「覚悟の競馬論」

Kakugonokeibaron競馬本に限らず、良い本は2回読むことにしている。なぜなら、2回目の方がより深く味わうことができるからだ。もちろん、国枝栄調教師の「覚悟の競馬論」は2回読んだ。藤沢和雄調教師はその著書を通じて馬優先主義を伝え、角居勝彦調教師は馬に対する愛情を語り、矢作芳人調教師は競馬ハックの仕方や競馬会への提案を示したのに対し、国枝著教師は全てをバランス良く説明してくれたという印象を受ける。前半はホースファーストの精神に則りつつ競馬の素晴らしさを語り、後半は日本競馬において是正されるべき不公平を論じている。後半になればなるほど深まっていく議論に、読む私たちも覚悟が求められる。

 

国枝調教師は1990年に厩舎を開業した。ちょうど私が競馬を始めた年である。さらに初重賞制覇(ダービー卿チャレンジT)が私の大好きなブラックホークによるものであったことを知り、親近感が一気に湧いた。ちなみにブラックホークは、キーランドセールで宿泊していたトイレで吉田勝己氏と偶然居合わせたことによって、預けてもらうことが決まったそうである。ブラックホークをきっかけとして金子真人オーナーとも知り合ったのだから、ブラックホークは偉大なホースマンたちをも引き合わせたのだ。その後、ピンクカメオやマツリダゴッホ、マイネルキッツなどの活躍馬が出たことで、国枝厩舎は少しずつ存在感を増し、今のアーモンドアイに至るというわけである。

 

本書の中には、馬券に役に立ちそうなヒントもなくはない。たとえば、競馬新聞をどう読むかというテーマに対しては、こう書いている。

 

「私が競馬新聞で重視しているのは、出走馬の血統(父、母、母父)と生産者、馬主だ。どの馬がどこの馬主さんで、誰が生産した、どの血統で兄弟がどうだろう、と探って行く。当然、旧知の調教師がたくさんおり、それぞれの調教師の得意不得意、癖といったものも、そんなに細かくではないがインプットされているので、所属厩舎も注意して見ている。やはり成績が上位の調教師が、どういうところでどういう使い方をしているのかというのも、気にしている。調教師の特徴から「ここではきちんと仕上げて勝負するな」「休み明けはあまり使わない」とか。(中略)エージェントと騎手の動向で、馬の好調を推察できる場合もある。上位の騎手が私の厩舎の馬ではなく、他厩舎の馬を選んでいれば、「要注意」となる。

 

競馬関係者として、生産者と馬主と調教師、そしてジョッキーの思惑が手に取るように分かるからこその競馬新聞の読み方である。休み明けでもきっちりと仕上げて走らせてくる生産者や馬主、調教師もいれば、レースを使いながら仕上げていく彼らもいる。ダートが得意な馬をつくる調教師、前走で惨敗した馬だからこそ次走では思い切った調教で極限に仕上げて激走させる特徴を持つ調教師もいる。生産者も馬主さんも騎手もそれぞれに思想があり、得手不得手があって、競馬界はひとつのエコシステムのように成り立っているのである。国枝調教師ほど内通することはできなくとも、そのような思惑に思いを馳せて推理してみるものまた競馬の楽しさのひとつではないか。

 

馬の体調管理としては、「レース前にとりわけ留意しているのは、私の場合、馬の発汗状態や精神状態、蹄鉄のチェックとなる。レース後に於いては、心房細動の状態やノド鳴り(息づかい)、鼻出血の有無ほか、ふだんの挙動・歩行と違いはないか等、細心の注意を払う」と書いている。レース前(たとえばパドックなど)に見ているポイントは私も同様であり、いかにレースに臨むにあたっての馬の発汗状態や精神状態が重要か分かる。レース後のケアに関しては、レースで完全燃焼してフラフラになってしまうアーモンドアイの様子が想像できるようで、こちらまで胸の鼓動が速くなりそうだ。

 

そして、強い馬を見極める上で国枝調教師が留意しているのは、馬のバランスだそう。「馬全体をパッと見た時の、頭、胴、脚、そのバランスが大事になる。頭がでかすぎるとか、前が勝ちすぎている、つまりトモ(腰から尻、後ろ肢にかけての部分)が小さすぎると、相対的に見た全体のバランス、いわゆるプロポーションがよくない、ということになる。前脚にしても、たとえば歪んでいる箇所があれば、そこに負担がかかって故障の原因になりうる。繋ぎ(蹄から最初の関節<球節>までの部分)の長さや角度、蹄の大きさも良く見ている」と全てのパーツにおいて、極端な形や大きさ、角度ではなく、バランスの良いことを是としているという。このバランスを見るときに大事なのは、パッと見ることだ。じっくり細部を見てしまうと、バランスを見ることはできなくなるからである。

 

その他、外厩の進化やゲートボーイの導入についてなど、付箋をつけた箇所は多くある。そして、この本書の核心である東西格差をどのように解消するのか、という問題については、ぜひ手に取ってじっくりと読んでもらいたい。論旨は明快であり、解決案も具体的である。これだけの提案をされても二の足を踏んでいるようでは、JRAは覚悟が足りないと言われても返す言葉はないだろう。

 

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競馬について書くことが好き

2020

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。時の流れは速いもので、私が競馬に出会ってから30年が経ってしまいました。東京競馬場に行って、あの空の広さに驚き、ターフビジョンさえ見えない満員の競馬ファンに囲まれて観戦した1990年の天皇賞・秋から、30回も季節が巡ったのです。競馬場に行ったのにレースを観ることができず、周りの観衆の声からオグリキャップが敗れたことを知ったのです。青い帽子のヤエノムテキが勝ち、2着には同枠のメジロアルダンが入り、4-4というゾロ目の買い方があることも、あのとき初めて学んだのです。

知れば知るほど、競馬の魅力に取りつかれました。これまでに学んできたどんな学問よりも奥が深く複雑で正解がない、未知の世界に足を踏み入れた気分でした。当時、出版されていた競馬に関する本の全てに目を通し、限られていた競馬関連の映像をあさり尽くしました。当時はまだ競馬に対する社会の偏見が残っていましたので、少し恥ずかしがりながら、隠れるようにして競馬を楽しんでいました。30年後、これほどまでに競馬が大衆化し、情報が溢れる時代が来るとは思いもよりませんでした。

良い時代になったなと思いつつ、あの頃を懐かしむ気持ちもあります。限られていたり、隠されていたりするからこそ、大切に思えるものもあるのです。砂漠が一滴の水を吸い込むように、競馬にまつわる一字一句を渇望し、吸収していた頃に比べ、今は情報を取捨選択しなければならない時代です。放っておけば、ツイッターやYouTube、ブログなどから止め処なく情報は流れてきますし、もちろんその中には素晴らしいものもあれば、余計なことも価値のないものもあります。情報が多いことは良いことかもしれませんが、希少性というか、大切さが感じられにくいのは私だけではないはずです。

砂漠の時代にスタートしたこのブログでも20年以上続き、そしてROUNDERSという新しい競馬の雑誌を発行し、気がつくと洪水の時代に突入しました。週刊Gallopや一口馬主DB、キャロットクラブの会報などに連載を持たせていただき、ツイッターをやったり、昨年はYouTubeも始めてみました。自分のためだけに書き始めた競馬が、まさかここまでの広がりをみせるとは。インターネットがなければ、私の競馬の世界は閉じたままだったはずです。今やあって当たり前のインフラになってしまいましたが、インターネットありがとう。

何の脈絡もなく書き連ねてしまいましたが、いろいろやってみて、やはり私は競馬について書くことが好きなのだと改めて思いました。書くためには自分自身の思考を深めなければならず、書いてアウトプットすることで思考を整理することができ、表現できたプロセスや内容を楽しむことができるのです。さらにその文章を読んでくれた方にも何かが伝わり、ほんの1ミリぐらいかもしれませんが、私たちの競馬の世界を変えることができるような気がするのです。そのために私の人生の時間を使うことは決して無駄ではないですし、一生をかけることのできるライフワークだと思えます。いつかはもっと自分の媒体だけに集中して書きたいというジレンマは抱えつつ、今年もできる限りの時間を使って、競馬について考え、感じ、書いていきたいと願います。今年もよろしくお願いします!

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馬体と血統をリンクしてみる


【ROUNDERSチャンネル】今回は馬体と血統をリンクして見ることをテーマとして語ります。コントレイル、ワーケア、ラインベック、ブラックホールなど、2019の有力馬の馬体評価も行います!*18分以降の音声が聞えなくなっておりますことをご容赦ください。

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馬の美点を見る(有馬記念2019出走馬馬体評価)


【ROUNDERSチャンネル】「馬体は語る」の著者・治郎丸敬之による、重賞出走馬の馬体評価コーナーです。今回は馬の美点を見るをテーマとして語ります。アーモンドアイ、サートゥルナーリア、ワールドプレミア、スワ―ヴリチャードなど、有馬記念2019の有力馬の馬体評価も行います!

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自分を恥じるのみ


朝日杯フューチュリティS2019ー観戦記ー
朝日杯フューチュリティSは内枠からビアンフェが逃げ、前半マイル45秒4、後半マイル47秒6のハイペースで突っ走った。これだけの激流を3番手で追走し、最後の直線では後続を突き放して、もうひと伸びしたサリオスは強い。馬体の緩さが気になって、これほど強いとは思っていなかった自分を恥じるのみ。後方からレースを進めたタイセイビジョンが2着に入り、ほぼ最後方から直線に賭けたグランレイが3着に突っ込んだ現象からも、前に行った馬たちが軒並み止まってしまったことが分かる。スピードだけではなくスタミナをも問われるレベルの極めて高いレースであった。

勝ったサリオスは、新馬戦からあの緩さで勝てたことに驚かされ、サウジアラビアRCでも余裕残しで完勝してまた驚き、朝日杯FSではその圧倒的な強さに驚嘆させられた。レースを使うごとに緩さは解消つつあるが、まだこれから良化する馬体であり、あとはとにかく無事に来年を迎えることを願うのみ。走る能力が高くて、エンジンが素晴らしい反面、サスペンション部分に緩さが残る馬は、レースに行って限界を超えて走ってしまうと、その反動が怖い。諸刃の剣のようなもの。早くから走ることは素晴らしいが、早くから走ってしまったがゆえの心配は尽きない。

ライアン・ムーア騎手は、サリオスの力を信じてスタートから出して行き、正攻法の競馬に徹していた。今回は誰が乗っても勝てただろうが、ゴール前で追い出してからの馬を追う姿はさすが様になる。これだけビッシリと追われることで、馬自身も最後まで気を抜かずに走ることを教わるのである。

タイセイビジョンは、スムーズにレースの流れに乗って、初のマイル戦を克服した。その気性を考慮して、前半は馬をプッシュして行かせることなく、また馬群の外に出して走らせたことで力を十全に発揮させた武豊騎手の好騎乗である。気難しいムラ馬を気持ちよく走らせる見本のような乗り方であった。また、難しい馬をコンスタントに走らせている西村真幸調教師の手腕も見事であり、近いうちに厩舎初のG1レースのタイトルにも手が届くはず。

グランレイは無理のないペースでポツンと走らせて、最後の直線に賭けた池添謙一騎手の好判断が光った。人気薄だからできることではあるが、それにしても腹をくくったからこその3着であった。タガノビューティーも、一瞬2着に入るかと思わせるだけの力強い末脚であった。初芝でこれだけの走りができたことが素晴らしい。正直、この1戦だけでは、この馬にとってダートと芝のどちらが合っているのか判断するのは難しい。

3番人気に推されたレッドベルジュールは、ポジション的には悪くなかったが、ラストがほとんど伸びなかった。初めてのハイペースを追走して、脚がなくなってしまったのか。人気先行の感はあったが、それでも期待外れの結果になってしまったことは否めない。ビアンフェはこれだけのハイペースを逃げて良く粘っている。来年はマイル以下の距離でこの馬のスピードを生かしてもらいたい。ラウダシオンは外枠が響いた形で、最後は止まってしまった。外枠を意識しすぎて、ルメール騎手が前に行き過ぎたかもしれない。ラウダシオン自身もレース前から入れ込んでいたように、気が流行りすぎてしまった。

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馬体をパッと見る(朝日杯フューチュリティS2019出走馬馬体評価)


【ROUNDERSチャンネル】今回は馬体をパッと見ることについて話しました。アーモンドアイの国枝栄調教師も、著書の中で言及していたことです。サリオス、レッドベルジュール、ウイングレイテスト、ラウダシオンなど、朝日杯フューチュリティSの有力馬の馬体評価も行います。果たして5つ★はどの馬に?

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影も踏ませない


阪神ジュベナイルF2019―観戦記―
阪神ジュベナイルFは、スピードの違いでレシステンシアが先頭に立ち、前半マイルが45秒5、後半マイルが47秒2というハイペースを自ら刻んで逃げ切った。実はファンタジーSも前半3Fが33秒7、後半が35秒1というハイペースであり、前走の強さがフロックでなかったことを証明した。とにかく強いの一言。これだけのハイペースを自ら作り出しながら、しかも5馬身の差をつけて逃げ切ったのだから、他馬とは何枚も力が違う。さらにゴール前では右耳を立てているように(実は前走も同じ)、まだ余力があった。ダイワメジャー産駒だけに完成度が高いのは確かだとしても、影も踏ませないとはまさにこの走りのこと。

北村友一騎手は、今回に関しては乗っていただけで勝たせてもらった感が強い。ペース配分もコース取りも不要であった。道中もそれほどカッとなって行き過ぎるタイプでもないはずで、折り合い自体に不安もないはず。今回は先頭に立ったが、レシステンシアよりも速い馬がいれば、2番手に控えることも難しくないだろう。これだけ乗りやすくて強い馬に当たることは滅多になく、騎乗技術と経験を磨き続けてきたからこそのめぐり合わせである。今後、他馬の成長曲線が追いついてくるまでは、このコンビで負ける方が難しい。

マルターズディオサはハイペースを早めに追いかけ、ゴールまで粘り通したのだから強い。キズナ産駒らしいパワフルな馬体をフルに使って走り、外からクラヴァシュドールが来たらもう一度伸びたように、勝負根性も素晴らしい。トモの実の入りには物足りなさがあるので、肉体的な成長の余地は十分にある。キズナ産駒がどれぐらいの成長曲線を描くのかまだ分からないが、来年に向けての期待は大きい馬である。

クラヴァシュドールは好スタートから、中団を追走し、外を回して、最後まで良く踏ん張って伸びた。新馬戦とサウジアラビアCは道中リラックスして走っていたが、今回はやや力みが見られた。レースの苦しさ知って気負い出したのか、それとも陣営の勝ちたい気持ちが伝わりすぎたのか分からないが、もう少しリラックスして走れるようになることが今後の課題となる。スピードは十分にあるし、血統的に距離が延びて良いタイプなので、この馬も来年に向けて楽しみが広がる。

1番人気のリアアメリアは、展開を踏まえると決して悪いポジションではなかったが、思いの外、手応えが悪くて伸びなかった。序盤からこれだけの速いペースで追走するのは初めての経験だけに、知らずのうちに脚を失ってしまったのではないか。最近は前半よりも後半が速いレースがほとんどで、リアアメリアのような切れるタイプが有利なのだが、突如強い逃げ馬が現れると真の強さが問われることになる。これを馬脚を現すという。

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馬の尾(尻尾)を観る(阪神ジュベナイルF2019出走馬馬体診断)


【ROUNDERSチャンネル】今回は馬の尾(尻尾)をテーマとして語ります。リアアメリア、クラヴァシュドール、ウーマンズハートなど、阪神ジュベナイルF2019の有力馬の馬体評価も行います!

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世界のダートの舞台へ

インティが好スタートから内枠を利して楽に先頭に立ち、前半800m48秒7―後半47秒7という絶妙なペースをつくり出した。コーナーを4つ回るコース形態とスローペースが合わさって、前々のポジションで内ラチ沿いを走った馬たちにとって有利なレースとなった。そのポジションを有力馬が占めたことで、人気どおりの決着となり、伏兵の出る余地は全くなかった。昨年もそうであったが、東京競馬場の2100mでジャンカップダートが行われていた頃に比べると、道中ただ回ってきて最後の直線だけの勝負となるダートの頂上決戦は少し寂しい。ダート競馬ファンとしては、もっと激しい競馬が見てみたい。

勝った3歳馬クリソベリルは、デビューから6連勝で頂点に登り詰めた。JDDでその姿を生で観たときから、かつてのダートの鬼たちと遜色ないパワフルな馬体とハートの強さを備えていることは身をもって感じていたので、これだけ高レベルのメンバーでも勝ち切ってしまったことに何ら不思議はない。普段は堂々と歩いている馬だが、今回は初めてレース前に気持ちがカッカする面が見られた。それだけキッチリと仕上げられたということだろう。まだ馬体全体に緩さが残っているだけに、古馬になって身体に芯が入ってくれば、さらに効率よく全身のパワーを前進する力に変えられるだろう。緩さがなくなると故障のリスクも高まるので、そのあたりに気をつけてケアをしつつ、世界のダートの舞台を目指してもらいたい。

川田将雅騎手は今年に入ってようやく中央のG1レースに手が届いた。春は不運なレースが続き、秋はあと一歩の競馬が多かった中、常に騎乗馬の力を十全に出し切ってきた(先週のジャパンカップのワグネリアンは除く)。それでも競馬は勝負事でありスポーツである以上、勝てないときは勝てないし、勝てるときはこんなものだろう。枠順も良く、逃げたインティの直後を走ったポジションも完璧で、最後の直線はたまたま2頭の間を割る形になったが、手応えは十分にあったから焦りはなかったはず。世界の名手たちが揃ったレースにおいて、最後の追い比べでも迫力は負けておらず、川田騎手にも世界の競馬に挑戦してもらいたいと願うのは私だけだろうか。

川田騎手以上に秀逸な騎乗だと感じたのは、ゴールドドリームに乗ったクリストフ・ルメール騎手であった。レースがスローに流れることを読み切って、相手となるであろうクリソベリルが番手につけるのも知っていたはず。そこで自身も前に行かないと勝ち目がないと判断し、スタートしてから迷うことなく外の3番手を取りに行った。前半でゴールドドリームの行く気に任せていたら、道中は中団を進み、最後は脚を伸ばしたものの連対できず終わっていた可能性もある。力は落ちてはいないが、決して上積みはないゴールドドリームの現時点での力とレースにおける最適なポジションを組み合わせて勝ち取った2着である。さすが日本のリーディングジョッキーである。

インティは武豊騎手お得意の逃げにはめこまれて、前走の惨敗を払拭する走りを見せてくれた。もっと速いペースで飛ばし、後続にも脚を使わせて、自身はそのまま押し切るのがこの馬本来の勝ちパターンだが、まだ絶好調時には戻っていないため、今回は無難な競馬をして正解であった。気持ちで走る馬だけに、肉体的にも精神的にも充実してくれば、再び強いインティが戻ってくるはず。

チュウワウィザードは、決して力負けではなく、もうひとつ前のポジションが取れていれば、勝ち馬と同じような競馬ができていた可能性が高い。ということは、クリソベリルはもう1頭分後ろか外になっていたはずで、苦しい競馬を強いられただろう。勝ち馬と勝利ジョッキーとの違いはそのポジションを狙っていたかどうかあり、狙っていなかったから譲ってしまったのである。乗り替わりだから慎重に乗ったと弁護することもできるが、せっかくの2枠なのだから攻めるべきであった。

オメガパフュームはこのようなスローのヨーイドンの競馬は向かない。デットーリ騎手もこの馬にとっては最善のポジションを走らせているが、前に行った有力馬たちが止まらなかった。展開が違えば(もっと激しいレースになれば)、上位馬たちを逆転するのは可能な力関係である。5着に入ったキングズガードは、あのポジションから最後の直線だけで突っ込んできた。年齢を重ねて道中はゆっくり追走できる距離の方が合ってきているのかもしれない。それにしても磨きのかかった驚きの末脚であった。

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ダート馬の繋(つなぎ)はどっち?(チャンピオンズカップ2019出走馬馬体診断)

【ROUNDERSチャンネル】今回は馬体における繋(つなぎ)をテーマとして語ります。もちろん、クリソベリル、オメガパフューム、チュウワウィザード、ゴールドドリーム、インティなど、チャンピオンズカップ2019の有力馬の馬体評価も行います!

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納得できるジョッキー


ジャパンカップ2019―観戦記―
後ろからは差し込みにくい馬場を見切って、ダイワギャグニーの石橋脩騎手は積極的に先頭に立ち、レースを引っ張った。前半1000mが60秒3、後半が61秒3であり、勝負どころから最後の直線が馬場の影響で時計が掛かったことを踏まえると、ほぼ平均に近いペースであったと考えることができる。ペースによる前残りではなく、馬場によって後ろから伸びてくるのが難しいレースであった。

勝ったスワ―ヴリチャードは、ひと叩きされて、渾身の仕上げが施されたこともあり、道中も唸るような手応えで内ラチ沿いを走っていた。最後は一瞬前が詰まりそうになったが、すぐさま開いた内に突っ込み、この馬らしい強靭な末脚を長く繰り出して勝利した。大阪杯(G1)以来、どちらかというとメンタル面での調子を崩していたが、少しずつ立て直されてきたところに、ノーザンファームと厩舎の究極の仕上げとジョッキーの腕がはまり久しぶりのG1勝利となった。兄弟もそうであったように、気性面に難しさを内包しており、一度リズムを崩してしまうと立て直しが難しく、今回こうして勝ったからといって次回も同じような走りを望めないところが不安要素である。

オイシン・マーフィー騎手はその腕を買われ、今秋はノーザンファームの強力なバックアップがあることも確実であり、さっそく結果を出したところもさすがである。枠順も良かったが、何よりもワグネリアンが外に出たことで、2着馬の後ろにつけられたことが大きい。最後の直線ではカレンブーケドールが内に切れ込んできて、一瞬、馬群を抜けられないシーンがあったが、すぐさま内に進路を切り替えた判断力はさすがである。前を走る2頭の間に突っ込む前に、内ラチ沿いにも1頭分のスペースがあることが分かっていたからこその動きであった。欧州のジョッキーはそうだが、特にマーフィー騎手は内にこだわり、できるだけ脚を失わずに、騎乗馬の力を全て発揮することに心血を注いでいることが伝わってくる、馬券を買っていても納得できるジョッキーである。

カレンブーケドールは持てる力を全て出し切った好走である。エリザベス女王杯をパスして、ジャパンカップに照準を絞った陣営の意図を見事に体現したとも言える。レースの間隔が開いていたこともあり、馬体はふっくらとして、秋華賞時から比べても格段に良くなっていた。またハンデも53kgと軽く、古馬の牡馬とのハンデ差(4kg)を生かすことができた。重馬場は想定外だったはずだが、内枠を引いたことで相殺されるどころか、結果的には吉と出た。

何と言っても、今回は津村明秀騎手の強気の好騎乗が光る。スタートしてから少し馬を出していったように、何としても内ラチ沿いの前目を進もうという強い意思が感じられたし、津村騎手が引かなかったからこそ、内の2番手という最高のポジションで走ることができた。勝ち馬の方が力が一枚上手であったが、騎乗としては文句のつけようがない。最後の直線で津村騎手がマーフィー騎手の進路を閉じたように見えるかもしれないが、あれは右ムチを入れたら右に寄れただけの偶然であろう。

3着に入ったワグネリアンは、最後の直線で良く伸びているだけに、道中のポジション取りが実に惜しかった。2番枠を引いたにもかかわらず、終始、内から2頭目を走らされたのは、スタートしてから第1コーナーまでの攻防が全てである。おそらく最内のカレンブーケドールよりも前のポジションに収まるつもりであったろうし、ワグネリアンも好スタートを切り行き脚もついたが、思いの外カレンブーケドールが押して前を主張してきたので、併走する形になってしまったのだ。逆にカレンブーケドールの方が行き脚が良ければ、スッと引いてインの3番手に付けることもできたろうが、どっちつかずになってしまったのが敗因である。今回の馬場は内1頭分以外は悪い(特に勝負どころの第4コーナー)ので、2番枠を生かし切れなかった致命的な騎乗であった。ポジション取りに長けている川田騎手が中途半端な騎乗になってしまったのは、乗り替わりであったことが大きい。もしかすると、距離に不安を抱えていたから安全に乗ってしまったのかもしれない。福永祐一騎手であれば、ワグネリアンを信じて、日本ダービーを勝ったときのように、序盤から思い切ってポジションを取りに行っていたはずである。ワグネリアン自身は頭がやや高く、決して重馬場が苦手なタイプではないはずで、スムーズに内ラチ沿いを回ることさえできれば、勝ち馬と良い勝負になったはずである。

マカヒキに騎乗した武豊騎手も、立ち遅れしてしまったことをプラスに変える、絶妙な騎乗であった。勝ち負けを捨てて、とにかく馬場の良いところを選んで走らせることで、最も効率的な走りとなり4着に突っ込んだ。ユーキャンスマイルも馬場の良いところは走っており、最後も伸びてきているが、いかんせん道中のポジションが悪かった。

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馬体を縦に見る(ジャパンカップ2019出走馬馬体評価)

【ROUNDERSチャンネル】今回は馬体を縦に見ることをテーマとして語ります。もちろん、ワグネリアンやユーキャンスマイル、スワ―ヴリチャード、レイデオロ、カレンブーケドールなど、ジャパンカップ2019の有力馬の馬体評価も行います!

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闘争心こそが強さの源泉


マイルCS2019-観戦記-
マイルCSは前半マイルが47秒2、後半が45秒8という、G1レースとは思えないスローペース。後ろから行った馬では勝負にならない展開であった。勝った馬が弱いということではなく、この程度の緩い流れでマイルのチャンピオンを決めて良いのかと疑問が残る。再度言うが、勝った馬が弱いということではない。

勝ったインディチャンプは、スタートが決まり、内から2頭目のダノンプレミアムを外に置く、絶好のポジションを走ることができた。ひと呼吸おいて直線に向いてから仕掛けられると、アッと言う間にトップスピーに乗っての完勝。ダノンプレミアムとは成長力という点において差がついた印象を受ける。インディチャンプはパドックから返し馬、そして発走直前まで、落ち着きのなさを示していたが、レースに行くときっちり力を出し切る。父ステイゴールドがそうであったように、闘争心こそが強さの源泉なのだろう。それにしても、最後の直線で見せた切れ味と力強さは他馬を圧倒していた。

テン乗りとなった池添謙一騎手は、まるでずっと昔からコンビを組んでいるかのような、見事な手綱さばきであった。インディチャンプの悪いところを出さずに、スタートからゴールまで導いていた。大舞台でこれだけ冷静に乗れるのは、数多くの名馬たちと修羅場をくぐってきた経験のなせる業であろう。

ダノンプレミアムと川田将雅騎手は、先行集団の外を回って、堂々と仕掛けて勝ちに行ったが、勝ち馬の強靭な末脚に屈してしまった。それだけではなく、最後は脚が上がってしまい、2着を確保するのがやっという始末。前走の反動もあったのか、それともこの馬自身が2歳時をピークに成長が乏しいのか。外枠からスタートした以上、道中のポジション取りも仕掛けのタイミングも、川田騎手に責められるところはない。川田騎手と中内田厩舎のタッグはG1を勝てそうで勝てないが、決して大きなミスをしているわけではなく、そういう流れの時もあると今は思うしかない。そのうちバンバン勝てる日が来るはず。

ペルシアンナイトは狙いすましたレースで、完璧に仕上げられていたが、スローペースをよく追い込んで3着。昨年のようにもう少し内を効率良く回ってこれたら2着もあったかも。マイルCSを1,2,3着してみせた。リピーターレースというよりは、1年間のうちで完全にここに照準を絞って仕上げている。

ダノンキングリーは好スタートから、絶好のポジションを取れたにもかかわらず、最後は伸び切れず。スローで届かないシーンは想像していたが、伸びないとは思いもよらなかった。幼さが残る馬体ゆえに、古馬と体格負けしたのか、それとも関西への輸送が影響したのか分からないが、残念な走りであった。

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サラブレッドの首を観る(マイルCS2019出走馬馬体評価)

ROUDERSチャンネルの馬体評価コーナーです。今回はサラブレッドの首を観ることをテーマとして語ります。もちろん、ダノンプレミアムやダノンキングリーという人気馬2頭から、安田記念馬であるインディチャンプとモズアスコット、そしてマイルCSを勝った実績のあるペルシアンナイトなど、マイルCS2019出走馬の馬体評価も行っていきます!ぜひご覧ください。

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京都芝1600m

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向こう正面の直線を2コーナー側に延長したポケットからのスタート。第1コーナーとなる3コーナーまでの距離は711mと長く、逃げ馬が気分よく行ってしまうとオーバーペースになりやすい。しかし、3コーナー過ぎてからは下り坂となるため、多少のハイペースで行ったとしても、前もなかなか止まらない。結果として、平均ペースのレースになりがちで、実力どおりの決着となることが多い。力さえあれば、展開にはあまり左右されることのないコースといえる。

京都の1600mコースには内回りと外回りがあり、G1であるマイルチャンピオンシップは外回りを使って行われる。外回りコースは、4コーナーで内回りコースと合流するため、内にポッカリとスペースが開きやすい。そのため、直線で前が詰まる心配がほとんどなく、差し馬にとっては安心して乗れるコースである。

第1コーナーまでの距離が長いため、枠順による有利・不利はほとんどない。あるとすれば、最初の直線において、ポケットの直線から本線に入る際、わずかに内の馬が窮屈になることぐらいか。とはいえ、1番枠でない限り、ほとんど気にする必要はないだろう。

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