◎アサクサキングス

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とうとう春のG1シリーズのフィナーレ、宝塚記念がやって来てしまいました。ウオッカやアドマイヤジュピタの出走がないのは残念ですが、少頭数ながらも個性豊かなメンバーが揃いました。ウオッカが宝塚記念に出てくれば好勝負になったことは間違いないのですが、陣営はコースや馬場適性を考慮に入れて、より勝利の可能性の高い天皇賞秋の方を選択したということですね。

宝塚記念を勝ち、なおかつ秋の天皇賞に良い体調で出走することはローテーション的に至難の業ですので、そういう各陣営の思惑を読むことも重要になってくるでしょう。もう少し具体的に言うと、秋の東京コースのような軽い馬場ではなく、今の阪神コースのような力を要する馬場に適性がある馬を狙うべきということです。

また、宝塚記念はシーズンオフに近いG1レースですので、どれだけ余力があるかも大きなポイントになってきます。天皇賞春で力を使い果たしてしまっていたり、年明けから走り続けてきているような馬は、宝塚記念で遂にガス欠を起こしてしまうことが往々にしてあります。サラブレッドの苦手な夏に向かいつつある時期でもありますので、体調には十分な注意が必要でしょう。

結論から述べると、本命は◎アサクサキングスに打ちます。実は前走の天皇賞春でも本命を打ったのですが、なんとも不甲斐ないレースでした。1番人気を背負って、他馬の目標にされてしまったということはあったにせよ、直線で一度も先頭に立つこともなく、伸びを欠いてしまいました。今から冷静に振り返ってみると、もしかすると3200mの距離が少し長かったのかなとも思います。3000mの菊花賞を勝ったアサクサキングスに、距離が長いと言うのは変だと思われるかもしれませんが、マイラーを輩出するスピードの勝った母系という血統的背景だけではなく、およそ20kg増えて逞しくなった馬体からも、中距離馬としての本質が顕在化してきたということがうかがい知れます。横から見るとスラっとしたステイヤー体型ですので、それだけ前から見た馬体の幅が広がっているということでしょう。古馬になって、パワーとスピードの資質が増強されたのです。

フットワークの大きなアサクサキングスにとって、明日の天気次第では重馬場が不安材料になりますが、首の高い走法からもこなせる可能性は十分にあります。逆に、外枠を引いたことはプラス材料になります。逃げるエイシンデピュティの外、2、3番手を伸び伸びと走ることが出来るはずです。向こう正面、そして3~4コーナーにかけて淀みないラップが刻まれることも、この馬にとってはおあつらえ向きのレースになるでしょう。瞬発力勝負になると分が悪いのですが、ジワジワと進出して、最後まで踏ん張り通すレースをしてくれるはずです。さらに、今年に入って3戦目というフレッシュなローテーションにも好感が持てます。菊花賞後に無理をさせることなく成長を促したことが、ここに来てプラスに働くのではないでしょうか。アサクサキングスには、ここを勝ってヨーロッパへの遠征を期待したいです。

メイショウサムソンは人気どおり、勝つ確率という点では最も高いかもしれません。なんといっても、好枠を引いたアドバンテージを生かして、武豊騎手が積極的に乗ってくるはずです。昨年の秋は、天皇賞秋をピークとして、ジャパンカップ、有馬記念と体調は下降線を辿りましたが、今年はその反省を生かして仕上げてきています。産経大阪杯は余裕残しの仕上げで、叩いた天皇賞春では一変しました。この馬も今年に入って3戦目で、昨年のこの時期に比べると体調面では上のはずです。あっさりと勝たれても仕方ありませんね。それでもサムソンに本命を打たなかったのは、1週間前追い切りはバツグンでしたが、最終追い切りの動きがあまり良く見えなかったからです。舌を出して集中力を欠いていたように映りました。杞憂に終わるかもしれませんが。

エイシンデピュティは、当初、本命まで打とうかと考えていた馬です。前走の金鯱賞では、苦手の左回りもなんのその、あっさりと押し切ってしまいました。なんといっても、産経大阪杯で見せた走りは本物です。アサクサキングスやメイショウサムソンと比べ、使ってきていたアドバンテージはあったものの、ダイワスカーレットに食い下がりましたから。渋太いレース振りを見る限り、2200mの距離も心配ありませんし、パワータイプだけに宝塚記念への適性は十分です。展開次第ではアッと言わせることもあるはずです。ただ、私がこの馬の評価を最後に下げたのは、やはり昨年から今年にかけて使い詰めの厳しいローテーションで走り続けてきているからです。体調維持に専念したかのような最終追い切りにも、少し疑問符が付きました。

ロックドゥカンブは、前走を叩いて上向きの体調で臨んできますし、力の要る阪神の馬場も合うはずです。将来性ということでいえば、4歳馬の中でも一番かなと評価している馬ですので、好走してくることは間違いないでしょう。ただ、前走で太目残りとはいえ、あっさり負けてしまったのが気になります。アルナスラインについても同じことが言えますね。まだ完全に力が付き切っていないからこそ、G2レベルを勝ち切れないのでしょう。果たして古馬の定量戦である宝塚記念を勝ち切れるでしょうか。

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メジロライアンのモヒカンカット

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宝塚記念といえば、夏の香りと共にいつも思い出されるのがメジロライアンのことです。まさに私が競馬を始めた頃に活躍していた馬だけに、その名前を聞くだけで、あの頃の初々しい想いが蘇ってくるようです。ライアンという名前の由来は、あの大リーグの豪腕ノーラン・ライアンからだそうです。メジロライアンと言えば、横山典弘騎手ですよね。この2人は名コンビというか、最高のパートナーでした。そして、やっぱりというか、この2人は大レースでなかなか勝ち切れなかった(笑)。

皐月賞3着
ダービー2着
菊花賞3着
有馬記念2着

特にダービーでは、1番人気を背負って、後ろから行って届かず2着。この時、横山典弘騎手は、その乗り方についてかなり酷評されました。後ろから行って脚を余すくらいならば、前に行ってバテた方がいい、という古い考えがまだ残っていた時代でしたから。今観てみると、勝ったアイネスフウジンが強すぎただけで、あの時点では最高の騎乗だったと思います。

夏を越して、菊花賞こそはとファンからの期待も高まったのですが、彼らの前に立ちはだかったのは、あの最強ステイヤー・メジロマックイーン。その恐ろしいまでの強さの前に、ライアンは連対すら確保することができませんでした。続く暮れの有馬記念でもオグリキャップの2着。大川慶次郎さんの掛け声の後押しがあったにもかかわらず(笑)、とうとうG1レース未勝利で3歳時を終えることになってしまいました。

このあたりで、イマイチくんのイメージが定着してしまったような気が…。まあ、その勝ち切れない二人にも、古馬になってようやく勝利の女神が微笑むことになりました。4歳時の宝塚記念で、宿敵メジロマックイーンを倒し、ようやく念願のG1タイトルを手に入れたのです。先行して押し切ってしまうという横綱相撲だったのですが、実は私はライアンがマックイーンに勝つことを予測していました。

競馬好きのあらゆる友達に、「今度こそライアンがマックイーンに勝つ!」と宣伝して回ったのですね。しかし、それまでの2頭の対決だけを見れば、マックイーンの方が強いことは明らかでしたので、「ライアンがマックイーンに勝てるわけがない!」という反応がほとんどでした。だからこそ、宝塚記念でのライアンの見事な勝利は、横山典弘騎手と同じくらい、私も鼻高々な気分だったことを覚えています。

とはいっても、本当のことを言うと、ライアンがマックイーンに勝てる理由なんて私も分かりませんでした。競馬を始めてわずかの頃でしたので、理論や理屈でライアンを推したわけではなく、ライアンを応援したかった気持ちが勝てるという妄想にすり替わっただけでした。

私がライアンを応援したくなった理由は、あのモヒカンカットのエピソードを宝塚記念の前に知ったからです。ご存知ではない方もいらっしゃると思いますので説明しておきますと、メジロライアンは馬一倍(?)皮膚が弱くて、タテガミを伸ばしていると、首の肌が荒れて、痒く(かゆく)なってしまったそうです。だから、メジロライアンはいつもタテガミを短く切っていて、まるでモヒカンのような髪形をしていたのです。私も小さいころアトピーで悩んだ経験がありまして、そんなこんなでモヒカンカットのライアンを応援したくなったのです。そんなことで初心者の予想が当たるのも競馬の面白いところです。メジロライアンの余生が幸せであることを願います。

メジロライアンとその産駒たち

ほんの少しですが、宝塚記念とモヒカンカットがご覧になれます。

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◎グッド馬場

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安田記念は2005年よりアジアマイルチャレンジの最終戦として位置づけられ、それ以降、香港のトップマイラー(もしくはスプリンター)がこぞって参戦してくるようになりました。全般的に、スプリント戦であれば香港馬、中距離以上のレースであれば日本馬の方が強いのですが、ことマイルの距離においては、香港馬と日本馬は互角のレベルにあります。

そのため、わずかに日本に地の利があるとしても、基本的には国際的な強いマイラーが勝つのが安田記念ということになるはずです。つまり、本当に強いマイラーであれば、フューチュリティS→ドバイデューティーフリー→チャンピオンズマイル→安田記念というレース体系の中で戦ってくるはずで、そういう馬を狙うべきだということです。

本命は5連勝中の◎グッドババに打ちます。昨年は初来日で7着と惨敗してしまいましたが、その後、完全に本格化しました。サラブレッドにとって、海外へ遠征することにはデメリットとメリットがあります。デメリットは、輸送や環境の大きな変化によって馬が傷んでしまうこと。メリットは、輸送や環境の大きな変化によって、馬が精神的に強くなったり、リフレッシュされることです。グッドババの場合は、完全な後者だったのですね。元々能力は高かったのでしょうが、昨年の安田記念を境に、馬が変わりました。

前走のチャンピオンズマイルは、4コーナーでは既に先団に取り付き、直線では馬なりで先頭に立つ勢いの圧勝でした。他馬とはエンジンの性能がふたつぐらい違う感じでしたね。馬体や走り方を見る限り、スパッと一瞬の切れ味がある馬ではなく、しぶとく伸びて、最後はパワーでねじ伏せるタイプです。決して派手な勝ち方をするわけではありませんが、こういうタイプが充実すると、なかなか取りこぼしが少ないのが特徴です。

あまり内を引きすぎると、押し込まれて、馬場の悪いところを通らされる心配がありましたが、9番枠ならばギリギリセーフでしょう。道中は馬場の良いところを選んで走り、最後の直線ではド真ん中に出して追ってきて欲しいものです。少し重くなってきている東京の馬場も、グッドババにとってはGood馬場!だと思います。

ウオッカは、馬体をフックラと見せ、毛艶も良くなってきているように、どん底の状態であった前走に比べ、明らかに体調は上向いてきています。もちろん、この馬にはダービーを勝ったことによる燃え尽きという、目に見えない要素があるので要注意ですが、今回は久しぶりのチャンスなのではないでしょうか。また、牡馬に混じって走ったドバイデューティーフリーも非常に価値が高いと思います。このレースを勝ったジェイペグがシンガポール国際カップも制したように、メンバー・内容ともにハイレベルな一戦での僅差の4着でした。日本馬の代表として、グッドババと叩き合いを演じて欲しいものです。

現在1番人気に推されているスーパーホーネットは、昨年の秋以降、充実した走りを続けていますね。前走の京王杯SCの走りは圧巻でした。中間は美浦に長期滞在して、苦手な輸送を避ける作戦です。ただ、休み明けを経て、少しずつ減っている馬体が気になりますね。特に前走の勝ちっぷりと馬体重を見る限り、前走がピークで、本番へ向けての大きな上積みは望めないはずです。あとは充実してきている現在の力がどこまで通用するかでしょう。

馬場を考えると、スズカフェニックスにもチャンスが訪れるかもしれません。ダービーが終わり、私たちの張り詰めた気持ちがスッと緩むのと時を同じくして、ダービーまではなんとかもっていた芝も、急激にガタっと悪くなってしまいます。今年の安田記念はダービーに引き続きCコースで行われますので、どう考えても馬場の内側が傷んでいますよね。そこを走らされた馬が、いつのまにかスタミナを奪われて失速するというシーンを、安田記念で私は何度も観て来ました。グッドババやウオッカに比べ、スタミナという面では一抹の不安が残りますが、馬場の良いところを走られる外枠を生かすことが出来れば、好走も期待できるはずです。

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◎ディープスカイ

Jiromaru

お手紙ありがとうございます。いよいよダービーの日がやってきました。シンボリルドルフがダービーを「勝つ馬」が勝つレースに変えたのですね。私もルドルフおやじさんに倣って、「勝つ馬」を探してみたいと思います。

各馬の評価の前に、まずは今年の出走馬をローテーション別に分けて考えてみたいと思います。というのも、今年は最もダービーへとつながりやすいとされる皐月賞組に大きな特徴があるからです。これは皐月賞のレース前に感じたことですが、各馬がずいぶんと皐月賞に勝負を賭けてきたなということです。抜けた馬がいない混戦であっただけに、ダービーを見据えてではなく、皐月賞を勝ちにきた仕上げの馬が多かったということです。

勝ったキャプテントゥーレを筆頭にして、タケミカヅチ、レインボーペガサスなど、究極の仕上げを施してきた馬が多く、着順こそ脚質が左右しましたが、結果的にそれらの馬が上位を独占しました。弥生賞がギリギリの造りであったマイネルチャールズは踏ん張ったものの3着に破れ、スプリングSで仕上げ切ってしまったスマイルジャックは惨敗してしまいました。

つまり、何が言いたいかというと、皐月賞組(特に上位組)の中では、ダービーへ向けての上積みを期待できそうな馬が見当たらないということです。ショウナンアルバのようにまともに走らなかった馬を除いては、良くて平行線、悪ければ体調が下降して臨んでくる馬が多いはずです。

そこで私は今年こそ青葉賞組からダービー馬が出るのではないかと思い、府中までダービー馬を探しに行きましたが、レース後には無駄足だったことを悟りました。アドマイヤコマンドは強いレースをしてくれましたが、なんとこの馬も青葉賞でダービーの権利を獲るために、かなりのところまで仕上げてきていました。こちらも良くて平行線の体調での出走になってしまうでしょう。アドマイヤコンドル以外の青葉賞組には、ダービーで勝負になるだけの完成度を感じませんでした。

果たして今年のダービーはどうなるのかと思った矢先、翌週のNHKマイルCを観て、ようやく霧が晴れた思いがしました。スピードだけでは乗り切れない府中のマイル戦で、ゴスホークケンが淀みのない流れでレースを引っ張り、まさに各馬の総合力が問われる内容でした。勝ったディープスカイも2着に敗れたブラックシェルも、ダービーを見据えた仕上げの中、高いパフォーマンスを見せてくれました。馬場の影響で1分34秒台での時計の掛かる決着になったことも、馬の肉体面へのダメージを考えると吉と出そうです。

今年の本命は、NHKマイルC勝ち馬の◎ディープスカイに打ちます。前走のNHKマイルCは展開が向いたこともありましたが、強靭な末脚を発揮した強いレースでした。皐月賞をパスして、間を開けてみっちり乗り込んだことにより、体に芯が入って、ひと回り大きく成長を遂げました。皐月賞をパスしたことについて、昆調教師の「2、3着を拾っても意味がなかった」という言葉には力がありますね。NHKマイルCを叩いて、1週間前追い切りでは51秒台が出たように、さらに体調はアップしています。馬体を見ても、前走を快勝した反動は感じられませんね。

マイル戦であれだけ切れた馬だけに、距離が伸びてどうかという不安はありますが、折り合いのつく馬ですし、府中のマイル戦の激しいレースを勝ち切っていますのでスタミナに心配はないでしょう。あとはハンドル操作の難しい(敏感な)馬ですので、四位騎手が馬のリズムで走らせてあげることができるかどうかです。1番枠を引きましたので、スタートしてから1コーナーまでの所をどれだけスムーズに捌けるかがポイントですね。幸いにも、四位騎手には昨年ダービーを制した経験がありますので、落ち着いて乗ってくれると思います。

NHKマイルCを2着したブラックシェルも勝ち負けになる1頭です。ここに来て、馬体のバランスが良くなってきており、2400mの距離にも適応できそうな雰囲気が出てきました。そう考えると、恐ろしいですね、松田国調教師という人は。調教で馬を変えることが出来るのですね。さすがにダービーをタニノギムレットとキングカメハメハで2勝しているだけのことはあります。これら2頭には敵いませんが、ブラックシェルも府中でこそのフットワークで走る馬で、もちろん鞍上の経験も怖いですね。武豊騎手には意地を見せてもらいたいところでもあります。

ダートを4連勝して、追加登録料を払ってでもダービーに出走してきたサクセスブロッケンには、未知の魅力があります。調教師も主張するように、馬体ひとつを取ってみても、とてもダート馬のそれとは思えません。ただ、追い切りでも速い時計が出ないように、まだ全体的に馬体に力が付き切っていません。この馬がダートを得意とするのは、かき込むような走法だからということに加え、力が付き切っていない部分を補うことが出来るからです。そういう現状を考えると、将来的には天下を獲る馬になるかもしれませんが、現状としては他馬に比べて完成度で劣ると考えています。

今年のダービーはプレミアムレースですので、大きく賭けようと思っていたのですが、雨が私の頭を冷やしてくれました。2分数十秒に凝縮されたドラマを、一瞬たりとも見逃さないように楽しみたいと思います。まずは全馬が無事にゴールまで走り切ってくれることを願います。ルドルフおやじさん、そして「ガラスの競馬場」を読んでいただいている皆様にも、よいダービーが訪れますように。

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ルドルフおやじからのダービー特別寄稿

Rudolf

一時も仕事のことが頭から離れず、ふーふー言いながら毎日過ごしています。

頭を切り替える、その時間もない悪い状態。せめてダービーウィークの最後だけは・・と思ってキーボードを叩いています。

だれが笑うことができるか?

ビートルズは2人になってしまいましたが、ストーンズは元気ですね。かつてロン・ウッドがストーンズに加入したときに、「ストーンズに入って一番しんどいのは・・・ストーンズのように生きなければならないこと」と言っていたのを思い出しました。

還暦を過ぎたミックやキースがストーンズのように生きつづけている、ってのは凄いですね。

岡部幸雄はルドルフに乗る前は、評価でいうとナンバー2辺りにいる、地味な印象を与える騎手だったような気がします。ただラフプレイをした若手騎手に鉄拳制裁を加えたなんていう記事が一般週刊誌に載ったりして、へえ、ずいぶん厳格な騎手もいるもんだ、と思っていましたが、今、思えば岡部幸雄の人生を貫き通しているのは、この厳格さだったんだ、と気づく次第であります。

岡部幸雄の凄いのは岡部幸雄のように生きたことです。
ルドルフの凄いのはルドルフのように駆けたことです。

おやじのような者は、決して真似できない人生の輝きを垣間見てふーっと救われた気分になるわけです。岡部幸雄が、ルドルフがおやじの替わりに凄い人生を生きてくれている。

数年前、後藤が何某と大ガンカしたあげく、殴って処分を受けたなんていうのがありましたな。なんと子供っぽいことか。後藤は今でも天真爛漫に乗って子供のように勝利騎手インタビューでわけのわからないことを話している。こういうのを見ていると落ち込んでしまう。後藤がおやじの人生を生きている、がっははは。

あっ、ダービーですね。今年は血統も何もあったもんじゃあない。何も知りません。馬券を買う時間を捻出して2000円ほど買ってみます。

かつて皐月賞は「勝つ馬」が勝つレースでした。ダービーは「負けない馬」や「負ける」馬が勝つレースでした。それを変えたのはルドルフだったような気がします。

今年の皐月賞は「負けない馬」トゥーレが勝ちましたね。今度は「勝つ馬」でいくことにします。ブラックシェルやディープスカイあたりに注目しています。

やっと仕事が頭から離れました。感謝です。

今日の深夜か明日の治郎丸さんの予想を楽しみに待っています。

治郎丸さんによいダービーが訪れますように神のご加護を。

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誰に笑うことが出来るだろうか?

Jiromaru

Winningticket_2「ダービーを勝ったら騎手を辞めてもいい」という柴田政人元騎手(現調教師)の言葉には、全てのホースマンのダービーに対する思いが込められているような気がします。競馬の世界では誰もが一度はダービーを夢見ますが、実際にダービーの栄光を掴み取ることが出来るのはわずか一握りの者にしかすぎません。だからこそ、ホースマンは自らの存在と引き換えにしてでも、ダービーの名誉を手に入れたいと思うようになるのです。ウイニングチケットでようやくダービーを勝った時のインタビューにて、柴田政人元騎手は、「世界のホースマンに、第60回のダービーを勝った柴田ですと伝えたい」と答えました。もしかすると、ホースマンはダービーを勝つことで初めてホースマンになるのかもしれません。

柴田政人騎手と競馬学校の同期であり、かつ永遠のライバルでもあった、あの岡部幸雄騎手でさえ、たった一度しかダービーを勝つことは出来ませんでした。そう、20世紀の最強馬である皇帝シンボリルドルフとのコンビで挙げた1勝のみです。シンボリルドルフに出会ったこの年、岡部幸雄騎手は34歳でした。それまで決して順風満帆とはいえない騎手人生を送ってきた岡部幸雄騎手にとって、皐月賞を圧勝したシンボリルドルフをパートナーに迎えるダービーは、まさに千載一遇のチャンスだと思えたそうです。シンボリルドルフなら勝てるだろうという希望と、これで負けたらもう一生ダービーを勝つことはないだろうという絶望を、岡部騎手は両手綱に抱えながら第51回ダービーのスタートは切られたのです。

私たち競馬ファンがシンボリルドルフの異変に気付いたのは、レースが向こう正面に差し掛かったあたりだったでしょうか。なんとシンボリルドルフがなかなか前に進んで行こうとしないのです。皐月賞をほとんど持ったままで勝った時とは全く別の馬のような行きっぷりの悪さで、岡部騎手が追っ付けながらやっとのことでレースについて行っているという状態でした。焦った岡部騎手は肩ムチを1発、2発と入れました。スタンドで見守っていた野平祐二調教師の周りからは悲鳴が聞こえました。残り500m。シンボリルドルフはまだ7番手以降。この時点で、和田共弘オーナーは「もうダメだ」と目を閉じました。

「行くぞ。しっかりつかまっていろ!」というルドルフの声を岡部騎手が聞いたのは、府中の最後の直線ラスト400mのところでした。ルドルフは前との差を一気に詰め、最後の200mでは前を行くスズマッハに並んだかと思いきや、あっという間に交わし去り、ゴールでは先頭に立っていたのです。岡部幸雄騎手はレース後にこう語りました。「僕自身がルドルフに一切を教わりました。途中でどうなったのかと思いましたが、動くにはまだ早いということをルドルフの方が良く知っていたのですね。焦っていた私をルドルフが助けてくれたのです」と。

第51回ダービー

皇帝ルドルフが最も苦しんだレースのひとつです。

シンボリルドルフに助けられてラストチャンスを手にした岡部騎手は、それ以降、ジョッキーとしての大輪を花咲かせました。1987年には自身初のリーディングジョッキーとなり、多くの名馬と出会い、数多くの大レースを勝ち、57歳まで現役を続けながら、生涯通算で2943勝という大記録を打ち立てました。まさにジョッキーはダービーを勝つことで初めてジョッキーになったということなのでしょう。それだけの魔力がダービーにはあるということです。

「誰にミックジャガーを笑うことが出来るだろうか?」という村上春樹のエッセイがあります。

ミックジャガーは若いときに、「45歳になって『サティスファクション』をまだ歌っているぐらいなら、死んだ方がましだ」と豪語した。しかし、実際には60歳を過ぎた今でも『サティスファクション』を歌い続けている。そのことを笑う人々もいる。しかし僕には笑えない。若き日のミックジャガーは45歳になった自分の姿を想像することが出来なかったのだ。若き日の僕にもそんなことは想像できなかった。僕にミックジャガーを笑えるだろうか?笑えない。

「ダービーを勝ったら騎手を辞めてもいい」と語った柴田政人騎手や、ダービーでシンボリルドルフにレースを教えられた岡部幸雄騎手を私たちは笑うことが出来るでしょうか?柴田政人騎手はダービーを勝ったからといって本当に騎手を辞めたりはしませんでしたし、岡部幸雄騎手はダービーを勝った後に超一流ジョッキーへの道を歩み始めました。ホースマンはダービーを勝つことで初めてホースマンになるのです。私たちに柴田政人騎手や岡部幸雄騎手を笑えるでしょうか。笑えません。

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◎エアパスカル

Jiromaru

華やかなオークスの週にこんなことを書くと怒られるかもしれませんが、人間と同じように馬にも性豪と呼ばれる馬がいます。その中でも最も有名なのが、ハイセイコーやアカネテンリュウ、タケシバオーなど数々の名馬を輩出したチャイナロックではないでしょうか。通常、種付けの前には、アテ馬が繁殖牝馬を発情させて種付け行為を可能な状態にするのですが、チャイナロックはアテ馬に任せるのではなく、自ら進んでこの行為を行い、しかも相当に上手かったそうです(笑)。現在ほど獣医学が発達していなかった時代に、29歳の高齢まで種付けを行い、生涯で1300頭以上の繁殖牝馬と交配を行ったと記録されています。

もちろんその逆もあって、たとえ種牡馬であっても種付けに淡白な馬もいます。ザテトラークやブランドフォードは、種付けに淡白な馬は種牡馬として成功しないという定説を覆し、わずかな頭数しか誕生させていないにもかかわらず、種牡馬として子孫を大繁栄させた馬です。

ザテトラークは芦毛のアイルランド産馬で、現役時代は7戦無敗の最強スプリンターでしたが、種牡馬としては苦しい日々を送ることになりました。とにかく種付けが嫌で、スタッフにうながされて繁殖牝馬の背中に乗るや、1、2回ピストン運動をしただけで発射せずに降りてきてしまうのが当たり前でした。また、馬は射精をすると尻尾の付け根を痙攣させるため、スタッフはその仕草を見て種付け完了を確認するのですが、ザテトラークは頭も良かったのでしょう、尻尾を痙攣させて射精したフリをすることもあったそうです。結局、年間で6、7頭前後、生涯で130頭ほどしか産駒を誕生させることが出来ませんでした。

ブランドフォードも同じく種付けに興味を示さなかった種牡馬です。興奮した繁殖牝馬を目の前にしても、ボーっとしながら周りを歩き、30分から1時間ほどしてようやく行為に及ぶといった始末でした。いつまで経ってもその気にならないこともしょっちゅうで、いつも種付けスタッフを困らせていたそうです。それでも、産駒が誕生するやもの凄い勢いで活躍し、イギリスの3冠馬バーラムを筆頭にたくさんの名馬を輩出しました。

日本の競馬を席巻したノーザンテーストやサンデーサイレンスにも、実はこの2頭の血が色濃く流れています。サンデーサイレンスはマムードの4×5のクロスを持ちますが、このマムードの祖母の父がザテトラークで、祖父がブランドフォードです。マムードはその名こそ目立ちませんが、サラブレッドの血統を裏で取り仕切っているような種牡馬界の裏番です。種付けに淡白だったザテトラークやブランドフォードからマムードが誕生し、そこからさらにノーザンテーストやサンデーサイレンス生まれたという事実は本当に面白いですね。

私は3年ほど前、社台スタリオンステーションを見学させてもらいましたが、シンボリクリスエスやマンハッタンカフェ、クロフネなど、今をきらめく種牡馬たちと同じ厩舎の一番隅の馬房で、物音ひとつ立てず申し訳なさそうに暮らしている馬がいました。スタッフの方にその馬の名前を尋ねたところ、「ウォーエンブレムです」という答えが返ってきました。とても鳴り物入りで日本に輸入されたアメリカの2冠馬には見えませんでした。種牡馬としての評価がガタ落ちしただけではなく、毎日嫌いなことばかりやらされて、サラブレッドとしての自信を失ってしまっていたのでしょう。馬房の中から目だけが光っていたシーンは今でも忘れられません。

2003年には40頭の牝馬を受胎させ、ようやく復調気配を見せたのですが、翌年の2005年には再び9頭と激減しました。そして、2006年は僅か1頭になり、あらゆる策が講じられたものの、ついに2007年以降はウォーエンブレムの仔が生まれてくることはありませんでした。

それでも、2005年に誕生した33頭の中から、キングスエンブレムがすみれS、ショウナンアルバが共同通信杯、エアパスカルがチューリップ賞、ブラックエンブレムがフラワーCを制しました。産駒全体の勝率は18.8%と、サンデーサイレンスの12.1%を大きく上回っています。もの凄い遺伝能力ですよね。もしウォーエンブレムが、サンデーサイレンスのように年間200頭もの産駒を誕生させることが出来ていたら、果たしてどうなっていたのでしょうか。

さて、今年のオークスにも、ウォーエンブレム産駒が2頭登場します。ブラックエンブレムも魅力があるのですが、思い切って本命は◎エアパスカルに打ちます。前走の桜花賞では9着に惨敗してしまいましたが、先手を奪えなかっただけではなく、厳しいペースを前で追走した割には、最後まで良く頑張っていました。スローに流れたチューリップ賞と正反対のペース(展開)だっただけに、いきなりの速い流れに戸惑い、自分のペースで走られませんでしたね。今回はこれといって行きたい馬も見当たらず、外枠からスムーズに逃げもしくは先行できるのではないでしょうか。イメージで言うと、ダイワエルシエーロが勝った時のような位置取りです。オークスは桜花賞組から狙うのは基本ですが、その中でも巻き返しが期待できるエアパスカルに妙味があります。

また、藤岡佑介騎手の勢いも見逃せません。先週の日曜日は4連勝して、安藤勝己騎手を抜いて関西リーディングの第3位に上がってきました。技術的な部分での向上はもちろんのこと、常に馬のリズムに合わせて騎乗しているのが藤岡騎手の素晴らしいところです。いつも楽しく誇らしげに乗っている姿を見ると、家族からもしっかりと応援されているんだろうなと思います。

これはジョッキーだけに限ったことではありませんが、やはり家族からの応援があるのとないのとでは大きな違いがあります。昔は一人前になるまで帰ってくるな!と言って世間に送り出したものですが、今は違いますよね。イチロー選手や石川遼くんのように、トップに立つアスリートの陰には、必ずといっていいほど、自分たちの子供のやりたいことを心から応援している家族の姿が見え隠れします。あの岩田康誠騎手のお父さんも、熱烈な岩田康誠騎手の追っかけだそうですね。藤岡佑介騎手には、これから日本を背負って立つジョッキーのひとりになって欲しいものです。

押し出される形で1番人気になるのはリトルアマポーラでしょうか。牡馬を相手の重賞でも僅差の4着と健闘したように、このメンバーでも能力は上位です。東京競馬場を経験していることもプラス材料です。前走はクイーンSから間隔が空いて、仕上げが難しく、少し重めが残った体調での出走となったのではないでしょうか。道中から行きっぷりが悪く、追い出してからの反応もイマイチでした。今回は馬体を回復させながらもキッチリと調教が施され、前走に比べてもさらに上向きです。ただ、後ろから行く脚質に加え、大外枠を引いてしまい、外々を回されてしまう可能性があります。また、切れ味が特徴な馬だけに、重馬場になりそうな雨模様も心配です。先頭で駆け抜けるだけの能力はありますが、極めて乗り難しい状況でもあるという理由で、この馬を本命にはしませんでした。

桜花賞で1番人気を集めたトールポピーは、なぜか馬体重を大幅(-10kg)に減らしてしまい、惨敗してしまいました。この馬向きの展開になっただけに残念でしたが、ここに来て、本番が近いことを悟ると馬が自分で体を作り始めるようになったということです。周りの状況や人間の行動から本番が近いことを知ることが出来るほどに頭が良いということですが、そのことがかえってトールポピーにマイナスに働いてしまったのですね。今回も輸送があり心配ですが、体つきを見ると前走に比べ、ふっくらと仕上がっています。この馬は決して早熟タイプではありませんので、普通に走れば、このメンバーでも一枚上の底力を秘めています。ただ、追い切りで引っ掛かる仕草をしていたのが気になったのと、道悪が得意なフットワークではないという点で、本命は打ちませんでした。

桜花賞で3着した関東馬ソーマジックは、今回、長距離輸送をしなくても済むメリットがあります。その分、シッカリと調教が施されていますし、前走からの上り目もかなり大きいはずです。普通に走れば勝ち負けになるはずですが、私としては、馬体に硬さを感じるというか、パワー型の馬であるように思えて、芝の時計の速い馬場での決着に不安を感じていました。特にスローの瞬発力勝負になりやすいオークスは、この馬向きのレースにはならないということで、あまり評価はしていませんでした。しかし、馬場が重くなることがこの馬にとってはプラスに働くはずで、そのことによって勝ち切るシーンもあるかもしれませんね。

桜花賞組以外では、フローラSを勝ったレッドアゲートに注目しています。人気になりそうな馬たちの中では好枠を引きましたね。道中は内々で折り合って、最後の直線で末脚を爆発させるにはちょうど良い枠です。内田博幸騎手を鞍上に迎え、お膳立ては整った感はあります。馬群の中で泥を被って、嫌気を差してスムーズさを欠いてしまうなんてことがなければ、前走の再現をすることも可能でしょう。ただ、馬体的にはまだ幼さを残した未完成の印象を受けますので、将来性はともかくとして、現時点では完成度の高さで桜花賞組の方が有利だと評価しています。

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時代を大きく変えたテスコガビー

Jiromaru

Tesukogabi_2先日、ダービー馬を探しに東京競馬場まで足を運んだついでに、JRA競馬博物館で「オークス展」を見てきました。優駿牝馬の70周年を記念して、歴代の優勝馬の写真や貴重な資料などが展示してありましたが、その中でも、第36回の優勝馬であるテスコガビーのメンコには感激しました。

テスコガビーは8馬身差でオークスを逃げ切り、日本のスピード競馬の幕開けを示した馬です。それまでは、マイルの桜花賞と2400mのオークスは全く異なるものというのが定説で、桜花賞を勝ったスピード馬は、オークスでは軒並みスタミナ不足を露呈して、失速していた時代でした。ところが、テスコガビーはあり余るスピードで、なんとオークスさえも楽々と逃げ切ってしまったのです。距離不安を吹聴していた専門家の口はふさがりませんでした。この日を境として、まるで堰を切ったかのように、スピードが全てを制する競馬の時代がやってきたのです。

テスコガビーは菅原泰夫騎手のお手馬でした。そして、この年、菅原泰夫騎手はもう1頭の化け物の主戦も務めていました。ダービーを伝説のハイペース(前半1000mが58秒9!)で逃げ切ったカブラヤオーです。幸いなことに、テスコガビーは牝馬、カブラヤオーは牡馬であったため、菅原泰夫騎手は桜花賞、皐月賞、オークス、ダービーという空前絶後のクラシック4冠を制することになりました。実は、私が誕生した歴史的な年でもあります(笑)。

テスコガビーとカブラヤオーは一度だけ対決したことがあります。東京4歳S(現共同通信杯)で見えることになった2頭ですが、菅原泰夫騎手はテスコガビーを選んだのです。というのも、これはカブラヤオーが引退するまで誰にも明かされなかったことなのですが、他馬が近くに寄ると怖がって力を出せない弱点を隠すため、テスコガビーに乗って他馬からカブラヤオーをガードする作戦を獲ったそうです。その作戦が見事に成功し、カブラヤオーはテスコガビーとのデットヒートの末に、東京4歳Sを逃げ切り、その後、ダービーを制しました。

直接対決ではカブラヤオーに軍配が上がりましたが、菅原泰夫騎手は「カブラヤオーも強かったけど、テスコガビーはもっと強かった」と後年に語ったそうです。牝馬らしからぬ堂々とした青鹿毛の馬体や鼻筋の美しい流星もあって、テスコガビーはカブラヤオーよりも人気があったのです。その圧倒的なスピードと眩いばかりの輝きに、誰もが目を奪われた競走生活でした。

ところが、そこでめでたしめでたしと終わらないところが、競馬の歴史の恐ろしいところですね。テスコガビーの生涯には、誰もがあまり語りたがらない結末が待っていました。無事に引退して、ようやく繁殖生活に入ろうとしていたその時、テスコガビーはなぜか再び現役復帰に向けて方向転換がなされました。1年間のブランクがあったにもかかわらず、無茶な調教を課せられたテスコガビーは、調教中に心臓麻痺で急死してしまいました。

真相は分かりませんが、テスコガビーの馬主が経営していた会社が、テスコガビーの死の数日後に倒産していることから、馬主にとっての最後の頼みの綱としてテスコガビーが競走に駆り出されたということだったのでしょう。馬の運命も人のそれと同じように数奇なものです。テスコガビーの生涯を不運とする方もいらっしゃるでしょうし、それが運命だったと捉える方もいらっしゃるでしょう。

それでも、テスコガビーがオークスで放っていた輝きは、永遠に私たちの心に残ると私は思っています。スピードだけを頼りに生涯を駆け抜け、時代を大きく変えた牝馬でした。JRA競馬博物館で見た、緑と黄色で彩られたメンコにくり抜かれた目の部分からは、まるでテスコガビーがこちらを見つめているように感じました。

1975年オークス

時代を震撼させたテスコガビーの走りを見よ!

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◎ジョリーダンス

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ウオッカは牝馬ながらにしてダービーを制しましたが、これは1937年のヒサトモ、1943年のクリフジに次ぐ史上3頭目、64年ぶりの快挙になります。さらに言うと、ヒサトモとクリフジの時代はオークスが秋に行われていたので、この2頭はオークスを捨ててダービーに臨んだわけではありません。つまり、ウオッカは「オークスを敢えて捨ててダービーに挑戦し、勝利した史上初の牝馬のダービー馬」ということになりますね。

海の向こうのケンタッキーダービーを優勝した牝馬ウイニングカラーズが、以降、12戦を走って、ひとつもG1レースを勝てなかったのは有名な話です。その年のダービーのレースレベルが低かったのではないか、と疑う方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。むしろ、歴史に名を残しているような素晴らしいメンバーが揃っていました。

クビ差の2着は3歳チャンピオンのフォーティナイナー。後に日本はもちろん世界的にも評価の高い種牡馬になりました。プリークネスS2着、ベルモントS3着と好走し、日本でも数多くの名馬を輩出したブライアンズタイム。プリークネスSとベルモントSの2冠を制したリズンスター。さらに、ドバイミレニアムやシーキングザパールなど、国際的な名馬を輩出したシーキングザゴールドも走っていました。振り返ってみると、錚々たる面子ですよね。

古馬の牡馬と同じレースで走ることがどれだけ牝馬にとって負担が掛かるか、ということを前回の手紙で書きましたが、たとえ3歳戦であっても、ウオッカは最高峰のダービーを勝ってしまったのですから、その肉体的、精神的な疲労は計り知れないものがあるはずです。ダービー以降はウオッカらしい走りが見られず、ダイワスカーレットよりも下に評価されている向きもありますが、それでは余りにも可哀想ですよね。もちろん、ダイワスカーレットの強さも底なしですが、それと同じもしくはそれ以上の能力をウオッカは秘めています。

ウオッカは果たして復活するのか、それとも競走馬としてはこのまま終わってしまうのか。今回のレースは大きなターニングポイントになりそうですね。私としては、短期放牧を挟んだウオッカが復活してもおかしくはないと思っていますが、1番人気の今回は賭けるメリットがあまりないので本命にはしません。

そこで、本命は◎ジョリーダンスに打ちます。すでに7歳馬ですが、馬体を見ても全く年齢を感じさせません。昨年は連勝して臨んできたのですが、逆に言えば、おつりのない状態だったことも確かです。昨年の安田記念(3着)後、休み明けで減っていた馬体が、東京新聞杯時にようやく戻って、体調は今まさに上り調子です。だからこそ、この中間も追い切り量を増やし、ハードに乗り込むことが出来ています。最終追い切りも、抑え切れない手応えで追走し、追い出されてからはシッカリと伸び切って、目を引く動きでした。

そして何よりも、今年は絶好の内枠を引き当てました。昨年は外枠から後方に控え、脚を余しての5着でしたが、今回はスタートからポンと普通に出していけば、中団より前の位置が取れるはずです。内々で脚を溜めて、最後の直線の瞬発力勝負になれば、この馬にも勝つチャンスは十分にあります。ジョッキーも百戦錬磨の安藤勝己騎手ですので、勝てるポジションを取りに行くはずです。ギリギリまで追い出しを待ち、馬群が開いたら、あとは馬場の真ん中に出してグイグイと追ってきて欲しいものです。

ニシノマナムスメは前走のマイラーズCを2着したように、ここにきて充実してきています。ヴィクトリアマイルは毎年、牡馬を相手に好走してきた馬が激走するレースですので、まさにそれに当てはまりますね。牡馬相手のマイラーズCで2着という実績は、目下の勢いに加え、牝馬同士であれば力上位であることの証明です。追い切りの動きは頭が若干高いのが気になりますが、いつものことなので問題ないでしょう。父はサンデー系の中でも絶好調のアグネスタキオンで、母はあのシンコウラブリイと互角に戦った名牝ニシノフラワーです。これだけ走る条件を満たしていれば、好走は間違いありませんね。

ブルーメンブラッドは石坂厩舎に転厩してから馬が変わりましたね。昨年のヴィクトリアマイル時はまだ線の細さが目立ちましたが、休み明けを経て、前後肢ともに実が入って力強い馬体になりました。特に前脚のかき込みが強くなって、最後の直線でグイグイ伸びてくるようになりました。レース振りがチグハグでなかなか勝ちきれませんが、牝馬同士であれば凡走は考えられません。東京競馬場ですので、この馬のペースで行って、直線で追い出せば確実に伸びてくるはずです。あとはレースの流れ次第ですが、どの程度、前に位置することが出来るかが問題です。

ベッラレイアは秋山騎手に手綱が戻って、大きなドラマを感じさせてくれます。オークスの敗因は仕掛けのタイミングというよりも、道中の走らせ方にあったと私は思っています。スタート後から道中ずっと、なるべく前へつけたいという秋山騎手の気持ちが伝わったのか、ベッラレイアも随分力んで走っていました。秋山騎手とベッラレイアの間の重心がいつもより前に移動していたのです。伊藤雄二元調教師の「道中でベッラレイアの背中が伸びたまま走っていた」、田原成貴元ジョッキーの「仕掛けが1000m早かった」という忌憚のない言葉は、そういう意味でしょう。

ベッラレイア自身は本質的にはマイラーですので、今回は折り合いを気にする必要もあまりなく、2400mのオークスに比べると随分乗りやすいはずです。悲願の初G1レースを勝つにはもってこいの舞台が整いました。休み明けの心配はありますが、1週間前と最終追い切りの動きを見る限りにおいては、肉体面はほとんど仕上がっています。ただひとつ、17番枠を引いてしまったことが悔やまれます。まだ結果が出ていないので分かりませんが、スローに流れがちなヴィクトリアマイルでは外々を回されてしまう恐れがあるからです。


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古馬になってから牡馬と互角以上に渡り合ったエアグルーヴ

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「最強の牡馬は?」と問われると返答に困るのですが、「最強の牝馬は?」という質問には何の迷いもなく答えることができます。私の知る限りにおいて、エアグルーヴこそ最強の牝馬であり、それは私が生きている限り変わることはないでしょう。そのぐらい、エアグルーヴは不世出の強い牝馬でした。

エアグルーヴの強さは、「古馬になってから牡馬と互角以上に渡り合った」ということに集約されます。牝馬にとって、古馬の牡馬と戦うことは非常につらいことです。牝馬と牡馬では威圧感がまるで違うため、ほとんどの牝馬は古馬の牡馬と戦うともみくちゃにされてしまい、3歳時の輝きは色褪せ、古馬になって全く走らなくなってしまいます。苛酷な戦いによって、心臓発作や心不全を起こしてしまうことさえあります。それほど、古馬の牡馬と戦うこと自体が、牝馬にとっては厳しいことなのです。逆に言うと、古馬の牡馬と互角以上に渡り合ってこそ、最強牝馬の称号を得るに相応しいということですね。

最強牝馬として名前が挙がる、テスコガビーやメジロラモーヌと比べても、その点が圧倒的に違うところだと思います。我が愛しのヒシアマゾンも有馬記念とジャパンカップで2着と健闘しましたが、牡馬とまともにぶつかり合ったという点においては、エアグルーヴには敵わないことを認めざるを得ません。休み明けの中、直線で手前を替えずに勝ったオークスも凄かったのですが、それよりも、充実期にあったバブルガムフェローを競り落とした天皇賞秋は衝撃的なレースでした。牝馬特有の切れ味で差し切ったのではなく、最後まで牡馬の超一流とビッシリと叩き合い、競り落としての勝利でした。

1997年天皇賞秋

サイレンススズカが引っ張った超ハイレベルな一戦をぜひご覧ください。

そして2年連続で2着に好走したジャパンカップは、今振り返ってみても、いや、時が経つにつれて、その価値の高さが身に染みます。負けたとはいえ、ジャパンカップでまともにぶつかり合った相手は、あのピルサドスキーとエルコンドルパサーですよ。ピルサドスキーに負けたジャパンカップは前述の天皇賞秋から1ヶ月も経たないうちのレースでしたし、エルコンドルパサーに負けたジャパンカップも最盛期を過ぎた5歳時のものです。

エアグルーヴを管理した伊藤雄二調教師は、エアグルーヴのことを“競走族”と表現しました。牝馬は牡馬と比べて気分を損ねやすかったり、体調の変化が大きかったりするのですが、まれに優れた“競走族”である牝馬は男性的な感じがするそうです。性格的にもそうなのですが、馬によってはフケ(発情期)を見せない馬もいるのです。エアグルーヴが“競走族”であることを、伊藤雄二調教師は2戦目(いちょうS)にして既に見抜いていたといいます。

とはいっても、エアグルーヴが男馬と見分けがつかないようなゴツイ馬だったのではなく、普段は人懐っこくて可愛らしい牝馬だったそうです。ふっくらとした、牝馬らしい馬体は今でも印象に残っています。“競走族”なんて言われましたが、母馬としてもアドマイヤグルーヴというG1ホースをしっかりと出しましたね。重ね重ね、素晴らしい牝馬だと思います。

ヴィクトリアマイル。古馬の牝馬にとっては大切なレースですね。古馬の牡馬と戦わなくてよいということだけで、牝馬にとっては心身に掛かる負担が減ります。当然、古馬の牡馬に交じって好レースをしてきた牝馬がいれば、いつもと違って何と楽なレースだと感じることでしょうね。牡馬相手にダービーを勝った伝説のウオッカが、久しぶりに牝馬同士のレースに出走してきます。ここでどんなレースを見せてくれるのか、とても楽しみにしています。


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◎ブラックシェル

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外はまだ雨がしとしとと降り続いています。確か去年のNHKマイルカップも、こんな前夜を過ごした気がします。重馬場を前提として、思い切って10番人気のフレンチデピュティ産駒のハイソサイエティで勝負に出たら、さらに人気薄の17番人気のフレンチデピュティ産駒のピンクカメオが飛んで来た、という驚愕のレースでした。抜けた馬がいないメンバー構成に馬場の影響もあって、今年も混戦模様ですね。

本命は◎ブラックシェルに打ちます。この馬は跳びが大きくて器用さに欠けるため、中山コースでは思ったようなレースが出来ませんでした。また、入れ込む気性ということもあって、強い追い切りがかけられず、太目が残っていたということも惜敗が続いた理由でしょう。それでも常に好走していたのは能力の高さゆえですね。道悪に関してはプラスに働くとは思えませんが、この時期の府中は馬場の回復も早いので、中山の良馬場より走りやすいかもしれません。距離適性もマイル前後の馬ですし、暖かくなってきてそろそろ走り頃です。陣営はここを叩いてダービーと言っていますが、私はここが目イチの勝負だと思っています。パドックで福寿草特別ぐらいの柔らか味と落ち着きがが確認できれば、勝つチャンスは十分と思っていいでしょう。

Blackshell

ディープスカイの前走は圧巻でした。これまでの詰めの甘さが嘘のような、素晴らしい末脚で他馬を飲み込みました。4代母ミスカーミーを根幹とした活力のある牝系に、チーフズクラウンの近親繁殖が加わった血統からも、おそらくハマると強いタイプなのでしょう。逆に言うと、非常に乗り難しい馬であることも確かです。前走のゴール板を過ぎてからの止め際の仕草を見ても、気分良く走ることが出来なければ惨敗する可能性もある馬だと思いました。皐月賞を回避したローテーションは理想的で、最終追い切りの動きにも弾力性があっただけに、気分良く走られれば勝ち負けでしょう。

スプリングソングはデビューから3連勝で臨んできます。馬体や全身を使った走り方共にスケールの大きさを感じさせる馬です。1200m戦で2勝しましたが、レース振りを見る限り、生粋のスプリンターというよりも、マイル前後の距離でこそ良さが出るタイプだと思います。気性もおっとりとしているので折り合いを欠く心配もありませんし、初コースも問題ないでしょう。あとは道悪馬場がどう出るかということだけですが、立ち気味の繋ぎや蹄の角度からはこなせるはずですが、フットワークの大きい馬だけにノメる可能性もあります。追い出してから伸びるかノメるかは、正直半々といったところではないでしょうか。

1番人気に推されそうなゴスホークケンは、逃げ切りが難しい朝日杯フューチュリティSを逃げ切ったように、スピードとパワーは相当なものがあります。ただ、前走は不可解な惨敗を喫してしまいました。追い切りの失敗や落鉄の影響があったとはいえ、あまりにも走らなすぎましたね。悪いところを全部出してしまった分、陣営も開き直って臨んでくると思いますので、巻き返しは十分に期待できますが、勝ち切るまではどうでしょうか。前走を度外視するには、あまりにもリズムが崩れすぎてしまった気がします。

サトノプログレスは前走のニュージーランドTを制しましたが、内枠からロスなく進み、非の打ち所がないほどレースが巧く進みすぎた感があります。あれ以上のレースは出来ないといったほどで、決してこの馬の力が抜けているわけではありませんね。再び横山典弘騎手が最高に乗ればチャンスは十分にありますが、果たしてどうでしょうか。父がタイキシャトルで、頭の若干高い走法からも、重馬場は苦にしないはずです。

ファリダットは将来性の高い馬です。ゆっくりと順調に育てていけば、いずれは短距離のトップホースに上り詰める可能性を秘めた馬だと思います。たとえ将来の短距離馬でも、この時期であればまだ馬体が緩いので、マイルをこなせてしまいます。たとえば、一昨年に2、3着したファイングレインやキンシャサノキセキは本質的にはスプリンターですが、この時期だからこそ距離をこなせました。古馬になるにつれ、距離適性が顕在化してしまうということです。何が言いたいかというと、この馬も同じパターンで、マイルの距離を心配することはないということです。勝ち切れるかどうかは別にして、馬券に絡んでくることは間違ないでしょう。

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何も死ぬことはない

Jiromaru

最近、悲しい出来事が続きますね。私たちの誰もが知っている馬たちが、次々とこの世を去っていきました。走るために生まれてきたサラブレッドにとっても、競馬のレースは激しく厳しいものです。特に現代の競馬は経済的になってきていることもあり、悲しいかな、私たち人間と同じく、サラブレッドも心身に大きなストレスを抱えて走っています。胃潰瘍を患っていない競走馬はいないとも言われています。明日、別の馬が倒れることがあっても何ら不思議はありません。

人や馬の死を想う時、私はいつも映画「エレファントマン」の最後のシーンで用いられた一編の詩を思い出してしまいます。イギリスの詩人テニソンの「何も死ぬことはない」という詩です。組織が変形・膨張する難病に侵された主人公のジョセフ・メリックが、薄れていく意識の中で、変わりゆく自分を愛し続けてくれた母親が朗読するこの詩を聞くラストシーンです。

Never, oh! never, nothing will die;
The stream flows,
The wind blows,
The cloud fleets,
The heart beats,
Nothing will die.

とんでもない。何も、死ぬことはない
川は流れる
風は吹く
雲は空を行く
心臓は鼓動する
何も死ぬことはない

誰にとっても、明日が訪れるという保証などどこにもありません。今日こうして生きていることと、明日も生きていることの間には明確なつながりなどなく、彼我の間には深く広い川が流れているわけではありません。私たちの人生は、あたかも一本の線で出来上がっているように思えますが、そうではなく、ほとんど奇跡的な一瞬によってのみ存在し、これからも存在するのでしょう。

競馬のレースがそうであるように、私たちの人生も、必然的にこうなったのではなく、偶然が重なり続け、たまたまこうなっただけなのです。もしかすると、ほんのわずかな一瞬の違いで、私たちはここにいなかったかもしれません。ひとつ何かが違っていれば、全く別の人生を生きていたはずです。そして、今ここからさえも、全く別の人生を歩むことが出来るのです。

何も死ぬことはありません。私たちの人生は私たちが考えているほど、今ここにある絶対的なものではなく、川が流れたり、風が吹いたり、雲が空を行ったり、心臓が鼓動したりするように、もっと流動的なものなのです。全ては流れ、変化し続けていくのです。消えることはありません。

私たちにできることは、彼ら彼女らの個別の死を受け入れつつ、生をその全体において抱きしめることです。明日は何が起こるか分からないという根源的な不安と期待と喜びを抱きながら生きていくことです。今、頑張って走っている馬たちを応援することです。もちろん馬券も当てなければなりませんね。今週も競馬を思う存分に楽しみましょう!



映画「エレファントマン」のラストシーンです。興味ある方はどうぞ。(約4分間)


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◎アサクサキングス

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今年の天皇賞春も好メンバーが揃い、果たしてどのようなドラマが私たちを待ち受けているのでしょうか。ホクトスルタンが勝てば、メジロアサマ→メジロティターン→メジロマックイーンに続く、親子4代天皇賞春制覇。メイショウサムソンが勝てば、テイエムオペラオー以来、史上2頭目の天皇賞春秋3連覇。ちなみに、武豊騎手は天皇賞春と秋をあわせて計10勝しており、今回勝つことがあれば、保田降芳元ジョッキーの記録を塗り替えることになります。アイポッパーが勝てば、史上初の8歳馬による優勝となります。

それでも、私は自信を持って◎アサクサキングスに本命を打ちたいと思います。クラシック3冠最後の菊花賞を獲ったようにスタミナは豊富ですし、跳びの大きなフットワークからも、距離が伸びて良いタイプです。横山典弘騎手が2戦目の百日草特別でこの馬の長距離適性を見抜いたのは有名な話ですが、おそらく自身が乗って勝った20004年の天皇賞馬イングランディーレに似た、ホワイトマズル産駒のステイヤーに特有の走るリズムを感じ取ったのでしょう。その横山典弘騎手は、メジロマックイーン産駒のホクトスルタンに乗り、敵としてアサクサキングスに立ちはだかるのですから、競馬は面白いスポーツです。

アサクサキングスの前走は負けて納得のレースでしたね。直線ではダイワスカーレットに引き離されてしまいましたが、それでもステイヤーらしい負け方だったと思います。あまり阪神の2000mで上手な競馬をされても、かえって心配になってしまいますからね。小回りから京都の外回りに替わって、今回は伸び伸びと走ることが出来るはずです。外枠を引いてしまいましたが、1コーナーまでの距離も長いですし、この馬に関しては自分のフットワークで走られる分、馬群に閉じ込められず好材料になるでしょう。前走をひと叩きされて、大きく変わってくるはずです。最終追い切りも重苦しさのない満足のいく動きでした。

もし足元をすくわれることがあるとすれば、極端な瞬発力勝負になった時ですが、これは四位騎手が積極的に仕掛けることにより防げることだと思います。切れる脚がない分、スタミナ勝負に持ち込むためには、他馬よりも少し早目に動きたいですね。菊花賞や産経大阪杯でもそのように仕掛けているように、四位騎手も手の内に入れているはずです。慎重になって仕掛け遅れだけはNGです。ホクトスルタンを目標に、3コーナー下り坂から早めに動いて行くようなイメージで、自信を持って乗って欲しいですね。

アサクサキングスが強引に動いて、上がりが掛かるスタミナ勝負のレースになった場合は、安藤勝己騎手が後ろで虎視眈々と狙っているはずのアドマイヤモナークが面白い存在です。勝ち切るのは難しいと思いますが、今年に入っての充実度からも、展開が向けば、2着争いに加わるチャンスがあります。また、雨が降って馬場が重くなれば、この馬のパワーとスタミナがさらに生きるはずです。言い忘れましたが、アサクサキングスはフットワークからも道悪は苦手ですので、雨が降って馬場が悪くなれば評価を落とさざるを得ませんね。

親子4代制覇の夢が託されているホクトスルタンは、前走のサンシャインSが素晴らしいレース振りでした。馬なりで先頭に立つと、道中は力みなく走り、スピードで他馬を圧倒しました。まるでセイウンスカイのレースを見ているような気がしましたね。前走はメンバーが弱かったので、G1レースの中での力差が正直分かりませんが、アサクサキングスに勝つチャンスがあるとすれば、この馬かなと思います。ホクトスルタンもアサクサキングスもそうですが、母父にサンデーサイレンスが入っていることにより、スピードが存分に補われていますね。たとえ3200mの長距離戦であったとしても、メジロマックイーンやホワイトマズルの血だけでは勝つことは難しいでしょうから。

昨年の覇者メイショウサムソンからは、昨年ほどの勢いを感じません。昨年は冬場を放牧にあてたおかげで心身ともに回復し、馬が唸っているほどの出来でしたから。本質的には中距離馬ですが、昨年は抜群の体調の良さと勢いでなんとか凌ぎ切りましたね。今年はドバイ遠征のプランもあり、放牧には出されず、ずっと厩舎で調整されてきました。時間を掛けて調整されたため、どん底だった有馬記念以来、前走を叩かれて上昇ムードですが、どうしても昨年ほどには映りません。もちろん、実力のある馬ですので、勝ち負けにまで持ち込んでくるかもしれませんが、そう簡単に勝てるとは思えず、今回は評価を下げたいと思います。

アドマイヤジュピタは前走の阪神大賞典を勝ち、長距離戦におけるセンスの良さを証明しました。岩田騎手の騎乗も絶妙だったと思います。この馬の体型は、フレンチデピュティ産駒らしいコロンとした太目に映るそれですが、それでも長距離を走るのは気性の良さゆえでしょう。ジョッキーの指示に素直に従って折り合える賢さが、この馬の最大の武器ですね。もちろん、母父リアルシャダイからのステイヤーの血を引いているということでもあります。ただ、G1レースを勝つにはまだパンチ力に欠けるような気がします。前走で岩田騎手が派手なガッツポーズをしたのも、そういう意味もあるのではと解釈しています。

ポップロックは年齢的に峠を過ぎているのではないでしょうか。有馬記念での凡走がそのことを如実に物語っていると思います。前走にしても、仕上がりも悪くなかっただけに、衰えを隠しきれない敗退でした。どちらかといえば、8歳馬でもまだまだ若々しいアイポッパーの方が面白いでしょう。もう1頭の実力馬ドリームパスポートにとって、3200mの距離は長いのではないでしょうか。2000m前後の距離で一瞬の脚を生かすタイプだと考えていますので、よほど展開が嵌らない限り勝ち負けにはならないはずです。どちらかといえば、次走の宝塚記念でチャンスがあるのではないでしょうか。


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心震えるレースを

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天皇賞春ではたくさんの名勝負が繰り広げられてきましたが、今でも私の記憶に鮮明に残っているのは田原成貴騎手がマヤノトップガンに乗って勝った平成9年のレースです。レース後は、1日興奮して眠られなかったことを覚えています。もう10年以上も前のことなのですねぇ。競馬におけるありとあらゆる綾が散りばめられた素晴らしいレースで、今観ても心が震えます。

その天皇賞春に臨むにあたって、さすがの田原成貴騎手も、宿敵サクラローレルに勝てる方法が見出せなかったといいます。当時のサクラローレルは、晩成の血が開花した真っ盛りでした。前年の天皇賞春でナリタブライアンをねじ伏せてからというもの、天皇賞秋こそ脚を余して負けてしまいましたが、有馬記念では圧倒的な力を見せつけて勝利しました。確かに天皇賞春はブッツケではありましたが、それすら不安に感じさせないほど、まさに付け入る隙のない強さを誇っていました。どう計算しても勝ち目がないと田原成貴騎手が感じたのももっともだったと思います(実際に私もサクラローレルに本命を打ちました)。

そこで、マヤノトップガンの田原成貴騎手はアルパチーノのビデオを、レース前に何度も何度も観たそうです。えっ、アルパチーノ?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうです。あの「ゴッドファーザー」のアルパチーノです。アルパチーノは私も大好きな俳優で、彼の主演している映画の中では特に「セントオブウーマン」が好きです。盲目の退役兵役なのですが、スポーツカーをかっ飛ばしたり、女性とダンスを踊るシーン、そして、「I’m in the dark !(私は暗闇の中にいる)」というセリフが深く印象に残っています。とまあ映画について語り出すと、「ガラスの映画館」になってしまうのでこの辺で。

なぜ田原成貴騎手が本番前にアルパチーノのビデオを繰り返し観たかというと、意識を消すためだったといいます。演技をしているのに演技をしていないように見えるアルパチーノを見て、そこには余計な意識が働いていないことを悟ったそうです。つまり、ジョッキー(自分)にとっては、何もしない(騎乗技術を使わない)ことが正しい騎乗につながるのであって、今回の天皇賞春をマヤノトップガンで勝つ唯一の方法だと確信したのです。

スタートしてからわずかにマヤノトップガンは引っ掛かったものの、スタンド前までになんとか折り合いがつきました。マヤノトップガンのような首の低い馬は一旦引っ掛かると抑えるのに苦労するのですが、おそらくこれは田原成貴騎手が技術で抑え込んだわけではなく、意識を消すことに成功したのでしょうね。スタンド前を走る馬群の中に、田原成貴騎手とマヤノトップガンの気配がスッと消えて行ったのを私は感じました。

実はこれには伏線があって、マヤノトップガンはこれまで逃げ・先行して結果を出してきた馬でしたが、前走の阪神大賞典では後ろから行く競馬をしたのです。マヤノトップガンの前進意欲が年齢と共になくなってきていたということもあり、田原成貴騎手はマヤノトップガンの気持ちを尊重する乗り方をしたのです。前哨戦はメンバーも違うので結果を出すことが出来ましたが、本番の天皇賞春で同じ乗り方をして通用するかどうか、半信半疑なところがあったと思います。しかし、田原成貴騎手は、勝ちたいという意識だけではなく、そういったマイナスの意識も全て消そうとしたのです。

3コーナーを過ぎて、2週目の下り坂からサクラローレルが動き出しました。これは横山典弘騎手の意識というよりも、サクラローレルが休み明けであった分、力んでしまったということでしょう。その動きにつられて、マーベラスサンデーに乗った武豊騎手が動き出しました。武豊騎手はサクラローレルさえ負かすことが出来れば勝てると計算したのでしょう。田原成貴騎手が凄かったのはこの時点で全く動かなかったことです。この時の心境を田原騎手は後にこう語りました。

机上の計算では、あの時の馬場状態を考えると、もう少し差をつめておかなければとても届かない差であったと思う。それを私が意識していれば…、今はっきり言えること、それはただひとつ。あの時、もし差を詰めてしまっていれば、あの上がりの脚をマヤノトップガンは使えなかったということ。

しかし、たとえレースがあのように流れても、あそこで動かなければ最後にあの鋭い脚を使う、その思いは私の中に1パーセントもなかった。それが阪神大賞典から天皇賞まで私を悩ませつづけた全て。

その思いを消すことが、私がマヤノトップガンを天皇賞馬に導いてやれる全てだった。
(「馬上の風に吹かれて」 田原成貴著)

サクラローレルがマーベラスサンデーを差し返して、私が自分の馬券の勝利を確信した瞬間、外から信じられない脚で飛んで来たのが田原成貴マヤノトップガンでした。視界の外から飛んできたフックパンチに当たった時のように、脳みそがグラっと揺れたのを私は感じました。この感覚は後楽園ウインズにいた他の競馬ファンも同じだったようで、ゴールが過ぎて数秒の間が空いた後にようやく、「トップガンだ!」という大歓声が起こったことを憶えています。

今年もまた、心震えるレースを観てみたいものです。

平成9年天皇賞春

このレースは必見です!

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◎レインボーペガサス

Jiromaru

前回の手紙では、ヘイルトゥリーズンの早熟性について話をしました。ヘイルトゥリーズンの血を引くブライアンズタイムやサンデーサイレンス産駒たちによって、クラシックレースが席巻された時代が確かにありましたが、ブライアンズタイムはすでに高齢で、サンデーサイレンスはもうこの世にはいません。それに代わり、両者の後継者たちが現れつつあります。ブライアンズタイムの後継者であるタニノギムレットは、初年度産駒からウオッカという牝馬のダービー馬を出し、サンデーサイレンスの後継者は、すでに片手では数えられなくなっています。

そんな中でも、アグネスタキオンはもはや別格の存在でしょう。2歳リーディングサイヤーの座を父サンデーサイレンスから奪ったように、アグネスタキオンの産駒もまた早くから活躍することが出来ます。父系からヘイルトゥリーズンの血を引いていることに加え、早熟のマイラーであった母父ロイヤルスキーの影響もあるはずです。クラシックでモノをいうのは早熟性であり、そういった意味においても、アグネスタキオンはこれからも多くのクラシック馬を輩出してくのでしょう。

もちろん、単なる早熟性だけではありません。産駒に成長力をも伝えていることは、ダイワスカーレットやアドマイヤオーラの古馬になってからの活躍を見ても分かります。それもそのはず、実はアグネスタキオンの母系には、頑固なまでの異系のステイヤー血脈が連なっているのです。6代母にはイギリスオークス馬であるライトブロケードがいます。その後も代々スタミナの血が重ねられ、曾祖母のイコマエイカンを起点として、アグネスレディーという日本オークス馬、アグネスフローラという桜花賞馬が生まれました。アグネスタキオン自身も、ダービーを前にして故障の憂き目に遭ってしまいましたが、無事に走られていれば無敗のダービー馬になっていたはずです。スピード、早熟性、スタミナ、そして成長力を兼ね備えたアグネスタキオンが、ポストサンデーサイレンスの座に就いたのは、当然といえば当然だったのでしょうね。

さて、混戦を極める牡馬クラシックの第1弾の皐月賞です。ブライアンズタイム産駒やタニノギムレット産駒、そしてサンデーサイレンスの後継種牡馬たちの産駒が多数エントリーしていますが、私の本命はアグネスタキオン産駒の◎レインボーペガサスに打ちます。2歳時はダート戦を中心に使われていましたが、これはトモが甘かったという肉体的な理由や、ダートだと行きっぷりが悪くなるので折り合いを欠くことがないという精神的な理由があったのだと思います。しかし、今年に入って、きさらぎ賞で久しぶりに芝のレースで初重賞勝ちを果たしたように、やはり芝の方が向いている馬です。ダート戦で2勝したことは、この馬の潜在能力の高さゆえの何ものでもないでしょう。さらに良く解釈すると、馬場が荒れてきている皐月賞を勝つには、ダートを苦にしないぐらいのパワーが必要です。

もうひとつ、皐月賞が行われる中山2000mは、小回りのコーナーを4つも回るという設定のため、かなりの紛れが生じるのも事実であり、騎手の技量が問われるコースです。そういった意味でも、安藤勝己騎手の腕を買ってみたいですね。前走のスプリングSは内田博幸騎手が騎乗しましたが、行きたがるレインボーペガサスを少し押さえすぎてしまった印象があります。内の絶好枠を引きましたので、今回は出たなりで第1コーナーまで進み、好位のゴチャつかないポジションを取ってくるはずです。おそらく向こう正面はペースが緩みますので、脚を溜めつつ、3~4コーナーをじっくりと回り、ラストの直線に賭ければ、早めに動き始めるマイネルチャールズに勝てるチャンスもあるはずです。

勝つ確率ということだけを言えば、1番人気のマイネルチャールズの右に出るものはいません。勝ちパターンに持ち込めなかった京成杯でさえ、強引に勝ち切ったように、どんな状況になっても伸びてくる柔軟性と精神面での強さがあります。松岡騎手が自信を持っているのも頷ける気がします。しかし、勝負の世界は時として確率だけでは語れないこともあります。前走の弥生賞のような楽なレースをさせてもらえるはずはありませんし、松岡騎手が積極的に勝ちに行ったことが、最後の最後で足元をすくわれてしまい、裏目に出てしまうこともあるでしょう。前述したとおり、中山2000mのコースは紛れのあるコースです。人気になっている今回は、敢えて本命にしませんでした。

ブラックシェルはマイネルチャールズに2度負けていますが、力付けが済んだと考えるのは早計です。能力的には決して劣らないものを持っています。これまでの2戦で敗れているのは、コース適性の差ということです。スッと好位を取れないブラックシェルに対して、マイネルチャールズは楽に勝ちパターンに持ち込めるということです。本番でペースが速くなって逆転というパターンもあり得ますが、追い切りでの動きが鈍かったように、この馬自身の体調が気掛かりで本命には推せません。

ショウナンアルバは、レベルの高い共同通信杯を勝ったように、非常に能力の高い馬です。ブリガディアジェラードの5×3ですよね、ルドルフおやじさん!前走のスプリングSは、折り合いを欠いて先頭に立ってしまうという最悪の形になってしまいました。ああなってしまうと勝つのは難しいので、よく3着に踏ん張ったと思います。身体能力という点では、このメンバーでも随一ではないでしょうか。ただ、最終追い切りでも首を上げたりしているように、気性の激しさがあって、なかなかハンドリングが利かない馬ですね。スタンド前の大外枠からの発走ということもあり、おそらくショウナンアルバのスイッチは入ってしまうはずです。蛯名騎手も今回は無理に抑えることはしないでしょう。先頭に立ってマークされる形になって、果たしてどこまで粘ることが出来るでしょうか。

善戦マンであったスマイルジャックは、前走でようやく勝利の味を思い出しました。途中で先頭を奪われての番手追走から、直線で抜け出すという味のある競馬をしました。首の低いしなやかなフォームで、最後まで伸び切りました。それもこれも、キッチリと仕上げられたおかげでしょう。マイナス10kgの馬体は究極の仕上がりにあったと思います。本番である今回のレースでの心配といえば、当然、前走からの反動です。馬体や追い切りを見る限りは全く問題ないのですが、目に見えない疲れがレースに行って噴出することもあります。勝つ力はある馬ですので、あとは体調がどう出るかといったところです。

追記
以前、当ブログでもご紹介させて頂きました「馬流天星」のスカイスポットさんが企画・提供されている、「2008年皐月賞予想特大号」に皐月賞の見解を寄稿しています。「プロフェッショナル馬券戦術ライブ」の付録である「G1レース攻略&競馬場データ集」で書いている内容のごくごく一部ですが、興味のある方はご覧になってみてください。他の参加メンバーたちの綿密な予想も必見です!

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ヘイルトゥリーズンからの早熟性の血が

Jiromaru

昨年の皐月賞は、「勝利」という名のブライアンズタイム産駒が、田中勝春騎手に15年振りのG1勝利をプレゼントしました。ブライアンズタイム産駒としてのG1勝利も久しぶりでしたね。ひと昔前は皐月賞といえばブライアンズタイム産駒が連想されたほどでした。ナリタブラインをはじめ、サニーブライアン、ノーリーズン、ダンツフレームなど、サンデーサイレンス産駒に負けず劣らずの強さを見せてくれました。サニーブライアンが勝った年などは、確かブライアンズタイム産駒のワンツーフィニッシュでしたね。近年は芝での活躍馬が少なくなってきた矢先の出来事でしたので、意表を突かれたと共に、ブライアンズタイムの血の底力を見せ付けられた気がしました。

ブライアンズタイム産駒が皐月賞を得意とする理由として、まずは力の要る馬場に強いということが挙げられるでしょう。この時期の中山競馬場は、春開催の最終日ということもあり、見た目には分かりにくいのですが、ベースの野芝がかなり傷んでいます。そのような荒れ馬場をモノともせずに走り切ってしまうパワーを、ブライアンズタイム産駒は備えているということです。ダート戦ではサンデーサイレンス産駒よりも上という実績が、そのことを如実に物語っていますよね。

もうひとつの理由として、早熟性ということが挙げられます。昔から「皐月賞は速い馬が勝つ」と言われてきましたが、この時期のクラシックレースを制するには、スピードだけではなく、仕上がりの早さが不可欠です。他馬に先んじて、早くから能力を発揮できるという早熟性ですね。クラシックレースは3歳のこの時点での完成度を問われるレースでもあり、もちろんサンデーサイレンスもそうでしたが、クラシックに強い血統というのは早熟でなければならないということです。

スピードと早熟性を極端に重視する傾向は、今からおよそ100年前にアメリカで生まれ、その後、ナスルーラやネイティブダンサーやロイヤルチャージャーの血を引いた馬たちが大活躍したことで発展しました。その中でも、ロイヤルチャージャーの血を受けたヘイルトゥリーズンという馬は、まさにスピードと早熟性の権化のような馬でした。

そうです。サンデーサイレンスとブライアンズタイムが共通して父の父に持つヘイルトゥリーズンですね。最近はサンデーサイレンス系という言葉が当たり前のように使われていますが、世界的に見れば、まだサンデーサイレンスもブライアンズタイムもヘイルトゥリーズン系という括りでしょう。そのうちサンデーサイレンス系という言葉もワールドワイドになるのかもしれませんけど。

1958年に生まれたヘイルトゥリーズンがデビューしたのは、わずか2歳の1月のことでした。カリフォルニアのサンタアニタ競馬場でデビューし、初勝利を挙げるのに6戦を要してしまいますが、そこをレコード勝ちするや、ホープフルS、グレートアメリカンSなど2歳の主要重賞レースを勝ちまくったのです。2歳の9月の時点では、なんと18戦9勝というキャリアを誇っていました。また、ほとんどのレースがスプリント戦でした。ヘイルトゥリーズンという馬がどれだけ早熟でスピードに秀でていたか分かりますね。

残念なことに、ヘイルトゥリーズンは調教中に怪我をしてしまい、そのまま引退してしまったのですが、種牡馬としても大成功を収めたのです。1970年には2歳部門のリーディングサイヤーと総合部門のリーディングサイヤーの両方に輝きました。サンデーサイレンスの父ヘイローやブライアンズタイムの父ロベルトが生まれたのもその頃ですね。つまり、サンデーサイレンスの産駒にも、ブライアンズタイムの産駒にも、2歳の1月にデビューしたヘイルトゥリーズンからの早熟性の血が脈々と受け継がれていて、両者がクラシック血統として成功した最大の理由のひとつになっているというわけです。

今年の皐月賞で1番人気が予想されるマイネルチャールズも、このヘイルトゥリーズンの血をしっかりと引いているようですね。デビュー戦こそ落としてしまいましたが、それ以後は連対を外していませんし、目下3連勝中です。その緩急自在の大人びたレースぶりやスピードは、クラシックを勝つに相応しい早熟馬のそれです。非の打ち所がないことがかえって嫌われそうな嫌いもありますが、他馬がこの馬に先着することは容易ではないはずです。

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◎トールポピー

Jiromaru

「競馬ファンはみな、頭の中に3種類のカレンダーを持っている」と、作家の浅田次郎さんがどこかに書かれていました。ひとつは1年が365日のカレンダー。ひとつは金杯から有馬記念までの競馬開催日のカレンダー。そしてもうひとつが桜花賞から始まり菊花賞で終わるクラシックレースのカレンダーです。今年もまた気持ちを新たに、3つめのカレンダーに印をつけ始める日がようやくやってきたようです。阪神競馬場のサクラは散らずに残っているのかなあ。

さて、今年の桜花賞は、取得賞金順のボーダーラインが1350万円という、稀に見る混戦ムードです。昨年のように、頭二つほど抜けた馬がいない今年は、どの馬にでもチャンスがあると言っても過言ではありませんね。ここに至るまでの臨戦過程やレースでの枠順、位置取りが、大きく結果として影響してきそうな気がします。果たしてどの馬が、全ての幸運を味方につけることが出来るのでしょうか。

そんな混戦ムードを承知の上で、敢えて◎トールポピーに本命を打ちます。頭二つほど抜けた馬はいないと書きましたが、今年のメンバーの中ではトールポピーが頭半分くらいは抜けているのではないかと思っているからです。阪神ジュべナイルFを抽選で滑り込んで勝ったように、決して早熟な2歳女王ではありません。肉体的にも精神的にもまだまだ成長途上で、クラシックレースでも活躍が見込まれる馬だと思います。

兄フサイチホウオーは、クラシックに至るまでの過程で無理を強いられたばかりに、本番のダービーで精神的に切れてしまいました。兄弟だけに、ひとつ間違うと危うさを秘めていますが、トールポピーに関しては角居調教師が念入りにケアを施していますので心配ないでしょう。キッチリ仕上げられて無敗でクラシックに辿りついた兄に比べ、妹は負けてはいますが余力(特に精神的な)を残して本番に臨んできています。

厳しいレースとなった阪神ジュべナイルFを快勝したように、激しいレースになればなるほど、この馬のスタミナの豊富さが浮き出てくるはずです。チューリップ賞のようにラストの直線だけの緩いレースになってしまうと、他馬に足元をすくわれる心配もありますが、さすがにメンバーが揃うG1レースですので、ある程度は流れてくれると考えています。とはいえ、道中が緩みやすい新阪神競馬場のマイルコースですので、あまりゆったりと行っていては届きません。最低でも中団以上のポジションを確保したいものです。

そのために、チューリップ賞では前半から攻める競馬を試み、わずかに掛かり気味になりましたが、なんとか辛抱してレースの流れに乗っていました。馬群の中でレースを進めることが出来たのも収穫だったと思います。というのも、スローに流れやすい桜花賞を勝つには、なるべく内のポジションを進みたいからです。そのためにも、馬群に包まれながらレースを進めた経験を本番前にしておくことは重要でした。今回は10番枠を引きましたので、出たなりのコースを進んで行けば、有力馬を内に見ながら、仕掛けのタイミングだけ間違わなければゴールで首ひとつ抜け出てフィニッシュすることが出来るのではないでしょうか。怖いのは雨だけでしょう。

同じ角居厩舎からはポルトフィーノも出走しています。何を隠そう私とルドルフおやじさんのPOG馬なのですが、今回は本命を打ちません。というのも、追い切りでの動きがどうしても硬く映るからです。どこかゴトゴトしているというか、肉体を持て余しているような走り方です。前走では競馬の苦しさを知り始めた若駒にありがちな凡走でしたが、今回もまたレースに行って逃げたがって折り合いを欠くことがあるかもしれません。もしチャンスがあるとすれば、単騎逃げが打てたときのみでしょう。

リトルアマポーラは京成杯で牡馬相手に好走したように、牝馬同士であれば力上位で、展開次第ではトールポピーを逆転するだけの力を持っています。追われてから尻尾を振る癖はありますが、それでも最後の直線では確実に伸びてきます。ひとつだけ心配材料を挙げると、昨年暮れから使い詰めで4戦してきて、前走のクイーンSで大幅に馬体重を減らしてしまったということです。その後、ひと息入れて、再びここに向けて仕上げられてきましたが、休み明けを叩かれて本番に向けて上昇カーブを描いてくる他の有力馬に比べ、上積みという点では疑問符がつきます。いずれにせよ、この馬が対抗馬であることに疑いの余地はありません。

オディールは絶好の枠順を引きましたが、前半から積極的に攻めるつもりはないそうです。前走で抑えていけば相当の脚を使ってくれることが分かりましたので、今回も道中は折り合いに専念する競馬をするということですね。桜花賞を勝つだけのことを考えれば、前半からポジションを取りに行くことも考えられますが、先々を見据えてそうはしないのでしょう。別の言い方をすれば、オディールのリズムを崩して勝ちに行くよりも、オークスから先へ繋がる乗り方をするということです。今回は他力本願ですが、展開次第でどこまで突っ込んでこられるかということでしょう。

おまけ(有力馬の最終追い切り評価)
★トールポピー 
CW 稍 池添 68.7-54.0-40.2-12.9  8 G強
ひるむことなく3頭併せの真ん中を進み、手応えも抜群。実戦を想定して、抜け出してから気を抜かせないようにビッシリと追う調教は先週と同様で、それに応える形でトールポピーも最後までシッカリと走りきっている。高レベルの追い切りには、勝利への緻密な計算が見て取れる。

★ポルトフィーノ 
CW 稍 武豊 64.8-50.9-38.2-13.0  7 強め
テンションを上げないように、折り合い面を重視した単走追い。先週の1週間前追い切りもそうだったが、ラストの直線での動きに、どこか突っ張って走っているような硬さが見られる。この馬の肉体的な特徴ゆえと言ってしまえばそうなのだが、個人的には動きにもう少し柔らか味が欲しい。

★エイムアットビップ 
栗坂 稍 小林慎 51.6-37.6-25.0-12.8 1 一杯 外デジャヴ馬也と併せで併入
首が高い走法は相変わらずで、坂下からダッシュを利かせて駆け上がってくる。左右のブレがきになるように、力を入れて走ってしまう癖は解消されていない。この様子だと、おそらく本番でも行きたがるだろうし、あとはジョッキーがどのように乗るかにかかっている。難しい。

★ソーマジック 
美坂 重 助手 51.8-計不-計不-12.0 馬也
輸送に考慮してか、最終追い切りは軽めに終始した。それでも、力強い動きを披露したように、パワーという面だけでみれば、このメンバーでも引けをとらない。あとは輸送がうまく行って、当日、少しでも時計の掛かる馬場になることを祈るのみ。

★マイネレーツェル 栗坂 稍 助手 52.6-37.7-24.6-12.4 馬也
追い切りラッシュの時間に追われたが、周りを気にすることもなく、ピタリと折り合いもついている。鞍上がムチを抜く素振りを見せるや反応し、ラストまでシッカリと駆け上がった。バネを感じさせる動きで好感が持てる。

★リトルアマポーラ DW 重 助手 67.5-51.4-38.0-12.2  8 一杯
DWコースでゴール前までビッシリ追われた。クイーンSで減っていた馬体を一度緩めて、再度仕上げ直してきたが、逆に今度は重め残りの心配がある。中途半端に間隔が開いただけに、仕上げが難しく、上積みにも疑問がある。

★ブラックエンブレム 中間軽め
早めに栗東入りしたものの、ギリギリの馬体は相変わらずで、強い追い切りが掛けられないのが実情か。力を出せない出来ではないが、前走以上の上積みは感じられない。

★オディール 栗坂 重 助手 57.5-41.2-26.8-13.2  2 馬也 
馬場が悪かったため、無理をして追わなかったが、抜群の手応えが伝わってくる好内容。牧場からガレて戻ってきた馬体を立て直すだけで精一杯だった前走と違い、体調は確実にアップしている。