
皐月賞のラップを単独で分析することに、あまり意味はない。皐月賞のラップは、中山金杯、そして弥生賞という同条件で行われる重賞と比べられて、初めて意味をなす。なぜなら、それら3つのレースラップはそれぞれに特徴的であるがゆえに、求められる資質や能力を互いに際立たせるからだ。
まずは、年始に行われる金杯の過去5年間のレースラップから振り返ってみたい。
12.7-11.9-12.1-12.0-11.9-11.9-11.8-11.8-11.8-12.1(60.6-59.4)S
12.5-11.6-12.5-12.1-11.9-11.7-11.7-11.4-11.7-12.1(60.6-58.6)S
12.6-11.5-12.7-12.0-11.4-11.0-11.6-11.7-12.0-12.5(60.2-58.8)S
12.7-11.5-12.9-11.9-11.6-11.4-11.4-11.6-11.7-12.7(60.6-58.8)S
12.6-10.8-12.6-11.6-12.2-12.1-12.5-12.6-12.2-13.2(59.8-62.6)M
12.4-11.4-13.3-12.5-12.4-11.9-11.9-11.4-11.0-12.5(62.0-58.7)S
レースラップの後ろにカッコで括っているのは、前後半1000mのタイムである。不良に近い重馬場で行われた昨年は例外として、良馬場で行われた平成16~20年は全て後半の方が遅いスローペースでレース全体は流れている。にもかかわらず、シャドウゲイトが逃げ切った昨年を除き、前に位置した馬が苦戦を強いられ、差し馬が台頭しているのはなぜだろうか?その鍵はレースの中盤にある。前後半3ハロンを除いた中盤の4ハロンに注目してみると、11秒台のラップが並んでいることが分かる。平成18年においては、中盤4ハロン全てが11秒台である。
次に、同じ中山2000mで3月に行われる弥生賞の過去5年間のレースラップを見てみたい。
12.6-11.0-11.8-12.3-12.0-12.0-12.7-12.7-12.5-12.7(59.7-62.6)H
12.6-11.8-12.1-12.2-12.2-12.3-12.5-11.6-11.3-11.9(60.9-59.6)S
13.0-11.9-12.5-12.3-12.5-12.6-12.5-11.6-11.4-11.9(62.2-60.0)S
12.4-11.3-12.5-12.6-12.4-12.0-12.7-12.3-11.7-11.6(61.2-60.3)S
12.3-10.6-11.6-12.8-12.5-12.6-12.9-11.8-11.7-11.7(59.8-60.7)M
12.2-11.5-12.4-12.8-12.9-12.5-12.3-11.7-11.3-12.2(61.8-60.0)S
レース全体としてはスローに流れるケースが多く、当然のことながら、逃げ・先行馬などの前に行った馬が強い。同じく全体としてはスローに流れやすい中山金杯との違いは、前半3ハロンとラスト3ハロンを除いた中盤のラップにある。中盤ラップに焦点を当ててみると、例外なく12秒台が続いていることが分かる。中山金杯のレースラップに比べ、弥生賞は中盤が緩むという傾向が顕著なのである。
最後に、同条件で4月に行われるG1レース皐月賞の過去5年間のレースラップを見てみたい。
12.5-11.3-12.4-12.9-12.6-12.6-12.2-11.4-11.5-11.8(61.7-59.5)S
12.5-11.3-12.4-12.9-12.6-12.6-12.2-11.4-11.5-11.8(59.7-58.9)M
12.1-11.0-11.9-12.2-12.4-12.6-12.5-11.8-11.4-11.3(59.6-59.6)M
12.3-11.3-12.0-12.1-12.3-12.0-12.2-11.8-11.7-12.2(60.0-59.9)M
12.2-11.2-12.1-11.6-12.3-12.3-12.3-11.6-12.0-12.3(59.4-60.5)H
中盤が緩む傾向は同じだが、ひとつだけ弥生賞との相違点がある。それはレース全体のペースである。どちらかというとスローになる弥生賞に比べ、皐月賞はどちらかというとミドル~ハイペースに流れやすい。弥生賞はスタミナの裏づけがないマイラーでも、前半の乗り方次第ではこなせてしまう可能性がある一方、皐月賞はそうはいかないということだ。前半から速い流れに乗っていくスピードがあることはもちろんのこと、厳しいレースを最後まで踏ん張り通すことの出来るスタミナも必要になるのである。
つまり、皐月賞は弥生賞と同じく中盤が緩む傾向があるため、中山金杯と比べれば、前に行った馬にとって有利な展開になりやすい。具体的に述べると、向う正面で各馬に息が入るため、最後の直線が短いことも手伝って、坂を登り切っても逃げ・先行馬が意外に粘る展開になりやすいということだ。
しかし、皐月賞は中山金杯や弥生賞に比べ、全体としてはハイペースに流れやすく、レベルの高いレースになりやすい。別の言い方をすると、スピードや切れ味だけで勝ち切ることは難しく、最後にはスタミナをも問われるということだ。結論として、皐月賞を勝つために必要な条件は、―皐月賞に出てくるような馬はスピードがあるのは当然だから―、前に行ける器用さと、そして意外なことに最後に勝負を分けるのはスタミナの有無ということだろう。
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