝にして名スプリンターというだけではなく、その名前に宿る魂(たましい)のようなものを感じてしまうのです。

私がビリーヴという名に取り憑かれてしまったのは、まさに彼女がスプリンターズSを勝った時でした。実はこの年のスプリンターズSは、中山競馬場が大規模な改修工事を行っていたため、新潟競馬場で行われました。当時、暇をもて余していた私は、競馬仲間を誘い、彼の車に乗せてもらって生まれて初めて新潟に行ったのです。温泉に入り、絶品のウナギを食べ、美味しそうに地酒を飲む友を眺め(私は酒が飲めないのです)、「セントウルSであれだけの勝ち方を見せられては、明日はビリーヴで仕方ないかな」と語りました。ビリーヴは1番人気になることが予想されたのですが、どちらかというと競馬にかこつけて新潟に行くのが目的でしたので、馬券で旅費を取り戻そうなんて魂胆は毛頭ありませんでした。

新潟競馬場初のG1レースということで、当日の混み様は想像を絶するものでした。下手をすると、東京競馬場で行われるG1レースよりも人が多かったように感じました。車で乗り付けてしまった私たちは、駐車場を探すのもひと苦労で、まるでパドックのように競馬場の周りをグルグルと1時間近く巡回した後、結局、民家がここぞとばかりに提供する庭先に1万円近い駐車料金を払って止める羽目になってしまい、愚痴を言い合いながら競馬場まで歩きました。このあたりから私たちの歯車は少しずつ狂い始めていたのかもしれません。

競馬場に到着した私たちは、まるで初めて競馬場に来た大学生のようにあちこちを探索し、他の競馬場とも大きな違いはないことを確認すると、ようやく馬券に集中し始めました。パドックを見て、返し馬をチェックして、競馬新聞に見入って、馬券を買い、レースを見る。午前中のレースからこられの作業を繰り返していると、明らかな傾向が見て取れたのでした。逃げ馬や先行馬など、前に行った馬がほとんど勝っているのです。秋のG1とはいえ、まだ野芝が絶好の状態を保っていることや、直線が平坦であることも含め、前が止まりにくい馬場だったのが理由でしょう。レースを追うごとに、私の意識は前へ前へと行くようになりました。メインレースであるスプリンターズSが始まる頃には、どの馬が逃げるのだろうと考えている私がいました。

最終的に、私はショウナンカンプの単勝を買いました。考えれば考えるほど(今となれば愚かな網羅思考なのですが)、前年のショウナンカンプの鮮やかな逃げ切り勝ちが思い起こされ、この馬が逃げたら今日の馬場では止まるはずはないとまで思い込んでしまったのです。もちろん、ビリーヴが思っていた以上に人気をしていて、妙味がなくなっていたということもありました。駐車料金を取り戻したいという打算も働いていたのでしょう。結果はご存知のとおり、武豊騎手に導かれたビリーヴは、ショウナンカンプ、アドマイヤコジーンという牡馬G1馬2頭を内からスルスルと差し切り、勝利を収めました。

帰りの車中で、私は観戦記を書きながら、「ビリーヴか…。ビリーヴを信じられなかったなぁ」と呟きました。そして、観戦記のタイトルは、シェイクスピアのハムレットをもじって、「To believe or not to believe」としました。信じるか信じないかそれが問題だと。私はビリーヴの強さを信じることが出来ず、前に行った馬が止まらないというトラックバイアスに囚われてしまっていたのでした。評論家の小林秀雄は自身の講演で、「信ずるということは諸君が諸君流に信じるということで、知るということは万人のごとく知るということ。人間にはこの2つの道がある」と語りましたが、私はビリーヴを信じることが出来ず、万人のごとく知るという道を選んでしまったのでした。

競馬や馬券は自分流に信じることが大切ですよね。自分流に信じることが出来るかどうかを問われているとも言えます。いや、競馬や馬券だけではないのかもしれません。私がこうして生きている中で、ほとんど毎日が後悔の連続で、その後悔はやはり自分流に信じられなかったというものばかりです。成功は曲がり角を曲がったすぐ先にあるのに、自分流に信じられなかったことで、その角を曲がらずに来てしまったことがこれまでたくさんあったかなぁと。今は、信じることよりも、信じ続けることの方がもっと大切だと信じています。もし一度信じることが出来かったとしても、信じ続けることが出来れば、私たちはいつか成功の曲がり角を曲がれるはず。ビリーヴは翌年の高松宮記念で、私たちにそう教えてくれたのでした。


高松宮記念での復活には本当に驚かされました。


関連リンク
「ガラスの競馬場」:稀有
「ガラスの競馬場」:To believe or not to believe

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

◎カジノドライヴ

Jiromaru

突然ですが、皆さんにクイズです。

「カネヒキリ、カジノドライヴ、フェラーリピサ、サクセスブロッケンにはあって、
ヴァーミリアンにはないものはなんでしょうか?」


なぞなぞではありませんよ。
すぐにピンと来た方は、血統に相当に詳しいですねぇ。
あっ、ヒントを言ってしまいました。

それでは、もう一度お聞きします。

「カネヒキリ、カジノドライヴ、フェラーリピサ、サクセスブロッケンにはあって、
ヴァーミリアンにはないものはなんでしょうか?」

答えは…、ジャカジャカジャーーーン!

はい、そうです、デピュティミニスターの血です。

今年のフェブラリーSにおける有力馬(人気馬)5頭のうち、4頭にデピュティミニスターの血が流れているんですよ。これはある意味凄いことだと思います。サンデーサイレンスであれば日常的なことかもしれませんが、デピュティミニスターですからね。ダート競馬にフィットする高い能力をどれだけ産駒に伝えているかが分かります。デピュティミニスターの代表産駒といえばフレンチデピュティがその1頭で、そのフレンチデピュティからクロフネが誕生しました。クロフネのダートでのあの圧倒的な強さはデピュティミニスターの遺伝によるものでしょう。

昨年のJCダートで見事復活を果たしたカネヒキリも、ダートのディープインパクトと呼ばれるほどのダート巧者です。G1レース2006年のフェブラリーSの時、勝利したカネヒキリに対して、血統評論家の水上学さんがひと言、「カネヒキリはデピュティミニスターですね」と言ったことを覚えています。まさに水上さんの言う通りで、カネヒキリっておよそフジキセキらしくない馬で、他のフジキセキ産駒とは毛色が違うなあ(あらゆる意味で)と思っていたのですが、カネヒキリは母父デピュティミニスターの血が色濃く出ている馬なのですよね。

もしカネヒキリが今回のフェブラリーSを勝つことがあれば、G1レース8勝という大記録を樹立することになります。現在の記録はシンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ブルーコンコルドの7勝です。こういう記録というのは達成されないことがほとんどです。ブルーコンコルドも8勝に王手をかけながらも、あと1勝が出来ていません。なぜかというと、7勝という数字に深い意味があるからだと思います。サラブレッドの壁がこの7勝という数字に表れているのです。激しく厳しいレースを7回先頭で駆け抜ける頃には、サラブレッドの肉体と精神は限界に達してしまうのでしょう。神の見えざる手が働くと言っても過言ではありません。王選手の年間55本の本塁打記録もなかなか破られませんよね。果たして、カネヒキリは神の領域に脚を踏み入れることができるのでしょうか。心から応援したいと思います。

それでも本命は◎カジノドライヴに打ちます。いかにもアメリカ血統らしい構成で、ご存知のとおり、半兄にベルモントS馬であるジャジル、半姉にベルモントSとケンタッキーオークス馬であるラグズトゥリッチズがいます。父マインシャフトはイギリスからアメリカに転厩してG1レースを4勝してエクリプス賞の年度代表馬を受賞した名馬です。その父はエーピーインディで、さらにその父はシアトルスルーですね。まさにダートの権化のような血統ですが、その中でもデピュティミニスターの名前はひときわ輝いています。

ドバイワールドカップに直行せずここを使ってくる以上、恥ずかしい競馬は出来ないでしょうし、勝ち負けになる状態と踏んでの出走でしょう。私自身もこの馬の潜在能力を計りかねるところはありますが、陣営の志の高さを買いたいと思います。JCダートは遠征帰りにもかかわらず無理をして使ったようなところがありましたが、今回は十分な間隔を開けつつ、前走をひと叩きしているだけに、東京大賞典や川崎記念と使い込んでいる馬に比べてフレッシュであることは確かです。前走のマイナス体重は心配ですが、ようやくみっちりと調教をつけられるような状況になり、走られる体つきになってきたということなのではないでしょうか。もしそうでなければ、さすがにここを使わずに、間隔を開けてドバイへ直行するはずです。ダート馬らしくないすっきりした馬体を見るにつけ、もしここを勝つようならば、ドバイでもひょっとしたらひょっとするぞ思わせられます。

サクセスブロッケンは父シンボリクリスエス、母父サンデーサイレンスと、普通に考えれば芝の長距離向きの血統です。伸びやかな馬体を見ても、芝の方が走りそうな形です。にもかかわらず、サクセスブロッケンがダートで驚異的な強さを発揮するのは、これもデピュティミニスターの血が母母父に入っているからです。母母父でこれだけの影響を与えるのですから、恐ろしいまでの遺伝力ですね。

昨年秋シーズンは、古馬の壁にぶち当たったようなレースが続きましたが、サクセスブロッケン自身がベストな状態ではなかったと思います。ダービー後に東京ダービーを使ったことが尾を引いているような気がします。完全に体調が底をついた状態で休養に入りましたので、秋までにうまく回復できていなかったことに加え、JBCクラシックでは小回りのレースで急かされるような競馬になって、馬に我慢が利かなくなってしまいました。その結果、JCダートでも、続く東京大賞典、川崎記念でも行きたがってしまい、本来の力を発揮できていないレースが続いています。ただ、馬体を見る限りにおいては、ここに来てようやく体が回復してきていますので、気持ちの余裕が取り戻せれば、歴戦の古馬にも力で見劣りすることはありません。

フェラーリピサは上記3頭と異なり、父系にデピュティミニスターの血を内包していますね。さすがにダート戦は16戦7勝で2着5回という堅実な成績です。それにしても、根岸Sは完勝でした。休み明けとは思えないほどの手応えで直線を向いて、追い出してからもしっかりと伸びていました。昨年の秋シーズンは顔面神経痛という病気で棒に振ってしまいましたが、このフェブラリーSに臨むにあたっては、かえってプラスに出るのではないかと思います。昨年の秋シーズンからずっと使い詰めで来た馬たちは調整が非常に難しいのですが、この馬は前走を叩いて、パーフェクトな体調で走れるはずです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (6)

◎メイショウサムソン

Jiromaru

いよいよオーラス有馬記念です。とても素晴らしいメンバーが揃ったと思うのですが、ウオッカが出走してこなかったことだけは非常に残念です。賛否両論があるとは思うのですが、今年の有馬記念にはウオッカは出てくるべきだったのではないでしょうか。昨年の宝塚記念や有馬記念とは違い、今年は十分勝ち負けになる体力と体調にあったと思います。

前にも書きましたが、エアグルーヴが史上最強の牝馬たりえるのは、天皇賞秋→ジャパンカップ→有馬記念という3戦を、のちに種牡馬となるような牡馬のチャンピオンを相手に回して、最後まで走り切ったからです。どこかのレースをパスして2つ勝つよりも、3つのレースで1、2、3着する方が遥かに難しいのです。

古馬になって体が完成されて、もし本当の強さがあるのだとすれば、全てのレースを走り切ってその体力を示すことでこそ価値を示せるのではないでしょうか。馬のことを第一に考えてという空論はさておき、それぞれの有力馬が勝てるレースだけを選んで出走し、それぞれ走って勝っていくという競馬には血が騒ぎません。そもそも、エアグルーヴは母親としてもアドマイヤグルーヴというG1馬を出しましたよね。ウオッカにはエアグルーヴに並ぶ資格があると思っているので、たとえ負けると分かっていたとしても戦って欲しかったです。

もちろん、ダイワスカーレットもウオッカと並ぶ強さを持った牝馬です。一見大人しい牝馬ですが、ルドルフおやじさんのおっしゃる通り、今まで報われなかった異端の血が父系と母系の両方から騒いでいるようなオドロオドロシイ血統ですね。休み明けであった天皇賞秋の粘り腰にも驚かされましたが、私が今でも信じられないと思っているのが、今年の産経大阪杯です。昨年の秋にあれだけの激走をしておきながら、しかも有馬記念の敗北で緊張の糸が切れて、完全には立ち直っていなかった産経大阪杯で、一戦級の牡馬を寄せ付けませんでした。この馬には常識が通用しないと分かっていたのですが、それでもあのレースにはさすがに参りました。

3歳の有馬記念であれだけのレースをした以上、古馬となった今年は不動の本命と言ってもよいのではないでしょうか。牝馬の優勝はトウメイ以来ありませんが、この馬の走る姿を見れば、もはや誰も牝馬とは思わないでしょう。それほどまで、走るためだけに研ぎ澄まされた馬体をしています。母親としては心配になる部分もありますが、来年も現役を考えているようですので、この辺りで燃え尽きるわけにはいきません。

前走をひと叩きされて、精神的にも落ち着いてきているようです。体は前走で仕上がっていましたので、大きな変わり身は望めませんが、落ち着いてレースを進められるのは好材料です。おそらく今回もこの馬がレースの主導権を取ることになるはずなので、まさに安藤勝己騎手の言うように、自分自身のレースさえできれば結果は付いてくるのではないでしょうか。

唯一の心配材料といえば、今年に入って、産経大阪杯→天皇賞秋と2000mの距離のスピードレースしか走っていない点でしょうか。秋華賞→エリザベス女王杯とゆったりとしたレース使われた昨年とは、走りのリズムが違っています。また、今年に入っての馬体の充実を見ると、マイル~中距離馬らしい豊富な筋肉の付き方になっています。つまり、あまりにいいペースで飛ばしすぎると、これまで止まったことのないダイワスカーレットでも、最後の最後のパタッと止まってしまうこともあるということです。

昨年の覇者マツリダゴッホも仕上がりは良さそうです。中山で行われるこのレースに照準を絞って調整されてきたように、現役屈指の中山巧者でもあります。この馬が中山競馬場を得意とする理由として、いい脚を長く使える長所を生かせるということだけではなく、他の競馬場と比べて力を要する馬場であることも挙げられます。頭の高い走法(上半身に力を入れて走る)だけに、特に冬場で芝が枯れて重くなってきている有馬記念のような馬場はピッタリです。それでもこの馬を本命にしたくないのは、前年を人気薄で制しているからです。たとえ有馬記念に適性があったとしても、昨年よりはひとつ年齢を重ねていることを踏まえると、昨年よりも人気になるであろう今年は狙いにくいですよね。

ジャパンカップを制したスクリーンヒーローはステイヤーだと私は思います。前走はかなり遅いペースでしたが、ただ1頭だけピタリと折り合って走っていました。外枠の不利をはねのけて、ロスなくピタリと回したデムーロ騎手のコーナリング&仕掛けのタイミングの良さにアシストされての大金星でした。もちろん馬自身が力を付けていなければ勝ち切れませんので、ここに来て充実顕著なことは確かです。グラスワンダー×サンデーサイレンスという血統は、先週のセイウンワンダーと同じですね。重くなってきてパワーを要する今の馬場にも、なんら不安はありません。あとは再びデムーロ騎手が隙のない完璧な騎乗をすれば、この馬にもチャンスはあるでしょう。

穴っぽいところでは、エアシェイディが面白いと思います。道中でピタリと折り合いがつき、コースロスなく回ってこられて、ラストの差し脚が生きる展開になればチャンスはあるのではないでしょうか。天皇賞秋でも3強の次に強い競馬をしたように、今年に入ってようやく完成の域に入ってきています。ノーザンテースト産駒は二度変わると言われるように、母父ノーザンテーストの影響もあるのかもしれませんね。また、4年連続でサンデーサイレンス産駒が制していますが、今年も最後の最後にあっと驚くサンデーサイレンス産駒というのもありかもしれません。ちなみに、昨年もサンデーサイレンス産駒はもうないと言われていながらのサンデーサイレンス産駒の勝利でしたから。

メイショウサムソンは、今年に入ってからいまだ勝ち星に恵まれていないように、全盛期に比べると、精神的な面で燃え尽きてしまっているような気がします。同じオペラハウス産駒のテイエムオペラオーがそうであったように、あと一歩前へ出ることが出来なくなってしまうのです。ずっと放牧に出されずに、厩舎で管理されていたことも、精神的なストレスになっている部分もあったのではないでしょうか。「何かきっかけが欲しい」と武豊騎手も話していたのは、そういうことだと思います。

ただ、もし復活の可能性があるとすれば、海外遠征がきっかけになるはずです。森林に囲まれたフランスの広大な土地で走ることによって、精神的にリフレッシュされて帰って来るということもあるのではないでしょうか。前走は馬体重こそ増えていたものの、馬体が少しガレていたように、輸送や検疫で肉体的にはキツいところもあったのでしょう。レース全体を通じて、サムソンらしい覇気がありませんでした。それでも前走をひと叩きされて、馬体面だけを見ると、かなり力強さが蘇ってきています。何よりも、この中間は普段から気合が乗って、元気な姿を見せてくれています。力を要する今の中山のような馬場も、本質的には向いているはずです。

メイショウサムソンにとっては、この有馬記念がラストランになります。ダービー馬が5歳までしっかり走り遂げたのは最近では珍しいですね。数々のベストバウトを残してくれた馬ですが、最後にどのような走りを見せてくれるのか楽しみです。武豊騎手にとっても、非常に意味のあるレースになると思います。男には負けると分かっていても戦わなければならないことがあるのです。


関連リンク
「ガラスの競馬場」:サムソンよ、いざ凱旋門賞へ

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (10)

あの時の熱狂が

Jiromaru

今からちょうど10年前、私は1年間を通じて大きな勝負をしていました。1レース10万円。当時は社会に出たばかりの身分で、私の給料などスズメの涙ほどでしたが、それでもひと月に手にする給料の半分以上を、1つのレースに賭けていたことになります。今から思えば愚かな話で、若気の至りと言ってしまえばそれまでなのですが、当時は自信というよりも、何かそうせざるを得ない衝動のようなものがあったのでしょう。

今でも忘れられない話があります。その年の菊花賞、あらゆるツテを使い、何とかして手に入れた1万円札10枚を持って、私は渋谷のウインズにいました。◎ナリタトップロードの単勝を買うことは前々から決めていました。その年のクラシック路線は、アドマイヤベガ、ナリタトップロード、テイエムオペラオーが3強と目されており、皐月賞はテイエムオペラオー、ダービーはアドマイヤベガが制したのですが、春が終わった時点で、私はナリタトップロードが一番強いと思っていました。夏を無事に越して、秋初戦こそ2着に負けたものの、最後の1冠を制するのはナリタトップロードだという確信が私にはあったのです。

当時はPATがほとんど普及していなかったこともあり、ウインズには馬券を買うためにたくさんの人々が並んでいました。今では想像もつかないかもしれませんが、G1レースともなれば、馬券を買うまでに30分近く待つなんてことはザラだった時代です。時計の針を見ると、ちょうど3時。ナリタトップロードの馬番を塗りつぶしたマークシートを手に持って、私は列の最後尾に並びました。

自分の買う番が来るのを待っているうちに、なぜか胸がドキドキしてきました。「本当にナリタトップロードでいいのか?」、ともうひとりの自分が問いかけてきました。強力な瞬発力を持つアドマイヤベガでもなく、ヨーロッパでも通用するという強靭なスタミナを持つテイエムオペラオーでもなく、なぜナリタトップロード?ウインズのモニターに映し出される参考レース映像や、隣の列に並んでいるおっさんの広げる競馬新聞に大きく書かれた「アドマイヤベガで勝てる!」という文字が目に入ってきて、私の気持ちはますます揺らいでいきました。

鼓動はさらに速くなり、ドキドキはドクドクに変わりました。頭の中が真っ白になり、全身から湯気のように汗が噴き出してきました。今から思えば、それほどに精神的にも経済的にも追い詰められていたのでしょう。もはや負けは許されなかったのです。

待つこと20分以上、ようやく私の番が回ってきました。硬直した体をなんとか一歩前に動かし、10枚の一万円札を自動券売機に入れました。あとはマークシートを入れれば、今日の仕事は終わり。もうどうにでもなれと思い、マークシートを入れたその瞬間、マークシートが戻ってきたのです。私はパニックになりました。あれほど入念にチェックしたはずのマークシートが、「識別できません」という旨の表示とともに返ってきたのです。

はじき出されたマークシートを見てみると、確かに私が塗りつぶしたはずのレース番号や馬番が全て消えてしまっていました。何が起こったのか分からなかった私は、ついつい並んでいた列から外れてしまいました。なんと、マークシートは私の手の汗で完全に消えてしまっていたのでした。

当然のことながら、目の前には長蛇の列が並び、私は菊花賞の馬券を買うことが出来ませんでした。あのレースほど、自分が本来買っていたはずの馬が負けることを願ったことはありません。ナリタトップロードが早めに抜け出した時にはバテてくれと叫び、テイエムオペラオーが外から差して来たときには差してくれと叫びました。ナリタトップロードがわずかに先頭でゴール前を走りきった時、私は自分の弱さをとことん思い知らされたのでした。

私の命を引き換えにするような大勝負は、この年の有馬記念まで続きました。アッと驚く結末が待っていたのですが、これについてはまたいつの機会にかお話しましょう。私はこの1年で、金銭的にも精神的にも大きなダメージを受け、たくさんの人々に迷惑を掛けもしました。それでも、この1年があったからこそ、(大袈裟に言うと)今の私があるとも思っています。馬券のスキルだけではなく、競馬というゲームの本質を学びました。大きなお金を賭けることは決してお勧めしませんが、勝つにしても負けるにしても、傷つかない程度ではなく、自分が何かを失ってしまうほどに大きく勝負してみないと、見えないものがあるのもまた事実でしょう。

あれから10年、私も少しばかりは大人になり、自分の人生で大勝負をすることが多くなってきましたが、それでも時には競馬でも大勝負がしたくなります。「男には負けると分かっていても戦わなければならないことがある」って、確か「銀河鉄道999」でキャプテン・ハーロックが言ったセリフでしたね。暮れの有馬記念の季節がやって来ると、あの時の熱狂が蘇ってくるのです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (6)

◎ブレイクランアウト

Jiromaru

ここ最近は、クラシックを目指す素質馬が朝日杯フューチュリティSを回避して、ラジオたんぱ杯2歳Sに回る傾向が強くなってきています。かつてナリタブライアンやバブルガムフェロー、フジキセキ、ミホノブルボンなどが出た時代と比べると、明らかにメンバーに大物感が失われてきていることは否めませんね。今年で言えば、ロジユニヴァースやリーチザクラウンは、昔であれば朝日杯フューチュリティSに出てきている馬たちだったのではないでしょうか。

昨年のゴスホークケンに引き続き、今年も外国馬の◎ブレイクランアウトに本命を打ちます。少し乗り難しい所のある馬なので、武豊騎手が乗ってくるということで安心しました。前走の東京スポーツ杯2歳Sは脚を余したというよりも、馬体が併さってから、あと一歩前に出ることが出来ませんでした。武豊騎手は「ファイトしなかった」という言葉を使っていますが、他馬よりも速く走ることの意味が分かっていないのでしょう。若駒にはよくある話で、ちなみに私も、幼稚園の徒競走で歩いてゴールしたことを今でも親に言われます(笑)。若駒は一戦ごとに成長しますし、乗り方次第でしょう。馬体を併せるのではなく、相手を一気に交わすような乗り方が必要です。

だからこそ、武豊騎手が手綱を握ることこそが勝つための条件となります。武豊騎手は先月の25日に落馬して右腕の尺骨を骨折しましたが、なんと1ヵ月も経たないうちのスピード復帰となります。2002年にも骨盤骨折の重傷で全治3~6ヶ月のところを2ヶ月で復帰したように、その回復力は驚異的ですね。17日に川崎で行われた全日本優駿からも復帰することは可能だったようですが、万全を期すためにここ一本に絞ってきました。年内一杯は休養しても良さそうですが、こうして1日でも早く戻ってくるというのは、ブレイクランアウトやメイショウサムソンで勝てると思っているからというような浅い理由ではなく、ひとつでも多くのレースに乗って、もっといい騎手になりたいという強い信念があるからです。武豊騎手が日本一のジョッキーたるゆえんでもあります。

フランスの魔術師ルメールが跨るフィフスぺトルも面白い存在です。新種牡馬キングカメハメハの産駒として初重賞を父にプレゼントしました。父のようにスケールの大きな馬ではありませんが、小柄で運動神経がいいというのが第一印象でした。函館2歳Sは三浦皇成騎手の好騎乗もありましたが、1頭だけ若駒離れした落ち着いたレース振りでしたね。ただ、前走は休み明けとはいえ、少し入れ込んでいたことと、最後の直線で伸び切れなかった走りに不満を感じました。1200→1400mと使ってきてのマイル戦だけに、道中厳しいペースになりがちであることも含め、スタミナに若干の不安を抱えていることは確かです。絶好調のルメール騎手が、どのようにスタミナを温存し、スピードを爆発させるのか楽しみです。

好枠の1番枠を引いたミッキーパンプキンが逃げそうですね。ペリエ騎手の技術を持ってすれば、途中で息を入れながら速いペースで引っ張ることも可能です。ミッキーパンプキンの馬体や走法からしてもビュッと切れる馬ではないので、ため逃げをするよりも、ある程度引っ張って、この馬の地脚の良さを生かす乗り方をしてくるのではないでしょうか。それでも勝ち切れるイメージはないのですが、勝ち負けになりそうなぐらいの見せ場は作れるだけの能力は持っています。

シェーンヴァルトは、ジャングルポケット産駒らしいバランスの良い馬体で、追ってからも伸びそうですね。デイリー杯の勝ち馬の不振が目立つのは、逃げて楽に勝ってきた馬が多いからで、この馬はしっかりと差して勝っていますから心配ないでしょう。道中の流れが厳しくなり、最後の直線に坂があるので苦しいレースになることは確かですが、乗り方次第で上位争いは可能です。北村友一騎手が世界のビッグネームの中で、どれだけの手綱捌きを見せられるのでしょうか。北村友一騎手にとっては、大きなチャンスになるはずです。


関連リンク
「ガラスの競馬場」:武豊の雪辱

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

ワンダーホース

Jiromaru

今年で第60回を迎える朝日杯フューチュリティS(旧朝日杯3歳S)ですが、第2回の優勝馬があのトキノミノルですから、どれだけ歴史が深いかがお分かりになると思います。数々激闘が演じられ、たくさんの名馬が生まれました。朝日杯フューチュリティSで最も強い勝ち方をしたのは?と聞かれれば、マルゼンスキーとお答えになる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は迷わずグラスワンダーと答えます。

グラスワンダーはマルゼンスキーの再来と呼ばれた馬です。朝日杯フューチュリティSを含む、2歳時の4戦でつけた着差は合計で16馬身半。新馬戦でこの馬を見た時の、あの弾むような走りは忘れられません。鞍上の的場均騎手がほんのちょっとだけ手綱を緩めただけでグーンと加速する様は、まさに1頭だけ次元の違うエンジンを搭載した外車が走っているようでした。新馬戦を3馬身、オープン戦を5馬身、京王杯3歳Sを6馬身という圧勝につぐ圧勝で、朝日杯フューチュリティSに臨んできたのです。

のちにスプリンターズSを制するマイネルラブや、ヨーロッパのG1を勝利したアグネスワールドなど、素質ある外国産馬が多く集まった非常にレベルの高いレースでした。案の定、2歳戦とは思えないハイペースでレースは進み、いくらスピード自慢の外国産馬たちとはいえ、追走に手一杯になる馬もたくさんいる中、グラスワンダーだけは、まるで調教で走っているかのような涼しい顔をして、体を弾ませるように、余力十分に走っているではありませんか。的場均騎手の手綱はピクリとも動いていません。

最終コーナー手前で、的場均騎手からのゴーサインが出た時、グーンと加速していくグラスワンダーにマルゼンスキーを重ねた競馬ファンもいたことでしょう。普通のサラブレッドの肉体に、まるでもうひと回り筋肉をコーティングしたような異次元の馬体から繰り出される走りには、月並みな表現ですが背筋がゾクッとしました。着差こそ2馬身半でしたが、2着のマイネルラブ以下を子供扱いしての完勝でしたね。

1997年朝日杯3歳S

「1分33秒6・・・!」という断末魔のような実況が、今でも頭の中に残っています。

そんなグラスワンダーですが、実はとても人懐っこくて、大食漢だったそうです。人の気配を察すると遊んでくれと前掻きをして、どれだけ厳しい調教を課しても、カイバを与えれば与えるだけ食べたそうです。よく遊び、よく食べるがグラスワンダーの強さの秘密だったのかもしれません。食べ過ぎて大きくなった馬体が脚元の故障につながったのは愛嬌ですが、それでも何度も復活して有馬記念を2連覇したのですから、まさにワンダーホースですね。父としてもスクリーンヒーローがジャパンカップを制して、これまたワンダーでした。

クラシックを目指す素質馬は、朝日杯フューチュリティSを回避して、ラジオたんぱ杯2歳Sに向かう傾向が強くなってきていますが、本当に強い馬であればそんなことは関係がないことをグラスワンダーが証明しています。息子のセイウンワンダーは偉大な父に追いつくことが出来るのでしょうか?今年の朝日杯フューチュリティSは、久しぶりに本当に強い馬が現れるのでしょうか?そして、どのようなワンダーが待っているのでしょうか?

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

◎ジェルミナル

Jiromaru

「まずは顔を見ます。走る馬はやっぱりいい顔をしているから。」と武豊騎手が言っていたように、サラブレッドを見るにあたって、顔はとても大切な部分だと私も思います。ディープインパクトを見極めた馬主の金子真人さんも、「馬の目を見て買うかどうか決める」とおっしゃっていました。顔(表情)や目には、そのサラブレッドの内面(性格や賢さ、そして内臓の良さ)が表れるということですね。

馬の顔は、人間のそれと同じで、1頭1頭違います。顔の大きさや長さ、目や耳の形や位置、鼻の大きさ、鼻筋の細さ・太さ、または真っ直ぐかどうか、などなど様々な要素によって馬の顔はそれぞれ個性的に違ってきます。もちろん、同じ馬でも状況によって表情に変化が生まれますよね。体調や調子が悪いときには、どうしても表情にもその疲れが表れたりします。人間と違って、作り笑いなどしない分、もしかすると馬の方が顔に出るのかもしれません。

私がサラブレッドの顔を見てドキッとしたのは、阪神ジュべナイルF(旧阪神3歳牝馬S)ヒシアマゾンという牝馬が初めです。特に正面から見た時の表情は、涼しい眼と柔らかな髪が印象的で、美しさの中に強さが同居して、妖艶と言おうか何と言おうか、えもいわれぬとはこのことだと思いました。

ヒシアマゾンと比べてしまうと、他のどの馬も凡庸に見えてしまうのですが、2002年の阪神ジュべナイルFを勝ったピースオブワールドも、強さと美しさを兼ね備えた顔をした牝馬でした。残念ながら、以降は目立った活躍が出来ないまま引退してしまいましたが、2歳時のたたずまいにはヒシアマゾン以来、久しぶりにドキッとさせられたことを覚えています。今年の阪神ジュべナイルFでは、ヒシアマゾン、ピースオブワールドに次ぐ、強くて美しいヒロインの新たな誕生が待ち望まれます。

Hansinjf02_3 ピースオブワールド

まだあどけなさを残しますが、瞳の澄んだ、凛とした顔つきの◎ジェルミナルは、そんな強くて美しいヒロインの継承者になれるかも知れません。手脚の長い馬体や大きなフットワークの走り方からは、大物感がヒシヒシと伝わってきます。新馬戦からずっと牡馬相手に走ってきているのですが、レースの中でもその雄大な走りはひと際目に付きますね。前走は辛勝でしたが、目イチに仕上げていない中、牡馬相手によくぞ勝ったと思います。成長を促しながら勝てた、ということに意味があります。

この馬の良さは、顔だけではなく、精神面の強さと賢さにあります。同厩のワイドサファイアも能力の高い素質馬ですが、ジェルミナルには高い能力にプラスして操作性の良さがあります。ワイドサファイアはレースに行くと気負って力んで走ってしまう面がありますが、ジェルミナルはそのようなことがありません。道中リラックスして走り、騎手の指示にも素直に従えるので、最後の直線まで最大限の力を温存することが出来ます。ペースに合わせてポジションを変えることも出来るでしょう。この馬のフットワークの大きさや、意外と速くなりそうなペースを考えても、外枠からの発走は好材料と考えても良さそうです。福永祐一騎手が落ち着いてスタートを決めれば、自然と良い結果がでるはずです。

抽選で滑り込んできた馬たちの中では、やはりブエナビスタの器が大きいでしょう。特に今週の最終追い切りの動きは圧巻でした。この馬もまた道中で無駄な力を使わずに走られることが、最後の切れ味に繋がってきていますね。鞍上のゴーサインに瞬時に応えることのできる俊敏さも持ち合わせています。安藤勝己騎手が、抽選待ちをしてでも、この馬に賭けてきた気持ちが分かるような気がします。兄のアドマイヤオーラは牡馬としてはパワーに欠ける面がありましたが、牝馬のブエナビスタはこのくらいで丁度良いでしょう。母ビワハイジはさらに小さい馬でスピードを武器とした逃げ馬でしたから、全くタイプは違いますが、もしこの馬が勝つことになれば、あれから13年越しの母仔制覇となるのですね。いやはや感慨深いです。

感慨深いといえば、イナズマアマリリスもそうですね。1992年の阪神ジュべナイルFを9番人気でアッと言わせたスエヒロジョウオーからスエヒロコマンダーが出て、そのスエヒロコマンダーが種牡馬になっていたということだけでも驚きですが、さらにこのイナズマアマリリスの母系にはあのイナズマクロスの名前も見られます。スエヒロジョウオーとイナズマクロスの血が入った、まさに切れ味の権化のような血統ですよね。前走のファンタジーSは先行して勝利しましたが、もっと溜めて行けばさらに凄い末脚を使ってくる馬でしょう。

3連勝で臨んでくるデグラーティアは、単なる早熟なスピード馬ではないはずです。3戦の内容を見ていても、道中の走りに遊びがあるので、最後は追えば追うほど伸びてきます。1200mのリズムが身についていることは確かに心配ですが、距離が延長されてパタリと止まるタイプではありません。休み明けで勝ち切れるかどうかは疑問ですが、新人の浜中俊騎手がスムーズに流れに乗せられれば、勝ち負けするチャンスは生まれるでしょう。

ウオッカ、カネヒキリとG1レースを独占する勢いの角居厩舎からは、抽選でミクロコスモスが出走してくることになりました。レースでの走りを見る限り、ジェルミナルやブエナビスタに比べると大物感には欠けますが、偉大なる先輩たちに鍛えられて、これからドンドンと力を付けていくのでしょうね。時期にもかかわらず、毛艶は良好で、体調自体は問題ありません。この馬の力を出し切れることは間違いありません。いつの日にか、キャリア1戦の馬がこのレースを制するのではと私は思っているのですが、それが今年なのかもしれません。

関連エントリ
「ガラスの競馬場」:強く、そして美しい

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

◎ボンネビルレコード

Jiromaru

もう10年以上も前のことになりますが、私がまだ暇をもて余していた頃、よく南関東の地方競馬場に足を運んでいました。よくと言ってもほとんど毎日なのですが(笑)、当時はネットで馬券を買うことなど出来ませんでしたので、大井、川崎、船橋、浦和とまるで武者修行をするかのように転戦していましたね。当時はまさに的場文男騎手や石崎隆之騎手といった脂の乗り切ったトップジョッキーたちが鎬を削っていて、2人を絡めた馬券を買っていればまず外れないという時代でした。

私は今でも南関東の競馬場に行くと、競馬新聞を見て、まず初めに「的場文」という名前を見つけます。どれだけパドックで入れ込んでいようと、覇気のない返し馬をしようとも、的場文男騎手が乗る馬は買わなければなりません。人気馬であればあっさりと勝ち、人気薄であれば2着へと突っ込んできます。「大井の天皇」と呼ばれているように、特に大井競馬場での豪腕には凄みすら感じさせますね。大袈裟かもしれませんが、「的場文」という男が乗る馬の馬券だけを買っていれば、まず負けて競馬場を後にすることはないのです。

的場文男騎手は1973年に大井競馬の第5レースでデビューしました。私が生まれる前から競馬に乗っているのですね…。大井で初めてのリーディングを獲得したのは、10年後の1983年。2002年には363勝を挙げて、念願の全国リーディングを獲得して、地方競馬の頂点に立ちます。続く2003年も335勝を挙げ、地方競馬全国リーディングと共に、地方競馬最優秀騎手賞も受賞しました。内田博幸騎手に抜かれるまで、なんと20年近くにわたって大井競馬のトップに君臨し続けていたのです。

そんな中、のちに日本の競馬における年間最多勝利数記録を打ち立てることになる内田博幸騎手は、ほとんど目立たない存在でした。私にとっても、内田博幸騎手といえば、ソコソコ人気になるけれどほとんど来ない、という印象でした。「石崎さん、的場さん、厳しいところでもまれたから、今の自分に自信が持てる」と内田博幸騎手が語っているように、特に的場文男騎手への尊敬の念は強く、内田博幸騎手の勝つことに対する執念は、数々のレースで揉まれたことによって叩き込まれたものです。この2人の壁は非常に高く険しいものでした。

ところが、私がしばらく地方競馬をお休みしている間に、いつの間にか内田博幸騎手はこの高く険しい壁を登り切ってしまいました。2004年には南関東のリーディングを奪取し、2006年には524勝を挙げて年間最多勝利数記録を塗り替えたのです。そして、満を持して今年から中央競馬への参入が決まり、はや現時点では関東リーディングジョッキーのトップをひた走っています。

地方競馬で培った実力を、中央でもリーディングを取ることによって証明しようという内田博幸騎手。大井競馬場が世界一の競馬場と信じて、大井に残って戦い続ける的場文男騎手。この2人の間には私たちには見えない強い絆があります。的場文男騎手がボンネビルレコードを駆って勝利したかしわ記念を見て、内田博幸騎手が「負けられないという気持ちと共に、大きな励みとなる」と語っていました。内田博幸騎手は的場文男という男の背中を見て大きくなり、今現在もその背中に励まされ続けているのです。JBCクラシックとJCダートのどちらも乗られる騎手をということで、ボンネビルレコードの手綱は的場文男騎手から内田博幸騎手に受け継がれました。内田博幸騎手にとって、今年のJCダートだけは負けられない戦いです。

本命は◎ボンネビルレコードに打ちます。前走のJBCクラシックは大敗してしまいましたが、レコード決着となった日本テレビ盃を休み明けにもかかわらず激走してしまったことによる反動が出たものです。この馬は地方のG1しか勝っていませんが、バランスの良い馬体を見ても、決してゴツいパワー優先のダート馬ではありません。砂が深くてパワーを要する園田競馬場よりも、一定のスピードとスタミナを問われる阪神競馬場の方が合っているはずです。最終追い切りの動きもなかなか好印象でした。前走とは明らかに体調は違いますね。あとはペースが速くなってくれれば、この馬の底力と勝負根性が生きてくるでしょう。内田博幸騎手がどのあたりで馬群の中にもぐり込み、どのあたりから仕掛け始め、ゴール前でどのように有力馬たちを飲み込むのか、地方競馬トップの腕をとくと堪能したいと思います。

フェブラリーSの時にも書きましたが、ヴァーミリアンはスピードとスタミナ、そしてパワーが非常に高い次元で融合された最強のダート馬です。私の知る限りでは、あのクロフネに匹敵する搭載エンジンを持っています。はっきり言って、この馬を負かすことは簡単なことではありません。体調が優れなかったドバイでは結果が出ませんでしたが、それでもこの馬がワールドクラスの馬であることは間違いありません。前走の楽勝を見る限り、衰えを心配するのはおろかでしょう。さすがのサクセスブロッケンも、この馬とまともに走っても勝ち目はありませんね。ただ、私の中でひとつだけ心配材料があります。それは追い切りの動きが芳しくないということです。元々、調教ではあまり走らない馬ですが、今年の川崎記念を回避した時の動きに近い気がしました。昨年と違って、ドバイ遠征の疲れが完全に癒えていないのかもしれません。

サクセスブロッケンはヴァーミリアンの後継者になりうる存在です。馬体やフットワークからは、どう見ても芝の方が走りそうですが、そうでないところにこの馬の特異性を感じます。敢えて挙げると、体全体に力が付ききっていないからこそ、ダートの方が走りやすいということなのでしょう。ヘイルトゥリーズンのクロスを持っているので、早くから頭角を現しましたが、父シンボリクリスエスということを考えても、来年はさらに凄い馬になっているはずです。常識的に考えると、この時期の3歳馬が古馬と1kgの斤量差で走るのは相当に厳しいはずです。とはいえ、坂路の追い切りで51秒台が出たように、ひと夏を越して、体全体に力が付いてきた面も窺えます。藤原英昭調教師によって施された調教が実を結び、古馬の壁を打ち破ることが出来るとすればこの馬をおいて他にありません。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

エアグルーヴという宿病

Jiromaru

こちらこそご無沙汰しております。私は元気ですよ。

ルドルフおやじさんも、相変わらず元気に競馬を楽しまれているようで何よりです。

天皇賞秋は素晴らしいレースでした。そして、長い長い写真判定でしたね。私も同着にしてあげれば良いのではと思いましたし、また一方で、どちらが勝ったのか白黒つけて欲しいという気持ちもありました。競馬場の周りにいた競馬ファンの方々も、同じ想いで見守っていた気がします。結果はウオッカに軍配が上がりましたが、逃げ切りは至難の業と言われている府中2000mの天皇賞秋で、あれだけのペースで自らレースを引っ張って、最後の最後まで踏ん張り通したダイワスカーレットには畏怖の念を覚えました。こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、もうこの先がないようにも感じたので、あのレースだけはダイワスカーレットに華を持たせてあげたかったなぁ。

ウオッカにはまだやり残したことがあります。

私の好きな写真家の藤原新也さんは、かつて標高4000mのチベットのこれ以上青くしようのない、真っ青な空の下で暮らして以来、下界に降りて、いかなる土地に行っても空が濁って見えるという宿病を背負ったといいます。私もかつてエアグルーヴという牝馬と出会い、その競走生活を共に過ごして以来、下界におりて、牝馬のいかなる走りを見せられても曇って見えてしまうという宿病を背負いました。私の名牝の時計はエアグルーヴから10年間、止まったままなのです。

Airgroove by echizen

エアグルーヴが4歳時に勝利した天皇賞秋は、サイレンススズカがかなり速いペースで引っ張り、長い直線でのバブルガムフェローとの叩き合いを制した激しいレースでした。そういう意味では、今年のウオッカが制した天皇賞秋と似ていますね。もちろん、この激しいレースを制しただけでも驚くべきことなのですが、私がエアグルーヴという宿病を背負ってしまったのは、それから後の走りを見せられてからです。天皇賞秋で牝馬として力を一滴残らず使い果たしてしまったかに見えたエアグルーヴでしたが、そうではなかったのです。

続くジャパンカップでは、天皇賞秋の反動を心配する声をよそに、堂々の2着と大健闘しました。ピルサドスキーに出し抜けを食らってしまいましたが、4コーナーを回ってからの先頭に踊り出た時の力強い末脚は、もはや牝馬の肉体を超越していました。天皇賞秋の疲れがあったから負けたのか、それとも疲れがあっても2着を確保したのか今でも分かりませんが、私の常識が覆されてしまったのでした。

1997年ジャパンカップ

エアグルーヴ(緑の帽子)の牝馬の肉体を超越した走りをご覧ください。

さらに私のちっぽけな常識は根底から崩されてしまいます。暮れの有馬記念に登場したエアグルーヴは、ゴール前で交わされたものの、なんと3着を守り切る好走を見せました。まるで横綱が大関にするように、勢いのある3歳馬シルクジャスティスと古豪マーベラスサンデーに胸を貸すようなレース振りでした。

前年にサクラローレルやマヤノトップガンがこの3連戦を嫌い、ジャパンカップをパスしたことと比べると、天皇賞秋→ジャパンカップ→有馬記念という古馬の王道を戦い抜いたことに、エアグルーヴのエアグルーヴとしての価値があると思います。たとえば、昨年はメイショウサムソンやポップロックも有馬記念では力尽きていました。牡馬でもへこたれてしまうローテーションで、1着、2着、3着と走り切ったことは驚異的ですね。

エアグルーヴという宿病から私を救うことが出来るのはウオッカしかいません。

もしウオッカがジャパンカップで2着、いや勝利するようなことがあれば、私の病は少しばかり癒えるはずです。そして欲を言えば、もしウオッカが続けて有馬記念で3着、いや2着するようなことがあれば、私はエアグルーヴを1頭の名牝として見つめ直すができるはずです。私の妄想の中で、エアグルーヴとウオッカとダイワスカーレットが互角に戦う日は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (8)

◎サイレントプライド

Jiromaru

ジョッキーマスターズを2連覇した河内洋騎手の話をしたからには、再び東京競馬場に姿を見せた怪物オグリキャップについて触れないわけにはいきません。オグリキャップを語る上で、どうしても外せないレースは、感動の引退レース有馬記念、そしてホーリックスとの死闘を演じたジャパンカップ、そして奇跡の勝利を収めたマイルチャンピオンシップでしょう。このマイルチャンピオンシップにはオグリキャップの本質が詰め込まれていますね。

前走の天皇賞秋でオグリキャップはまさかの敗戦を喫してしまいます。4コーナーでヤエノムテキに外から閉められてしまい、ようやく抜け出して猛追したものの、スムーズにレースを進めた武豊スーパークリークをわずかに捕らえることが出来ませんでした。鞍上の南井克己騎手はレース後、「天皇賞は、スーパークリークに負けたのではなく、ヤエノムテキに負けた。負けたんです。どれだけ悔しいか…、楽に勝っていたのにね」とコメントしました。

そういった伏線があっただけに、手応えの悪い南井オグリキャップが馬群に包まれ、武豊騎手の乗るバンブーメモリーが直線で抜け出してしまった時には、またもやオグリキャップは負けてしまうのかと誰しもが思いました。武豊騎手の騎乗は完璧に計算し尽されていて、バンブーメモリーはそれに応えるべく末脚を伸ばし続け、もはや勝負あったという瞬間でした。どう楽観的に見ても、オグリキャップがあそこから逆転するのは到底不可能だったのです。それでも、南井騎手は諦めずにオグリキャップを追い続けました。ゴール前50m、私たちはまさかのシーンを見ることになります。オグリキャップの勝負根性に火がついたのです。

1989年マイルCS

長い写真判定の後、勝利が確定した瞬間、南井克己騎手は泣きました。

「ゴール板を駆け抜けていくときの根性を凄いなって思いましたよ。オグリキャップは僕のために勝ってくれた。僕はオグリキャップに救われたなって。オグリキャップは根性で勝った。僕以上の根性でね。それで僕は泣いたんですよ。」

何度観ても、鳥肌の立つレースです。馬が負けたくない、勝ちたいという意志を持っていることを、私たちが思い知らされたレースでもありました。オグリキャップは地方から来て中央のエリート馬を倒したからだけではなく、最後まであきらめずに走って、奇跡のようなレースを何度も何度も見せてくれたからこそ、私たちの心が震えたのです。そして、これからもずっとこうして、私たち競馬ファンの記憶の中で走り続けるのでしょう。

さて、今年のマイルチャンピオンシップは混戦模様ですね。天皇賞馬ウオッカを下したスーパーホーネットが1番人気ですが、その他の伏兵馬も揃って、どの馬が勝っても不思議ではありません。こういう時こそ、マイル戦での実績を中心として、真のマイルのチャンピオンに相応しい馬を見つけていかなければなりませんね。

本命は◎サイレントプライドに打ちます。マイル戦で通算6勝を挙げているように、最も得意とする舞台です。もちろん、中距離戦での勝ち星もありますので、どちらかというとスタミナに支えられたマイラーということになります。フレンチデピュティは今年大ブレイクしましたが、特に大一番での底力が光ります。さらに母父のサンデーサイレンスによって、軽さとスピードが強化されているのも心強いですね。この馬の先行力はここから来ています。

安田記念は腰の疲れが取れずにパスしましたが、結果としてはそれが吉と出たようです。完調ではなかった前走を叩いて、反動が心配されましたが、逆に調子をグングン上げて来ているようです。中間も元気一杯で、最終追い切りも腰の不安など一切感じさせない力強い動きでした。外枠を引いたので、ジワッと先行できるのもいいですね。早めに先頭に立って、そのまま押し切ってくれるはずです。久しぶりに後藤浩輝騎手の涙を見たいものです。

一か八かの面白い存在だと思っているのが、ダービーで2着したスマイルジャックです。神戸新聞杯と菊花賞では引っ掛かってしまい凡走をしてしまいましたので、マイル戦への短縮はプラス材料になるはずです。うまく折り合っていければ、こうした首を低く使う馬はチョッとやソッとでは止まらないので、好勝負に持ち込めるかもしれません。ただ、秋2走のあまりの引っ掛かり振りを見て、もしかすると春の疲れが抜け切っておらず、苦しくて引っ掛かっているのではとも思えます。もともと一戦級の古馬マイラーと激突するマイルCSは3歳馬にとって苦しい舞台なので、少しでも疲れがあるようであれば勝ち目はありませんよね。この馬もマイル戦での連対率は100%です。

ブルーメンブラットの前走、府中牝馬Sは強いレースでした。最終追い切りでも素晴らしい動きをしていたように、春の疲れが抜け切って、最高の仕上がりにありましたね。その後、反動が出るのかと心配していましたが、中間の動きや姿を見る限り杞憂に終わりそうです。まあ牝馬のことなので、昨日に絶好調でも今日下降線を辿るということもあるのですが。また、馬体にも牝馬らしい柔らか味が戻ってきて、溜めて行ければ鋭い末脚を使ってくれそうです。ただ、この馬はマイルの連対率が50%を切っているように、本質的には短距離で良さの出る馬です。体調は良くても、勝ち切るまでは難しいと評価しました。

スーパーホーネットは毎日王冠が最高の出来だっただけに、天皇賞秋をパスして備えたとはいえ、毎日王冠ほどの走りは期待できないでしょう。パドックで観ていた私の友人たちも、恐ろしいほど素晴らしい出来にあったと言っていました。最高の仕上げの先には、まるでコインの裏表のように、あっと驚く凡走が待っていることもあります。立ち写真を見ても、冬毛が伸びてきていて、体調が下降気味なのかなと邪推してしまいます。昨年のマイルCSで、あの最強マイラーであるダイワメジャーに迫ったように、実力はこのメンバーでは上ですが、体調という面での心配が大きいので本命には出来ませんでした。実はこの馬もマイル戦での連対率が50%を下回っています。

非常にレベルの高かった天皇賞秋で最先着したカンパニーも、有力候補であることに間違いはありません。あわやディープスカイを差し切らんばかりの末脚でした。もちろん、3強との力差は見た目以上にありますが、このメンバーならば乗り方次第でチャンスもあるはずです。差しては届かないので、横山典弘騎手が思い切って先行してくるようであれば怖い存在です。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

河内洋騎手とサッカーボーイ

Jiromaru

ジョッキーマスターズを2連覇した河内洋元騎手(現調教師)が、武豊騎手の兄弟子であったことを知る人は多いと思いますが、その河内洋騎手の兄弟子が、武豊騎手の父である武邦彦騎手であったことは意外にも知られていない事実です。つまり、武邦彦騎手を見続けた河内洋騎手から武豊騎手は技術を盗んだわけで、河内洋騎手を通じて武邦彦騎手から武豊騎手というジョッキーとしての隔世遺伝があったということになります。

「名人」と呼ばれていた武邦彦騎手と、「天才」と称される武豊騎手の間に挟まれて、ずいぶん窮屈な思いをしたのではと思われる方もいるかもしれませんが、ところがどっこい、河内洋騎手も「西のエース」、「いぶし銀」などのニックネームでさすがの存在感を示していました。河内洋騎手は武豊騎手の人間としてのロールモデルともなったように、とにかく誰しもが一目置く人格者で、ある時代、関西の競馬は彼を中心として回っていたと言っても過言ではありませんでした。それほどに、あらゆる意味で、影響力の強いジョッキーだったのです。

同時代に鎬を削った田原成貴元騎手は、河内洋騎手についてこう言い表しました。

「たとえば水をかけると、パーンとはじいてしまうタイプの人と吸い込んでしまう人とがいるでしょう。河内さんは、一応全てを受け止めるという意味で、吸収するタイプです。それが彼の場合落ち着きとなっている。この落ち着きがね、日常でも競馬でも正比例していい結果になっているんです。落ち着きが彼の線の太さにもなって、逆に競馬では繊細さを醸し出すことにもなるんですよ。」

私の知る河内騎手はすでに円熟期に入っていて、これはジョッキーにとっては最大級の褒め言葉だと思いますが、とにかくミスをしない騎手というイメージが強かったですね。たとえ一流のジョッキーであろうとも、完璧に乗れるレースなどほとんどないはずです。その中でも、小さなミスはあっても大きなミスは犯さないという意味で、ミスをしない騎手でした。別の言い方をすると、極めて完成度の高いジョッキーということです。特に河内洋騎手が人気馬に乗った馬券を持っていると、なんとも言えない安心感がありましたね。

「牝馬の河内」とも呼ばれ、メジロラモーヌ、アグネスフローラ、ダイイチルビー、ニシノフラワーなど、たくさんの名牝とコンビを組んできた河内洋騎手ですが、牡馬とのコンビで私の頭の中に真っ先に思い浮かぶのはサッカーボーイです。私は実は生でこのコンビを見たことはないのですが、函館記念やマイルCSでの空を飛ぶような走りを映像で見て、その強さが脳裏に焼きついてしまったのでしょう。河内洋騎手は先週東京競馬場に登場したあのオグリキャップにも跨ったことがあったのですが、両馬を比較して、「マイルならばオグリキャップ、2000mならばサッカーボーイ」と語っていましたね。

1988年マイルCS

これは強い!まさに弾丸シュートです。

時の経つのは早いもので、その河内洋騎手もいつの間にか調教師となってしまいました。線の太さと繊細さは、調教師になっても生かされていますね。昨年のマイルCSは河内洋調教師の管理馬アグネスアークを応援しましたが、故障を発生してしまい、残念な結果に終わってしまいました。ジョッキーとしても、調教師としてもマイルCSを勝つことになれば、それはそれで凄いことです。今年もマルカシェンクを出走させてきます。関屋記念で河内厩舎に初重賞制覇をプレゼントした馬ですね。果たしてどのようなレースを見せてくれるのか楽しみです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

◎ベッラレイア

Jiromaru

先週のジョッキーマスターズとオグリキャップには、たくさんの競馬ファンから声援が飛んだそうですね。私はどうしても外せない用事が入ってしまって、オグリキャップにも会えずじまい、ジョッキーマスターズも観戦できませんでした。一年に一度しかないイベントだけに非常に残念でした。それでも、オグリキャップが馬っ気を出していたことや(笑)、暗くなってナイターになってもほとんどの競馬ファンが残っていたことなど、実際に参加された方々から教えてもらいました。オグリキャップの引退とほぼ同時に競馬を始めた私としては、オグリキャップがああして歓迎されているだけで何だか嬉しく思えますし、またジョッキーマスターズにしても、ギャンブルと離れたところであれだけ盛り上がれることを秘かに誇りに思います。今の競馬ファンは本当に素晴らしいですね。

さて、もはや伝説のレースとなった天皇賞秋から中1週、ようやく気持ちが落ち着いてきたところで、今週はエリザベス女王杯です。古馬牝馬に開放されてから早12年が経ちました。ダンスパートナーに始まり、昨年のダイワスカーレットまで、勝ち馬は時代を彩る名牝たちの名前が並んでいます。平成12年から秋華賞が1週間繰り上げられ、エリザベス女王杯までが中3週となったことにより、ここ最近は勢いのある3歳馬の活躍が目立つようになりました。衰えゆく5歳馬から、充実の4歳馬、そして更なる上昇が期待される3歳馬への世代交代というクロスオーバーが行われるのがこのエリザベス女王杯です。今年のエリザベス女王杯は、果たして何歳馬が頂点を極めるのでしょうか。

私は充実の4歳馬である◎ベッラレイアに本命を打ちます。前走の府中牝馬Sは、決して完璧な仕上がりではありませんでしたが、馬体をふっくらと戻して良い体調だったと思います。仕上がりが抜群に良かったブルーメンブラッドに切れ負けしてしまいましたが、あそこで切れすぎてしまうと反動が心配になりますので、負けて正解だったのではないでしょうか。今年の春は急仕上げで臨んだヴィクトリアマイルで外々を回され惨敗、マーメイドSではとてもとても走られる体調ではありませんでした。その後、再び放牧に出し、前走はようやく本来の姿に戻っていました。

思い返してみると、3歳時は対戦こそ1度だけでしたが、ウオッカとダイワスカーレットと3強と称された馬でもあります。オークスの敗北、騎乗には賛否両論があり、私も自分の意見は書いてきたつもりなので、もう敢えてここでは何も言わないでおきます。ベッラレイアの強さはオークスを見れば十分判りますよね。前走、秋山真一郎騎手は先を見据えて、ベッラレイアのリズムで走らせることに専念していました。エリザベス女王杯は折り合いがポイントになりますので、たとえ負けても本番につながる内容だったと思います。本番の今回も、彼女を気持ちよく走らせてあげられれば、自慢の瞬発力をフルに発揮してくれるはずです。牡馬相手に走ったことがほとんどないのは、確かに心配材料ですが、今年はウオッカやダイワスカーレットなどの抜けた一枚落ちるメンバーですので、十分にチャンスはあるでしょう。

5歳馬のカワカミプリンセスにとっては待ちに待ったレースです。2年前の降着事件のリベンジを果たすため、陣営もあきらめることなく調教を重ね、ようやくこの日を迎えることが出来ました。宝塚記念や金鯱賞で、牡馬の一戦級に揉まれてきた経験もプラスに働くに違いありません。前走は余裕残しの仕上げで、負けたとはいえ、ひと叩きしての効果は大きいはずです。スッと先行できますので、レースの主導権を握るのはこの馬です。鞍上の横山典弘騎手も自信を持って走らせてくるでしょう。最も勝ちに近いのはカワカミプリンセスで間違いありません。ひとつだけ心配なのは、やはりあのエリザベス女王杯から2年という年月が経っているということです。連勝街道を突き進んでいた頃は、他を寄せ付けないオーラを醸し出していましたが、さすがにそこまでの雰囲気にはあるとは思えません。テニスの伊達公子さんは12年のブランクを乗り越えて全日本選手権で勝利しましたが、カワカミプリンセスはどうでしょうか。

3歳馬では我がPOG馬であるポルちゃんこと、ポルトフィーノが人気になっていますね。秋華賞に出走できなかったことは残念ですが、それでも前走の清水Sはなかなかの勝ちっぷりでした。さすがエアグルーヴの仔ですね。とはいえ、父がクロフネで筋骨隆々の馬体からも、姉のアドマイヤグルーヴのようにエリザベス女王杯の舞台に適性があるとは思えません。馬群の中で折り合いが上手くつけば好勝負になるかもしれませんが、距離や経験の少なさを考えても厳しい戦いになるはずです。

リトルアマポーラは桜花賞2番人気、オークス1番人気と、春は人気倒れな結果となってしまいました。それでも、成長の余地がある幼さを残した馬体であれだけ走るのですから、潜在能力が高いことは確かです。夏を越して、少しばかりは成長が見受けられます。前走の秋華賞はぶっつけだったことに加え、後方から外々を回して、流れに乗り切れていませんでしたので、度外視しても良いのではないでしょうか。ルメール騎手に乗り替わって、中団につけるとコメントしているように、新しい味が出るかもしれませんね。最終追い切りでも、リラックスして走っている姿が印象的でした。が、しかし、ちょっと枠順が外過ぎましたね。この枠から、内にもぐり込みながら中団につけるのは、ルメール騎手にとっても至難の業に思えます。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (6)

ジュンペー

Jiromaru

「死んでしまつた人間といふものは大したものだ。何故あゝはつきりとしつかりとしてくるんだらう。まさに人間の形をしてゐるよ。してみると、生きてゐる人間とは、人間になりつゝある一種の動物かな」とは小林秀雄の言葉です。

生きている私たちは、人を嫉んだり、余計なことを言ったりしながら、日々の生活に汲々としてなんとか生きています。それに対し、死んでしまった人間が、ある種、絶対的な形(存在)として私たちの中に生きてくるという感覚は、私も最近になって少しずつ分かるようになってきました。

新人の三浦皇成騎手が、あの武豊騎手の新人最多勝記録(69勝)を抜いたことが大きな話題になりましたね。1987年以来、トップに立っていた武豊騎手との比較ばかりがクローズアップされてしまいますが、武豊騎手、加賀武見騎手(58勝)、福永祐一騎手(53勝)に次ぐ、歴代4位の記録を持っていたジョッキーから、私はどうしても目が離せませんでした。

Jyunpei岡潤一郎。「ジュンペー」と呼ばれた岡潤一郎騎手は、私が競馬にのめり込み始めた時と機を同じくして、メキメキと頭角を現してきた騎手です。今でも記憶に残っているのが、デビュー2年目の札幌競馬場での5連続騎乗、5連続勝利という快挙です。11、2、7、1、2番人気に跨っての結果でした。最後の2鞍は過剰人気になったことも含め、11番人気と7番人気の穴馬を勝たせてしまったのですから、並みの新人ジョッキーでなかったことは明らかでした。しかも、札幌に乗りに来ていた河内洋(ジョッキーマスターズを2連勝しましたね)、松永幹夫、横山典弘という脂の乗り切った面々を相手にしてのものだけに、競馬ファンのみならず競馬関係者も驚きを隠せませんでした。

もちろん小さな挫折や大きな挫折も味わいました。宝塚記念で圧倒的な人気を背負ったオグリキャップに騎乗して2着に負けてしまい、「有名馬には乗りたいけど乗りたくない」と素直な心情を語っていたのも印象的でした。しかし、岡潤一郎騎手はその後も着実に成長を重ね、敗北も挫折も、あくまでも新人ジョッキーを大きく成長させるための過程に過ぎませんでした。そして、デビューから3年目のエリザベス女王杯にて、愛馬リンデンリリーと共に大きな華を咲かせたのです。春の実績馬をやすやすと蹴散らしたリンデンリリーの力強さと、馬上にいた岡潤一郎騎手の自信満々を、私を含む誰もが未来への明るい光として見守りました。

1991年エリザベス女王杯の映像はこちら

しかし、リンデンリリーにとっても、岡潤一郎騎手にとっても、このエリザベス女王杯が最後の晴れ舞台となってしまいました。レース後、異常を感じ取った岡騎手はすぐにリンデンリリーから下馬。診断の結果、右前脚浅屈腱不全断裂を発症し競走能力を喪失していることが判明したのです。そして2年後、岡潤一郎騎手はレース中の落馬事故で命を落としてしまいます。レース中、親友の千田騎手を抜かしていく時に「お先に」と声をかけたのが、彼の最後の言葉になってしまったそうです。

岡潤一郎騎手をよく知る詩人の志摩直人は、彼の死を悼み、こう詠みました。

「24歳の青春」

その日 岡潤一郎は
春めいたブランブルーの空を
見たでしょうか
24歳の空が
如何に果てしなく
美しい空であったか

その日 平成5年1月30日
京都競馬場第7レース新馬戦
本命馬オギジーニアスは
直線走路 2番手から
いざ追い上げようという時に
がくんと腰から崩れて行ったのです
潤一郎君はころころころっと
馬場の真ん中へ転げて行ったのです
あとはどうなったのか
見ていた私達にもよく判りません
ともあれ 24歳の青春
ターフに身をあずけるように
それが潤一郎くんの運命でした

もう5年ほど前になりますが
様似の辻牧場の放牧地で
小林薫さんのコマーシャルを撮っていた時のことでした
潤一郎くんのお父さんが
会いにきてくれたのです
「潤一郎をよろしく」と
眼鏡の奥に誠実なものを湛えて
丁重なご挨拶でした

頭蓋骨骨折 脳挫傷
入院して18日間
意識不明のまま 肺炎併発
2月16日12時57分
きらめく青春に終わりを告げました

祭壇に飾る写真を私も 選ばせて貰いました
どこか幼さの残った
あのにこやかな笑顔には
アイドルの面影がありました
この後 あの様似の親子岩あたり
君のふるさとを通る時
ヒダカミセバヤの花を携えて
君の墓に詣でることでしょう
岡潤一郎君
仏となった君の名は
潤徳院大英法蔵居士とぞ

岡潤一郎騎手は私の青春の記憶の中でまだ生きています。ノースフライトで安田記念を勝った角田騎手が、4コーナーで上がっていく時、他の騎手からの激励の声をジュンペーからのものと感じたように、私はどこかの競馬場のどこかのレースで懸命に鞭を振るっているジュンペーの姿をはっきりとしっかりと浮かべることができるのです。岡潤一郎騎手が人間の形をしてゐるのです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

◎ディープスカイ

Jiromaru

夏から楽しみにしてきた天皇賞秋のレース発走が、もうすぐそこまで来ています。メイショウサムソンが回避したのは残念でしたが、ウオッカ、ダイワスカーレット、ディープスカイ、アサクサキングス、ドリームジャーニーなど、出走馬の名前を読み上げただけでも、勝ち馬が1頭しか出ないことが不思議な感じのするレースです。どの馬も勝つシーンは想像ができますが、どの馬も負けるシーンは想像できません。それでも、日曜日の夕方には決着がついて、勝者と敗者にくっきりと分かれているのですね。後に語り継がれるレースを期待しましょう。

本命は女傑2頭ではなく、3歳馬の◎ディープスカイに打ちます。菊花賞ではなく古馬との対決となる天皇賞秋を選んだわけですが、もし菊花賞に出ていたとしたら、オウケンブルースリには勝てなかったはずです。それはオウケンブルースリに比べて力が劣るということではなく、ディープスカイが4角手前から動かなければならない菊花賞への適性に欠けるということです。メンバーではなく、レースへの適性で判断した昆貢調教師の見事な決断だと思います。毎日杯からNHKマイルC、そしてダービーへのローテーションもそうですが、昆貢調教師はかなり綿密にレース選択をしてきますね。神戸新聞杯から中5週というローテーションも、ディープスカイにとっては絶好です。

その神戸新聞杯は完調ではなくギリギリ凌いだというレースでしたが、勝ったことには価値があると思います。それ以上に、この天皇賞秋につながってくるなと思わせられたのが、道中での行きっぷりです。これまでのような追い込み一辺倒ではなく、馬に前進意欲とパワーが付いてきて、四位騎手もある程度の位置を馬任せで取れるという感触を得たはずです。そういった経緯の中、今回引いた2番枠も絶好で、無理をすることなく中団よりも前の10番手以内の位置取りを確保できるのではないでしょうか。あとは直線に向いてからしっかりと追い出すだけです。自慢の末脚が爆発してくれれば、きっと古馬の壁をもブチ破ってくれるはずです。

唯一の不安材料は、ダービーを勝ったことによる目に見えない疲労です。ダービーを勝った馬が菊花賞も制することが意外と少ないのは、ダービーをピークの状態で勝って、わずか4ヶ月後に行われる菊花賞で再びピークの出来に持ってくることがなかなか難しいからです。そういう意味でも、たとえ1週間でも余裕のある天皇賞秋という選択は間違っていないと思います。前走後の調整はかなり上手く行っているようで、最終追い切りの動きも絶好でしたが、目に見えない疲れがもしあれば、この天皇賞秋で噴出してしまうという心配は確かにあります。

ダイワスカーレットがようやくターフに戻ってきました。この馬は異種の権化のような血統で、本当にタフですよね。今年の緒戦となった産経大阪杯も非常に強いレースでした。レベルの高いレースを、決して本調子とはいえない体調の中で勝ち切ってしまったことを高く評価します。その後、再び故障を発生して放牧に出されましたが、順調に疲労も回復したようで、完全にフレッシュな状態で戻ってきました。そこから少しずつペースを上げて乗り込み、エリザベス女王杯と天皇賞秋を両にらみで調整してきました。そして、休み明けにもかかわらず、エリザベス女王杯ではなく天皇賞秋を選んだことに、陣営の自信と仕上がりの良さが見てとれますね。レースで主導権を握るでしょうし、そうなれば今まで止まったことのない馬ですので、間違いなく勝ち負けの競馬に持ち込んでくるはずです。

前記2頭に比べ、ウオッカは最も順調に天皇賞秋を迎えて、最も不安材料がありません。1番人気になるのも当然ですね。安田記念を快勝した後、無理せず宝塚記念をパスしたことによって、上向きの体調で秋を迎えることが出来ています。毎日王冠で負けはしたものの、休み明けとしては、仕上がりは良かったと思います。安田記念からの伏線もあり、逃げる形になりましたが、馬がスタートしてから前進意欲を見せるようになっているのも収穫のひとつでしょう。今回はさすがに逃げる形にはなりませんので、好位で競馬が出来るはずです。最後の直線までロスなく進められれば、自慢の末脚が爆発するのではないでしょうか。ただ、外の枠を引いてしまったことは、僅かながらも気になります。どこかで内にもぐり込めればいいのですが、果たしてどうなるでしょうか。外々を回されるようなロスがあれば、他馬に付け入る隙を与えることになりかねません。武豊騎手にとっては、非常に繊細な騎乗が求められるレースになりました。

アサクサキングスも鞍上に藤岡佑介騎手を迎え、1番枠を引いて、穴っぽいにおいがしますね。春に大きな期待をかけた馬でしたが、天皇賞春は瞬発力勝負になり力を発揮できず、宝塚記念は道悪馬場に能力を削がれてしまいました。もしかすると、この馬も菊花賞の疲れが春は癒えていなかっただけなのかもしれません。ようやく疲れが抜けたとなると、菊花賞を勝っているだけの力のある馬なので、内枠を利して先行出来ればあっと言わせるシーンもあるでしょう。あとは休み明けの問題だけで、最終追い切りは少し動きに重さを感じましたので、どこまで仕上がってくるかどうかでしょう。

ドリームジャーニーは夏の重賞を2連勝して臨んできました。菊花賞の疲れがようやく取れたとのことですが、ここに来ての充実ぶりは凄いですね。馬体重的には大きな変化はないのですが、筋肉の付き方が2歳時とはガラッと変わってきています。とても410kg台の小柄な馬とは思わせない、豊富な筋肉量で馬体を大きく見せています。小さな馬が大きく、大きな馬が小さく見せている時は買いという格言もあるように、夏競馬を使ってきた上がり馬として狙ってみても面白いかもしれません。とはいえ、人気にもなっているようなので妙味は少ないかもしれません。そして何よりも、外枠を引いてしまったのは痛いですね。最後の直線に賭けたかっただけに、外枠からは乗り方が難しくなってしまいました。

どちらかというと、私はタスカータソルテを穴馬として狙いたいと思います。札幌記念のレース振りを観てみると、ここに来て馬が変わってきていますね。2度変わると言われたノーザンテーストを母父に持ちますし、これまで無理をせずに育ててきたということが何よりも大きいのでしょう。力を要する札幌の馬場で、1頭だけ違う次元の脚でマツリダゴッホを差し切りました。鞍上のルメール騎手も心強いですね。もう少し内の枠が欲しかったのは正直なところですが、ある程度、前目の位置取りを確保して勝ちにくるはずです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

ああゆうこと

Jiromaru

天皇賞秋が行われる週になると、いつも決まってあいつのことを思い出します。あいつなんて言うと少々乱暴に聞こえるかもしれないので、ここではAと呼ぶことにします。彼とは高校の同級生であり、よく一緒に授業をさぼって、公園で弁当を食べたりパチンコに行ったりしました。私はこの頃から競馬が好きで、週末になると休み時間には友達と予想を披露し合ったりしていました。

Aは競馬にはあまり興味を示さなかったのですが、なぜかその年の天皇賞秋の前日に私の予想を聞いてきたのでした。私は間髪入れずに、「武豊の乗るメジロマックイーンからプレクラスニーとカリブソングの2点で間違いないね」と断言しました。メジロマックイーンは天皇賞春を連覇したような名ステイヤーですが、ごまかしの利かない東京の2000mならば、距離が短くて負けるということはないと思っていたのです。Aは「そうか」とひとことだけ言うと、くるりと私たちに背を向けて、それ以上は競馬の話には参加しようとしませんでした。

第104回天皇賞秋。メジロマックイーンが不良馬場をものともせずに他馬を6馬身以上も千切った、と思われたのも束の間。進路妨害のためになんと18着に降着となってしまったのです。競馬ファンのどよめきは鳴り止まず、武豊騎手の蒼白な顔と江田照男騎手の戸惑いを隠せない勝利ジョッキーインタビューが印象的でした。

翌日の月曜日、彼は私の顔を見るなり、「何だよあれは!」と食って掛かってきました。私が「競馬にはああいうこともあるんだ」と言うと、彼は「ああゆうことってどういうことだよ?納得できねえよ」と突っかかってきたのですが、「ああゆうことっていうのは、ああゆうことだ」としか私は答えることが出来ませんでした。あれ以来、彼との会話で競馬の話題が登場することは絶対にありませんでした。Aにとって、競馬といえばあの忌々しい天皇賞秋のことで、彼が賭けた最初で最後のレースになったのでした。 

その後、私は大学に進学するという安易な道を選び、Aは四輪のレーサーになるという夢を胸に高校を卒業しました。それからも私たちの関係は続き、Aはガソリンスタンドでアルバイトをしながら、お金が貯まるとサーキットに出て練習をするといった月日を繰り返し、一方の私は、競馬漬けの自堕落な学生生活を送っていました。自分が何をしたいのかさえ分からなかった私は、ひとつの道を歩み始めているAがとても羨ましかったのを覚えています。 

私が海外に競馬を観に行っている間に、Aはこの世を去りました。アルバイト中の交通事故だったそうです。私は結局、彼にああゆうことを説明することが出来ませんでした。ああゆうことは競馬のレースだけではなく、人生にも起こるということは少しずつ分かるようになってきましたが、ああゆうことがどういうことなのかを説明できる自信はありません。もしあの時メジロマックイーンが降着していなければ、Aと競馬はどういう関係になっていたのだろうかと今でも思います。もしああゆうことがなければ、Aと私は今年の天皇賞秋の凄さについて語り合えていたのかもしれません。

今年の天皇賞秋は凄いレースです。全馬が重賞勝ち馬ということだけではなく、歴史的な名牝2頭が牡馬に胸を貸すという、過去にも未来にもないであろう対決の構図が描かれています。また、もしかすると3世代のダービー馬が揃うかもしれませんよね。ウオッカとダイワスカーレットとのガチンコ勝負も見物のですし、そこに割って入るのはどの馬かにも興味があります。私としては3歳馬のディープスカイではなく、札幌記念を制したタスカータソルテがその1頭になるのではと秘かに期待しています。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

◎ロードアリエス

Jiromaru

藤原新也の『メメント・モリ』が25年ぶりに改訂版として刊行されましたね。インドの海辺で人間の死体が犬に食べられている写真と、「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」というコピーは衝撃的でした。人生を徹底的に管理されてしまっている現代の私たちに対する、強烈なアンチテーゼだったと思います。メメント・モリとはラテン語で‘死を想え’という意味ですが、私たちが競馬に臨むにあたっても、死(不的中)を意識しながらも、ひたすら自由に予想したいものですね。

さて、大混戦の菊花賞ですが、本命は◎ロードアリエスに打ちます。前走の神戸新聞杯ではあわやというシーンを作ったように、夏を越して力をつけてきていますね。前走は休み明けであった上に切れ味勝負になってしまい分が悪かったのですが、それでも5着に踏ん張り通しました。血統的にも3歳の秋以降に大きく成長するのでしょう。父シンボリクリスエスも秋になって本格化しました。血統的に距離には心配があるのは確かですが、折り合いはつきますし、地脚の強さで勝負する馬ですので、瞬発力の問われた前走の2400mよりは、むしろ今回の距離延長は歓迎したいところです。

あとは鮫島良太騎手が道中は内で折り合いをつけつつ、3コーナー前のタイミングで外に持ち出すことが出来るかどうかがポイントでしょう。菊花賞の3~4コーナーはバテた馬が下がってきて前が詰まりやすいので、自ら動いて勝負するためにも、どこかで外には出しておきたいところです。今回は早めに動きたい馬が多いようなので、もしかすると、わずかに追い出しを遅らすのも選択肢のひとつになってくるかもしれません。いずれにせよ、各馬の動き方を見て、ロードアリエスの成長と力を信じて、積極的に仕掛けて欲しいものです。

ロードアリエスを管理する藤原英昭調教師は、今年に入ってエイジアンウインズでヴィクトリアマイルを制し、現在東西リーディングトレーナーの座に立っているように絶好調です。昨年もリーディングトレーナーの座こそ逃しましたが、18.4%の驚異的な勝率でJRA賞最高勝率調教師に輝きました。いつか詳しく書きますが、藤原英昭調教師はこれまでの私たちの常識を覆すようなトレーナーになる資質を持っていると思います。藤沢和雄調教師や角居調教師のように馬を仕上げるのではなく、馬を作り上げて(変えて)しまう技術を持っていますね。もしかすると、「調教」という概念を変えてしまうのではないかとさえ思っています。ロードアリエスだけではなく、これからの管理馬の活躍にも注目です。

ダービー最先着を果たしたスマイルジャックは、前走の神戸新聞杯でよもやの惨敗を喫してしまいました。ハミを強く噛んでしまい、引っ掛かってしまったことが敗因です。能力の高さは疑いようがないのですが、やはり長距離戦において折り合いに不安があることはマイナス材料です。スマイルジャックのように首の位置を低く保って走る馬は、簡単には止まらない反面、一度折り合いを欠いてしまうと騎手が制御するのが難しいのです。

マヤノトップガンという菊花賞、天皇賞春を制した馬がいますが、この馬も首の位置が低く、特に古馬になってからは非常に乗り難しい馬になっていました。最後の天皇賞春は、田原成貴騎手がマヤノトップガンとの折り合いだけに気をつけて乗っていた姿が印象的でした。スマイルジャックの堅実なところは、走法ゆえの簡単には止まらない渋太さがあるからですが、長距離では折り合いに不安があるのも確かです。道中、ハミが掛からずに行けるか否か。まさに一か八かのレースになるでしょうが、勝てるチャンスは十分にあります。

セントライト記念を勝ったダイワワイルドボアは、雨が降って、上がりが掛かる馬場になったことに助けられた一面があります。おっとりとした気性で、折り合いを欠くことのない馬ですので、アグネスタキオン産駒ですが距離には不安はないでしょう。外枠を引きましたので、スタント前までにある程度の位置を確保できれば、早めに動いて、この馬の力は出し切れるはずです。あとは自分以上の切れ味を持った馬の台頭がなければ、勝ち負けに持ち込めるのではないでしょうか。

マイネルチャールズは、松岡騎手が「4コーナー先頭」と言っているように、強気の競馬をしてくるようです。セントライト記念は早め先頭から粘りきれませんでしたが、乗り方としては次に繋がる競馬でした。クラシック前に仕上がってしまっていて、伸びしろがないように映る馬ですので、果たして4角先頭で回ってこられるでしょうか。

1番人気のオーケンブルースリは、前走で一戦級の力があることを見せてくれました。夏競馬を使いつつ力を付けて、まさに充実一途といったところです。ディープスカイ、ブラックシェルといった春の実績馬で神戸新聞杯組が抜けた以上、この馬が主役を張るのは当然でしょう。鞍上に内田博幸騎手を置き、勝利に近い位置にいることは認めるのですが、それでも私が本命を打たなかったのは、スマイルジャック同様、この馬も道中の乗り方が難しいからです。気性の激しさを秘めた馬なので、道中のジョッキーの微妙な動きに反応してガツンとスイッチが入ってしまう恐れがあります。だからといって、長距離戦でソッと乗っていては、前走のように位置取りを下げて届かないという結果になりかねません。内田博幸騎手の腕にも注目ですね。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (10)

不気味なステイヤー、メジロマックイーン

Jiromaru

秋のG1シリーズが始まったと思いきや、あっと言う間に菊花賞です。菊花賞が10月に行われるということに、いまだに慣れない方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。私が競馬を始めた頃、菊花賞は寒さの深まる11月初旬に行われていました。西日を背中から受けながら、遅咲きのステイヤーがゴールを駆け抜ける菊花賞が私は大好きでした。スピード全盛の時代とは知りつつも、それでもなお、「最も強い馬が勝つ」とされた菊花賞の存在を大切に思う気持ちは失いたくないと思っています。

オグリキャップが引退した年に競馬を始めた私にとって、初めての菊花賞馬はあのメジロマックイーンでした。前の週の天皇賞秋がヤエノムテキとメジロアルダンの4枠同士で決まって、ゾロ目の存在を初めて知ったようなズブの素人でしたから、菊花賞が3200mの長距離戦でスタミナと底力を問われる舞台ということさえ理解していなかったに違いありません。レースは友達の家のテレビで見た記憶があります。ダービー2着の雪辱を期すメジロライアンと前哨戦のセントライト記念を勝って勢いに乗るホワイトストーンが人気になっていました。

4コーナーで黒い帽子の馬が先頭に立って、そのままゴールまで押し切ってしまった時の、あのなんともいえない感覚は今でも忘れられませんね。強いというよりも、不気味な感じでした。最後の直線になって初めて、まるで灰色のお化けのようにスッと死角から現れたように感じたのです。メジロライアンの黒子役に徹したマックイーンと内田浩一騎手の一世一代の名演でした。それ以降は、武豊騎手に乗り替わり、ステイヤーとしての表舞台を歩んだメジロマックイーンでしたが、この世に出てきた時の不気味さは相当なものでした。

メジロマックーンの菊花賞の映像はこちら

武豊騎手はこの馬について、「スプリントのG1を勝てそうなくらいスピードがあった」と語っていました。無尽蔵なスタミナとスプリンター並みのスピードがあったにもかかわらず、「掴みどころがない、強いのか強くないのか分からない馬だった」とも語っています。武豊騎手にとってみれば、オグリキャップやスーパークリークそしてイナリワンという3強世代と比べて、どうしても競走馬としての闘争本能に物足りなさを感じていたようですね。これはメジロマックイーンに良きライバルがいなかったということ以上に、彼の温厚な性格によるところが大きかったのではないでしょうか。

引退して種牡馬となっても、メジロマックイーンはマックイーンのままでした。あの気性の激しいサンデーサイレンスも、メジロマックイーンにだけは心を許していたそうです。放牧地もいつも隣同士でしたね。そんなメジロマックイーンと父にサンデーサイレンスを持つ母から、ホクトスルタンが生まれてきたというのも面白い話ですね。激しいサンデーサイレンスと温厚なメジロマックイーンがうまく融合され、これからどんどん強くなっていきそうです。ぜひともメジロアサマ~メジロティターン~メジロマックイーンと続く、奇跡の血を引き継ぐ馬になってほしいものです。

さて、今年の菊花賞はまさに乱菊の様相を呈してきました。ダービー馬ディープスカイは天皇賞秋へ回り、神戸新聞杯で2着と春の実績がダテではなかったことを証明したブラックシェルは怪我で戦線離脱。春の実績馬といえば、スマイルジャックとマイネルチャールズぐらいでしょうが、どちらも前哨戦で強さを見せることなく、どちらかというと弱さを露呈してしまった感もあります。押し出される形で人気になりそうな夏の上がり馬オウケンブルースリですが、この馬の気性を考えると、3000mの距離が果たしてフィットするのかどうか疑問はあります。今年はなんだか不気味なステイヤーが現れそうな予感がしますね。どの馬が4コーナーを先頭で回ってくるのか、今から楽しみでなりません。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

◎オディール

Jiromaru

今年の秋華賞は、ポルトフィーノが除外になってしまった影響でユキチャンの鞍上が急遽変わったりと、レースが近づくにつれますます混沌としてきました。桜花賞馬のレジネッタやオークス馬のトールポピーが出走してきているにもかかわらず、どうも小粒なメンバーのドングリの背比べに思えて仕方ありません。馬券的には悩ましさ半分、面白さ半分といったところでしょうか。

本命は安藤勝己騎手の騎乗する◎オディールに打ちます。この馬の春クラシックシーズンは、体調が本物ではなかったゆえの不完全燃焼でした。そのことは、彼女の馬体重を見ると分かりますね。阪神ジュべナイルフィリーズ後休養に入りましたが、休み明けのチューリップ賞ではマイナス8kgの馬体重での出走となりました。おそらく放牧後の調整がうまくいかなかったのだと思います。

阪神ジュべナイルF  446kg
  ↓(休養)
チューリップ賞     438kg  休み明けにもかかわらず馬体が大幅に減った
  ↓
桜花賞         442kg  反動で凡走してしまった
  ↓
オークス         440kg  馬体が回復せず
  ↓(休養)
ローズS         450kg  ようやく本来の体調へと回復した

チューリップ賞ではなんとか3着と意地を見せましたが、次走の本番桜花賞では、休み明けをマイナス体重で走った反動がモロに出てしまい、常に力を出し切るタイプのこの馬にしては珍しく、12着と凡走してしまいました。次走のオークスの時点でも、桜花賞で減った馬体重は戻っておらず、距離も長かったり直線で不利があったこともあり、意地を見せたものの5着と敗れてしまいます。結局、春のクラシックシーズンは体調が回復することなく終わってしまったのでした。

ところが、夏の放牧を経て、体調が上向いてきたのでしょう。休み明けのローズSには、プラス10kgの馬体重での出走となりました。ようやく、オディール本来の馬体へと回復したのです。ローズSでは馬場の悪い内を通らざるを得なかったこともあって、4着と負けてしまいましたが、休み明けということを考えれば満足できる内容でした。

この体調の変化は、オディールの調教過程を見ることによっても読み取ることが出来ます。同じ叩き2戦目である桜花賞と今回の秋華賞を比較してみると、いかに桜花賞時の体調が悪かったかが分かります。

桜花賞時
2008/03/30(日) 栗 坂 良 57.2-42.8-28.4-14.3 馬也
2008/04/02(水) 栗 坂 重 52.1-37.9-25.0-12.8 強め
2008/04/06(日) 栗 坂 良 57.0-42.4-28.3-14.2 馬也
2008/04/10(木) 栗 坂 重 57.5-41.2-26.8-13.2 馬也

秋華賞
2008/10/08(水) 栗 坂 良 53.6-39.2-25.9-13.2 一杯
2008/10/12(日) 栗 坂 良 55.8-41.3-27.0-13.4 馬也
2008/10/16(木) 栗 坂 稍 54.9-39.8-26.2-13.5 強め

桜花賞時は前走のチューリップ賞から1ヶ月以上も間隔があったにもかかわらず、4本の時計中3本が馬なりによるものです。わずか1本しか強めに追うことが出来ていませんでした。休み明けをマイナス体重で好走した反動があって、馬体を維持するだけで精一杯だったことが伝わってきます。

それに比べ、今回の秋華賞に至る調教過程は順調といってよいでしょう。前走のローズSからちょど1ヶ月という間隔の中で、3本の時計を出して、そのうち2本が強め(一杯)に追われています。しかも、ローズS後、1本目の時計が強めに追われてのものですから、いかにレース後の反動が少なかったかが分かりますね。

マイナス体重で出走してきた春のステップレースとは違い、今度は叩いての上積みが期待できるはずです。もちろん、体調が良ければそれだけで勝てるということではありませんが、春のG1レースで体調が優れなかった中でも勝ち馬とは0.8秒差、0.4秒差と大きく負けているわけではなく、本来の力が発揮できるとなれば、先着を許した馬たちを逆転できる可能性も十分にありますね。あとはレースの流れ次第でしょうか。京都競馬場の2000m内回りで行われる秋華賞は、ちょっとしたことでレースの綾が生じやすいので、どれだけ上手くレースの流れに乗れるかがポイントです。そのあたりは、百戦錬磨の安藤勝己騎手に任せておけばいいでしょう。

レジネッタはクイーンSとローズSを叩かれて、春の実績馬の中では最も順調に来ている1頭でしょう。桜花賞は展開に恵まれた部分もありますが、オークスでも3着と好走しているように、このメンバーでは力上位であることは明らかです。ただし、決め手に欠けるところがありますね。クイーンSにしても、ローズSにしても、自力で勝ち切れるほど力が抜けていない分、仕掛けどころが難しかった感じです。タメた方がいいタイプですが、タメすぎても届かないですし、早めからエンジンをかけすぎてもゴール前でガス欠になります。トライアルでどちらものパターンで失敗をしていますので、今回こそは小牧太騎手が絶妙の仕掛けどころで乗ってくるでしょう。小牧太騎手が完璧に乗って、レジネッタも完全に力を出し切って、さあ勝てるかどうか。そういったレースをしてくれるはずです。

トールポピーは前走ローズSがあまりにも不甲斐ない負け方でした。オークスを勝ったのはこの馬の実力ですが、やはり3歳の牝馬にとって、府中の2400mで目一杯の走りをするということは、とても過酷なことなのだと思います。同じことはダービー馬にも言えることですが、そこからわずか5ヶ月で、再び絶好の出来に持ってくることは意外と難しいものです。最近のオークス馬で秋華賞をも制したのは、スティルインラブとカワカミプリンセスぐらいしか思い出せません。そのスティルインラブは3冠馬ですし、カワカミプリンセスにしても桜花賞を使っていなかったことで余力が残っていたということでもあります。それを考えると、トールポピーの前走の負け方や中間の入れ込み具合を見ると、オークスの疲れが癒えていないのかもと心配しています。

桜花賞、オークスともに2着のエフティマイヤは、クイーンSでは不甲斐ない競馬だったように私には思えました。馬体重が増えたこと自体は好ましいことなのですが、ギリギリに見せた時に好走してきた馬だけに、前走のような馬体で臨んでくるようでは力を出し切れるかどうか疑問です。調教後の馬体重を見る限りでは、春のような絞り込まれた馬体で臨めるとは思えませんので、私としては評価を下げたいところです。

ローズSの上位組について簡単に触れておくと、マイネレーツェルは外枠を引けなかったことが残念ですね。力をつけてきていることは確かですが、前走は外枠を引けてスムーズに運べたことが、気性の激しいこの馬にとっては大きくプラスに働いたと思います。今回は馬群の中でレースをしなければならないのは確実で、それをはね返して勝ちきれるだけの成長があるかどうかは疑問です。ムードインディゴについては、前走でかなり仕上がっていましたから、大きな上積みは期待できないでしょう。春の実績馬がここに照準を合わせてくる以上、どこまで好戦できるかどうかといったところでしょう。


関連エントリ
ガラスの競馬場:「馬体重は語る」

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

三浦皇成騎手について

Jiromaru

三浦皇成騎手が凄いですね。ちょっと前に中央競馬通算50勝目を挙げて、武豊騎手、加賀武見騎手、福永祐一騎手に次ぐ史上4人目の50勝達成新人騎手となったと思いきや、あっという間に新人最多勝記録である武豊騎手の69勝に追いついてしまいました。あまり新しいもの好きではない、どちらかというと新しいものは疑ってかかる私でさえも、三浦皇成騎手の勢いと素質は認めざるを得ません。

何よりも凄いのは、函館、札幌といった競馬場で勝ち星を量産したことではないでしょうか。「上手くなりたければ夏は北海道へ行け」というジョッキー同士の合言葉があるように、函館、札幌競馬場には安藤勝己騎手、横山典弘騎手、岩田康誠騎手、藤田伸二騎手、藤岡佑介騎手など、一流のジョッキーが集まるため、常にハイレベルで厳しいレースが展開されます。特に札幌競馬場はごまかしの利かないコースなので、フィジカルな技術がなければ簡単には勝たせてもらえないのです。あの岩田騎手や藤岡騎手も、北海道で揉まれてさらに上手くなったのです。

三浦皇成騎手の良さをひとつだけ挙げるとすれば、やはりスタートの上手さでしょう。出遅れるのを見たことがありませんし、私が観た限りのレースでは、スタートでポンっと頭ひとつだけ先に出ることが多いような気がします。そのことが、ポジション取りを良くして、全体を見渡せる冷静さにも繋がってきているのではないでしょうか。思い返せば、武豊騎手も若かりし頃は、スタートが上手く、それゆえにレースの流れに乗れると言われていましたね。

とは言っても、たとえ走る馬に乗っていたとしても、競馬はそう簡単に勝てるものではありません。スタートしてからゴールするまで、馬を完璧に操れることなど、トップジョッキーでさえほとんどないのです。当たり前のように見えることでも、当たり前に実行するのは本当に難しく、ひとつのミスが負けに繋がってしまいます。勝つよりも負けることの方が圧倒的に多いのがジョッキーの世界なのです。負けることによって、ジョッキーは少しずつ成長していくのです。

だからこそ、出来るだけ多くの馬に跨ってレースに騎乗することが、一流ジョッキーになるための絶対条件です。この点においては、三浦皇成騎手は非常に恵まれていますね。河野調教師の後ろ盾もあって、ありとあらゆる厩舎から騎乗の依頼があり、そこできちんと応えて来ているからこそ、さらなる騎乗機会が舞い込んでくるという好循環です。河野調教師の強面と三浦皇成騎手のあどけなさのギャップが、人を惹きつけるのかもしれませんね(笑)。

さらにもうひとつ、一流ジョッキーになるための絶対条件は、一流のサラブレッドに乗ることです。どれだけ多くの馬に跨ってレースに騎乗する機会に恵まれたとしても、最後方をついて回るだけの馬(失礼!)ばかりに乗っていては、決して腕は上がりません。岡部幸雄騎手が「ジョッキーは馬によって育てられる」と言っていたように、たとえ調教であれ、走る馬の背中から教えてもらう有形無形はジョッキーにとって一生の財産になるのです。かつて岡部幸雄騎手がシンボリルドルフから学んだように、三浦皇成騎手にもこれから巡り合うであろう一流のサラブレッドから多くを吸収するのでしょう。

今週行われる秋華賞、三浦皇成騎手は自厩舎のアロマキャンドルで臨みます。キャンドルつながりで思い出してしまったのですが、1999年の秋華賞を勝ったブゼンキャンドルという馬がいましたね。小回りで直線が短い京都2000mコースをジョッキーが意識して、3コーナーを過ぎてから次々と各馬が動き始め、最後はどの馬もズブズブになってしまった中、ほぼ最後方からブゼンキャンドルが飛んで来ました。単勝5760円の超大穴で、2着にも最後方からクロックワークが突っ込んできたのですから衝撃的でした。秋華賞が創設されてから4年しかたっていなかったということもあり、私の中での秋華賞といえば、「荒れる」というイメージが強烈に植えつけられてしまいました。最近は春の実績馬や有力馬が順当に勝つレースが続いていますが、果たして今年はどうでしょうか。有力馬不在の混戦という状況は、ブゼンキャンドルが勝った年と似ていますね。

おまけ

武豊が三浦皇成を語る(石橋守が怖い件には笑った)


関連エントリ
ガラスの競馬場:集中連載「一流の騎手とは」

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

◎スリープレスナイト

Jiromaru

今年のスプリンターズSは、秋口のG1にもかかわらず、本当に素晴らしいメンバーが揃いましたね。今年の高松宮記念を制したファイングレイン、2着馬のキンシャサノキセキ、昨年の高松宮記念馬であるスズカフェニックス、サマースプリントチャンピオンのカヤノザクラ、そして現在4連勝中のスリープレスナイトと、あらゆる路線からチャンピオンクラスのスプリンターが集結しました。

そんな中でも私は、ダートから芝に転向して、CBC賞→北九州記念と重賞を連勝して臨んでくる◎スリープレスナイトに本命を打ちます。その強さについては、ルドルフおやじさんとの対談でも語っていますので、改めて書くことはしませんが、久しぶりに出た生粋のスプリンターの誕生の予感すらします。スピードや切れ味だけでなく、正攻法の競馬で相手をねじ伏せる力を持っている馬です。スプリンターズSを制した名牝としては、あのフラワーパークが思い浮かびますが、スリープレスナイトにはフラワーパークにはなかったパワーすら感じさせます。

スプリンターズSに照準を絞ってきたローテーションにも好感が持てます。セントウルSをパスして、サマーチャンピオンを捨ててまで狙ってきたのですから、おそらく橋口調教師もこの馬がG1クラスであることをCBC賞の時点では認識していたのでしょうね。同厩のカヤノザクラとの兼ね合いもあったのでしょうが、とても勇気のある決断だったと思います。ゆったりとした間隔で走ってきたスリープレスナイトには十分な余力がありますし、馬体重からも分かるように、レースを使う毎にパワーアップも顕著です。まさに充実一途の時期にあるこの馬に逆らう手はありません。

あえて不安材料を挙げるとすれば、今回が初めてのG1挑戦になるということぐらいでしょうか。いきなりのスプリントG1のペースに戸惑ってしまうという心配がないといえばウソになりますが、CBC賞と北九州記念のどちらのレースでも、道中は余裕を持って追走し、最後の直線では耳を立てて力を抜いているぐらいですから、G1の壁も難なくクリアしてくれるはずです。無理をして付いていこうとするのではなく、彼女のペースで進めてあげれば、最後の直線ではグイグイ伸びてくれるでしょう。2005年のサイレントウィットネスのような乗り方を期待しています。

鞍上の上村洋行騎手といえば、私はどうしてもナムラコクオーの名を思い出してしまいます。競馬を始めて数年目であったこともあり、ラジオたんぱ杯3歳Sでの走りを見て、その世代の3冠馬となったナリタブライアンよりもナムラコクオーの方が強いという妄想を抱いてしまったのです。その鞍上にいたのが当時デビュー2年目の上村洋行騎手でした。前年に40勝を挙げ、JRA賞最多勝利新人騎手を受賞した気鋭の若手ジョッキーが、漆黒の馬に跨って他馬を蹴散らす様は、まるで「北斗の拳」のラオウのようでした。

しかし、ナムラコクオーが屈腱炎を患い、ターフから去るのと時を同じくして、上村騎手も次第に勝ち星から遠ざかるようになります。アイルランドへ武者修行に行ったり、試行錯誤を繰り返しましたが、気ばかり焦ってしまい、焦りが焦りを生んでしまうという悪循環の日々が続いたのです。そんな状況に追い討ちをかけるように、病魔が彼を襲いました。黄斑上ぶどう膜炎。珍しい目の病気で、2004年には右目がほとんど見えなくなってしまいました。7ヶ月にわたる3度の手術の後、視力が戻らなかった上村騎手はジョッキーを辞す覚悟をしたこともあったそうです。

それでも諦めなかった上村騎手に奇跡が起こりました。4度目の手術で、網膜を剥がしてしまうという荒治療を行った結果、レースには支障のない視力までに回復を果たしたのです。勝てないだけではなく、騎手としてレースに乗れなくなるというどん底を経験した上村騎手は、もはやかつて私が知る生意気な若手ジョッキーではなく、成熟したベテランジョッキーへと成長していました。漫画の人物のような空虚ではなく、生身の人間として馬の背中に跨っているのでしょう。もう焦ることはありません。スプリンターズSのゴール後には、今までには見えなかった何かが上村騎手には見えるはずです。

その他の馬についても少し触れておくと、展開次第ですが、ビービーガルダンは面白いのではないでしょうか。スリープレスナイトの先導役のような存在になるはずで、外からジワッと行って、この馬のペースで走られれば渋太く粘りこむこともありえます。一本調子の馬だけに、勝ち切るイメージは湧きませんが、スリープレスナイトの仕掛けどころ次第では、連対にまで持ち込める可能性はありますね。

今年の高松宮記念馬ファイングレインは、前走のセントウルSの凡走で評価を落としてしまいましたね。春の激戦の疲れを引きずったような形で、前走は仕上がり自体が良くありませんでしたから、結果には納得しています。春の覇者だけに巻き返しに期待したいところですが、負けすぎの感もあり、調子のリズムを崩してしまっているのではないかと心配しています。前走から大きな上積みもないので、あとは内枠を生かし、最後の直線に賭けて、どこまで突っ込んで来られるでしょうか。

一昨年の高松宮記念を制したスズカフェニックスは、前走のセントウルSを叩いて、体調自体は上向きですね。今年に入ってからの勢いでは見劣りしますが、体調という点においてはファイングレインよりも上だと思います。高松宮記念馬2頭は勢いと体調のバランスで取捨が難しいですね。いずれにせよ、ブッツケで臨んだ上に、雨に降られてしまった昨年に比べると、人気もさほどない今年は気楽に乗られるのではないでしょうか。前走の行き脚の悪さを考えると、横山典弘騎手ということもあって、おそらく後ろから行って最後の直線に賭ける一発勝負で来るはずです。嵌れば上位も期待できるのではないでしょうか。

キンシャサノキセキは夏競馬を2回使って、順調に臨んで来られることは確実です。高松宮記念時に述べたように、G1レベルのレースではスプリント戦が最も合う馬なので適鞍ではあるのですが、どうしても前走で見せた引っ掛かりグセが気になります。函館SSではなんとか抑えが利いたものの、前走のキーンランドCではスタミナを失うほどに折り合いを欠いていました。精神的に幼い部分があるのか、苦しくなるとハミを噛んで突っ走ってしまう現状では、最後の最後でスタミナが問われるスプリンターズSでは勝ち切れるかどうか疑問です。


関連エントリ
ガラスの競馬場:「幻の最強馬ナムラコクオー」

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (10)

生粋にして最強のスプリンター、サクラバクシンオー

Jiromaru

いよいよ始まりました。秋のG1シリーズ。第一弾は電撃の6ハロン、スプリンターズステークスです。その名のとおり、まさにスプリンターのためにあるレースですが、私の中で生粋にして最強のスプリンターといえばサクラバクシンオーをおいて他にありません。ニホンピロウィナーの方が強かったという方もいらっしゃいますが、少なくともここ10~20年の間であれば、サクラバクシンオーほどの理想的なスプリンターを私は見たことがありません。

サクラバクシンオーは、1993年と1994年のスプリンターズステークスを連覇しました。特に93年のレースは、私自身、かなりの自信を持ってレースに臨んだ思い出があります。「サクラバクシンオーが勝つのを観に中山競馬場に行こう!」という文句で友人を誘ったぐらいでした。友人もサクラバクシンオーが本命だったのですが、私ほどの確信(妄信?)がなかったのか、当時のスプリンターズステークスは真冬の極寒の時期に行われていたこともあって、現地での観戦は断られてしまいました。スプリンターズSの時期になると今でも、「あの時、競馬場に行っていたら最高だったのになあ…」と友人に愚痴をこぼしています(笑)。

初めてスプリンターズステークスを勝つまでのサクラバクシンオーは、前向きな気性が災いして、一本調子に突っ走ってしまう馬でした。自身の溢れるスピードを抑えることが出来ずに、スタートからとにかく全力疾走。素質は高かったのでそれなりに好走はするのですが、若駒の頃は典型的な人気先行タイプでした。そんなサクラバクシンオーが4歳の秋を迎え、キャピタルSで見せた走りに私は驚かされました。道中は2、3番手でピタリと折り合い、最後の直線に向いても鞍上の小島太騎手の手綱は持ったまま。ゴール前でわずかに手綱を緩められると、後続を楽々と突き放すという、ひと皮むけた走りを披露したのです。これだけスピードのある馬が、精神的に大きく成長し、スピードをセーブして走られるようになったのですから、他馬に付け入る隙はありませんよね。

それからのサクラバクシンオーは、まさにその名のとおり、短距離路線を驀進していきました。マイル戦ではノースフライトには敵いませんでしたが、スプリントレースでの強さは破格でした。94年の二度目のスプリンターズSでは、外国馬を迎え打つ立場でしたが、あっさりと自分の形に持ち込んで楽勝してしまいました。前年のリプレイを観ているかのような鮮やかなレースでしたね。G1レースともなると、道中のペースが極端に速くなりますので、後ろから行く差し馬に有利な展開になりやすいのですが、引っ張りきれないほどの手応えで先行して最後の直線で抜け出す、まさにこれぞ本物のスプリンターの正攻法の勝ち方だったと私は思います。

1994年スプリンターズS

これが本物のスプリンターの正攻法の勝ち方です。
亡き全演植オーナーのためにも、命を賭けても負けられないレースでもありました。

種牡馬としても見事に成功しましたね。サクラバクシンオーは性格が真面目すぎて、距離が持ちませんでしたが、父サクラユタカオー譲りの伸びのある馬体をしていました。そこで、マイルから2000mくらいの距離をこなせる産駒が出てくるのではと私は思っていたのですが、どうやら前向き過ぎる気性も同時に伝えているようですね。ショウナンカンプをはじめ、シーズトウショウ、ブルーショットガンなど、数々の名短距離馬を輩出しています。また、自身が古馬になってから完成されたように、産駒も早熟なようでいて実は古馬になってからひと皮むける、成長力のある馬が多いのも特徴です。そういう意味では、非常に遺伝力の強い馬です。

カノヤザクラも古馬になってから完成された感があります。3歳時はチグハグなレースを繰り返していましたが、アイビスサマーダッシュ、そして前走のセントウルSは、他馬を寄せ付けない完勝でした。ある程度、先行できるようになって、末脚もシッカリしているので、今回も安定して力を出し切れるはずです。500kgを超える馬体は牡馬顔負けで、パワーでも見劣りしませんね。サマースプリントチャンピオンですが、北九州記念をパスしてのものですので、昨年のサンアディユと比べると、まだ十分に余力を残しての参戦になります。最強スプリンターの血を受け継ぐカノヤザクラが、父子スプリンターズS制覇を叶えることが出来るのか楽しみです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

◎アサクサキングス

Jiromaru

とうとう春のG1シリーズのフィナーレ、宝塚記念がやって来てしまいました。ウオッカやアドマイヤジュピタの出走がないのは残念ですが、少頭数ながらも個性豊かなメンバーが揃いました。ウオッカが宝塚記念に出てくれば好勝負になったことは間違いないのですが、陣営はコースや馬場適性を考慮に入れて、より勝利の可能性の高い天皇賞秋の方を選択したということですね。

宝塚記念を勝ち、なおかつ秋の天皇賞に良い体調で出走することはローテーション的に至難の業ですので、そういう各陣営の思惑を読むことも重要になってくるでしょう。もう少し具体的に言うと、秋の東京コースのような軽い馬場ではなく、今の阪神コースのような力を要する馬場に適性がある馬を狙うべきということです。

また、宝塚記念はシーズンオフに近いG1レースですので、どれだけ余力があるかも大きなポイントになってきます。天皇賞春で力を使い果たしてしまっていたり、年明けから走り続けてきているような馬は、宝塚記念で遂にガス欠を起こしてしまうことが往々にしてあります。サラブレッドの苦手な夏に向かいつつある時期でもありますので、体調には十分な注意が必要でしょう。

結論から述べると、本命は◎アサクサキングスに打ちます。実は前走の天皇賞春でも本命を打ったのですが、なんとも不甲斐ないレースでした。1番人気を背負って、他馬の目標にされてしまったということはあったにせよ、直線で一度も先頭に立つこともなく、伸びを欠いてしまいました。今から冷静に振り返ってみると、もしかすると3200mの距離が少し長かったのかなとも思います。3000mの菊花賞を勝ったアサクサキングスに、距離が長いと言うのは変だと思われるかもしれませんが、マイラーを輩出するスピードの勝った母系という血統的背景だけではなく、およそ20kg増えて逞しくなった馬体からも、中距離馬としての本質が顕在化してきたということがうかがい知れます。横から見るとスラっとしたステイヤー体型ですので、それだけ前から見た馬体の幅が広がっているということでしょう。古馬になって、パワーとスピードの資質が増強されたのです。

フットワークの大きなアサクサキングスにとって、明日の天気次第では重馬場が不安材料になりますが、首の高い走法からもこなせる可能性は十分にあります。逆に、外枠を引いたことはプラス材料になります。逃げるエイシンデピュティの外、2、3番手を伸び伸びと走ることが出来るはずです。向こう正面、そして3~4コーナーにかけて淀みないラップが刻まれることも、この馬にとってはおあつらえ向きのレースになるでしょう。瞬発力勝負になると分が悪いのですが、ジワジワと進出して、最後まで踏ん張り通すレースをしてくれるはずです。さらに、今年に入って3戦目というフレッシュなローテーションにも好感が持てます。菊花賞後に無理をさせることなく成長を促したことが、ここに来てプラスに働くのではないでしょうか。アサクサキングスには、ここを勝ってヨーロッパへの遠征を期待したいです。

メイショウサムソンは人気どおり、勝つ確率という点では最も高いかもしれません。なんといっても、好枠を引いたアドバンテージを生かして、武豊騎手が積極的に乗ってくるはずです。昨年の秋は、天皇賞秋をピークとして、ジャパンカップ、有馬記念と体調は下降線を辿りましたが、今年はその反省を生かして仕上げてきています。産経大阪杯は余裕残しの仕上げで、叩いた天皇賞春では一変しました。この馬も今年に入って3戦目で、昨年のこの時期に比べると体調面では上のはずです。あっさりと勝たれても仕方ありませんね。それでもサムソンに本命を打たなかったのは、1週間前追い切りはバツグンでしたが、最終追い切りの動きがあまり良く見えなかったからです。舌を出して集中力を欠いていたように映りました。杞憂に終わるかもしれませんが。

エイシンデピュティは、当初、本命まで打とうかと考えていた馬です。前走の金鯱賞では、苦手の左回りもなんのその、あっさりと押し切ってしまいました。なんといっても、産経大阪杯で見せた走りは本物です。アサクサキングスやメイショウサムソンと比べ、使ってきていたアドバンテージはあったものの、ダイワスカーレットに食い下がりましたから。渋太いレース振りを見る限り、2200mの距離も心配ありませんし、パワータイプだけに宝塚記念への適性は十分です。展開次第ではアッと言わせることもあるはずです。ただ、私がこの馬の評価を最後に下げたのは、やはり昨年から今年にかけて使い詰めの厳しいローテーションで走り続けてきているからです。体調維持に専念したかのような最終追い切りにも、少し疑問符が付きました。

ロックドゥカンブは、前走を叩いて上向きの体調で臨んできますし、力の要る阪神の馬場も合うはずです。将来性ということでいえば、4歳馬の中でも一番かなと評価している馬ですので、好走してくることは間違いないでしょう。ただ、前走で太目残りとはいえ、あっさり負けてしまったのが気になります。アルナスラインについても同じことが言えますね。まだ完全に力が付き切っていないからこそ、G2レベルを勝ち切れないのでしょう。果たして古馬の定量戦である宝塚記念を勝ち切れるでしょうか。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (14)

メジロライアンのモヒカンカット

Jiromaru

宝塚記念といえば、夏の香りと共にいつも思い出されるのがメジロライアンのことです。まさに私が競馬を始めた頃に活躍していた馬だけに、その名前を聞くだけで、あの頃の初々しい想いが蘇ってくるようです。ライアンという名前の由来は、あの大リーグの豪腕ノーラン・ライアンからだそうです。メジロライアンと言えば、横山典弘騎手ですよね。この2人は名コンビというか、最高のパートナーでした。そして、やっぱりというか、この2人は大レースでなかなか勝ち切れなかった(笑)。

皐月賞3着
ダービー2着
菊花賞3着
有馬記念2着

特にダービーでは、1番人気を背負って、後ろから行って届かず2着。この時、横山典弘騎手は、その乗り方についてかなり酷評されました。後ろから行って脚を余すくらいならば、前に行ってバテた方がいい、という古い考えがまだ残っていた時代でしたから。今観てみると、勝ったアイネスフウジンが強すぎただけで、あの時点では最高の騎乗だったと思います。

夏を越して、菊花賞こそはとファンからの期待も高まったのですが、彼らの前に立ちはだかったのは、あの最強ステイヤー・メジロマックイーン。その恐ろしいまでの強さの前に、ライアンは連対すら確保することができませんでした。続く暮れの有馬記念でもオグリキャップの2着。大川慶次郎さんの掛け声の後押しがあったにもかかわらず(笑)、とうとうG1レース未勝利で3歳時を終えることになってしまいました。

このあたりで、イマイチくんのイメージが定着してしまったような気が…。まあ、その勝ち切れない二人にも、古馬になってようやく勝利の女神が微笑むことになりました。4歳時の宝塚記念で、宿敵メジロマックイーンを倒し、ようやく念願のG1タイトルを手に入れたのです。先行して押し切ってしまうという横綱相撲だったのですが、実は私はライアンがマックイーンに勝つことを予測していました。

競馬好きのあらゆる友達に、「今度こそライアンがマックイーンに勝つ!」と宣伝して回ったのですね。しかし、それまでの2頭の対決だけを見れば、マックイーンの方が強いことは明らかでしたので、「ライアンがマックイーンに勝てるわけがない!」という反応がほとんどでした。だからこそ、宝塚記念でのライアンの見事な勝利は、横山典弘騎手と同じくらい、私も鼻高々な気分だったことを覚えています。

とはいっても、本当のことを言うと、ライアンがマックイーンに勝てる理由なんて私も分かりませんでした。競馬を始めてわずかの頃でしたので、理論や理屈でライアンを推したわけではなく、ライアンを応援したかった気持ちが勝てるという妄想にすり替わっただけでした。

私がライアンを応援したくなった理由は、あのモヒカンカットのエピソードを宝塚記念の前に知ったからです。ご存知ではない方もいらっしゃると思いますので説明しておきますと、メジロライアンは馬一倍(?)皮膚が弱くて、タテガミを伸ばしていると、首の肌が荒れて、痒く(かゆく)なってしまったそうです。だから、メジロライアンはいつもタテガミを短く切っていて、まるでモヒカンのような髪形をしていたのです。私も小さいころアトピーで悩んだ経験がありまして、そんなこんなでモヒカンカットのライアンを応援したくなったのです。そんなことで初心者の予想が当たるのも競馬の面白いところです。メジロライアンの余生が幸せであることを願います。

メジロライアンとその産駒たち

ほんの少しですが、宝塚記念とモヒカンカットがご覧になれます。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

◎グッド馬場

Jiromaru

安田記念は2005年よりアジアマイルチャレンジの最終戦として位置づけられ、それ以降、香港のトップマイラー(もしくはスプリンター)がこぞって参戦してくるようになりました。全般的に、スプリント戦であれば香港馬、中距離以上のレースであれば日本馬の方が強いのですが、ことマイルの距離においては、香港馬と日本馬は互角のレベルにあります。

そのため、わずかに日本に地の利があるとしても、基本的には国際的な強いマイラーが勝つのが安田記念ということになるはずです。つまり、本当に強いマイラーであれば、フューチュリティS→ドバイデューティーフリー→チャンピオンズマイル→安田記念というレース体系の中で戦ってくるはずで、そういう馬を狙うべきだということです。

本命は5連勝中の◎グッドババに打ちます。昨年は初来日で7着と惨敗してしまいましたが、その後、完全に本格化しました。サラブレッドにとって、海外へ遠征することにはデメリットとメリットがあります。デメリットは、輸送や環境の大きな変化によって馬が傷んでしまうこと。メリットは、輸送や環境の大きな変化によって、馬が精神的に強くなったり、リフレッシュされることです。グッドババの場合は、完全な後者だったのですね。元々能力は高かったのでしょうが、昨年の安田記念を境に、馬が変わりました。

前走のチャンピオンズマイルは、4コーナーでは既に先団に取り付き、直線では馬なりで先頭に立つ勢いの圧勝でした。他馬とはエンジンの性能がふたつぐらい違う感じでしたね。馬体や走り方を見る限り、スパッと一瞬の切れ味がある馬ではなく、しぶとく伸びて、最後はパワーでねじ伏せるタイプです。決して派手な勝ち方をするわけではありませんが、こういうタイプが充実すると、なかなか取りこぼしが少ないのが特徴です。

あまり内を引きすぎると、押し込まれて、馬場の悪いところを通らされる心配がありましたが、9番枠ならばギリギリセーフでしょう。道中は馬場の良いところを選んで走り、最後の直線ではド真ん中に出して追ってきて欲しいものです。少し重くなってきている東京の馬場も、グッドババにとってはGood馬場!だと思います。

ウオッカは、馬体をフックラと見せ、毛艶も良くなってきているように、どん底の状態であった前走に比べ、明らかに体調は上向いてきています。もちろん、この馬にはダービーを勝ったことによる燃え尽きという、目に見えない要素があるので要注意ですが、今回は久しぶりのチャンスなのではないでしょうか。また、牡馬に混じって走ったドバイデューティーフリーも非常に価値が高いと思います。このレースを勝ったジェイペグがシンガポール国際カップも制したように、メンバー・内容ともにハイレベルな一戦での僅差の4着でした。日本馬の代表として、グッドババと叩き合いを演じて欲しいものです。

現在1番人気に推されているスーパーホーネットは、昨年の秋以降、充実した走りを続けていますね。前走の京王杯SCの走りは圧巻でした。中間は美浦に長期滞在して、苦手な輸送を避ける作戦です。ただ、休み明けを経て、少しずつ減っている馬体が気になりますね。特に前走の勝ちっぷりと馬体重を見る限り、前走がピークで、本番へ向けての大きな上積みは望めないはずです。あとは充実してきている現在の力がどこまで通用するかでしょう。

馬場を考えると、スズカフェニックスにもチャンスが訪れるかもしれません。ダービーが終わり、私たちの張り詰めた気持ちがスッと緩むのと時を同じくして、ダービーまではなんとかもっていた芝も、急激にガタっと悪くなってしまいます。今年の安田記念はダービーに引き続きCコースで行われますので、どう考えても馬場の内側が傷んでいますよね。そこを走らされた馬が、いつのまにかスタミナを奪われて失速するというシーンを、安田記念で私は何度も観て来ました。グッドババやウオッカに比べ、スタミナという面では一抹の不安が残りますが、馬場の良いところを走られる外枠を生かすことが出来れば、好走も期待できるはずです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (12)

◎ディープスカイ

Jiromaru

お手紙ありがとうございます。いよいよダービーの日がやってきました。シンボリルドルフがダービーを「勝つ馬」が勝つレースに変えたのですね。私もルドルフおやじさんに倣って、「勝つ馬」を探してみたいと思います。

各馬の評価の前に、まずは今年の出走馬をローテーション別に分けて考えてみたいと思います。というのも、今年は最もダービーへとつながりやすいとされる皐月賞組に大きな特徴があるからです。これは皐月賞のレース前に感じたことですが、各馬がずいぶんと皐月賞に勝負を賭けてきたなということです。抜けた馬がいない混戦であっただけに、ダービーを見据えてではなく、皐月賞を勝ちにきた仕上げの馬が多かったということです。

勝ったキャプテントゥーレを筆頭にして、タケミカヅチ、レインボーペガサスなど、究極の仕上げを施してきた馬が多く、着順こそ脚質が左右しましたが、結果的にそれらの馬が上位を独占しました。弥生賞がギリギリの造りであったマイネルチャールズは踏ん張ったものの3着に破れ、スプリングSで仕上げ切ってしまったスマイルジャックは惨敗してしまいました。

つまり、何が言いたいかというと、皐月賞組(特に上位組)の中では、ダービーへ向けての上積みを期待できそうな馬が見当たらないということです。ショウナンアルバのようにまともに走らなかった馬を除いては、良くて平行線、悪ければ体調が下降して臨んでくる馬が多いはずです。

そこで私は今年こそ青葉賞組からダービー馬が出るのではないかと思い、府中までダービー馬を探しに行きましたが、レース後には無駄足だったことを悟りました。アドマイヤコマンドは強いレースをしてくれましたが、なんとこの馬も青葉賞でダービーの権利を獲るために、かなりのところまで仕上げてきていました。こちらも良くて平行線の体調での出走になってしまうでしょう。アドマイヤコンドル以外の青葉賞組には、ダービーで勝負になるだけの完成度を感じませんでした。

果たして今年のダービーはどうなるのかと思った矢先、翌週のNHKマイルCを観て、ようやく霧が晴れた思いがしました。スピードだけでは乗り切れない府中のマイル戦で、ゴスホークケンが淀みのない流れでレースを引っ張り、まさに各馬の総合力が問われる内容でした。勝ったディープスカイも2着に敗れたブラックシェルも、ダービーを見据えた仕上げの中、高いパフォーマンスを見せてくれました。馬場の影響で1分34秒台での時計の掛かる決着になったことも、馬の肉体面へのダメージを考えると吉と出そうです。

今年の本命は、NHKマイルC勝ち馬の◎ディープスカイに打ちます。前走のNHKマイルCは展開が向いたこともありましたが、強靭な末脚を発揮した強いレースでした。皐月賞をパスして、間を開けてみっちり乗り込んだことにより、体に芯が入って、ひと回り大きく成長を遂げました。皐月賞をパスしたことについて、昆調教師の「2、3着を拾っても意味がなかった」という言葉には力がありますね。NHKマイルCを叩いて、1週間前追い切りでは51秒台が出たように、さらに体調はアップしています。馬体を見ても、前走を快勝した反動は感じられませんね。

マイル戦であれだけ切れた馬だけに、距離が伸びてどうかという不安はありますが、折り合いのつく馬ですし、府中のマイル戦の激しいレースを勝ち切っていますのでスタミナに心配はないでしょう。あとはハンドル操作の難しい(敏感な)馬ですので、四位騎手が馬のリズムで走らせてあげることができるかどうかです。1番枠を引きましたので、スタートしてから1コーナーまでの所をどれだけスムーズに捌けるかがポイントですね。幸いにも、四位騎手には昨年ダービーを制した経験がありますので、落ち着いて乗ってくれると思います。

NHKマイルCを2着したブラックシェルも勝ち負けになる1頭です。ここに来て、馬体のバランスが良くなってきており、2400mの距離にも適応できそうな雰囲気が出てきました。そう考えると、恐ろしいですね、松田国調教師という人は。調教で馬を変えることが出来るのですね。さすがにダービーをタニノギムレットとキングカメハメハで2勝しているだけのことはあります。これら2頭には敵いませんが、ブラックシェルも府中でこそのフットワークで走る馬で、もちろん鞍上の経験も怖いですね。武豊騎手には意地を見せてもらいたいところでもあります。

ダートを4連勝して、追加登録料を払ってでもダービーに出走してきたサクセスブロッケンには、未知の魅力があります。調教師も主張するように、馬体ひとつを取ってみても、とてもダート馬のそれとは思えません。ただ、追い切りでも速い時計が出ないように、まだ全体的に馬体に力が付き切っていません。この馬がダートを得意とするのは、かき込むような走法だからということに加え、力が付き切っていない部分を補うことが出来るからです。そういう現状を考えると、将来的には天下を獲る馬になるかもしれませんが、現状としては他馬に比べて完成度で劣ると考えています。

今年のダービーはプレミアムレースですので、大きく賭けようと思っていたのですが、雨が私の頭を冷やしてくれました。2分数十秒に凝縮されたドラマを、一瞬たりとも見逃さないように楽しみたいと思います。まずは全馬が無事にゴールまで走り切ってくれることを願います。ルドルフおやじさん、そして「ガラスの競馬場」を読んでいただいている皆様にも、よいダービーが訪れますように。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (15)

ルドルフおやじからのダービー特別寄稿

Rudolf

一時も仕事のことが頭から離れず、ふーふー言いながら毎日過ごしています。

頭を切り替える、その時間もない悪い状態。せめてダービーウィークの最後だけは・・と思ってキーボードを叩いています。

だれが笑うことができるか?

ビートルズは2人になってしまいましたが、ストーンズは元気ですね。かつてロン・ウッドがストーンズに加入したときに、「ストーンズに入って一番しんどいのは・・・ストーンズのように生きなければならないこと」と言っていたのを思い出しました。

還暦を過ぎたミックやキースがストーンズのように生きつづけている、ってのは凄いですね。

岡部幸雄はルドルフに乗る前は、評価でいうとナンバー2辺りにいる、地味な印象を与える騎手だったような気がします。ただラフプレイをした若手騎手に鉄拳制裁を加えたなんていう記事が一般週刊誌に載ったりして、へえ、ずいぶん厳格な騎手もいるもんだ、と思っていましたが、今、思えば岡部幸雄の人生を貫き通しているのは、この厳格さだったんだ、と気づく次第であります。

岡部幸雄の凄いのは岡部幸雄のように生きたことです。
ルドルフの凄いのはルドルフのように駆けたことです。

おやじのような者は、決して真似できない人生の輝きを垣間見てふーっと救われた気分になるわけです。岡部幸雄が、ルドルフがおやじの替わりに凄い人生を生きてくれている。

数年前、後藤が何某と大ガンカしたあげく、殴って処分を受けたなんていうのがありましたな。なんと子供っぽいことか。後藤は今でも天真爛漫に乗って子供のように勝利騎手インタビューでわけのわからないことを話している。こういうのを見ていると落ち込んでしまう。後藤がおやじの人生を生きている、がっははは。

あっ、ダービーですね。今年は血統も何もあったもんじゃあない。何も知りません。馬券を買う時間を捻出して2000円ほど買ってみます。

かつて皐月賞は「勝つ馬」が勝つレースでした。ダービーは「負けない馬」や「負ける」馬が勝つレースでした。それを変えたのはルドルフだったような気がします。

今年の皐月賞は「負けない馬」トゥーレが勝ちましたね。今度は「勝つ馬」でいくことにします。ブラックシェルやディープスカイあたりに注目しています。

やっと仕事が頭から離れました。感謝です。

今日の深夜か明日の治郎丸さんの予想を楽しみに待っています。

治郎丸さんによいダービーが訪れますように神のご加護を。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

誰に笑うことが出来るだろうか?

Jiromaru

Winningticket_2「ダービーを勝ったら騎手を辞めてもいい」という柴田政人元騎手(現調教師)の言葉には、全てのホースマンのダービーに対する思いが込められているような気がします。競馬の世界では誰もが一度はダービーを夢見ますが、実際にダービーの栄光を掴み取ることが出来るのはわずか一握りの者にしかすぎません。だからこそ、ホースマンは自らの存在と引き換えにしてでも、ダービーの名誉を手に入れたいと思うようになるのです。ウイニングチケットでようやくダービーを勝った時のインタビューにて、柴田政人元騎手は、「世界のホースマンに、第60回のダービーを勝った柴田ですと伝えたい」と答えました。もしかすると、ホースマンはダービーを勝つことで初めてホースマンになるのかもしれません。

柴田政人騎手と競馬学校の同期であり、かつ永遠のライバルでもあった、あの岡部幸雄騎手でさえ、たった一度しかダービーを勝つことは出来ませんでした。そう、20世紀の最強馬である皇帝シンボリルドルフとのコンビで挙げた1勝のみです。シンボリルドルフに出会ったこの年、岡部幸雄騎手は34歳でした。それまで決して順風満帆とはいえない騎手人生を送ってきた岡部幸雄騎手にとって、皐月賞を圧勝したシンボリルドルフをパートナーに迎えるダービーは、まさに千載一遇のチャンスだと思えたそうです。シンボリルドルフなら勝てるだろうという希望と、これで負けたらもう一生ダービーを勝つことはないだろうという絶望を、岡部騎手は両手綱に抱えながら第51回ダービーのスタートは切られたのです。

私たち競馬ファンがシンボリルドルフの異変に気付いたのは、レースが向こう正面に差し掛かったあたりだったでしょうか。なんとシンボリルドルフがなかなか前に進んで行こうとしないのです。皐月賞をほとんど持ったままで勝った時とは全く別の馬のような行きっぷりの悪さで、岡部騎手が追っ付けながらやっとのことでレースについて行っているという状態でした。焦った岡部騎手は肩ムチを1発、2発と入れました。スタンドで見守っていた野平祐二調教師の周りからは悲鳴が聞こえました。残り500m。シンボリルドルフはまだ7番手以降。この時点で、和田共弘オーナーは「もうダメだ」と目を閉じました。

「行くぞ。しっかりつかまっていろ!」というルドルフの声を岡部騎手が聞いたのは、府中の最後の直線ラスト400mのところでした。ルドルフは前との差を一気に詰め、最後の200mでは前を行くスズマッハに並んだかと思いきや、あっという間に交わし去り、ゴールでは先頭に立っていたのです。岡部幸雄騎手はレース後にこう語りました。「僕自身がルドルフに一切を教わりました。途中でどうなったのかと思いましたが、動くにはまだ早いということをルドルフの方が良く知っていたのですね。焦っていた私をルドルフが助けてくれたのです」と。

第51回ダービー

皇帝ルドルフが最も苦しんだレースのひとつです。

シンボリルドルフに助けられてラストチャンスを手にした岡部騎手は、それ以降、ジョッキーとしての大輪を花咲かせました。1987年には自身初のリーディングジョッキーとなり、多くの名馬と出会い、数多くの大レースを勝ち、57歳まで現役を続けながら、生涯通算で2943勝という大記録を打ち立てました。まさにジョッキーはダービーを勝つことで初めてジョッキーになったということなのでしょう。それだけの魔力がダービーにはあるということです。

「誰にミックジャガーを笑うことが出来るだろうか?」という村上春樹のエッセイがあります。

ミックジャガーは若いときに、「45歳になって『サティスファクション』をまだ歌っているぐらいなら、死んだ方がましだ」と豪語した。しかし、実際には60歳を過ぎた今でも『サティスファクション』を歌い続けている。そのことを笑う人々もいる。しかし僕には笑えない。若き日のミックジャガーは45歳になった自分の姿を想像することが出来なかったのだ。若き日の僕にもそんなことは想像できなかった。僕にミックジャガーを笑えるだろうか?笑えない。

「ダービーを勝ったら騎手を辞めてもいい」と語った柴田政人騎手や、ダービーでシンボリルドルフにレースを教えられた岡部幸雄騎手を私たちは笑うことが出来るでしょうか?柴田政人騎手はダービーを勝ったからといって本当に騎手を辞めたりはしませんでしたし、岡部幸雄騎手はダービーを勝った後に超一流ジョッキーへの道を歩み始めました。ホースマンはダービーを勝つことで初めてホースマンになるのです。私たちに柴田政人騎手や岡部幸雄騎手を笑えるでしょうか。笑えません。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (6)

◎エアパスカル

Jiromaru

華やかなオークスの週にこんなことを書くと怒られるかもしれませんが、人間と同じように馬にも性豪と呼ばれる馬がいます。その中でも最も有名なのが、ハイセイコーやアカネテンリュウ、タケシバオーなど数々の名馬を輩出したチャイナロックではないでしょうか。通常、種付けの前には、アテ馬が繁殖牝馬を発情させて種付け行為を可能な状態にするのですが、チャイナロックはアテ馬に任せるのではなく、自ら進んでこの行為を行い、しかも相当に上手かったそうです(笑)。現在ほど獣医学が発達していなかった時代に、29歳の高齢まで種付けを行い、生涯で1300頭以上の繁殖牝馬と交配を行ったと記録されています。

もちろんその逆もあって、たとえ種牡馬であっても種付けに淡白な馬もいます。ザテトラークやブランドフォードは、種付けに淡白な馬は種牡馬として成功しないという定説を覆し、わずかな頭数しか誕生させていないにもかかわらず、種牡馬として子孫を大繁栄させた馬です。

ザテトラークは芦毛のアイルランド産馬で、現役時代は7戦無敗の最強スプリンターでしたが、種牡馬としては苦しい日々を送ることになりました。とにかく種付けが嫌で、スタッフにうながされて繁殖牝馬の背中に乗るや、1、2回ピストン運動をしただけで発射せずに降りてきてしまうのが当たり前でした。また、馬は射精をすると尻尾の付け根を痙攣させるため、スタッフはその仕草を見て種付け完了を確認するのですが、ザテトラークは頭も良かったのでしょう、尻尾を痙攣させて射精したフリをすることもあったそうです。結局、年間で6、7頭前後、生涯で130頭ほどしか産駒を誕生させることが出来ませんでした。

ブランドフォードも同じく種付けに興味を示さなかった種牡馬です。興奮した繁殖牝馬を目の前にしても、ボーっとしながら周りを歩き、30分から1時間ほどしてようやく行為に及ぶといった始末でした。いつまで経ってもその気にならないこともしょっちゅうで、いつも種付けスタッフを困らせていたそうです。それでも、産駒が誕生するやもの凄い勢いで活躍し、イギリスの3冠馬バーラムを筆頭にたくさんの名馬を輩出しました。

日本の競馬を席巻したノーザンテーストやサンデーサイレンスにも、実はこの2頭の血が色濃く流れています。サンデーサイレンスはマムードの4×5のクロスを持ちますが、このマムードの祖母の父がザテトラークで、祖父がブランドフォードです。マムードはその名こそ目立ちませんが、サラブレッドの血統を裏で取り仕切っているような種牡馬界の裏番です。種付けに淡白だったザテトラークやブランドフォードからマムードが誕生し、そこからさらにノーザンテーストやサンデーサイレンス生まれたという事実は本当に面白いですね。

私は3年ほど前、社台スタリオンステーションを見学させてもらいましたが、シンボリクリスエスやマンハッタンカフェ、クロフネなど、今をきらめく種牡馬たちと同じ厩舎の一番隅の馬房で、物音ひとつ立てず申し訳なさそうに暮らしている馬がいました。スタッフの方にその馬の名前を尋ねたところ、「ウォーエンブレムです」という答えが返ってきました。とても鳴り物入りで日本に輸入されたアメリカの2冠馬には見えませんでした。種牡馬としての評価がガタ落ちしただけではなく、毎日嫌いなことばかりやらされて、サラブレッドとしての自信を失ってしまっていたのでしょう。馬房の中から目だけが光っていたシーンは今でも忘れられません。

2003年には40頭の牝馬を受胎させ、ようやく復調気配を見せたのですが、翌年の2005年には再び9頭と激減しました。そして、2006年は僅か1頭になり、あらゆる策が講じられたものの、ついに2007年以降はウォーエンブレムの仔が生まれてくることはありませんでした。

それでも、2005年に誕生した33頭の中から、キングスエンブレムがすみれS、ショウナンアルバが共同通信杯、エアパスカルがチューリップ賞、ブラックエンブレムがフラワーCを制しました。産駒全体の勝率は18.8%と、サンデーサイレンスの12.1%を大きく上回っています。もの凄い遺伝能力ですよね。もしウォーエンブレムが、サンデーサイレンスのように年間200頭もの産駒を誕生させることが出来ていたら、果たしてどうなっていたのでしょうか。

さて、今年のオークスにも、ウォーエンブレム産駒が2頭登場します。ブラックエンブレムも魅力があるのですが、思い切って本命は◎エアパスカルに打ちます。前走の桜花賞では9着に惨敗してしまいましたが、先手を奪えなかっただけではなく、厳しいペースを前で追走した割には、最後まで良く頑張っていました。スローに流れたチューリップ賞と正反対のペース(展開)だっただけに、いきなりの速い流れに戸惑い、自分のペースで走られませんでしたね。今回はこれといって行きたい馬も見当たらず、外枠からスムーズに逃げもしくは先行できるのではないでしょうか。イメージで言うと、ダイワエルシエーロが勝った時のような位置取りです。オークスは桜花賞組から狙うのは基本ですが、その中でも巻き返しが期待できるエアパスカルに妙味があります。

また、藤岡佑介騎手の勢いも見逃せません。先週の日曜日は4連勝して、安藤勝己騎手を抜いて関西リーディングの第3位に上がってきました。技術的な部分での向上はもちろんのこと、常に馬のリズムに合わせて騎乗しているのが藤岡騎手の素晴らしいところです。いつも楽しく誇らしげに乗っている姿を見ると、家族からもしっかりと応援されているんだろうなと思います。

これはジョッキーだけに限ったことではありませんが、やはり家族からの応援があるのとないのとでは大きな違いがあります。昔は一人前になるまで帰ってくるな!と言って世間に送り出したものですが、今は違いますよね。イチロー選手や石川遼くんのように、トップに立つアスリートの陰には、必ずといっていいほど、自分たちの子供のやりたいことを心から応援している家族の姿が見え隠れします。あの岩田康誠騎手のお父さんも、熱烈な岩田康誠騎手の追っかけだそうですね。藤岡佑介騎手には、これから日本を背負って立つジョッキーのひとりになって欲しいものです。

押し出される形で1番人気になるのはリトルアマポーラでしょうか。牡馬を相手の重賞でも僅差の4着と健闘したように、このメンバーでも能力は上位です。東京競馬場を経験していることもプラス材料です。前走はクイーンSから間隔が空いて、仕上げが難しく、少し重めが残った体調での出走となったのではないでしょうか。道中から行きっぷりが悪く、追い出してからの反応もイマイチでした。今回は馬体を回復させながらもキッチリと調教が施され、前走に比べてもさらに上向きです。ただ、後ろから行く脚質に加え、大外枠を引いてしまい、外々を回されてしまう可能性があります。また、切れ味が特徴な馬だけに、重馬場になりそうな雨模様も心配です。先頭で駆け抜けるだけの能力はありますが、極めて乗り難しい状況でもあるという理由で、この馬を本命にはしませんでした。

桜花賞で1番人気を集めたトールポピーは、なぜか馬体重を大幅(-10kg)に減らしてしまい、惨敗してしまいました。この馬向きの展開になっただけに残念でしたが、ここに来て、本番が近いことを悟ると馬が自分で体を作り始めるようになったということです。周りの状況や人間の行動から本番が近いことを知ることが出来るほどに頭が良いということですが、そのことがかえってトールポピーにマイナスに働いてしまったのですね。今回も輸送があり心配ですが、体つきを見ると前走に比べ、ふっくらと仕上がっています。この馬は決して早熟タイプではありませんので、普通に走れば、このメンバーでも一枚上の底力を秘めています。ただ、追い切りで引っ掛かる仕草をしていたのが気になったのと、道悪が得意なフットワークではないという点で、本命は打ちませんでした。

桜花賞で3着した関東馬ソーマジックは、今回、長距離輸送をしなくても済むメリットがあります。その分、シッカリと調教が施されていますし、前走からの上り目もかなり大きいはずです。普通に走れば勝ち負けになるはずですが、私としては、馬体に硬さを感じるというか、パワー型の馬であるように思えて、芝の時計の速い馬場での決着に不安を感じていました。特にスローの瞬発力勝負になりやすいオークスは、この馬向きのレースにはならないということで、あまり評価はしていませんでした。しかし、馬場が重くなることがこの馬にとってはプラスに働くはずで、そのことによって勝ち切るシーンもあるかもしれませんね。

桜花賞組以外では、フローラSを勝ったレッドアゲートに注目しています。人気になりそうな馬たちの中では好枠を引きましたね。道中は内々で折り合って、最後の直線で末脚を爆発させるにはちょうど良い枠です。内田博幸騎手を鞍上に迎え、お膳立ては整った感はあります。馬群の中で泥を被って、嫌気を差してスムーズさを欠いてしまうなんてことがなければ、前走の再現をすることも可能でしょう。ただ、馬体的にはまだ幼さを残した未完成の印象を受けますので、将来性はともかくとして、現時点では完成度の高さで桜花賞組の方が有利だと評価しています。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (10)

時代を大きく変えたテスコガビー

Jiromaru

Tesukogabi_2先日、ダービー馬を探しに東京競馬場まで足を運んだついでに、JRA競馬博物館で「オークス展」を見てきました。優駿牝馬の70周年を記念して、歴代の優勝馬の写真や貴重な資料などが展示してありましたが、その中でも、第36回の優勝馬であるテスコガビーのメンコには感激しました。

テスコガビーは8馬身差でオークスを逃げ切り、日本のスピード競馬の幕開けを示した馬です。それまでは、マイルの桜花賞と2400mのオークスは全く異なるものというのが定説で、桜花賞を勝ったスピード馬は、オークスでは軒並みスタミナ不足を露呈して、失速していた時代でした。ところが、テスコガビーはあり余るスピードで、なんとオークスさえも楽々と逃げ切ってしまったのです。距離不安を吹聴していた専門家の口はふさがりませんでした。この日を境として、まるで堰を切ったかのように、スピードが全てを制する競馬の時代がやってきたのです。

テスコガビーは菅原泰夫騎手のお手馬でした。そして、この年、菅原泰夫騎手はもう1頭の化け物の主戦も務めていました。ダービーを伝説のハイペース(前半1000mが58秒9!)で逃げ切ったカブラヤオーです。幸いなことに、テスコガビーは牝馬、カブラヤオーは牡馬であったため、菅原泰夫騎手は桜花賞、皐月賞、オークス、ダービーという空前絶後のクラシック4冠を制することになりました。実は、私が誕生した歴史的な年でもあります(笑)。

テスコガビーとカブラヤオーは一度だけ対決したことがあります。東京4歳S(現共同通信杯)で見えることになった2頭ですが、菅原泰夫騎手はテスコガビーを選んだのです。というのも、これはカブラヤオーが引退するまで誰にも明かされなかったことなのですが、他馬が近くに寄ると怖がって力を出せない弱点を隠すため、テスコガビーに乗って他馬からカブラヤオーをガードする作戦を獲ったそうです。その作戦が見事に成功し、カブラヤオーはテスコガビーとのデットヒートの末に、東京4歳Sを逃げ切り、その後、ダービーを制しました。

直接対決ではカブラヤオーに軍配が上がりましたが、菅原泰夫騎手は「カブラヤオーも強かったけど、テスコガビーはもっと強かった」と後年に語ったそうです。牝馬らしからぬ堂々とした青鹿毛の馬体や鼻筋の美しい流星もあって、テスコガビーはカブラヤオーよりも人気があったのです。その圧倒的なスピードと眩いばかりの輝きに、誰もが目を奪われた競走生活でした。

ところが、そこでめでたしめでたしと終わらないところが、競馬の歴史の恐ろしいところですね。テスコガビーの生涯には、誰もがあまり語りたがらない結末が待っていました。無事に引退して、ようやく繁殖生活に入ろうとしていたその時、テスコガビーはなぜか再び現役復帰に向けて方向転換がなされました。1年間のブランクがあったにもかかわらず、無茶な調教を課せられたテスコガビーは、調教中に心臓麻痺で急死してしまいました。

真相は分かりませんが、テスコガビーの馬主が経営していた会社が、テスコガビーの死の数日後に倒産していることから、馬主にとっての最後の頼みの綱としてテスコガビーが競走に駆り出されたということだったのでしょう。馬の運命も人のそれと同じように数奇なものです。テスコガビーの生涯を不運とする方もいらっしゃるでしょうし、それが運命だったと捉える方もいらっしゃるでしょう。

それでも、テスコガビーがオークスで放っていた輝きは、永遠に私たちの心に残ると私は思っています。スピードだけを頼りに生涯を駆け抜け、時代を大きく変えた牝馬でした。JRA競馬博物館で見た、緑と黄色で彩られたメンコにくり抜かれた目の部分からは、まるでテスコガビーがこちらを見つめているように感じました。

1975年オークス

時代を震撼させたテスコガビーの走りを見よ!

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

◎ジョリーダンス

Jiromaru

ウオッカは牝馬ながらにしてダービーを制しましたが、これは1937年のヒサトモ、1943年のクリフジに次ぐ史上3頭目、64年ぶりの快挙になります。さらに言うと、ヒサトモとクリフジの時代はオークスが秋に行われていたので、この2頭はオークスを捨ててダービーに臨んだわけではありません。つまり、ウオッカは「オークスを敢えて捨ててダービーに挑戦し、勝利した史上初の牝馬のダービー馬」ということになりますね。

海の向こうのケンタッキーダービーを優勝した牝馬ウイニングカラーズが、以降、12戦を走って、ひとつもG1レースを勝てなかったのは有名な話です。その年のダービーのレースレベルが低かったのではないか、と疑う方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。むしろ、歴史に名を残しているような素晴らしいメンバーが揃っていました。

クビ差の2着は3歳チャンピオンのフォーティナイナー。後に日本はもちろん世界的にも評価の高い種牡馬になりました。プリークネスS2着、ベルモントS3着と好走し、日本でも数多くの名馬を輩出したブライアンズタイム。プリークネスSとベルモントSの2冠を制したリズンスター。さらに、ドバイミレニアムやシーキングザパールなど、国際的な名馬を輩出したシーキングザゴールドも走っていました。振り返ってみると、錚々たる面子ですよね。

古馬の牡馬と同じレースで走ることがどれだけ牝馬にとって負担が掛かるか、ということを前回の手紙で書きましたが、たとえ3歳戦であっても、ウオッカは最高峰のダービーを勝ってしまったのですから、その肉体的、精神的な疲労は計り知れないものがあるはずです。ダービー以降はウオッカらしい走りが見られず、ダイワスカーレットよりも下に評価されている向きもありますが、それでは余りにも可哀想ですよね。もちろん、ダイワスカーレットの強さも底なしですが、それと同じもしくはそれ以上の能力をウオッカは秘めています。

ウオッカは果たして復活するのか、それとも競走馬としてはこのまま終わってしまうのか。今回のレースは大きなターニングポイントになりそうですね。私としては、短期放牧を挟んだウオッカが復活してもおかしくはないと思っていますが、1番人気の今回は賭けるメリットがあまりないので本命にはしません。

そこで、本命は◎ジョリーダンスに打ちます。すでに7歳馬ですが、馬体を見ても全く年齢を感じさせません。昨年は連勝して臨んできたのですが、逆に言えば、おつりのない状態だったことも確かです。昨年の安田記念(3着)後、休み明けで減っていた馬体が、東京新聞杯時にようやく戻って、体調は今まさに上り調子です。だからこそ、この中間も追い切り量を増やし、ハードに乗り込むことが出来ています。最終追い切りも、抑え切れない手応えで追走し、追い出されてからはシッカリと伸び切って、目を引く動きでした。

そして何よりも、今年は絶好の内枠を引き当てました。昨年は外枠から後方に控え、脚を余しての5着でしたが、今回はスタートからポンと普通に出していけば、中団より前の位置が取れるはずです。内々で脚を溜めて、最後の直線の瞬発力勝負になれば、この馬にも勝つチャンスは十分にあります。ジョッキーも百戦錬磨の安藤勝己騎手ですので、勝てるポジションを取りに行くはずです。ギリギリまで追い出しを待ち、馬群が開いたら、あとは馬場の真ん中に出してグイグイと追ってきて欲しいものです。

ニシノマナムスメは前走のマイラーズCを2着したように、ここにきて充実してきています。ヴィクトリアマイルは毎年、牡馬を相手に好走してきた馬が激走するレースですので、まさにそれに当てはまりますね。牡馬相手のマイラーズCで2着という実績は、目下の勢いに加え、牝馬同士であれば力上位であることの証明です。追い切りの動きは頭が若干高いのが気になりますが、いつものことなので問題ないでしょう。父はサンデー系の中でも絶好調のアグネスタキオンで、母はあのシンコウラブリイと互角に戦った名牝ニシノフラワーです。これだけ走る条件を満たしていれば、好走は間違いありませんね。

ブルーメンブラッドは石坂厩舎に転厩してから馬が変わりましたね。昨年のヴィクトリアマイル時はまだ線の細さが目立ちましたが、休み明けを経て、前後肢ともに実が入って力強い馬体になりました。特に前脚のかき込みが強くなって、最後の直線でグイグイ伸びてくるようになりました。レース振りがチグハグでなかなか勝ちきれませんが、牝馬同士であれば凡走は考えられません。東京競馬場ですので、この馬のペースで行って、直線で追い出せば確実に伸びてくるはずです。あとはレースの流れ次第ですが、どの程度、前に位置することが出来るかが問題です。

ベッラレイアは秋山騎手に手綱が戻って、大きなドラマを感じさせてくれます。オークスの敗因は仕掛けのタイミングというよりも、道中の走らせ方にあったと私は思っています。スタート後から道中ずっと、なるべく前へつけたいという秋山騎手の気持ちが伝わったのか、ベッラレイアも随分力んで走っていました。秋山騎手とベッラレイアの間の重心がいつもより前に移動していたのです。伊藤雄二元調教師の「道中でベッラレイアの背中が伸びたまま走っていた」、田原成貴元ジョッキーの「仕掛けが1000m早かった」という忌憚のない言葉は、そういう意味でしょう。

ベッラレイア自身は本質的にはマイラーですので、今回は折り合いを気にする必要もあまりなく、2400mのオークスに比べると随分乗りやすいはずです。悲願の初G1レースを勝つにはもってこいの舞台が整いました。休み明けの心配はありますが、1週間前と最終追い切りの動きを見る限りにおいては、肉体面はほとんど仕上がっています。ただひとつ、17番枠を引いてしまったことが悔やまれます。まだ結果が出ていないので分かりませんが、スローに流れがちなヴィクトリアマイルでは外々を回されてしまう恐れがあるからです。


関連リンク
ターフの真ん中日曜日!:その言葉を忘れない
BABOOからの手紙:ヴィクトリアマイルですね

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

古馬になってから牡馬と互角以上に渡り合ったエアグルーヴ

Jiromaru

「最強の牡馬は?」と問われると返答に困るのですが、「最強の牝馬は?」という質問には何の迷いもなく答えることができます。私の知る限りにおいて、エアグルーヴこそ最強の牝馬であり、それは私が生きている限り変わることはないでしょう。そのぐらい、エアグルーヴは不世出の強い牝馬でした。

エアグルーヴの強さは、「古馬になってから牡馬と互角以上に渡り合った」ということに集約されます。牝馬にとって、古馬の牡馬と戦うことは非常につらいことです。牝馬と牡馬では威圧感がまるで違うため、ほとんどの牝馬は古馬の牡馬と戦うともみくちゃにされてしまい、3歳時の輝きは色褪せ、古馬になって全く走らなくなってしまいます。苛酷な戦いによって、心臓発作や心不全を起こしてしまうことさえあります。それほど、古馬の牡馬と戦うこと自体が、牝馬にとっては厳しいことなのです。逆に言うと、古馬の牡馬と互角以上に渡り合ってこそ、最強牝馬の称号を得るに相応しいということですね。

最強牝馬として名前が挙がる、テスコガビーやメジロラモーヌと比べても、その点が圧倒的に違うところだと思います。我が愛しのヒシアマゾンも有馬記念とジャパンカップで2着と健闘しましたが、牡馬とまともにぶつかり合ったという点においては、エアグルーヴには敵わないことを認めざるを得ません。休み明けの中、直線で手前を替えずに勝ったオークスも凄かったのですが、それよりも、充実期にあったバブルガムフェローを競り落とした天皇賞秋は衝撃的なレースでした。牝馬特有の切れ味で差し切ったのではなく、最後まで牡馬の超一流とビッシリと叩き合い、競り落としての勝利でした。

1997年天皇賞秋

サイレンススズカが引っ張った超ハイレベルな一戦をぜひご覧ください。

そして2年連続で2着に好走したジャパンカップは、今振り返ってみても、いや、時が経つにつれて、その価値の高さが身に染みます。負けたとはいえ、ジャパンカップでまともにぶつかり合った相手は、あのピルサドスキーとエルコンドルパサーですよ。ピルサドスキーに負けたジャパンカップは前述の天皇賞秋から1ヶ月も経たないうちのレースでしたし、エルコンドルパサーに負けたジャパンカップも最盛期を過ぎた5歳時のものです。

エアグルーヴを管理した伊藤雄二調教師は、エアグルーヴのことを“競走族”と表現しました。牝馬は牡馬と比べて気分を損ねやすかったり、体調の変化が大きかったりするのですが、まれに優れた“競走族”である牝馬は男性的な感じがするそうです。性格的にもそうなのですが、馬によってはフケ(発情期)を見せない馬もいるのです。エアグルーヴが“競走族”であることを、伊藤雄二調教師は2戦目(いちょうS)にして既に見抜いていたといいます。

とはいっても、エアグルーヴが男馬と見分けがつかないようなゴツイ馬だったのではなく、普段は人懐っこくて可愛らしい牝馬だったそうです。ふっくらとした、牝馬らしい馬体は今でも印象に残っています。“競走族”なんて言われましたが、母馬としてもアドマイヤグルーヴというG1ホースをしっかりと出しましたね。重ね重ね、素晴らしい牝馬だと思います。

ヴィクトリアマイル。古馬の牝馬にとっては大切なレースですね。古馬の牡馬と戦わなくてよいということだけで、牝馬にとっては心身に掛かる負担が減ります。当然、古馬の牡馬に交じって好レースをしてきた牝馬がいれば、いつもと違って何と楽なレースだと感じることでしょうね。牡馬相手にダービーを勝った伝説のウオッカが、久しぶりに牝馬同士のレースに出走してきます。ここでどんなレースを見せてくれるのか、とても楽しみにしています。


現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

◎ブラックシェル

Jiromaru

外はまだ雨がしとしとと降り続いています。確か去年のNHKマイルカップも、こんな前夜を過ごした気がします。重馬場を前提として、思い切って10番人気のフレンチデピュティ産駒のハイソサイエティで勝負に出たら、さらに人気薄の17番人気のフレンチデピュティ産駒のピンクカメオが飛んで来た、という驚愕のレースでした。抜けた馬がいないメンバー構成に馬場の影響もあって、今年も混戦模様ですね。

本命は◎ブラックシェルに打ちます。この馬は跳びが大きくて器用さに欠けるため、中山コースでは思ったようなレースが出来ませんでした。また、入れ込む気性ということもあって、強い追い切りがかけられず、太目が残っていたということも惜敗が続いた理由でしょう。それでも常に好走していたのは能力の高さゆえですね。道悪に関してはプラスに働くとは思えませんが、この時期の府中は馬場の回復も早いので、中山の良馬場より走りやすいかもしれません。距離適性もマイル前後の馬ですし、暖かくなってきてそろそろ走り頃です。陣営はここを叩いてダービーと言っていますが、私はここが目イチの勝負だと思っています。パドックで福寿草特別ぐらいの柔らか味と落ち着きがが確認できれば、勝つチャンスは十分と思っていいでしょう。

Blackshell

ディープスカイの前走は圧巻でした。これまでの詰めの甘さが嘘のような、素晴らしい末脚で他馬を飲み込みました。4代母ミスカーミーを根幹とした活力のある牝系に、チーフズクラウンの近親繁殖が加わった血統からも、おそらくハマると強いタイプなのでしょう。逆に言うと、非常に乗り難しい馬であることも確かです。前走のゴール板を過ぎてからの止め際の仕草を見ても、気分良く走ることが出来なければ惨敗する可能性もある馬だと思いました。皐月賞を回避したローテーションは理想的で、最終追い切りの動きにも弾力性があっただけに、気分良く走られれば勝ち負けでしょう。

スプリングソングはデビューから3連勝で臨んできます。馬体や全身を使った走り方共にスケールの大きさを感じさせる馬です。1200m戦で2勝しましたが、レース振りを見る限り、生粋のスプリンターというよりも、マイル前後の距離でこそ良さが出るタイプだと思います。気性もおっとりとしているので折り合いを欠く心配もありませんし、初コースも問題ないでしょう。あとは道悪馬場がどう出るかということだけですが、立ち気味の繋ぎや蹄の角度からはこなせるはずですが、フットワークの大きい馬だけにノメる可能性もあります。追い出してから伸びるかノメるかは、正直半々といったところではないでしょうか。

1番人気に推されそうなゴスホークケンは、逃げ切りが難しい朝日杯フューチュリティSを逃げ切ったように、スピードとパワーは相当なものがあります。ただ、前走は不可解な惨敗を喫してしまいました。追い切りの失敗や落鉄の影響があったとはいえ、あまりにも走らなすぎましたね。悪いところを全部出してしまった分、陣営も開き直って臨んでくると思いますので、巻き返しは十分に期待できますが、勝ち切るまではどうでしょうか。前走を度外視するには、あまりにもリズムが崩れすぎてしまった気がします。

サトノプログレスは前走のニュージーランドTを制しましたが、内枠からロスなく進み、非の打ち所がないほどレースが巧く進みすぎた感があります。あれ以上のレースは出来ないといったほどで、決してこの馬の力が抜けているわけではありませんね。再び横山典弘騎手が最高に乗ればチャンスは十分にありますが、果たしてどうでしょうか。父がタイキシャトルで、頭の若干高い走法からも、重馬場は苦にしないはずです。

ファリダットは将来性の高い馬です。ゆっくりと順調に育てていけば、いずれは短距離のトップホースに上り詰める可能性を秘めた馬だと思います。たとえ将来の短距離馬でも、この時期であればまだ馬体が緩いので、マイルをこなせてしまいます。たとえば、一昨年に2、3着したファイングレインやキンシャサノキセキは本質的にはスプリンターですが、この時期だからこそ距離をこなせました。古馬になるにつれ、距離適性が顕在化してしまうということです。何が言いたいかというと、この馬も同じパターンで、マイルの距離を心配することはないということです。勝ち切れるかどうかは別にして、馬券に絡んでくることは間違ないでしょう。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (8)

何も死ぬことはない

Jiromaru

最近、悲しい出来事が続きますね。私たちの誰もが知っている馬たちが、次々とこの世を去っていきました。走るために生まれてきたサラブレッドにとっても、競馬のレースは激しく厳しいものです。特に現代の競馬は経済的になってきていることもあり、悲しいかな、私たち人間と同じく、サラブレッドも心身に大きなストレスを抱えて走っています。胃潰瘍を患っていない競走馬はいないとも言われています。明日、別の馬が倒れることがあっても何ら不思議はありません。

人や馬の死を想う時、私はいつも映画「エレファントマン」の最後のシーンで用いられた一編の詩を思い出してしまいます。イギリスの詩人テニソンの「何も死ぬことはない」という詩です。組織が変形・膨張する難病に侵された主人公のジョセフ・メリックが、薄れていく意識の中で、変わりゆく自分を愛し続けてくれた母親が朗読するこの詩を聞くラストシーンです。

Never, oh! never, nothing will die;
The stream flows,
The wind blows,
The cloud fleets,
The heart beats,
Nothing will die.

とんでもない。何も、死ぬことはない
川は流れる
風は吹く
雲は空を行く
心臓は鼓動する
何も死ぬことはない

誰にとっても、明日が訪れるという保証などどこにもありません。今日こうして生きていることと、明日も生きていることの間には明確なつながりなどなく、彼我の間には深く広い川が流れているわけではありません。私たちの人生は、あたかも一本の線で出来上がっているように思えますが、そうではなく、ほとんど奇跡的な一瞬によってのみ存在し、これからも存在するのでしょう。

競馬のレースがそうであるように、私たちの人生も、必然的にこうなったのではなく、偶然が重なり続け、たまたまこうなっただけなのです。もしかすると、ほんのわずかな一瞬の違いで、私たちはここにいなかったかもしれません。ひとつ何かが違っていれば、全く別の人生を生きていたはずです。そして、今ここからさえも、全く別の人生を歩むことが出来るのです。

何も死ぬことはありません。私たちの人生は私たちが考えているほど、今ここにある絶対的なものではなく、川が流れたり、風が吹いたり、雲が空を行ったり、心臓が鼓動したりするように、もっと流動的なものなのです。全ては流れ、変化し続けていくのです。消えることはありません。

私たちにできることは、彼ら彼女らの個別の死を受け入れつつ、生をその全体において抱きしめることです。明日は何が起こるか分からないという根源的な不安と期待と喜びを抱きながら生きていくことです。今、頑張って走っている馬たちを応援することです。もちろん馬券も当てなければなりませんね。今週も競馬を思う存分に楽しみましょう!



映画「エレファントマン」のラストシーンです。興味ある方はどうぞ。(約4分間)


関連エントリ
BABOOからの手紙:競馬場にて思ったこと

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

◎アサクサキングス

Jiromaru

今年の天皇賞春も好メンバーが揃い、果たしてどのようなドラマが私たちを待ち受けているのでしょうか。ホクトスルタンが勝てば、メジロアサマ→メジロティターン→メジロマックイーンに続く、親子4代天皇賞春制覇。メイショウサムソンが勝てば、テイエムオペラオー以来、史上2頭目の天皇賞春秋3連覇。ちなみに、武豊騎手は天皇賞春と秋をあわせて計10勝しており、今回勝つことがあれば、保田降芳元ジョッキーの記録を塗り替えることになります。アイポッパーが勝てば、史上初の8歳馬による優勝となります。

それでも、私は自信を持って◎アサクサキングスに本命を打ちたいと思います。クラシック3冠最後の菊花賞を獲ったようにスタミナは豊富ですし、跳びの大きなフットワークからも、距離が伸びて良いタイプです。横山典弘騎手が2戦目の百日草特別でこの馬の長距離適性を見抜いたのは有名な話ですが、おそらく自身が乗って勝った20004年の天皇賞馬イングランディーレに似た、ホワイトマズル産駒のステイヤーに特有の走るリズムを感じ取ったのでしょう。その横山典弘騎手は、メジロマックイーン産駒のホクトスルタンに乗り、敵としてアサクサキングスに立ちはだかるのですから、競馬は面白いスポーツです。

アサクサキングスの前走は負けて納得のレースでしたね。直線ではダイワスカーレットに引き離されてしまいましたが、それでもステイヤーらしい負け方だったと思います。あまり阪神の2000mで上手な競馬をされても、かえって心配になってしまいますからね。小回りから京都の外回りに替わって、今回は伸び伸びと走ることが出来るはずです。外枠を引いてしまいましたが、1コーナーまでの距離も長いですし、この馬に関しては自分のフットワークで走られる分、馬群に閉じ込められず好材料になるでしょう。前走をひと叩きされて、大きく変わってくるはずです。最終追い切りも重苦しさのない満足のいく動きでした。

もし足元をすくわれることがあるとすれば、極端な瞬発力勝負になった時ですが、これは四位騎手が積極的に仕掛けることにより防げることだと思います。切れる脚がない分、スタミナ勝負に持ち込むためには、他馬よりも少し早目に動きたいですね。菊花賞や産経大阪杯でもそのように仕掛けているように、四位騎手も手の内に入れているはずです。慎重になって仕掛け遅れだけはNGです。ホクトスルタンを目標に、3コーナー下り坂から早めに動いて行くようなイメージで、自信を持って乗って欲しいですね。

アサクサキングスが強引に動いて、上がりが掛かるスタミナ勝負のレースになった場合は、安藤勝己騎手が後ろで虎視眈々と狙っているはずのアドマイヤモナークが面白い存在です。勝ち切るのは難しいと思いますが、今年に入っての充実度からも、展開が向けば、2着争いに加わるチャンスがあります。また、雨が降って馬場が重くなれば、この馬のパワーとスタミナがさらに生きるはずです。言い忘れましたが、アサクサキングスはフットワークからも道悪は苦手ですので、雨が降って馬場が悪くなれば評価を落とさざるを得ませんね。

親子4代制覇の夢が託されているホクトスルタンは、前走のサンシャインSが素晴らしいレース振りでした。馬なりで先頭に立つと、道中は力みなく走り、スピードで他馬を圧倒しました。まるでセイウンスカイのレースを見ているような気がしましたね。前走はメンバーが弱かったので、G1レースの中での力差が正直分かりませんが、アサクサキングスに勝つチャンスがあるとすれば、この馬かなと思います。ホクトスルタンもアサクサキングスもそうですが、母父にサンデーサイレンスが入っていることにより、スピードが存分に補われていますね。たとえ3200mの長距離戦であったとしても、メジロマックイーンやホワイトマズルの血だけでは勝つことは難しいでしょうから。

昨年の覇者メイショウサムソンからは、昨年ほどの勢いを感じません。昨年は冬場を放牧にあてたおかげで心身ともに回復し、馬が唸っているほどの出来でしたから。本質的には中距離馬ですが、昨年は抜群の体調の良さと勢いでなんとか凌ぎ切りましたね。今年はドバイ遠征のプランもあり、放牧には出されず、ずっと厩舎で調整されてきました。時間を掛けて調整されたため、どん底だった有馬記念以来、前走を叩かれて上昇ムードですが、どうしても昨年ほどには映りません。もちろん、実力のある馬ですので、勝ち負けにまで持ち込んでくるかもしれませんが、そう簡単に勝てるとは思えず、今回は評価を下げたいと思います。

アドマイヤジュピタは前走の阪神大賞典を勝ち、長距離戦におけるセンスの良さを証明しました。岩田騎手の騎乗も絶妙だったと思います。この馬の体型は、フレンチデピュティ産駒らしいコロンとした太目に映るそれですが、それでも長距離を走るのは気性の良さゆえでしょう。ジョッキーの指示に素直に従って折り合える賢さが、この馬の最大の武器ですね。もちろん、母父リアルシャダイからのステイヤーの血を引いているということでもあります。ただ、G1レースを勝つにはまだパンチ力に欠けるような気がします。前走で岩田騎手が派手なガッツポーズをしたのも、そういう意味もあるのではと解釈しています。

ポップロックは年齢的に峠を過ぎているのではないでしょうか。有馬記念での凡走がそのことを如実に物語っていると思います。前走にしても、仕上がりも悪くなかっただけに、衰えを隠しきれない敗退でした。どちらかといえば、8歳馬でもまだまだ若々しいアイポッパーの方が面白いでしょう。もう1頭の実力馬ドリームパスポートにとって、3200mの距離は長いのではないでしょうか。2000m前後の距離で一瞬の脚を生かすタイプだと考えていますので、よほど展開が嵌らない限り勝ち負けにはならないはずです。どちらかといえば、次走の宝塚記念でチャンスがあるのではないでしょうか。


関連エントリ
けいけん豊富な毎日:天皇賞最終予想
江戸川コナンの探券帝王学:天皇賞春を斬る!
ウィークエンドの05:王様は俺だ!

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (16)

心震えるレースを

Jiromaru

天皇賞春ではたくさんの名勝負が繰り広げられてきましたが、今でも私の記憶に鮮明に残っているのは田原成貴騎手がマヤノトップガンに乗って勝った平成9年のレースです。レース後は、1日興奮して眠られなかったことを覚えています。もう10年以上も前のことなのですねぇ。競馬におけるありとあらゆる綾が散りばめられた素晴らしいレースで、今観ても心が震えます。

その天皇賞春に臨むにあたって、さすがの田原成貴騎手も、宿敵サクラローレルに勝てる方法が見出せなかったといいます。当時のサクラローレルは、晩成の血が開花した真っ盛りでした。前年の天皇賞春でナリタブライアンをねじ伏せてからというもの、天皇賞秋こそ脚を余して負けてしまいましたが、有馬記念では圧倒的な力を見せつけて勝利しました。確かに天皇賞春はブッツケではありましたが、それすら不安に感じさせないほど、まさに付け入る隙のない強さを誇っていました。どう計算しても勝ち目がないと田原成貴騎手が感じたのももっともだったと思います(実際に私もサクラローレルに本命を打ちました)。

そこで、マヤノトップガンの田原成貴騎手はアルパチーノのビデオを、レース前に何度も何度も観たそうです。えっ、アルパチーノ?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうです。あの「ゴッドファーザー」のアルパチーノです。アルパチーノは私も大好きな俳優で、彼の主演している映画の中では特に「セントオブウーマン」が好きです。盲目の退役兵役なのですが、スポーツカーをかっ飛ばしたり、女性とダンスを踊るシーン、そして、「I’m in the dark !(私は暗闇の中にいる)」というセリフが深く印象に残っています。とまあ映画について語り出すと、「ガラスの映画館」になってしまうのでこの辺で。

なぜ田原成貴騎手が本番前にアルパチーノのビデオを繰り返し観たかというと、意識を消すためだったといいます。演技をしているのに演技をしていないように見えるアルパチーノを見て、そこには余計な意識が働いていないことを悟ったそうです。つまり、ジョッキー(自分)にとっては、何もしない(騎乗技術を使わない)ことが正しい騎乗につながるのであって、今回の天皇賞春をマヤノトップガンで勝つ唯一の方法だと確信したのです。

スタートしてからわずかにマヤノトップガンは引っ掛かったものの、スタンド前までになんとか折り合いがつきました。マヤノトップガンのような首の低い馬は一旦引っ掛かると抑えるのに苦労するのですが、おそらくこれは田原成貴騎手が技術で抑え込んだわけではなく、意識を消すことに成功したのでしょうね。スタンド前を走る馬群の中に、田原成貴騎手とマヤノトップガンの気配がスッと消えて行ったのを私は感じました。

実はこれには伏線があって、マヤノトップガンはこれまで逃げ・先行して結果を出してきた馬でしたが、前走の阪神大賞典では後ろから行く競馬をしたのです。マヤノトップガンの前進意欲が年齢と共になくなってきていたということもあり、田原成貴騎手はマヤノトップガンの気持ちを尊重する乗り方をしたのです。前哨戦はメンバーも違うので結果を出すことが出来ましたが、本番の天皇賞春で同じ乗り方をして通用するかどうか、半信半疑なところがあったと思います。しかし、田原成貴騎手は、勝ちたいという意識だけではなく、そういったマイナスの意識も全て消そうとしたのです。

3コーナーを過ぎて、2週目の下り坂からサクラローレルが動き出しました。これは横山典弘騎手の意識というよりも、サクラローレルが休み明けであった分、力んでしまったということでしょう。その動きにつられて、マーベラスサンデーに乗った武豊騎手が動き出しました。武豊騎手はサクラローレルさえ負かすことが出来れば勝てると計算したのでしょう。田原成貴騎手が凄かったのはこの時点で全く動かなかったことです。この時の心境を田原騎手は後にこう語りました。

机上の計算では、あの時の馬場状態を考えると、もう少し差をつめておかなければとても届かない差であったと思う。それを私が意識していれば…、今はっきり言えること、それはただひとつ。あの時、もし差を詰めてしまっていれば、あの上がりの脚をマヤノトップガンは使えなかったということ。

しかし、たとえレースがあのように流れても、あそこで動かなければ最後にあの鋭い脚を使う、その思いは私の中に1パーセントもなかった。それが阪神大賞典から天皇賞まで私を悩ませつづけた全て。

その思いを消すことが、私がマヤノトップガンを天皇賞馬に導いてやれる全てだった。
(「馬上の風に吹かれて」 田原成貴著)

サクラローレルがマーベラスサンデーを差し返して、私が自分の馬券の勝利を確信した瞬間、外から信じられない脚で飛んで来たのが田原成貴マヤノトップガンでした。視界の外から飛んできたフックパンチに当たった時のように、脳みそがグラっと揺れたのを私は感じました。この感覚は後楽園ウインズにいた他の競馬ファンも同じだったようで、ゴールが過ぎて数秒の間が空いた後にようやく、「トップガンだ!」という大歓声が起こったことを憶えています。

今年もまた、心震えるレースを観てみたいものです。

平成9年天皇賞春

このレースは必見です!

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (9)

◎レインボーペガサス

Jiromaru

前回の手紙では、ヘイルトゥリーズンの早熟性について話をしました。ヘイルトゥリーズンの血を引くブライアンズタイムやサンデーサイレンス産駒たちによって、クラシックレースが席巻された時代が確かにありましたが、ブライアンズタイムはすでに高齢で、サンデーサイレンスはもうこの世にはいません。それに代わり、両者の後継者たちが現れつつあります。ブライアンズタイムの後継者であるタニノギムレットは、初年度産駒からウオッカという牝馬のダービー馬を出し、サンデーサイレンスの後継者は、すでに片手では数えられなくなっています。

そんな中でも、アグネスタキオンはもはや別格の存在でしょう。2歳リーディングサイヤーの座を父サンデーサイレンスから奪ったように、アグネスタキオンの産駒もまた早くから活躍することが出来ます。父系からヘイルトゥリーズンの血を引いていることに加え、早熟のマイラーであった母父ロイヤルスキーの影響もあるはずです。クラシックでモノをいうのは早熟性であり、そういった意味においても、アグネスタキオンはこれからも多くのクラシック馬を輩出してくのでしょう。

もちろん、単なる早熟性だけではありません。産駒に成長力をも伝えていることは、ダイワスカーレットやアドマイヤオーラの古馬になってからの活躍を見ても分かります。それもそのはず、実はアグネスタキオンの母系には、頑固なまでの異系のステイヤー血脈が連なっているのです。6代母にはイギリスオークス馬であるライトブロケードがいます。その後も代々スタミナの血が重ねられ、曾祖母のイコマエイカンを起点として、アグネスレディーという日本オークス馬、アグネスフローラという桜花賞馬が生まれました。アグネスタキオン自身も、ダービーを前にして故障の憂き目に遭ってしまいましたが、無事に走られていれば無敗のダービー馬になっていたはずです。スピード、早熟性、スタミナ、そして成長力を兼ね備えたアグネスタキオンが、ポストサンデーサイレンスの座に就いたのは、当然といえば当然だったのでしょうね。

さて、混戦を極める牡馬クラシックの第1弾の皐月賞です。ブライアンズタイム産駒やタニノギムレット産駒、そしてサンデーサイレンスの後継種牡馬たちの産駒が多数エントリーしていますが、私の本命はアグネスタキオン産駒の◎レインボーペガサスに打ちます。2歳時はダート戦を中心に使われていましたが、これはトモが甘かったという肉体的な理由や、ダートだと行きっぷりが悪くなるので折り合いを欠くことがないという精神的な理由があったのだと思います。しかし、今年に入って、きさらぎ賞で久しぶりに芝のレースで初重賞勝ちを果たしたように、やはり芝の方が向いている馬です。ダート戦で2勝したことは、この馬の潜在能力の高さゆえの何ものでもないでしょう。さらに良く解釈すると、馬場が荒れてきている皐月賞を勝つには、ダートを苦にしないぐらいのパワーが必要です。

もうひとつ、皐月賞が行われる中山2000mは、小回りのコーナーを4つも回るという設定のため、かなりの紛れが生じるのも事実であり、騎手の技量が問われるコースです。そういった意味でも、安藤勝己騎手の腕を買ってみたいですね。前走のスプリングSは内田博幸騎手が騎乗しましたが、行きたがるレインボーペガサスを少し押さえすぎてしまった印象があります。内の絶好枠を引きましたので、今回は出たなりで第1コーナーまで進み、好位のゴチャつかないポジションを取ってくるはずです。おそらく向こう正面はペースが緩みますので、脚を溜めつつ、3~4コーナーをじっくりと回り、ラストの直線に賭ければ、早めに動き始めるマイネルチャールズに勝てるチャンスもあるはずです。

勝つ確率ということだけを言えば、1番人気のマイネルチャールズの右に出るものはいません。勝ちパターンに持ち込めなかった京成杯でさえ、強引に勝ち切ったように、どんな状況になっても伸びてくる柔軟性と精神面での強さがあります。松岡騎手が自信を持っているのも頷ける気がします。しかし、勝負の世界は時として確率だけでは語れないこともあります。前走の弥生賞のような楽なレースをさせてもらえるはずはありませんし、松岡騎手が積極的に勝ちに行ったことが、最後の最後で足元をすくわれてしまい、裏目に出てしまうこともあるでしょう。前述したとおり、中山2000mのコースは紛れのあるコースです。人気になっている今回は、敢えて本命にしませんでした。

ブラックシェルはマイネルチャールズに2度負けていますが、力付けが済んだと考えるのは早計です。能力的には決して劣らないものを持っています。これまでの2戦で敗れているのは、コース適性の差ということです。スッと好位を取れないブラックシェルに対して、マイネルチャールズは楽に勝ちパターンに持ち込めるということです。本番でペースが速くなって逆転というパターンもあり得ますが、追い切りでの動きが鈍かったように、この馬自身の体調が気掛かりで本命には推せません。

ショウナンアルバは、レベルの高い共同通信杯を勝ったように、非常に能力の高い馬です。ブリガディアジェラードの5×3ですよね、ルドルフおやじさん!前走のスプリングSは、折り合いを欠いて先頭に立ってしまうという最悪の形になってしまいました。ああなってしまうと勝つのは難しいので、よく3着に踏ん張ったと思います。身体能力という点では、このメンバーでも随一ではないでしょうか。ただ、最終追い切りでも首を上げたりしているように、気性の激しさがあって、なかなかハンドリングが利かない馬ですね。スタンド前の大外枠からの発走ということもあり、おそらくショウナンアルバのスイッチは入ってしまうはずです。蛯名騎手も今回は無理に抑えることはしないでしょう。先頭に立ってマークされる形になって、果たしてどこまで粘ることが出来るでしょうか。

善戦マンであったスマイルジャックは、前走でようやく勝利の味を思い出しました。途中で先頭を奪われての番手追走から、直線で抜け出すという味のある競馬をしました。首の低いしなやかなフォームで、最後まで伸び切りました。それもこれも、キッチリと仕上げられたおかげでしょう。マイナス10kgの馬体は究極の仕上がりにあったと思います。本番である今回のレースでの心配といえば、当然、前走からの反動です。馬体や追い切りを見る限りは全く問題ないのですが、目に見えない疲れがレースに行って噴出することもあります。勝つ力はある馬ですので、あとは体調がどう出るかといったところです。

追記
以前、当ブログでもご紹介させて頂きました「馬流天星」のスカイスポットさんが企画・提供されている、「2008年皐月賞予想特大号」に皐月賞の見解を寄稿しています。「プロフェッショナル馬券戦術ライブ」の付録である「G1レース攻略&競馬場データ集」で書いている内容のごくごく一部ですが、興味のある方はご覧になってみてください。他の参加メンバーたちの綿密な予想も必見です!

「2008年皐月賞予想特大号」の申し込みはこちら
Baryutensei_2

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (7)

ヘイルトゥリーズンからの早熟性の血が

Jiromaru

昨年の皐月賞は、「勝利」という名のブライアンズタイム産駒が、田中勝春騎手に15年振りのG1勝利をプレゼントしました。ブライアンズタイム産駒としてのG1勝利も久しぶりでしたね。ひと昔前は皐月賞といえばブライアンズタイム産駒が連想されたほどでした。ナリタブラインをはじめ、サニーブライアン、ノーリーズン、ダンツフレームなど、サンデーサイレンス産駒に負けず劣らずの強さを見せてくれました。サニーブライアンが勝った年などは、確かブライアンズタイム産駒のワンツーフィニッシュでしたね。近年は芝での活躍馬が少なくなってきた矢先の出来事でしたので、意表を突かれたと共に、ブライアンズタイムの血の底力を見せ付けられた気がしました。

ブライアンズタイム産駒が皐月賞を得意とする理由として、まずは力の要る馬場に強いということが挙げられるでしょう。この時期の中山競馬場は、春開催の最終日ということもあり、見た目には分かりにくいのですが、ベースの野芝がかなり傷んでいます。そのような荒れ馬場をモノともせずに走り切ってしまうパワーを、ブライアンズタイム産駒は備えているということです。ダート戦ではサンデーサイレンス産駒よりも上という実績が、そのことを如実に物語っていますよね。

もうひとつの理由として、早熟性ということが挙げられます。昔から「皐月賞は速い馬が勝つ」と言われてきましたが、この時期のクラシックレースを制するには、スピードだけではなく、仕上がりの早さが不可欠です。他馬に先んじて、早くから能力を発揮できるという早熟性ですね。クラシックレースは3歳のこの時点での完成度を問われるレースでもあり、もちろんサンデーサイレンスもそうでしたが、クラシックに強い血統というのは早熟でなければならないということです。

スピードと早熟性を極端に重視する傾向は、今からおよそ100年前にアメリカで生まれ、その後、ナスルーラやネイティブダンサーやロイヤルチャージャーの血を引いた馬たちが大活躍したことで発展しました。その中でも、ロイヤルチャージャーの血を受けたヘイルトゥリーズンという馬は、まさにスピードと早熟性の権化のような馬でした。

そうです。サンデーサイレンスとブライアンズタイムが共通して父の父に持つヘイルトゥリーズンですね。最近はサンデーサイレンス系という言葉が当たり前のように使われていますが、世界的に見れば、まだサンデーサイレンスもブライアンズタイムもヘイルトゥリーズン系という括りでしょう。そのうちサンデーサイレンス系という言葉もワールドワイドになるのかもしれませんけど。

1958年に生まれたヘイルトゥリーズンがデビューしたのは、わずか2歳の1月のことでした。カリフォルニアのサンタアニタ競馬場でデビューし、初勝利を挙げるのに6戦を要してしまいますが、そこをレコード勝ちするや、ホープフルS、グレートアメリカンSなど2歳の主要重賞レースを勝ちまくったのです。2歳の9月の時点では、なんと18戦9勝というキャリアを誇っていました。また、ほとんどのレースがスプリント戦でした。ヘイルトゥリーズンという馬がどれだけ早熟でスピードに秀でていたか分かりますね。

残念なことに、ヘイルトゥリーズンは調教中に怪我をしてしまい、そのまま引退してしまったのですが、種牡馬としても大成功を収めたのです。1970年には2歳部門のリーディングサイヤーと総合部門のリーディングサイヤーの両方に輝きました。サンデーサイレンスの父ヘイローやブライアンズタイムの父ロベルトが生まれたのもその頃ですね。つまり、サンデーサイレンスの産駒にも、ブライアンズタイムの産駒にも、2歳の1月にデビューしたヘイルトゥリーズンからの早熟性の血が脈々と受け継がれていて、両者がクラシック血統として成功した最大の理由のひとつになっているというわけです。

今年の皐月賞で1番人気が予想されるマイネルチャールズも、このヘイルトゥリーズンの血をしっかりと引いているようですね。デビュー戦こそ落としてしまいましたが、それ以後は連対を外していませんし、目下3連勝中です。その緩急自在の大人びたレースぶりやスピードは、クラシックを勝つに相応しい早熟馬のそれです。非の打ち所がないことがかえって嫌われそうな嫌いもありますが、他馬がこの馬に先着することは容易ではないはずです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (8)

◎トールポピー

Jiromaru

「競馬ファンはみな、頭の中に3種類のカレンダーを持っている」と、作家の浅田次郎さんがどこかに書かれていました。ひとつは1年が365日のカレンダー。ひとつは金杯から有馬記念までの競馬開催日のカレンダー。そしてもうひとつが桜花賞から始まり菊花賞で終わるクラシックレースのカレンダーです。今年もまた気持ちを新たに、3つめのカレンダーに印をつけ始める日がようやくやってきたようです。阪神競馬場のサクラは散らずに残っているのかなあ。

さて、今年の桜花賞は、取得賞金順のボーダーラインが1350万円という、稀に見る混戦ムードです。昨年のように、頭二つほど抜けた馬がいない今年は、どの馬にでもチャンスがあると言っても過言ではありませんね。ここに至るまでの臨戦過程やレースでの枠順、位置取りが、大きく結果として影響してきそうな気がします。果たしてどの馬が、全ての幸運を味方につけることが出来るのでしょうか。

そんな混戦ムードを承知の上で、敢えて◎トールポピーに本命を打ちます。頭二つほど抜けた馬はいないと書きましたが、今年のメンバーの中ではトールポピーが頭半分くらいは抜けているのではないかと思っているからです。阪神ジュべナイルFを抽選で滑り込んで勝ったように、決して早熟な2歳女王ではありません。肉体的にも精神的にもまだまだ成長途上で、クラシックレースでも活躍が見込まれる馬だと思います。

兄フサイチホウオーは、クラシックに至るまでの過程で無理を強いられたばかりに、本番のダービーで精神的に切れてしまいました。兄弟だけに、ひとつ間違うと危うさを秘めていますが、トールポピーに関しては角居調教師が念入りにケアを施していますので心配ないでしょう。キッチリ仕上げられて無敗でクラシックに辿りついた兄に比べ、妹は負けてはいますが余力(特に精神的な)を残して本番に臨んできています。

厳しいレースとなった阪神ジュべナイルFを快勝したように、激しいレースになればなるほど、この馬のスタミナの豊富さが浮き出てくるはずです。チューリップ賞のようにラストの直線だけの緩いレースになってしまうと、他馬に足元をすくわれる心配もありますが、さすがにメンバーが揃うG1レースですので、ある程度は流れてくれると考えています。とはいえ、道中が緩みやすい新阪神競馬場のマイルコースですので、あまりゆったりと行っていては届きません。最低でも中団以上のポジションを確保したいものです。

そのために、チューリップ賞では前半から攻める競馬を試み、わずかに掛かり気味になりましたが、なんとか辛抱してレースの流れに乗っていました。馬群の中でレースを進めることが出来たのも収穫だったと思います。というのも、スローに流れやすい桜花賞を勝つには、なるべく内のポジションを進みたいからです。そのためにも、馬群に包まれながらレースを進めた経験を本番前にしておくことは重要でした。今回は10番枠を引きましたので、出たなりのコースを進んで行けば、有力馬を内に見ながら、仕掛けのタイミングだけ間違わなければゴールで首ひとつ抜け出てフィニッシュすることが出来るのではないでしょうか。怖いのは雨だけでしょう。

同じ角居厩舎からはポルトフィーノも出走しています。何を隠そう私とルドルフおやじさんのPOG馬なのですが、今回は本命を打ちません。というのも、追い切りでの動きがどうしても硬く映るからです。どこかゴトゴトしているというか、肉体を持て余しているような走り方です。前走では競馬の苦しさを知り始めた若駒にありがちな凡走でしたが、今回もまたレースに行って逃げたがって折り合いを欠くことがあるかもしれません。もしチャンスがあるとすれば、単騎逃げが打てたときのみでしょう。

リトルアマポーラは京成杯で牡馬相手に好走したように、牝馬同士であれば力上位で、展開次第ではトールポピーを逆転するだけの力を持っています。追われてから尻尾を振る癖はありますが、それでも最後の直線では確実に伸びてきます。ひとつだけ心配材料を挙げると、昨年暮れから使い詰めで4戦してきて、前走のクイーンSで大幅に馬体重を減らしてしまったということです。その後、ひと息入れて、再びここに向けて仕上げられてきましたが、休み明けを叩かれて本番に向けて上昇カーブを描いてくる他の有力馬に比べ、上積みという点では疑問符がつきます。いずれにせよ、この馬が対抗馬であることに疑いの余地はありません。

オディールは絶好の枠順を引きましたが、前半から積極的に攻めるつもりはないそうです。前走で抑えていけば相当の脚を使ってくれることが分かりましたので、今回も道中は折り合いに専念する競馬をするということですね。桜花賞を勝つだけのことを考えれば、前半からポジションを取りに行くことも考えられますが、先々を見据えてそうはしないのでしょう。別の言い方をすれば、オディールのリズムを崩して勝ちに行くよりも、オークスから先へ繋がる乗り方をするということです。今回は他力本願ですが、展開次第でどこまで突っ込んでこられるかということでしょう。

おまけ(有力馬の最終追い切り評価)
★トールポピー 
CW 稍 池添 68.7-54.0-40.2-12.9  8 G強
ひるむことなく3頭併せの真ん中を進み、手応えも抜群。実戦を想定して、抜け出してから気を抜かせないようにビッシリと追う調教は先週と同様で、それに応える形でトールポピーも最後までシッカリと走りきっている。高レベルの追い切りには、勝利への緻密な計算が見て取れる。

★ポルトフィーノ 
CW 稍 武豊 64.8-50.9-38.2-13.0  7 強め
テンションを上げないように、折り合い面を重視した単走追い。先週の1週間前追い切りもそうだったが、ラストの直線での動きに、どこか突っ張って走っているような硬さが見られる。この馬の肉体的な特徴ゆえと言ってしまえばそうなのだが、個人的には動きにもう少し柔らか味が欲しい。

★エイムアットビップ 
栗坂 稍 小林慎 51.6-37.6-25.0-12.8 1 一杯 外デジャヴ馬也と併せで併入
首が高い走法は相変わらずで、坂下からダッシュを利かせて駆け上がってくる。左右のブレがきになるように、力を入れて走ってしまう癖は解消されていない。この様子だと、おそらく本番でも行きたがるだろうし、あとはジョッキーがどのように乗るかにかかっている。難しい。

★ソーマジック 
美坂 重 助手 51.8-計不-計不-12.0 馬也
輸送に考慮してか、最終追い切りは軽めに終始した。それでも、力強い動きを披露したように、パワーという面だけでみれば、このメンバーでも引けをとらない。あとは輸送がうまく行って、当日、少しでも時計の掛かる馬場になることを祈るのみ。

★マイネレーツェル 栗坂 稍 助手 52.6-37.7-24.6-12.4 馬也
追い切りラッシュの時間に追われたが、周りを気にすることもなく、ピタリと折り合いもついている。鞍上がムチを抜く素振りを見せるや反応し、ラストまでシッカリと駆け上がった。バネを感じさせる動きで好感が持てる。

★リトルアマポーラ DW 重 助手 67.5-51.4-38.0-12.2  8 一杯
DWコースでゴール前までビッシリ追われた。クイーンSで減っていた馬体を一度緩めて、再度仕上げ直してきたが、逆に今度は重め残りの心配がある。中途半端に間隔が開いただけに、仕上げが難しく、上積みにも疑問がある。

★ブラックエンブレム 中間軽め
早めに栗東入りしたものの、ギリギリの馬体は相変わらずで、強い追い切りが掛けられないのが実情か。力を出せない出来ではないが、前走以上の上積みは感じられない。

★オディール 栗坂 重 助手 57.5-41.2-26.8-13.2  2 馬也 
馬場が悪かったため、無理をして追わなかったが、抜群の手応えが伝わってくる好内容。牧場からガレて戻ってきた馬体を立て直すだけで精一杯だった前走と違い、体調は確実にアップしている。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (10)

華やかに咲き誇れ

Jiromaru

先週の土曜日、Photostudのポスター展を観に、渋谷のプラザエクウスに行ってきました。ポスター展の報告はまた後日にさせていただきますが、その日、たまたま細江純子さんとタレントのだいたひかるさんを招いたイベントが行われていました。細江純子さんといえば、今やテレビなどで活躍中の元女性ジョッキーですね。

細江純子さんは、牧原由紀子(現・増沢由紀子)騎手、田村真来さんらと共に、JRA初の女性騎手として、1996年にデビューしました。この年は花の12期生と呼ばれていて、彼女らの他に、福永祐一騎手や和田竜二騎手らがいます。2年目にフリーになり、1999年には日本人女性騎手としては初めて、シンガポールでの勝利を挙げました。スゴイことですね。しかし、それ以降は目立った活躍のないまま、14勝を挙げたのを最後に、残念ながら引退してしまいました。これからは、天然キャラと柔らかい雰囲気で、鈴木淑子さんの後継者として大きく成長していって欲しいと思います。

さて、JRAの女性騎手といえば、斉藤澄子騎手をご存知でしょうか?細江純子さんらが、JRA初の女性騎手としてデビューする遥か60年も前に、騎手免許を取得した女性ジョッキーです。斉藤澄子さんは、青森の南部地方に生まれ、まさに馬と一緒に生活をして育ちました。同い年の男の子が怖がって乗れないような馬でも、ヒョイっと跨って、手なずけてしまうような女の子だったそうです。父親を早くに亡くしたこともあり、騎手の道を目指すことになります。とはいえ、当時の競馬社会は男ばかりの世界で、女が寝藁を跨いだだけで、けがれるとされた時代でした。

そんな男社会の中で斉藤澄子さんが生きていくには、男になりきるしかありませんでした。髪を短く切り、さらしで胸を押し潰して、ひたすら女であることを隠し続けたのです。もちろん、隠し続けることなど出来なかったのですが、バレてしまっても、それでも応援してくれる人々は少しずつ現れ始めました。初めて受けた騎手試験では、「風紀上の問題を起こす恐れがある」ということで不合格にされてしまいますが、2年後の1936年、ようやく念願の合格を果たしました。

しかし、東京の新聞に、先頭を行く女性騎手がウインクをすると、後続の騎手たちが落馬するシーンを描いた風刺漫画が掲載されるや、農林省から「女性騎手はレース出場まかりならぬ」という通達が届いたのです。こうして騎手免許は幻となってしまい、斉藤澄子騎手は、それ以後、一度もレースに出ることのないまま、肺病を患い、29歳の若さで亡くなりました。(参考文献:「伝説のジョッキー」島田明宏)

ジョッキーという職業は女性にとってはかなり厳しいものですが、ジョッキーになりたいという思いを叶えることが出来た、今の女性騎手たちは幸せなのかもしれません。女性騎手がもっと活躍すれば、これからさらに競馬は華やぎ、盛り上がるはずです。しかし、その影には、女性というだけで騎手への道を絶たれてしまった、不遇の時代を生きた女性騎手がいたということを忘れてはいけませんね。

「サクラがあれだけ美しいのは、樹の下に死体が埋まっているからだ」と語ったのは、梶井基次郎だったでしょうか。レースという樹の下には、出走叶わなかった多くの騎手や馬たちの死体が埋まっています。桜花賞に晴れて出走する16頭のサラブレッドと16人のジョッキーは、そのことを胸に華やかに咲き誇って欲しいものです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

◎スズカフェニックス

Jiromaru

ドバイワールドカップが行われていますね。一度は行っておくべきと思いながら、一度も行ったことがないのですが、ドバイはぜひとも行ってみたい国です。ライブリマウントが挑戦した当時(1996年)は、まるで違う惑星で競馬が行われているような隔世の感がありました。しかし、ここ最近は日本馬の挑戦も多くなり、ドバイが遠い異国のことではないような気がするから不思議です。個人的にはヴァーミリアンの走りに注目しています。フェブラリーSを勝ったことがかえって不安材料(あの時点で仕上がっていた?)に思えますが、カーリンを筆頭とする化け物たちが集まったドバイワールドカップで、どこまで勝負になるか楽しみでなりません。

さて、日本では高松宮記念が行われます。サンアディユだけではなく、昨年のスプリンターズSの覇者アストンマーチャンのリタイアもあり、少し寂しいメンバー構成になってしまったことは否めません。まあ、そんなことばかり言っていても始まりませんので、スプリント界に新星が誕生することを期待しましょう。

1番人気は昨年の覇者スズカフェニックスでしょうか。昨年は4コーナー手前から動き、他馬を強引にねじ伏せるような形での圧勝でした。これまで何度も書いてきたことですが、スズカフェニックスはマイル戦の重賞を勝っているように、決して生粋のスプリンターではありません。しかし、G1レベルのマイル戦となると底力(スタミナ)不足を露呈してしまうため、G1レースであればスプリント戦の方が向きます。別の言い方をすると、マイルのG1ではわずかに勝ち切れないのですが、こういう馬がスプリントのG1レースに矛先を向けてくると、負かすのは容易ではないということです。素直にこの馬に◎を打ちたいと思います。

ただ、ひとつだけ気になることがあります。それは口向きの悪さです。体調が優れなかったこともあるのでしょうが、特に昨年のマイルCSの直線ではササるような面が目立っていました。前走でローレルゲレイロを負かせそうで負かせなかったのも、口向きの悪さゆえかもしれませんね。武豊騎手は簡単に乗っているように見えますが、案外と操縦の難しい馬だと思います。そういう意味もあって、福永騎手がどうこうということではなく、テン乗りがプラスになる馬ではありません。もしこの馬が勝ったら、その時は福永騎手に惜しみない拍手を送りたいですね。また、サニングデールで勝ったようなレースが出来れば、最内枠は決して悪い枠ではないと思います。

ファイングレインは3歳時にNHKマイルCを2着しているように、この馬も決して生粋のスプリンターではありません。しかし、マイル戦では最後に詰めの甘さが出てしまうため、今年から思い切ってスプリント戦で終いを生かす競馬をしたのが功を奏し、想像以上の爆発力があることが証明されました。しかも、マイル戦を走られるだけのスタミナに支えられた末脚は、まず不発に終わることはありません。淀短距離Sはスプリント戦にしてはスローに流れましたが、それでも先行集団を一気に飲み込んだように、どのような展開でも安定して伸びてくることが出来ます。

もちろん、中京競馬場は直線が短いので、脚を余してしまう恐れもあり、乗っている方も観ている方もヒヤヒヤさせられるかもしれません。ただ、G1レースともなると速い馬が集まっていますので、自然とペースは速くなり、遅くてもミドルペースには流れるはずです。たとえミドルペースになったとしても、最終週で時計も掛かってきていることも味方して、ゴール前ではギリギリ届くはずです。幸騎手も道中は内枠から馬群の中でレースを進め、4コーナーまでに少しずつ外に出しながら位置取りを上げ、最後の直線は大外に持ち出してくるはずです。おそらく、スズカフェニックスよりも外に出す形になるでしょう。そうなれば、勝機は訪れるのではないかと考えています。

スーパーホーネットの最終追い切りは絶好の動きでした。ラスト1ハロンを12秒1とまとめて、最後までしっかりと伸びていました。動きを見る限り、休み明けによる仕上がりの悪さは全く心配ないでしょう。あとは久々のレースで、いきなりスプリントのペースに対応出来るかどうかということでしょう。追走するだけでレースが終わってしまうということも往々にしてありますから。

ローレルゲレイロは、ようやく良い頃の粘り強さが戻ってきました。阪急杯は展開に恵まれた面もありましたが、最後までバテることなく走り抜き、スズカフェニックスの追撃を抑えました。最終追い切りも持ったままで上がってきたように、究極の仕上がりにあります。雨が降って馬場が悪くなれば、この馬で仕方ないのではないでしょうか。ただ、良馬場であれば、末脚が弱い分、よほど良いペースで行けなければ、勝ち切ることは難しいと思います。

キンシャサノキセキは、中間にザ石のアクシデントがあったこともあり、最終追い切りは坂路コースで目一杯に追われる、一か八かの調教を課されてきました。これまでの走りを見る限り、成長力に疑問がありましたが、究極の仕上がりであれば、道中ピタリと折り合って、突き抜ける可能性もあるのではないでしょうか。この馬がG1を獲るとすればスプリント戦しかないと昔から考えていましたし、真ん中から少し外の絶好枠を引きましたので、今回狙い目は十分にあると思います。ただ、どうしても当日にならなければ仕上がりは分かりませんので、現時点で本命を打つことは出来ません。

*このエントリーをアップした時はファイングレインに◎を打っていましたが、前半でモタつく感のあるファイングレインに比べ、スズカフェニックスの方が前のポジションでレースを運べる可能性が高いと思い直し、本命を変更しました。ファイングレインも捨てがたいのですが、ヴィクトリーロードを通られるスズカフェニックスに期待します。

関連エントリ
競馬考察ブログ:高松宮記念
けいけん豊富な毎日:高松宮記念最終予想

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (10)

ミステリーの匂い

Jiromaru

いよいよ春のG1シリーズが始まりました。春と秋のG1シリーズのどちらが好きかと問われれば、春になれば春のG1シリーズが、秋になれば秋のG1シリーズが好きと答えます。1年の間に、最高の季節を2回も過ごせるのですから、私たち競馬ファンは幸せですね。

と、ワクワクした気分でもあるのですが、今年の高松宮記念を前にして、私の胸の中にモヤモヤした晴れない霧のようなものがあります。本来であれば今回のレースで1番人気になっていたかもしれない1頭の牝馬のことが引っ掛かっているのです。そう、サンアディユの件です。

今年の3月8日、中山競馬場のメインレースとして行われたオーシャンSにて、スタート直前に1番人気のサンアディユがゲート内で暴れ始めました。係員と厩務員らがゲートの下に潜ろうとしたサンアディユをなんとか押し戻し、しばらく気持ちの悪い時間が流れた後、スタートが切られ、サンアディユは大きく出遅れました。終始、最後方を追走したサンアディユは、直線に入っても前との差を詰めることなく最下位でゴールしました。そして、レースの翌日、サンアディユは馬房で倒れているところを発見されました。JRAより発表された直接の死亡原因は心不全とのことでした。

なんだか、ミステリーの匂いがしませんか?

競馬史上、最大のミステリーとされているのは、シャーガー誘拐事件でしょうか。シャーガーはエプソムダービーを歴史上最大の着差(10馬身)で勝ったことよりも、種牡馬入りしてから誘拐され、アイルランドの暗い森の中に埋められたことで、その名を最も知られているはずです。犯人グループであるIRA(アイルランド共和国軍)は身代金を200万ポンド要求しましたが、最大の株主であったアガ・カーンが支払いを拒否たため、やがて接触が途絶えてしまいます。犯行グループの声明によると、シャーガーを誘拐したものの、馬運車に乗るなり暴れ出したため、すぐに射殺してしまったということです。しかし、結局のところ、シャーガーの遺体は発見されていませんので、事の真偽は未だに分からないままです。一説によると、シャーガーは実はアラビア半島で生きていて、その子孫がいつの日にか現れて、競馬ファンを驚かすのではという噂もあります

もうひとつ、これもまた有名な事件ですが、ダイナマイトホースと呼ばれ人気を博したアリダーの死にまつわる話です。アメリカの3冠レースの全てをアファームドの2着と後塵を拝したものの、種牡馬としては、イージーゴア、アリシーバ、クリミナルタイプ、カコイシーズなど数々の活躍馬を出して大成したアリダーですが、突然、悲運に襲われます。1990年の11月13日、カルメット牧場の馬房の中で右後肢を骨折しているところを発見され、緊急手術を受けたものの、再度暴れ出したため、最後は安楽死の処分がとられました。骨折の理由としては、アリダーが扉を強く蹴ったからだ、と発表されましたが、数ヶ月後に、カルメットファームが1億ドル以上の負債を負って倒産すると、実はアリダーは保険金目当てに殺害されたのではないかという疑惑が浮上しました。実際にアリダーの保険金としては3650万ドルが支払われたのですが、そのうち2050万ドルはファーストシチー銀行へ返済されていました。この事件の真相も、結局のところ明らかになっていません。

これらは人間のエゴのためにサラブレッドの命が犠牲になり、迷宮入りしてしまったミステリアスで残酷な事件です。幸いにして、日本の競馬では競馬にまつわる犯罪がほとんど目に付きませんが、まるでディック・フランシスの書くようなミステリーが世界のあちこちで起こっていることを私たちは知っておくべきだと思います。もしかしたら、日本の競馬では、ミステリーが何者かによって闇に葬り去られているだけなのかもしれませんからね。

サンアディユ怪死事件には不可解な点がたくさんあるような気がします。なぜサンアディユはオーシャンSから始動したのでしょうか?なぜ内田博幸騎手に乗り替わったのでしょうか?なぜ圧倒的な1番人気を背負ったサンアディユの体勢が整っていないにもかかわらず、スタートは切られたのでしょうか?そもそも、夏に使い詰めてスプリンターズSで2着した馬を京阪杯に出走させたことも疑問がありますし、川田騎手とも手が合っていたように見えました。また、スタートは、基本的に1番人気の馬の体勢が整ったのを確認してから切られるはずです。

なんだか、ミステリーの匂いがしませんか?

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (8)

◎ワイルドワンダー

Jiromaru

遅くなりましてすいません。フェブラリーS攻略のポイントは“体調”と書いた途端、ダイワスカーレットが回避してしまいました。馬の故障は偶然ではなく、肉体面や精神面の不調が原因となって起こることがほとんどです。ダイワスカーレットはフレグモーネになった経緯もあり、今回のことも含め、ここは少し放牧に出して休ませてあげる必要があるのではないでしょうか。前回の手紙にも書いたとおり、連勝が途切れた馬というのは肉体的、精神的な疲れがドッと噴出してしまうことが多いです。そこをゴマカシて使っても良い結果は出ないと思います。

本題に入る前に、まずはダート競馬における血の話をさせてください。フェブラリーSはダート競馬でも芝に対応できるぐらいのスピード能力が問われるレースですが、基本的に、ダート競馬と芝の競馬は別物です。それゆえ、ダートを得意とする馬と芝を得意とする馬に分かれ、また当然のことながら、ダート競馬と芝でチャンピオンクラスを生み出す種牡馬も2つに分かれます。

かつてノーザンテーストが1990年代に総合リーディングサイヤーかつダート部門のリーディングサイヤーに輝きましたが、これはかなり稀なケースです。あのサンデーサイレンスでさえ、総合リーディングとダートのみを同時に制したことはないのではないでしょうか。もちろん、走る馬は芝の競馬を使われるということを考慮しても、総合リーディングとダート部門を統一することは極めて難しいのです。

総合リーディングとダート部門のリーディングサイヤー上位5頭を、1990年から5年おきに並べてみます。

1990年
総合リーディング         ダート部門
1位 ノーザンテースト      ノーザンテースト  
2位 ミルジョージ         ブレイヴェストローマン
3位 トウショウボーイ      マルゼンスキー
4位 モガミ             ノーザンディクター             
5位 ノーザンディクター     ミルジョージ

1995年
   総合リーディング     ダート部門
1位 サンデーサイレンス   ノーザンテースト
2位 ブラインズタイム     ブライアンズタイム
3位 ノーザンテースト     キンググローリアス
4位 トニービン         ブレイヴェストローマン
5位 リアルシャダイ      ホリスキー

2000年
総合リーディング         ダート部門
1位 サンデーサイレンス    アフリート 
2位 ブライアンズタイム     ジェイドロバリー
3位 トニービン          サンデーサイレンス
4位 オペラハウス        ブライアンズタイム             
5位 ジェイドロバリー      アサティス

2005年
総合リーディング         ダート部門
1位 サンデーサイレンス    ブライアンズタイム 
2位 ブライアンズタイム     アフリート
3位 フジキセキ          フジキセキ
4位 ダンスインザダーク     サンデーサイレンス             
5位 サクラバクシンオー     バブルガムフェロー

そして、昨年(2007年)のリーディングは以下のとおりです。

2007年
総合リーディング         ダート部門
1位 サンデーサイレンス    ブライアンズタイム 
2位 アグネスタキオン      クロフネ
3位 ダンスインザダーク    フレンチデピュティ
4位 ブライアンズタイム     フジキセキ             
5位 フジキセキ          アフリート

こうして見ると、ノーザンテーストやサンデーサイレンスの凄さが手に取るように分かりますね。特にサンデーサイレンスのリーディングサイヤーとしての息の長さには驚かされます。またダート部門のリーディングこそ獲っていませんが、その直仔であるフジキセキやバブルガムフェローらがダート部門の上位に食い込んでいるように、種牡馬としても万能を十分に発揮しています。サンデーサイレンス系という言葉が世界的なものになる日は近いのではないでしょうか。

そして、もうひとつ、サンデーサイレンスの陰に隠れがちですが、ブライアンズタイムの種牡馬としての能力も際立っています。特に、ダート部門におけるブライアンズタイムには、サンデーサイレンスに通ずるものがありますよね。ナリタブライアンやサニーブライアンなど、芝のチャンピオンクラスも多く輩出してきた種牡馬ですが、芝よりもダートに滅法強い産駒を出すということです。晩年になって、その傾向はますます強くなってきている感すら覚えます。

ブライアンズタイム産駒は昨年(2007年)計111勝を挙げましたが、その内、83勝がダート戦でのものです。つまり、ほとんどの勝ち鞍がダートでのものということです。そんな中、数少ない芝の勝ち星の中になんとG1レースの勝ち鞍が含まれています。すぐにピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、そうです、ヴィクトリーの皐月賞です。晩年のブライアンズタイムの産駒であるヴィクトリーが、芝のG1レースを勝ったということはもの凄くレアなことだったのですね。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、フェブラリーSの予想をしたいと思います。前回の手紙では4強の不安点について触れましたが、ダイワスカーレットが回避して、残った3頭の馬はいずれもダートの鬼と言ってもよい存在でしょう。その中でも、ヴァーミリアンはもう私がここで語る必要のないほどの最強馬です。私が見てきたダート馬の中でも、これだけスピードとスタミナが高い次元で融合されているダート馬は思いつきません。ドバイは苛酷な舞台ですが、それでもこの馬ならと思わせてくれます。

今回の1600mという距離に関しても、レコード決着となったJCダートを勝っているように、このあたりでスピード負けすることはないでしょう。スタートがそれほど速くない馬ですので、行き脚がつきやすいという点において、外枠に入ったことはかえって吉と出るはずです。極端なスローにならない限り、スムーズに外を回して直線に向けば、勝利はすぐ近くにあるのではないでしょうか。

唯一の問題は、やはり体調ということになります。JCダートの時の体調には及ばない、完調手前の状態にあることは間違いなく、それでも勝ち切れるかどうかですね。完調手前と言っても、最終追い切りで坂路52秒台が出ているように、この馬の力は出し切れるほどには仕上がっていると判断しました。

それでも、ヴァーミリアンを負かすとすればという意味で、本命は◎ワイルドワンダーに打ちます。父ブライアンズタイム×母父サンデーサイレンスという血統は、まさにダートの鬼っ子のそれです。実は昨年のダート部門リーディングブルードメサイヤーはサンデーサイレンスなのです。サンデーサイレンスは母系に回っても、父方の種牡馬の良さを引き出すということなのでしょう。ワイルドワンダーのごつい馬体を見ると、父のパワーとスピードが伝わっていますし、もちろんサンデーサイレンスからスタミナも受け継いでいるようです。

JCダートは道中でハミを噛んでしまったことが最後に響きましたが、それでも距離が短縮されればと思わせてくれる内容でした。そこから休養をはさみ、根岸SをステップとしてフェブラリーSを本番として狙いを定めてきたことが窺われます。前走で大幅に減った馬体重ですが、ヒ腹が太くなりやすいこの馬にとって、キッチリ仕上がっていたとプラスに解釈してよいのではないでしょうか。絞れにくい時期だけに、太目が残ってしまうよりは、仕上がっていた前走から現状維持の方が仕上げやすいということでもあります。前走の反動さえなければ、ヴァーミリアンよりも前に付けて、一歩先に抜け出すことが出来るのではないでしょうか。

ブライアンズタイム産駒ということでは、ヴィクトリーも面白い存在です。血統的な傾向からすると、もしかして本当はダートでこそ力を発揮するという可能性もあるのではないでしょうか。皐月賞を勝った馬が、もしダートが滅法得意であったとしたらどうなるでしょう。ブッチギリとは言いませんが、あのダートの鬼ヴァーミリアンを苦しめることもあるかもしれません。基本的な乗り方としては、スタートをポンと出て、逃げもしくは先行したいですね。その方が砂を被る心配がありませんし、ヴィクトリーのスピードが活きると思います。

ただ、ここ数戦、スタートで遅れてしまうことが多いため、もしかすると中団以降からの競馬になるかもしれません。たとえそうなったとしても、砂を被ったことにより、かえって折り合いが付いてしまうこともありますので、行きたがる癖のあるヴィクトリーにとってプラスに転じる可能性もあります。ヴィクトリーのやんちゃな気性が砂を被って良い方向に出るか、それとも悪い方向に出るか、実際に走ってみなければ分かりませn。音無調教師のコメントにあるように、「魅力はあるけど、アテにはならない」が実際のところでしょう。それでも、今回は人気になりませんので、思い切って狙ってみても面白い馬です。

ドラゴンファイヤーは、滑り込みで出走できたこと、安藤勝己騎手を確保できたことなど、運がこの馬に向いてきましたね。JCダートは初G1レース挑戦だったにもかかわらず、古馬を相手に6着と健闘しました。人気に応えることは出来ませんでしたが、あの時点では良く走っていたと思います。前走は休み明けや行き脚がつかなかったことが重なり、凡走してしまいましたが、この中間の動きは一変しています。ポリトラックコースで好タイムを連発しているように、ここに向けて順調に仕上がりました。好レースが期待できるのではないでしょうか。

4歳馬のロングプライドも、前走の平安Sをひと叩きされて、完調でここに臨んできます。中間はBコースで緩めずに乗り込んできましたので、前走のように最後に失速ということはないでしょう。追い達者のペリエ騎手ですので、最終コーナーを前目の位置取りで回ることが出来れば、ゴール前ではあわやというシーンも見られるかもしれませんね。

メイショウトウコンも前走の平安Sでは58kgを背負い、太目残りながらも、2着に踏ん張りました。絞れてくれば、好勝負必至です。何よりもこの馬は、スローの瞬発力勝負に滅法強い馬ですので、逃げ馬不在の今回は展開が向くかもしれません。道中が団子になって、先頭から後ろまでそれほど離れていないようなレースになれば、この馬の強烈な末脚が発揮されるはずです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (6)

激しい舞台には芝は生えない

Jiromaru

フェブラリーSは大好きなレースのひとつです。なぜって、もちろん馬券的にも得意なのですが、時期的にちょうどG1レースが待ち遠しくなった頃に行われるじゃないですか。有馬記念が終わって新しい年を迎え、そろそろ生活も落ち着いてきたので競馬で勝負したいなぁと思い始めた時、フェブラリーSが目の前に現れるわけですよ。あと1ヵ月なんてとても待ちきれません。

フェブラリーSがG1レースに格上げされてから11年が経ちました。ダートのG1レースが少しずつ定着していることが感じられます。そもそも、日本で行われているレースは、ダートが約2万5000に対し、芝は約1600しかないのですから、日本の競馬のほとんどはダートで行われていることになります。本来はメジャーなはずのダート競馬ですが、つい最近まで、芝で走らなかった馬がダートに行くというイメージが強かったですよね。ここ数年は芝でG1を取ったアグネスデジタルやアドマイヤドンのような馬の優勝もあり、私たちの意識も少しずつ変わってきています。

「激しい舞台には芝は生えない」という、私の大好きな大井競馬場のキャッチフレーズが昔ありました。今年のフェブラリーSは、昨年の最優秀ダート馬ヴァーミリアン、桜花賞など牝馬3冠を制したダイワスカーレット、川崎記念で連勝を決めて勢いに乗るフィールドルージュ、待ちに待ったダート短距離でG1を狙うワイルドワンダーなど、多士済々のメンバーが揃いました。まさにスタート後80mより先は芝が生えていない、そんな激しい舞台になりそうな予感がします。

さらに、激しいだけではなく、波乱の舞台となることも十分にあり得ます。というもの、上に挙げたヴァーミリアン、ダイワスカーレット、フィールドルージュ、ワイルドワンダーのそれぞれに、不安要素があると私は考えているからです。4強の強さは言わずもがなですので、今回は敢えて不安点に的を絞って書いていきたいと思います。

まずはヴァーミリアンから。飛節炎のため川崎記念を回避しましたが、もし出走していれば負けていた可能性もあったはずです。そもそも昨年暮れの東京大賞典も怪しかったのではないかと思います。JCダートはレコード決着となったことも含め、極めて激しいレースでした。そのレースであれだけの走りをした馬が、反動もなしに、コンディションを維持するのは難しかったはずです。JCダートの後、体調は下降線を辿っており、そんな中でも東京大賞典はなんとか勝ったのですが、やはり川崎記念の前は動きも悪かったように、疲れが限界に達していました。それが飛節炎という形で出てしまい、故障にまで至らなかったのは幸いでした。川崎記念を回避したことによって、だいぶ体調は上向きになってきているようですが、それでも完調は望めません。石坂調教師の「上位には来れる」というコメントは、額面どおり受け取ってもよいのではないでしょうか。

ダイワスカーレットは前走で連勝が途切れたことが気になります。連勝が途切れた馬は、それまでキッチリと仕上げられてきた反動がドッと噴出してしまうことがあります。肉体的にも精神的にも、我慢してきたものがフッと切れてしまう感覚です。もちろん、ダイワスカーレットほどの一流馬になれば、普段の動きからはその気配を読み取ることは難しいのですが、いざレースに行ってみると思わぬ凡走をしてしまうということです。フェブラリーSは芝並みの時計で決着しますので、ダートに関しての適性云々は全く心配はいりません。それよりも、連勝が途切れた後ということについては、疑ってかかった方がいいと思います。

フィールドルージュは調教であまり動かないタイプの馬です。特に厳寒期には、こういうタイプの馬は絞り切れないという不安を常に抱えています。しかも、川崎記念のフィールドルージュは私の知る限り最高の状態でしたから、そこからひと息入れて、馬体を一旦緩めてしまっていますので、今回どこまで仕上げ直してこられるでしょうか。

ワイルドワンダーは、前走が予想以上に仕上がっていました(マイナス8kg)。反動の心配はあっても、上積みはないことは確かです。中間の追い切り過程を見ても、前走の状態を維持することに努めている様子が窺われますし、パドック写真を見ても、正直に言って前走の方が立派に見えました。この馬のベストの馬体重をどう解釈するかがポイントですが、前走を叩いて良化という考えは捨てた方が良いかもしれません。

以上、人気を背負うであろう4頭の不安点を挙げてみました。書いた後からみると、どの馬も体調に不安ありということですね。どの馬も完調にあれば、ここは突き抜けるだけの実力を持っており、東京1600mダート戦は元々、実力が正直に出やすいコースだけに、今年のフェブラリーS攻略のポイントはズバリ“体調”ということでしょう。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

勝負の世界には運も必要

いよいよクラシックシーズンの足音が聞こえて来る時期になりました。そういえば、ちょうど10年前のきさらぎ賞を制したのが、私の大好きなスペシャルウィークです。当時、実はまだ1勝馬の身だったのですが、回避馬が続出したことにより、幸運にもきさらぎ賞に出走するチャンスが回ってきましたのです。しかし、そこに至るまでの道のりは決して幸運なものではありませんでした。

Specialweek_2新馬戦を快勝したスペシャルウィークは、2戦目として500万下のレースを狙っていました。ところが、1997年暮れから1998年初めにかけては、異常ともいえるほどの除外ラッシュでした。これは小倉競馬場の改修工事によって、例年よりも開催が少なかったことが大きな理由だったのですが、どの馬も抽選に通らなければ出走が叶わないという状況でした。

そこで、ほとんどの陣営はどうしたかというと、一度除外されれば次の抽選では有利になるシステムを利用して、とりあえず登録だけするという作戦を採りました。当然、スペシャルウィーク陣営も、とりあえずという形で500万下の白梅賞に登録したのです。除外される確率の方が圧倒的に高いのですから、まずは除外されてから、次はどこを狙うか考えようということですね。

ところが、なんと抽選に通ってしまったのです。白梅賞に出走できるようになったものの、除外を前提に考えていた陣営は、スペシャルウィークの体をキッチリとは作っていませんでした。どう贔屓目に見ても、あと1本追い切りが足りないというのが本音でした。その証拠に、白梅賞の馬体重は8kgも増えていて、さすがのスペシャルウィークの能力を持ってしても2着が精一杯でした。

完全に予定が狂ってしまった陣営は、クラシックに間になんとか合わせるために、少しでも賞金を加算しようとしました。次走は手堅く自己条件のつばき賞を選んだのです。ところが、皮肉なことに、今度は抽選に落ちてしまい、つばき賞に出走することが出来なくなってしまったのです。そんな時、管理していた白井調教師は、もしかしたらスペシャルウィークは運に見放された馬なのかもしれないと思ってしまったそうです。というのも、スペシャルウィークは産まれてすぐに母親を失くし、乳母に育てられたという過去があったからでした。

しかし、スペシャルウィークは幸運な馬でした。つばき賞を除外された結果、きさらぎ賞に出走することができ、そのきさらぎ賞で堂々の勝利を収めたのです。競馬の世界にタラレバはありませんが、もし白梅賞に勝っていたら…、もしつばき賞を除外されていなかったら…、スペシャルウィークはダービーを勝つことが出来たのでしょうか。答えは誰にも分かりませんが、勝負の世界には運も必要だということは確かですよね。

スペシャルウィークに調教で初めて跨った武豊騎手と白井調教師の間に、こんなやり取りがあったそうです。面白いエピソードなので紹介しておきます。

白井調教師(ニヤリと笑みを浮かべて)
「どうや、豊君。あの馬、ダンスパートナーに似て…」
武豊騎手(少し興奮気味に)
「先生、あの馬、ダンスインザダークにそっくりですよ!」
白井調教師(意表を突かれた感じで)
「えっ、いや、ダンスパートナーに似てへんか?」
武豊騎手(極めて冷静に)
「全姉弟ですからね。でも男馬ですから、ダンスインザダークに似ていますよ。」

スペシャルウィークという1頭の新馬を賞するにあたって、白井調教師がダンスパートナーの名を口に出し、武豊騎手がダンスインザダークの名を挙げ、どちらも譲らなかったところが面白いですよね。その2頭は全姉弟なので、どちらのイメージも正しかったのだと思います。ただ、白井調教師にしてみれば、かつて自分の厩舎にいたサンデーサイレンス産駒の大物ダンスパートナーの後継者と考え、武豊騎手にしてみれば、昨年惜しくも取り逃がしてしまったダービーで乗ったダンスインザダークのリベンジを夢見たのでしょう。

さて、今年のきさらぎ賞は、私たちにも期待を抱かせてくれるスペシャルウィークのような馬が誕生するのでしょうか。2歳時に無理をしなかった素質馬が続々と出走してきますので、楽しみは大きく膨らみます。

1番人気は武豊騎手が手綱を取るブラックシェルでしょう。前走の福寿草特別で、ファリダットとキングスエンブレムを並ぶまもなく抜き去った末脚には驚かされました。ホープフルSは中山のコース形態もあって早めに動かざるを得ませんでしたが、ギリギリまで我慢すればかなり切れるということを証明しました。松田国調教師も「キングカメハメハに似たタイプ」と言っているように、広々としたコースで力を発揮する馬なのでしょうし、これからまだまだ変わってくる可能性を秘めています。あえて凡走する理由を探すとすれば、大型馬だけに、この時期は絞るのが難しいということでしょうか。坂路コースでの追い切りも少し鈍く見せましたので、まだこの時点ではキッチリ仕上げてこないだろうという意味も含め、太目残りで負けてしまうことも考えておいた方がいいですね。

本命は武豊騎手がスペシャルウィークのたとえとして挙げた、ダンスインザダークの仔◎アルカザンに打ちます。2戦2勝と底を見せていない魅力はもちろんですが、何と言っても、京都2歳Sを勝ちながら無理をせずに休ませた陣営の余裕を評価したいですね。馬体が緩く、未完成なところが目に付いたのですが、前走後に放牧に出したことによって、ひと回り成長したように映ります。追ってから渋太く伸びる馬ですので、京都1800mの持続力を要求されるコースも合っていると思います。外枠も味方につけて、良い脚を長く使いながら、最後は差し切るシーンも期待してもいいのではないでしょうか。最終追い切りの動きは100%という感じは受けませんでしたが、ここを勝つようなら将来はかなり有望だと思います。

1勝馬でも面白いのはマッキーバッハでしょうか。新馬戦はまだまだ余裕を感じさせる勝ち方でした。追ってまだまだ伸びそうという印象を受けましたし、わずか1戦のキャリアで出走してくる石坂厩舎の心意気も買いたいと思います。昨年はオーシャンエイプスを出走させ、圧倒的な1番人気に祭り上げられたものの凡走してしまいましたが、今年は逆にリラックスムードで出走できるはずです。展開次第では勝ち負けにまでなるかもしれません。

ダイシンプランは岩田騎手の期待の馬です。新馬戦は最後方から差し切って、身体能力の違いを見せつけるような走りでした。極端な競馬をした反動が出た前走ですが、ほとんど走っていませんので、あれがこの馬の実力ではないでしょう。本気で走れば重賞クラスだと思います。ただ、現状としては若さが目立ちますので、レースに行って走ってみないと好走凡走が分からない部分があります。どれぐらいの人気になるのか分かりませんが、狙いづらい馬ではあります。


関連エントリ
血統フェスティバル:きさらぎ賞2008予想
馬流天星の若駒戦予想情報:きさらぎ賞

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

涙が出るほど悔しい敗戦

Jiromaru

先週の日曜日は、降雪の影響で東京競馬場での開催が中止になりました。今日の競馬もどうなるか分かりません。この時期は、どうしても開催が危ぶまれることが多いですよね。

これはメルマガにも書いたことですが、降雪の影響ということでは、エルコンドルパサーが勝った共同通信杯を私は思い出してしまいます。芝1800mからダート1600mへと条件を変更して行われました。新馬→500万下とダートで連勝していたエルコンドルパサーにとって、ラッキーな変更だなあと思った記憶がありますが、その後の走りを見ると、そんなことは全くありませんでした(笑)。強い馬はどこで走っても強い。エルコンドルパサーは大切なことを教えてくれましたね。

とはいえ、あの共同通信杯を観て、まさか1年後に、エルコンドルパサーが凱旋門賞であんな走りを見せると想像した人は少なかったのではないでしょうか。エルコンドルパサーは3歳の夏を経て急激に成長し、4歳時にヨーロッパに渡り、様々な経験を重ねつつ、さらに進化していきました。凱旋門賞での強さは尋常ではありませんでしたよね。もしかすると、あくまでももしかするとですが、全盛期のエルコンドルパサーは、あのディープインパクトよりも強かったかもしれません。

凱旋門賞ではモンジューに差されてしまいましたが、最後は差し返していますし、3着以下を大きく離しています。モンジューとエルコンドルパサーの2頭の力が明らかに抜けていました。モンジューは近年のヨーロッパ最強馬の1頭ですので、それだけでもエルコンドルパサーの強さが分かります。しかも、エルコンドルパサーは逃げて目標にされてしまいましたので、なお負けて強しの内容だと感じました。

私の尊敬する故野平祐二調教師は、凱旋門賞での蛯名騎手の騎乗について、最後の直線で追い出すときの体の使い方が硬かったと語っていました。もちろん、蛯名騎手にもっと大きくなってもらいたいための激励の言葉です。世界に手が届きかけた瞬間だっただけに、蛯名騎手に力が入ってしまったのも当然ですけどね。私も思わず「エルコンドル!エルコンドル!」と叫んで、テレビに向かって身を乗り出してしまいましたから。

1999年凱旋門賞

世界の壁に最も手が届きかけた瞬間でした。

あれから10年近く経った今、もう一度見てみると、わずかに仕掛けが早かったのかなと私は思います。最後の直線に向いて、あとワンテンポ、ツーテンポ追い出し我慢出来ていれば…。岡部騎手がディープインパクトの凱旋門賞の時、「まだまだー!」と思わず声に出してしまったのは、エルコンドルパサーの敗戦からも繋がってきているのですね。両者ともに、涙が出るほど悔しい敗戦でした。

さて、今週はシルクロードSです。高松宮記念に向けての始動戦となりますが、お天気や馬場状態も含め、混沌としたレースになりそうです。スプリンターズS馬と3着馬が出走してきましたが、共に休み明けであることに加え、56kgと57kgという斤量を背負っています。牡馬としての基準で考えると、アストンマーチャンは58kgを背負っていることになります。実力馬とはいえ、今回のレースに関しては、付け入る隙はありそうです。

エルコンドルパサー産駒のアイルラヴァゲインは、ここで賞金を加算しなければ本番への出走が危うく、最終追い切りは併せ馬でビッシリとやっていましたので、8、9分ぐらいには仕上がってくるイメージで良いと思います。あとはこの馬の力次第ですが、どちらかというと直線に坂路があるコースの方が向いているパワータイプだと思いますので、京都競馬場がどうでしょうか。それから、時計の掛かる馬場状態はプラス材料ですが、陣営も言うように、重・不良馬場はあまり得意ではないのかもしれませんね。

アストンマーチャンは前走(スワンS)惨敗の後、すぐに放牧に出ました。その即断のおかげで、精神的にかなりリフレッシュして戻って来られたように映ります。気持ちで走る馬なので、このままうまく本番を迎えることが出来れば、好走は間違いないでしょう。ただ今回は、当然のことながら、目一杯の仕上げでは臨んできません。いわゆる、走られる状態での出走でしょう。

そして、おそらく、今回からは抑えて競馬をするはずです。武騎手のことですから、高松宮記念のことを考えると、逃げグセがついてしまっているアストンマーチャンに、もう一度抑えて走ることを教えて乗るはずです。結果として勝つかもしれませんが、陣営としては、勝ち負けよりも先に繋がる走りを期待しているレースです。

そこで、本命は◎クールシャローンに打ちます。昨年秋から、着実に力を付けてきており、前々走の京阪杯では積極的に先行して、サンアディユからわずか0.2秒差の6着に粘っています。前走にしても、勝ったファイングレインの切れ味に屈してしまいましたが、それでも最後まで粘っています。力を付けてきた理由としては、ソエが治まって、キッチリと稽古が出来るようになったことが第一に挙げられます。この中間の追い切りも、BコースとCウッドで2本ビッシリと追われていますので、いよいよ本格化といったところでしょうか。

馬場が悪くなることに関しては、正直なところ走ってみなければ分かりませんが、キングヘイロー産駒で頭が多少高い馬なので、もしかしたら得意である可能性もあります。脚質的にも、何が何でも逃げなければならないという馬ではないので、アイルラヴァゲインやアストンマーチャンの出方次第では、逃げることも下げることも出来ると思います。いずれにせよ、長谷川騎手には積極的な競馬を心掛けて欲しいものです。強気で乗れば、実力馬2頭に先着できるチャンスは十分にあるはずです。もしかすると、この馬も強い4歳牝馬の1頭として名乗りを挙げるかもしれません。

ペールギュントにとって現在の適距離は1200m戦です。マイルまで持ちそうな体型ですが、マイル戦だと気持ちが切れてしまうのでしょう。高松宮記念のように、気持ち良く走って、脚の使いどころが嵌れば、G1レースでも好勝負になるだけの実力の持ち主です。ただし、自分で競馬を作れない弱みがありますので、ルメール騎手が思い切って乗って、一か八かの勝負をしてくるのではないでしょうか。

関東では、共同通信杯が行われますが、もしかすると雪が降ってダート1600mに変更になるかもしれません。個人的にはサダムイダテンに注目していますが、エルコンドルパサー同様、この馬もダートに替わっても問題なさそうですね。中村厩舎からようやく出た大物だけに、フォーティーナイナーの後継者になるべき走りを期待しています。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

ごぼう抜き

Jiromaru

あっと言う間に2月になってしまいました。今月末にはもうフェブラリーSが行われるかと思うと、嬉しいやら、待ち遠しいやらで、少し上機嫌になってしまいます。今週の根岸Sも、フェブラリーSへと繋がっていくステップレースのひとつですので、よーく目を凝らして観ていきましょう。

根岸Sといえば思い出してしまうのが、ブロードアピールのあの強烈な追い込みです。まるで1頭だけ芝の上を走っているのではないかと思うぐらいの、次元の違う末脚で全馬をごぼう抜きにしてしまったレースですね。追い込み馬列伝の企画があると、必ず上位に推されるレースでもあります。シルクロードSを勝っているように、芝でも走る馬でしたが、とにかくダートの短距離戦での追い込み力は圧倒的でした。

2000年根岸ステークス

*最後方大外から進むオレンジの帽子の馬に注目ください!

ブロードアピールの父ブロードラッシュはヒムヤー系の種牡馬です。これはルドルフおやじさんの受け売りですが、ヒムヤー系はエクリプスから出て、細々と現代まで生き延びてきたアウトサイダーです。アメリカでこそ血は今なお大切に守られているのですが、世界的には傍流の傍流になってしまっています。それでも、スピードを失っていないのがこの系統の凄いところですね。

たとえば、ダイワメジャーの母母父クリムゾンサタンはヒムヤー系の種牡馬です。ダイワメジャーはサンデーサイレンス産駒の中でも異質のスピード馬でしたが、それは母系にこの傍流ヒムヤー系がひそかにかかっているからではないでしょうか。同じ父サンデーサイレンス、母父ノーザンテースト産駒のデュランダルとタイプが全く違うのは、このあたりの血脈に理由があるのかもしれません。もちろんダイワスカーレットにもヒムヤーの血は流れています。

そういえば、今年の根岸Sのメンバーにも、ヒムヤー系ブロードラッシュの産駒であるノボトゥルーが出走しますね。もう12歳ですか。最近は思うような結果を残せていませんが、7年前にこの根岸Sを勝って以来、ずっと走り続けているのですね。馬を傷めない森調教師の手腕には、本当に頭が下がります。

さて、明日の根岸Sですが、フルゲート16頭が揃って激しいレースとなりそうです。スプリント的な要素が問われるということ、差し馬にとって有利な展開になりやすいということを頭に置いて予想をしていきたいと思います。

まず圧倒的な人気を集めるであろうワイルドワンダーですが、この馬の前走(JCダート)は強かったですね。道中で引っ掛かる場面がありながら、最後まで粘って見せ場を作りました。あの速いペースで引っ掛かるのですから、距離短縮がプラスに出ないはずはありません。上手く勝負どころでエンジンを掛ければ、もの凄い爆発力を見せてくれるでしょう。今のところ、フェブラリーSの本命候補です。

もしこの馬が負けるとすれば、矛盾するように聞こえるかもしれませんが、前走からの一気の距離短縮でしょうか。間隔も2ヶ月開いていますので、いきなりのスプリント戦のペースに戸惑ってしまうかもしれません。それでも、連対を外すシーンはイメージしにくいのですが、人気を背負う今回は敢えて頭としては嫌ってみました。

そこで、思い切って本命は◎シンボリグランに打ちたいと思います。はっきり言って、ダート適性は未知です。こればかりは走ってみないと分かりません。ただ現状として、芝のレースではどうしても切れ不足で勝ちきれませんので、陣営がダートに活路を見出してきた選択は正しいと思います。とはいっても、近走の芝のレースでもそれほど負けているわけではありません。阪神Cにしても、スムーズなレースではなかった割に、スズカフェニックスと0.3秒差ですし、3走前のオーロカップでは西の京都牝馬Sで人気になるであろうブルーメンブラッドと好勝負しています。中間の追い切りでも美浦の坂路コースレコードを楽々と更新したように、体調はすこぶる良好です。久しぶりのダート戦ですので、砂をあまり被らない外枠も良いでしょう。

タイセイアトムのガーネットSは非常に強いレースでした。中間も坂路コースをグイグイ上がってきているように、引き続き絶好調です。スピードだけではなく、ここに来てパワーアップも著しく、陣営からドバイの言葉が出るのも不思議ではないですよね。たとえ200m距離が延長されたとしても好勝負になるはずです。確かに、行くだけ行くという脚質は心配材料ではありますが、前半600mを34後半ぐらいまでに落として走ることが出来れば、粘りこみも十分可能でしょう。もちろん、雨が降って馬場が渋れば、この馬にとってチャンスは広がります。

アドマイヤスバルもここに来て力をつけています。腰がパンしてきて、追い切りでも自然と好タイムが出るようになってきましたね。神無月Sと霜月Sの2連勝は、共に中身も濃いものでした。スッと好位を確保できますし、折り合いもピッタリとつきます。父アドマイヤボスは兄にアドマイヤドンがいて、ダートで走る産駒を出してきているのが面白いところですね。鞍上の村田一誠騎手も今年注目しているジョッキーのひとりですので、どのような騎乗をしてくれるか楽しみです。

リミットレスビッドはどうでしょうか。年末の兵庫GTは強いレースでしたが、気持ちで走る馬だけに、反動が出ていないか心配です。9歳馬という年齢自体は心配していませんが、どうしても連続して勝つのは難しいかなと。その点で言うと、メイショウバトラーの方が面白いかなと思います。近走は思ったよりも走っていませんが、リズムを取り戻してくれば怖い1頭です。

前走初ダートを楽勝したマイネルスケルツィも面白い1頭でしょう。ダートに転身したことが結果的に吉と出ました。父グラスワンダーは、ダートでもかなりのところまで行けたんじゃないかと言われていた馬で、マイネルスケルツィにもその血が流れているのでしょう。芝のレースだと、どうしても切れる脚がありませんので、先行して押し切るしか戦法がありません。なかなか重賞クラスではそういう競馬はさせてもらえませんので、先々を考えるとダートで正解でしょう。今回はスタートしてから芝コースがない1400mですので、行き脚がつくかどうか心配ですが、ここで差す競馬を試してみると、フェブラリーSにも繋がりそうです。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (6)

噛み付いた馬

Jiromaru

今週は平安ステークスが京都競馬場で行われます。来月末に行われるフェブラリーSの前哨戦として、来週の根岸Sと並んで重要な一戦となりますので、しっかりと検討していきたいものです。そして、今年は昨年にもまして実績馬が揃い、レベルの高い争いが期待できそうですね。

平安Sといえば思い出してしまうのが、シンコウウインディとトーヨーシアトルが同着で勝利した平成9年のレースです。バトルラインという兄にサンダーガルチを持つ良血馬が1番人気になりましたが、4コーナーを持ったままの手応えで回ったのはトーヨーシアトル、そして、最後の最後に追い詰めたのがシンコウウインディでした。ゴール前の同着、首差という争いは、モノ凄い迫力でした。

・平成9年の平安Sのデットヒートの映像はこちら

Sinkouwindyこのシンコウウインディという馬は、噛み付きグセのある馬として今でも有名です。この馬は競走生涯で2度、レース中に他馬に噛み付いたのですが、初めてのレースは当時900万下条件の館山特別でした。直線抜け出したにもかからず、内にいたダイワオーシャンに噛み付きに行って失速して負けてしまいました。2度目は大井競馬場で行われたスーパーダートダービー。逃げたサンライフテイオーに噛み付きに行って、またもや失速して2着に敗れてしまいます。どちらのレースも勝てる手応えだっただけに、噛み付きに行って失速という珍事に陣営も頭を抱えてしまいました。

この他馬に噛み付くという行為は、競馬のレース中には滅多に見られない珍しいシーンですが、馬の世界ではよくあることです。馬は集団で生活する動物ですので、やはりそこには争いごとや喧嘩が起こります。いきなり肉体をぶつけ合うのではなく、まずは首を上下左右に激しく動かしたり、前脚で蹴るような仕草を見せたり、大きく高い声で嘶いたり(いなないたり)して相手を脅します。それでも、決着が付かない場合に、噛み付く、ぶつかる、蹴るなどの直接行使に出るのです。

動物学的には、この噛み付くという行為は、その馬が個体優位であることの証明だそうです。怒ってはいても神経質になってしまっている馬は、噛み付くのではなく、後脚で蹴ったりするという消極的な攻撃に出るということです。一説には、シンコウウインディは直線で苦しがって噛み付きに行ったと言われていますが、どうだったのでしょうか?平安Sの後、晴れて第1回フェブラリーS(G1)の勝者となった走りを見ると、私はその噛み付きグセは、シンコウウインディが個体優位だったゆえの行為だったように思えてなりません。フェブラリーSの最後の直線でストーンステッパー(2着)に馬体を併せた時、一瞬噛み付きにいく素振りを見せ、レース後、岡部騎手が「噛み付きに行くかと思ったよ」とコメントしていたのが印象に残っています。

さて、平安Sでは私は◎ロングプライドに本命を打ちたいと思います。この馬は湿った馬場を気にするようで、ここ数戦は思ったような結果が出せていません。良馬場だったトパーズSだけは、大外から豪快に差し切っており、陣営が問題は馬場状態と言うのも頷けます。名古屋GPを使っているので、間隔が開きすぎていないのも、絞れにくい時期だけに好材料ですね。

武豊騎手からの河北騎手への乗り替わりは気にならないといえば嘘になりますが、気性が素直で乗り難しさのない馬だけに、それほど問題はないと判断しました。比較的後ろから行く馬ですので、外枠も問題ないでしょう。それよりも、スローペースになって外々を回されてしまい、最後届かないことだけが心配ですね。こればかりは走ってみなければ分かりませんが、先行したい馬が揃っていますので、それほど極端なスローにはならないのではないでしょうか。河北騎手にはスタート後、すぐに内に馬を入れて、最後の直線に賭けてもらいたいものです。

現時点での1番人気はメイショウトウコンのようですね。ハイレベルのJCダートを4着、暮れの東京大賞典では3着と、もうすぐG1レースにも手が届きそうなところまで力を付けてきています。ダートでのスローの瞬発力勝負を得意とする珍しい馬ですので、昨年のようなヨーイドンの流れになるのが理想的です。そういう意味では、道中のラップが厳しいであろうフェブラリーSよりは、今回のレースの方が向いているはずです。陣営としては、ぜひここは勝っておきたいところです。

しかし、ここに来ての追い切りでの動きが、私にはあまり良く映りません。元々あまり動かないタイプなのですが、もしかすると、昨年の暮れの連戦が、ここにきて堪えているということも考えられます。昨年のように嵌る(はまる)かどうかという展開面も含め、脚質的に取りこぼしも十分にあり得ます。昨年の覇者でもあり、ロベルト系×ミスタープロスペクター系というドンピシャの血統でもありますが、今回は対抗以下の評価に落としたいと思います。

G1初挑戦であったJCダートで6着と好走したドラゴンファイアーは、今年のダート戦線を引っ張っていく1頭になるでしょう。マイルぐらいが適距離の馬体ですので、ここを叩いた本番のフェブラリーSではかなり有力だと思います。もちろん1800mの距離も十分にこなせますし、4歳になって幼く映った馬体にも成長が見受けられます。理想的な枠(内枠)を引きましたので、今回のレースでの好走も間違いないのではないでしょうか。

ただ、ひとつ気になるのは、前走で連勝が途切れたことです。連勝がストップした後は、肉体的にも精神的にもガタっと来ることが多いので、わずか2ヶ月間の間に完調にまで持ってこられたかどうか心配です。ステップレースであることを含め、今回は良くて8分の出来でしか出走できないのではないでしょうか。人気にもなるでしょうし、そういった意味では、頭としては狙う妙味が少ないかなという気がします。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)

あまりにも悲しすぎる結末

Jiromaru

あれっ?と驚かれた方もいらっしゃると思います。そうです、これまではメルマガ「馬券のヒント」にて重賞の有力馬情報を配信してきましたが、今週からブログ上で予想を公開することにしました。なるべく毎週、東西の重賞のどちらかについて書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

また、昨年一杯でルドルフおやじさんとの手紙のやりとりは終わってしまいましたが、色々と考えた結果、これからは私から皆さまに対して手紙を書くというスタイルでやっていくことに決めました。もし私からの手紙に何か思うことがあったり、言っておきたいことなどがあれば、コメントもしくはメールをいただければ幸いです。そのような形で皆さまとのやりとりを楽しんでいきたいと思っています。

今週は日経新春杯です。最近、ようやく冬らしくなって、木曜日には各地で雪が降り、雪の中で追い切られた馬もいたようですね。日経新春杯と聞くと、テンポイントのことが浮かんでしまうのは私だけでしょうか?テンポイントのファンの方ならば、日経新春杯というレース名に過敏に反応してしまう気持ちを分かっていただけると思います。そういえば、あの年の日経新春杯も雪景色の寒い日だったそうです。

前年の暮れの有馬記念でトウショウボーイとのマッチレースを制し、名実ともに頂点に立ったテンポイントの年明け緒戦が日経新春杯でした。なんと66.5kgのハンデが課せられていたのですが、当時のテンポイントの絶対的な強さを知る競馬ファンは、海外遠征が決まっていたテンポイントの壮行レースとして、このレースを位置づけていました。ところが、4コーナーを馬なり先頭で回り、さあここから仕掛けるぞと思った瞬間、乾いた音とともに、テンポイントは馬群の遥か後方に1頭ポツンと立ち止まってしまったのです。

Tenpoint

左後脚骨折で競走中止。獣医の診断では、ほぼ回復不可能な予後不良の処置をすべき重症でしたが、何とか助けたいという関係者の声もあり、2時間にも及ぶ手術が決行されました。ファンからは毎日のように手紙や千羽鶴が届いたそうです。しかし、一時は一命を取り留めたかに見えたものの、人々の願いもむなしく、53日間の闘病生活の末、テンポイントは息を引き取りました。500kgあった馬体重が、最後は衰弱して370kgに減っていたそうです。

なぜテンポイントが日経新春杯に出走したか知っていますか?暮れの有馬記念を制した馬が、わざわざ極寒期に66.5kgの酷量を背負ってまで、なぜ出走したのでしょうか?

「知らんかったんですよ、テンポイントを種馬にするということを、ほんとうに。いまならそんなバカなことはあり得ないことですが。当時はまだ馬主になってキャリアが浅く、競馬世界の構造もようわからんかったんです。自分の馬を種馬にできるという知識があれば、有馬記念のあと文句なくそうしています。決して一部マスコミで非難されたような、もっと賞金が欲しかったとか、そんなんじゃありません。日本で一番強くなったんだから、あとは海外で走らせようと、単純に思ったんです。いまはただ当時の自分の無知が恥ずかしく、テンポイントにかわいそうなことをしたと思うばかりです」(「最強の名馬たち」講談社より)

驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、テンポイントのオーナーは種牡馬にするということを当時は知らなかったそうです。将来出世して新聞の10ポイント活字で記事にのるような馬になるようにという願いをこめて10ポイント(テンポイント)と命名したオーナーが、まさか名のとおり有名になったテンポイントの命を自らの無知のために絶ってしまうとは、あまりにも悲しすぎる結末です。

このテンポイントの死をきっかけとして、平地で酷量が課せられることはほとんどなくなり、またテンポイントの手術・治療によって得られたノウハウで、骨折した馬の治療技術は格段に上がったと言われます。当時、現代の治療技術があれば、テンポイントは助かっていたのではないでしょうか。クモワカ、ワカクモと繋がった血脈が現代に至らなかったことは、あのライスシャワーやサイレンススズカの血が残っていないことと同じように無念に思います。

さて、気を取り直して、今年の日経新春杯を占っていきましょう。アルゼンチン共和国杯を勝って勢いに乗る◎アドマイヤジュピタに本命を打ちます。【5・2・1・1】という全成績を見ても、このメンバー中での素質の高さは明らかです(「全成績から分かること」についての詳しく知りたい方はこちら。)馬体に幼さを残している現状ですが、それでもG1レースでも勝ち負けになる力を秘めていることに間違いありませんね。

この馬の長所は、道中がどれだけ遅い流れになってもピタリと折り合えることです。道中で引っ掛からないからこそ、最後の直線で確実に伸びてくることが出来ます。隙のないレースができる、つまりレースセンスが良いということですね。そういった意味でも、スローに流れそうな今回のレースにも全く不安はありません。57kgの斤量も前々走で勝っていますし、これぐらいで音を上げる馬ではないでしょう。あとは先週の雨によって内ラチ沿いが少し荒れてきていますので、岩田騎手には少しでも馬場の良いところを選んで通ってきてもらいたいものです。

鳴尾記念で5着に好走したオースミグラスワンは、ノーマークに出来ない存在でしょう。2着のエイシンデピュティと3着のアドマイヤオーラが京都金杯でワンツーフィニッシュ、3着同着のアドマイヤフジは中山金杯を勝利しました。しかも、スローペースをほぼ最後方から行ってのものだけに、負けて強しの内容だったと思います。距離延長はプラス材料にはならないでしょうが、福永騎手の乗り方次第ではアドマイヤジュピタを脅かす存在にもなり得るでしょう。ただ、後ろから行って、ギリギリまで仕掛けを遅らせてナンボの馬ですので、展開的に勝ち切れるイメージは湧きません。

武豊騎手の乗るダークメッセージは、昨年のこのレースは軽ハンデで3着に突っ込んできましたが、あれから少しずつ力をつけて、さらにここに来て調子を上げています。スローのヨーイドンになりそうなレースは、この馬にとってベストの条件でしょう。ハンデの55kgは少し見込まれた感はありますが、そこは武豊騎手ですから何とかしてくるでしょう。ワンパンチ足りない印象がありますので、勝ち切れるかというと疑問ですが、堅実な末脚を生かして好走してくるはずです。

トウカイワイルドは走りに安定感がありませんが、外回りの広いコースであれば、力を出し切れるはずです。福島競馬場で走った前々走や、内回りの前走での走りは参考外としてもいいでしょう。好枠を引きましたので、川田騎手のことですから、前半から積極的に好位を取りに来るはずです。直線に向くまでにどれだけ気分良く走らせられるかがポイントですね。昨年の覇者にもかかわらず、それほど人気になりそうもありませんので、狙ってみる妙味はありあそうですね。

敢えて対抗を挙げるとすれば、サンデーサイレンス産駒のトウカイエリートでしょうか。すでに8歳になりましたが、昨年のこのレースからわずか3戦しか使っていないように、大切に使われてきており、衰えは感じさせませんね。昨年はトウカイワイルドの安藤勝己騎手に上手く乗られてしまったこともあり、足もとを掬われる形になりましたが、勝ったも同然の競馬でした。前走を叩かれて、この中間もしっかりと追い切られているように、万全の体調で出走して来るはずです。この馬も折り合いに心配がありませんので、直線に向くまでジッとしていて、あとは追い出すだけです。今年の2月で引退される松元省調教師の「とにかく人馬ともに無事で走ってきてくれればそれでいい」という言葉のとおり、全馬無事に走ってきてくれることを私も祈りたいと思います。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (4)