
遅くなりましてすいません。フェブラリーS攻略のポイントは“体調”と書いた途端、ダイワスカーレットが回避してしまいました。馬の故障は偶然ではなく、肉体面や精神面の不調が原因となって起こることがほとんどです。ダイワスカーレットはフレグモーネになった経緯もあり、今回のことも含め、ここは少し放牧に出して休ませてあげる必要があるのではないでしょうか。前回の手紙にも書いたとおり、連勝が途切れた馬というのは肉体的、精神的な疲れがドッと噴出してしまうことが多いです。そこをゴマカシて使っても良い結果は出ないと思います。
本題に入る前に、まずはダート競馬における血の話をさせてください。フェブラリーSはダート競馬でも芝に対応できるぐらいのスピード能力が問われるレースですが、基本的に、ダート競馬と芝の競馬は別物です。それゆえ、ダートを得意とする馬と芝を得意とする馬に分かれ、また当然のことながら、ダート競馬と芝でチャンピオンクラスを生み出す種牡馬も2つに分かれます。
かつてノーザンテーストが1990年代に総合リーディングサイヤーかつダート部門のリーディングサイヤーに輝きましたが、これはかなり稀なケースです。あのサンデーサイレンスでさえ、総合リーディングとダートのみを同時に制したことはないのではないでしょうか。もちろん、走る馬は芝の競馬を使われるということを考慮しても、総合リーディングとダート部門を統一することは極めて難しいのです。
総合リーディングとダート部門のリーディングサイヤー上位5頭を、1990年から5年おきに並べてみます。
1990年
総合リーディング ダート部門
1位 ノーザンテースト ノーザンテースト
2位 ミルジョージ ブレイヴェストローマン
3位 トウショウボーイ マルゼンスキー
4位 モガミ ノーザンディクター
5位 ノーザンディクター ミルジョージ
1995年
総合リーディング ダート部門
1位 サンデーサイレンス ノーザンテースト
2位 ブラインズタイム ブライアンズタイム
3位 ノーザンテースト キンググローリアス
4位 トニービン ブレイヴェストローマン
5位 リアルシャダイ ホリスキー
2000年
総合リーディング ダート部門
1位 サンデーサイレンス アフリート
2位 ブライアンズタイム ジェイドロバリー
3位 トニービン サンデーサイレンス
4位 オペラハウス ブライアンズタイム
5位 ジェイドロバリー アサティス
2005年
総合リーディング ダート部門
1位 サンデーサイレンス ブライアンズタイム
2位 ブライアンズタイム アフリート
3位 フジキセキ フジキセキ
4位 ダンスインザダーク サンデーサイレンス
5位 サクラバクシンオー バブルガムフェロー
そして、昨年(2007年)のリーディングは以下のとおりです。
2007年
総合リーディング ダート部門
1位 サンデーサイレンス ブライアンズタイム
2位 アグネスタキオン クロフネ
3位 ダンスインザダーク フレンチデピュティ
4位 ブライアンズタイム フジキセキ
5位 フジキセキ アフリート
こうして見ると、ノーザンテーストやサンデーサイレンスの凄さが手に取るように分かりますね。特にサンデーサイレンスのリーディングサイヤーとしての息の長さには驚かされます。またダート部門のリーディングこそ獲っていませんが、その直仔であるフジキセキやバブルガムフェローらがダート部門の上位に食い込んでいるように、種牡馬としても万能を十分に発揮しています。サンデーサイレンス系という言葉が世界的なものになる日は近いのではないでしょうか。
そして、もうひとつ、サンデーサイレンスの陰に隠れがちですが、ブライアンズタイムの種牡馬としての能力も際立っています。特に、ダート部門におけるブライアンズタイムには、サンデーサイレンスに通ずるものがありますよね。ナリタブライアンやサニーブライアンなど、芝のチャンピオンクラスも多く輩出してきた種牡馬ですが、芝よりもダートに滅法強い産駒を出すということです。晩年になって、その傾向はますます強くなってきている感すら覚えます。
ブライアンズタイム産駒は昨年(2007年)計111勝を挙げましたが、その内、83勝がダート戦でのものです。つまり、ほとんどの勝ち鞍がダートでのものということです。そんな中、数少ない芝の勝ち星の中になんとG1レースの勝ち鞍が含まれています。すぐにピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、そうです、ヴィクトリーの皐月賞です。晩年のブライアンズタイムの産駒であるヴィクトリーが、芝のG1レースを勝ったということはもの凄くレアなことだったのですね。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、フェブラリーSの予想をしたいと思います。前回の手紙では4強の不安点について触れましたが、ダイワスカーレットが回避して、残った3頭の馬はいずれもダートの鬼と言ってもよい存在でしょう。その中でも、ヴァーミリアンはもう私がここで語る必要のないほどの最強馬です。私が見てきたダート馬の中でも、これだけスピードとスタミナが高い次元で融合されているダート馬は思いつきません。ドバイは苛酷な舞台ですが、それでもこの馬ならと思わせてくれます。
今回の1600mという距離に関しても、レコード決着となったJCダートを勝っているように、このあたりでスピード負けすることはないでしょう。スタートがそれほど速くない馬ですので、行き脚がつきやすいという点において、外枠に入ったことはかえって吉と出るはずです。極端なスローにならない限り、スムーズに外を回して直線に向けば、勝利はすぐ近くにあるのではないでしょうか。
唯一の問題は、やはり体調ということになります。JCダートの時の体調には及ばない、完調手前の状態にあることは間違いなく、それでも勝ち切れるかどうかですね。完調手前と言っても、最終追い切りで坂路52秒台が出ているように、この馬の力は出し切れるほどには仕上がっていると判断しました。
それでも、ヴァーミリアンを負かすとすればという意味で、本命は◎ワイルドワンダーに打ちます。父ブライアンズタイム×母父サンデーサイレンスという血統は、まさにダートの鬼っ子のそれです。実は昨年のダート部門リーディングブルードメサイヤーはサンデーサイレンスなのです。サンデーサイレンスは母系に回っても、父方の種牡馬の良さを引き出すということなのでしょう。ワイルドワンダーのごつい馬体を見ると、父のパワーとスピードが伝わっていますし、もちろんサンデーサイレンスからスタミナも受け継いでいるようです。
JCダートは道中でハミを噛んでしまったことが最後に響きましたが、それでも距離が短縮されればと思わせてくれる内容でした。そこから休養をはさみ、根岸SをステップとしてフェブラリーSを本番として狙いを定めてきたことが窺われます。前走で大幅に減った馬体重ですが、ヒ腹が太くなりやすいこの馬にとって、キッチリ仕上がっていたとプラスに解釈してよいのではないでしょうか。絞れにくい時期だけに、太目が残ってしまうよりは、仕上がっていた前走から現状維持の方が仕上げやすいということでもあります。前走の反動さえなければ、ヴァーミリアンよりも前に付けて、一歩先に抜け出すことが出来るのではないでしょうか。
ブライアンズタイム産駒ということでは、ヴィクトリーも面白い存在です。血統的な傾向からすると、もしかして本当はダートでこそ力を発揮するという可能性もあるのではないでしょうか。皐月賞を勝った馬が、もしダートが滅法得意であったとしたらどうなるでしょう。ブッチギリとは言いませんが、あのダートの鬼ヴァーミリアンを苦しめることもあるかもしれません。基本的な乗り方としては、スタートをポンと出て、逃げもしくは先行したいですね。その方が砂を被る心配がありませんし、ヴィクトリーのスピードが活きると思います。
ただ、ここ数戦、スタートで遅れてしまうことが多いため、もしかすると中団以降からの競馬になるかもしれません。たとえそうなったとしても、砂を被ったことにより、かえって折り合いが付いてしまうこともありますので、行きたがる癖のあるヴィクトリーにとってプラスに転じる可能性もあります。ヴィクトリーのやんちゃな気性が砂を被って良い方向に出るか、それとも悪い方向に出るか、実際に走ってみなければ分かりませn。音無調教師のコメントにあるように、「魅力はあるけど、アテにはならない」が実際のところでしょう。それでも、今回は人気になりませんので、思い切って狙ってみても面白い馬です。
ドラゴンファイヤーは、滑り込みで出走できたこと、安藤勝己騎手を確保できたことなど、運がこの馬に向いてきましたね。JCダートは初G1レース挑戦だったにもかかわらず、古馬を相手に6着と健闘しました。人気に応えることは出来ませんでしたが、あの時点では良く走っていたと思います。前走は休み明けや行き脚がつかなかったことが重なり、凡走してしまいましたが、この中間の動きは一変しています。ポリトラックコースで好タイムを連発しているように、ここに向けて順調に仕上がりました。好レースが期待できるのではないでしょうか。
4歳馬のロングプライドも、前走の平安Sをひと叩きされて、完調でここに臨んできます。中間はBコースで緩めずに乗り込んできましたので、前走のように最後に失速ということはないでしょう。追い達者のペリエ騎手ですので、最終コーナーを前目の位置取りで回ることが出来れば、ゴール前ではあわやというシーンも見られるかもしれませんね。
メイショウトウコンも前走の平安Sでは58kgを背負い、太目残りながらも、2着に踏ん張りました。絞れてくれば、好勝負必至です。何よりもこの馬は、スローの瞬発力勝負に滅法強い馬ですので、逃げ馬不在の今回は展開が向くかもしれません。道中が団子になって、先頭から後ろまでそれほど離れていないようなレースになれば、この馬の強烈な末脚が発揮されるはずです。
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